やっと到達? 負の球体

公式サイトにおいて、ラージ・サイクル〈平和ドライバー〉を構成する第2のアンダー・サイクルの名称が公表された。ある程度予想の範囲内だが、〈負の球体〉(Negasphäre)とのこと。

今サイクルは、タイトル・ロールである平和ドライバー組織が、ご隠居の出奔後、さっぱり活躍していないのだが。カオテンダーのパイロット、キルミズと、ドライバーとなったアラスカとの因縁の対決とか、それなりに見せ場が用意されている、と信じたいところ。
前半アンダー・サイクルは、テラノヴァ・バリアで太陽系が籠城するという、なんとも手詰まりな状況が延々とつづいている。サイクル終盤になって、やっと先遣隊がハンガイまでたどりつく……と、そういうことなのだろう。

ちなみに、情報元は、4月15日~17日にかけて開催された、作家会合に関する記事。詳細は下記リンクより。

■公式Logbuch: Stunden vor der Autorenkonferenz (リンク切れ)
■公式Logbuch: Erfolgreiche Autorenkonferenz (リンク切れ)

カリブソの監視者 -現在1-

■22p

ハヤカワ版:
標識星ガンマ
原文:
Eckstern Gamma

試訳:
頂点星ガンマ
#恒星三角形(Sonnendreiecke)を構成する頂点(Ecke, 角)のひとつ。500話で出てきたハイペロン=ガル南のような標識星とは、意味合いがまるでちがう。

ハヤカワ版:
 メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアの親友だった。とはいえ、有名な“カピンの断片”を目撃したことはなかったし、したくもなかったが。

原文:
Mentro Kosum war einer der weniger Männer, die sich Alaska Saedelaere gegenüber so unbefangen verhielten, als existierten weder das Cappin-Fragment noch die Plastikmaske im Gesicht des Transmittergeschädigten.

試訳:
 メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアに対して、顔のカピン片もプラスティック・マスクもなきもののようにふるまう、ごく少数の人間のひとりである。
#次文の「それでも、」も原文は sogar であり、「それどころか、」となる。

ハヤカワ版:
 今回は礼儀正しくノックをしてからドアを開け、

原文:
Auch diesmal war Anklopfen und Öffnen eins,

試訳:
 今回も、ノックとドアを開けるのはほとんど同時だった。
#礼儀正しいどころか、なんのこだわりもない(unbefangen)わけで。

■24p

ハヤカワ版:
カピンの断片のせいで、完全に変化してしまったんだ。

原文:
Der cappinsche Organklumpen kann Sie weitgehend verändert haben.

試訳:
カピン片のせいで著しく変化してしまったとも考えられる。
#人間じゃないの、決定事項なのか?(笑)

ハヤカワ版:
「わたしと飛ぶのはいやだと?」

原文:
“Wollen Sie mir die Lust am Mitfliegen nehmen?”

試訳:
「わたしに同行する気をなくさせようとでも?」
#「行くのはやめたとでも言わせたいのか?」くらいでもいいかと。

■25p

ハヤカワ版:
「旦那はいつも、スタート直前に乗ってくるんですよ。とさかをぴんと立てて。そういうことですぜ、親方」

原文:
“Der Meister kommt immer erst kurz vor dem Start an Bord. Haube auf und ab. So geht das, Korpsführer.”

試訳:
「巨匠たるもの、いつだってスタート直前に乗りこんで、フードをちょいとかぶる。それでいいんですよ、隊長殿」
#なにかの引用だったりするのだろうか、訳文意味不明。Haube はおそらくサート・フード(SERT-Haube)で、ロイドはミュータント部隊(Mutantenkorps)の隊長である。

ハヤカワ版:
 顔をしかめた。どうやら、自分は歳をとらないらしい。

原文:
Ein Mann, der sein entstelltes Gesicht hinter einer Plastikmaske verbergen mußte, alterte nicht.

試訳:
 その醜貌をプラスティック・マスクにかくした男は、歳をとらないもの。
#抽象表現だが、マスクに隠れて年齢不詳になる、くらいの意味か。

ハヤカワ版:
実際、いまや問題は、自分は人類なのか、それともカピンか……そこに収斂するように思えた。

原文:
Allerdings erhob sich die Frage, ob Alaska ein Mensch oder ein Cappin war.

試訳:
とすると今度は、自分が人間なのか、それともカピンかという問題が生ずる。
#カピンなら歳をとらないわけではない。

■26p

ハヤカワ版:
 自分が人間だとは思っているが、他人が正常だと考えても無意味だった。むしろ、自分が異常なのだと考えるケースのほうが多い……

原文:
Alaska sah sich selbst als Mensch – aber er hatte begonnen, von den snderen als den Normalen zu denken und zu sprechen, was nicht mehr und nicht weniger bedeutete, daß er sich selbst als Abnormalen ansah.

試訳:
 自分が人間だとは思っているが、だんだんと他者を“正常な人間”と考え、またそう呼ぶようになりつつあった。それはアラスカが自身を“異常者”とみなしたことに他ならない。
#原文を分解する場所、まちがえたと思われ。

■27p

ハヤカワ版:
それに、これほど壮大な実験を完遂できれば、科学技術は大きく進歩する。できることはすべてやってみるつもりだった……

原文:
Rhodan war sich darüber im klaren, daß von der Planung bis zur Durchführung eines solchen Experiments wissenschaftliche und technische Großleistungen zu vollbringen waren, aber er wollte nichts unversucht lassen.

試訳:
これほどの実験の立案から完遂までには、科学的かつ技術的にも大仕事をなしとげねばならない。だが、できる手はすべて打っておきたかった。
#waren zu vollbringen を、可能とみるか、必然とみるかだが、接続詞が aber なので、負担がかかる「~ねばならない」とすべき。

■28p

ハヤカワ版:
非常時には、わたしが指揮をとることもある」

原文:
Im Alarmfall kann ich sogar dem Kommandanten Befehle geben.”

試訳:
それどころか、非常時には艦長に命令を下すこともある」
#と、その艦長に対して言っているわけで。

■29p

ハヤカワ版:
「くれぐれも連絡を絶やさないでください」と、ローダンが念を押した。

原文:
“Die Übereinstimmung darf nicht verlorengehen”, warnte Rhodan.

試訳:
「くれぐれも申し合わせのとおりに」と、ローダンが念を押した。
#シンクロ、と訳すべきだろうか。具体的には、ローダン側がATGフィールドを解除し、同時にアトラン側で10隻の部隊が分離・陽動をおこなう。つづく文章もごっちゃになっている。

ハヤカワ版:
「一瞬ですむはずだ!」と、アルコン人が応じる。

原文:
“Es wird auf die Sekunde klappen!”, versprach Atlan.

試訳:
「一秒たりと遅れはせんとも!」と、アトランが約束する。
#klappen は「うまくやる」。auf die Sekunde は「一秒にいたるまで」。

■31p

ハヤカワ版:
「コスムが疑念を持っています。正確な理由はわかりませんが、カピンの断片の影響が強まるのを恐れているのでしょう。シェーデレーアのほうは耐えています」

原文:
“Kosum hat ihn unter Druck gesetzt. Ich weiß nicht, ob se richtig war, aber Alaska hat es ertragen. Kosum scheint zu befürchten, daß Saedelaere immer stärker unter den Einfluß des Cappin-Fragment gerät.”

試訳:
「コスムが圧力をかけていました。その正否は判断できませんが、アラスカは甘受したようです。コスムの懸念は、カピン片の影響が強まりつつあるというもので」
#これも、原文の分解位置がちがう。編修時に入れ替わった?

ハヤカワ版:
アトランは真顔になり、

原文:
Atlan verzog unwillig das Gesicht.

試訳:
アトランは思わず顔をしかめて、
#しかめ面が真剣な表情か否かはさておいて。

ハヤカワ版:
作戦指揮官

原文:
Stellvertretender Einsatzleiter

試訳:
指揮官代行
#アトランはちゃんと司令室にいるぞ。

ハヤカワ版:
テレカムで

原文:
an einen Interkomanschluß

試訳:
インターカム端末で
#これも編修ミスか。

ハヤカワ版:
「ちょうどいいタイミングでした」と、にこやかに、「スタートのようすを見ておくつもりでしたから」、

原文:
“Ich wäre sowiso in die Zentrale gekommen”, sagte Alaska. “Schließlich will ich den Start in allen Phasen auf den Bildschirmen miterleben.”

試訳:
「いずれ司令室には来るつもりでした。スタートのようすをスクリーンで見ておきたかったので」
#「にこやかに」は明らかに余計。あまりに内向的、と評した前文とも矛盾する。「呼ばれなくても司令室にくるのに…ブツブツ…」くらいのが流れ的にはマッチするはず。

■32p

ハヤカワ版:
「わたしが着用していないかどうか、それが心配なのだな?」

原文:
“Vielleicht hätte ich ihn nicht mitnehmen sollen.”

試訳:
「あれを持ってくるべきではなかったのか」
#あれ=殲滅スーツ。たぶん、着てなくても不気味。

■33p

ハヤカワ版:
飛翔生物の末裔

原文:
Flugwesen

試訳:
飛翔生物
#末裔かもしらんが、まだ、飛ぶはずである。

ハヤカワ版:
どの種族もその気まぐれに迎合したもの。

原文:
Sie beugten sich seiner rücksichtlosen Herrschaft,

試訳:
どの種族もその傍若無人な支配に屈した。
#あえて言えば、誤訳ではない。ないけど……orz

■34p

ハヤカワ版:
 ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。これまでも、たびたびラール人の表情を読もうとしたが、うまくいっていない。レティクロンとしては、この計画をいつでも実行にうつす用意がある。しかし、一方で責任を回避したいのもたしかだ。この種の殺戮には、七種族のヘトスの承認を得たほうがいい。

原文:
Dem Gesicht Hoghmar-Feerns war nicht anzusehen, was er von diesem Vorschlag heilt. Leticron hatte schon ein paamal solche Angriffe verlangt, doch bisher waren die Laren und die Hyptons nicht darauf eingegangen. Leticron hätte nicht gezögert, seinen schrecklichen Plan in die Tat umzusetzen, doch er wagte nicht, die Verantwortung dafür allein zu übernehmen. Gerade für solche Planetenmorde brauchte er die offizielle Zustimmung des Hetos der Sieben.

試訳:
 ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。すでに何度かこの種の攻撃を要請したが、いまのところラール人とヒュプトンの了承は得られないでいた。レティクロンとしてはこの恐怖のプランを実行にうつすことに何のためらいもなかったが、責任を一身に負うことは避けたい。惑星殲滅ともなれば、七種族のヘトスの公的承認が必要である。
#うまくいっていないのは、表情を読むことではない。

■37p

ハヤカワ版:
立ちあがり、

原文:
Atlan richtete sich im Sitz auf.

試訳:
 姿勢を正すと、
#立ったらあぶないのでは。余裕ぶってみせていた(36p参照)のが、臨戦態勢に入った、ということ。

ハヤカワ版:
 攻撃はまだないものの、敵の十数隻はすでに《カリオストロ》を射程にとらえているはずだ。このままでは、最初のリニア航程にはいる前に、撃墜されてしまうだろう。

原文:
Es war noch kein Schuß gefallen, aber mindestens ein Dutzend gegnerischer Schiffe hatte Aussichten, die CAGLIOSTRO zu erreichen und zu vernichten, bevor sie auch nur sie erste Etappe ihres Fluges hinter sich gebracht hatte.

試訳:
 攻撃こそまだないものの、最低一ダースの敵艦が、《カリオストロ》がまだ飛行の第一段階すらこなさないうちに、捕捉殲滅しようと接近しつつあった。
#「~ともくろんでいた」わけだが、それだと緊迫感がないので。

時間の井戸雑考

der Zeitbrunnen /
時間の井戸、時の泉

ハヤカワ版ローダンにおいては、カリブソがらみでのみ登場する時空移動手段。地面にぽっかり開いた黒い穴で、のぞきこむと、時折どこぞの風景が見えて、飛びこむとその場所(時間)へと移動が可能。
後には、これがコスモクラート技術(アルゴリアン技術)であり、プシ・ポテンシャル場を用いた、無限架橋と同種のものであることが判明する。地球や惑星バルコンなど、案外いたるところに井戸は存在するわけだが……。
まあ、そのへんはさておいて(爆)

井戸、という訳語は、正しい。rlmdi.を含むファンダムで通用してきた訳語・時の泉は、物質の泉(Materiequelle)と対比されていて、多少の誤解を招きかねない。
であるが、いまだになんとなく、釈然としない。たぶん、井戸というと、石づくりで、横には釣瓶が転がっていて、ひゅ~どろどろという擬音が似合いそうな気がするからだろう。もしくは、かっこーん(それは鹿威し)。実に個人的なイメージの貧困なわけで。
で、最近ふと思ったのが、あの《井戸》は、実はカレーズなんじゃないか、と。カレーズ(ないしカナート)は、井戸というよりは地下水路である。中近東あたりで、地下水を掘りあてた井戸から、横穴を掘って人工的に水脈をつくる……と書くと、また語弊があるよーな気もする。
ただ、そう考えると、時間の井戸同士がつながっているイメージがわいてくる……よーな気がするのだ(笑)

少々恥ずかしい昔話をすると、「物質の泉が material well で、時の泉は time spring かな~」とか考えたことがあるのだが。Quelle = well だと思ったわけ。しかし、むしろ井戸の方が time well になるみたい。英語版だと、物質の泉は matter source だし。井戸、泉、源泉。微妙なニュアンスのちがいって、やっぱりよくわかんない……。
なんでこんなこと書こうと思いたったかというと、ただ単に、『風の輪、時の和、砂の環』(神坂智子)を、ひさしぶりに読みたくなっただけのことなのだが(をい

カリブソの監視者 -過去1-

334巻から、新訳者さん登場である。
英語圏翻訳については、たいへん実績のある方で、SF・ファンタジー・ファンでもご存じの人も多いかと思われる……が……。ごめんなさい。『キルガードの狼』と『ダーウィンの剃刀』しか読んでないやm__m
ま、なにはさておき(ヲヒ

■9p

ハヤカワ版:
 切りたった崖の上に立つスコペインの長い髪と腰布を、風がなびかせる。あたりを眺めまわす顔は、誇りに輝いていた。
 しばらく息をとめ、唇を結んで、その光景を見つめたあと、大きな雄叫びを上げる。声は風に乗り、やってきた方向に流れていった。
 視線をトルグの平原に向ける。

原文:
Skopein stand hoch oben auf einem Felsplateau, der Wind zauste sein langes Haupthaar und das Tuch, das er sich um die Lenden Geschlungen hatte. Skopein hatte den Kopf in den Nacken gelegt, Stolz erfüllte ihn.
Eine Zietlang stand er da, mit zusammengekniffenen Lippen und angehaltenem Atem, dann entluden sich all seine Gefühle in einem wilden Schrei, den der Wind von seinem Lippen riß und davontrug, in die Richtung, aus der Skopein gekommen war.
Er senkte den Kopf und blichte hinab in die Ebene von Thorg.

試訳:
 切りたった崖の上に立つスコペインの蓬髪と腰布を風がなぶる。うなじにそらしたその顔は、誇りに満たされていた。
 しばし息をつめ、引きむすばれた唇から、万感をこめた雄叫びがはなたれた。風にさらわれた声は、やってきた方角へと運ばれていった。
 スコペインは頭を下げ、トルグの平原を見おろした。
#空~にむかってがお~。

■11p

ハヤカワ版:
 平原はまわりを高い山脈にかこまれ、雪におおわれた白い斜面がそれにつづく。

原文:
Hoch über ihm löste sich ein Schneebrett von einem überhängenden Felssturz. Die weiße Masse ballte sich zusammen und geriet auf breiter Fläche ins Rutschen.

試訳:
 スコペインの上方、ひさし状に突きだした岩棚から雪塊がこぼれ落ち、雪だるま式にふくれあがって、広い斜面で滑落がはじまった。
#雪山で大声を出すのはやめましょう、ということで……。

ハヤカワ版:
 最初に聞こえてきたのは、シーツが風にはためくような音だった。

原文:
Zunächste hörte es sich an wie das Flirren vieler Blätter im Wind,

試訳:
 最初に聞こえてきたのは、木々の葉が風にそよぐような音だった。
#「自然の声」であるから、そのまま訳せばよいと思われ。

ハヤカワ版:
 白い壁が谷に向かって移動していく。

原文:
Über ihm bewegte sich eine weße Mauer talwarts.

試訳:
 上方から、白い壁が谷をめざして突きすすんでくる。
#直訳としてはまちがっていない。ただ、スコペイン視点を排除してしまうと、緊迫感ゼロである。

■12p

ハヤカワ版:
 からだがひっくりかえり、なにかかたいものにぶつかって、感覚がもどった。

原文:
Er überschlug sich, prallte gegen etwas Hartes und wurde wieder davongespült.

試訳:
 からだがひっくりかえり、なにか固いものにぶつかったかと思うと、またそこから押し流される。
#あれよあれよというまに……という感じ。

ハヤカワ版:
 姿勢そのものは、平原に立っていたときと変わらない。

原文:
Noch immer lag er in der Haltung da, die er schon oben auf dem Plateau eigenommen hatte.

試訳:
 姿勢そのものは、崖の上で伏せたときと変わらない。
#単なる校正ミスだろう。

■13p

ハヤカワ版:
 カリブソは(中略)気力が充実している。

原文:
Callibso saß … beflügelt. Er hatte wieder zu hoffen gelernt, hachdem Resignation bereits zu seinem ständigen Begleiter geworden war.

試訳:
 カリブソは(中略)気力が充実している。すでに諦観が絶えざる道連れとなって久しいが、いままた希望をもつことを学びなおしたのだ。
#削除する必要があるとも思えないが……。

■14p

ハヤカワ版:
空間の“深さ”を操作し、時間の井戸と山脈の位置が正しく重なりあうようにする。
 一歩で空間のはざまをまたぎこえ……そこはもう山麓だった。

原文:
Er manipulierte in der Raumtiefe, bis er die richtige Faltenordnung zwischen dem Brunnen und den Bergen gefunden hatte.
Dann trat er mit einem Schritte durch zwei Raumfalten – unt stand am Fuß der Berge.

試訳:
“空間深度”を操作し、時間の井戸と山脈が空間の“折り目”同士で重なりあうよう調整する。
 “折り目”のはざまを一歩またぎこえると――そこはもう山麓だった。
#誤訳ではない。Raumtiefe、Raumfalte ともにフォルツの造語だろう。後のシリーズで Raumzeitfalte という造語が出てきたときには、“断層”と対比させる意味で“時空褶曲”と訳したが、今回については、後で“折りたたむ”という表現がくりかえされることから、最初の解説時に Falte を“折り目”とか“ひだ”と訳した方が良いように思われる、というだけ。

■15p

ハヤカワ版:
 太陽内に存在するのは、理解できなくもないが、雪のなかとはどういうことだ?

原文:
Es war nicht ausgeschlossen, daß diese hier von der Sonne ausging, aber die Wahrscheinlichkeit sprach eher fü die Stelle im Schnee.

試訳:
 太陽からという線も捨てきれないが、雪中になにかいる方が確率は高そうだ。
#「有機体起源」というのは、この場合、生物起源と同義。

■17p

ハヤカワ版:
単純な文章を構成し、それを口にする。

原文:
Er arbeitete die einfache Sprache aus und sagte:

試訳:
単純な言語を把握すると、それを使って、
#前回の登場時、生体翻訳機内蔵、みたいなことを言っている。

以下、余談:
「シーツが風にはためく音」という描写を読んだ瞬間、脳裏にぱーっと広がった情景。
ジュリー:アンドリュースが微笑むその背後の山麓には、なぜか大量の真っ白なシーツが……。
#ごめんなさい >『サウンド・オブ・ミュージック』

こ…このDUOがァァァ……

ハヤカワ版:
「どうです、重星デュオと名づけたら?」と、重星を見まもる天文学者が提案した。

原文:
“Der Vorschlag, die Sonnen Duo zu nennen, wird hoffentlich akzeptiert!” sagte ein Astronom.

試訳:
「この連星をデュオと呼ぶことを提案しますぞ!」天文学者のひとりが言った。
ちょっと気になったので、いまさらながら調べてみた。

 重星:(地球からの)見かけ上、接近して見える星
 連星:重力を相互に及ぼしあっている星

……頼んます >統括者
ちなみに、このあと重星デュオ、重星デュオと連呼しているが、原文では一部 Doppelsonnen 乃至 Zwillingesonnen と形容している箇所以外、ほとんど Duo、または Gulver-Duo である。
この話、科学的にまちがっている描写を段落ごとごっそり削除していたりするのだが……。文学的にまちがっているところも、どうかひとつorz

出典:クナイフェル『恒星三角形の呪縛』 6章以降

嗚呼、先任将校よ何処へ行く

Der Erste Offizier /
先任将校、副長
(英語では executive officer / XO)

初期の松谷訳で、ジケルマン中佐を「《ドルスス》の先任将校」と称したように、副長的地位にある人物を「先任将校」と表記している例が見うけられる。最近、見なくなったなあ、と思っていたら、素直に「副長」と訳されていた。
……なんか、寂しい(わがままだな)。

多少調べてみたら、先任将校とは「部隊組織において、指揮官をのぞいた最先任の者」であり、正式に辞令がおりるわけではない、そうだ。上記《ドルスス》においては、当初ローダン自身が艦長であり、ジケルマンが副長的ランクにあったということになる。後、大佐に昇進してからは、ジケルマンが「艦長」なのである。
同格の将校(ないし下士官)が複数いた場合、古株なヤツがその場をシキるというのは、なんだかすごく日本人的な気がするのだが、欧米軍隊においても、ある種臨機応変というか、正式に副長が任命されない小型艦艇などでは一般的な制度であるらしい。

今回遭遇したのは、『恒星三角形の呪縛』に登場するウォルデン・キームラ。エクスプローラー船は、科学者が主体で軍人さんは少なそうなので、やはり「副長」が正しいと思う。でも、近代エクスプローラー艦隊は、なんというか軍艦バリバリな行動をとる輩が非常に多いので、いっそ先任将校でもよさそうな。
『Uボート』を訳した松谷先生だからこその訳語ではあるけれど、このまま消え去ってしまうのは、やっぱりちょっと寂しいのだった。