人事を尽くして待つものは?

Der Mensch denkt, Gott lenkt. /
【諺】人事を尽くして天命を待つ (人は考え、神は導く)

前項・尋問編のイルミナのセリフ、ハヤカワ訳は明らかにこの諺を意識しているので、一応取りあげておく。
日本語訳は、それこそ千変万化で、他に「事を図るは人にあり、成敗するは天にあり」などがある。
ポピュラーなればこそ、ジョークのネタにもことかかないのは、ちょいとググればすぐわかる。
実際、ローダン・シリーズにおいても、過去の誤訳天国(FC会誌版)でも取りあげたが、1200話台で活躍する混沌の尖兵、〈エレメントの十誡〉の指揮官である〈指導のエレメント〉カッツェンカットをもじって、あるライブレポーターが、

Die Katze denkt, Kazzenkatt lenkt. /
カッツェは思考する、カッツェンカットは指導する。

という駄洒落をかましている。

で、件のイルミナのセリフだが、生きるか死ぬかの瀬戸際で、しきりに空腹を訴えるロルヴィクにあきれかえっていることは一目瞭然なのだから、あえて語呂もふんでいない諺にこだわることはないと思う。強いて使うなら、
「事を図るは人にあり、っていうけど、ひたすら食べることだけなのよね」 とか、
「食べることばかり考えてても、神様は導いてなんかくれないわ」 くらいしないと。
あの訳だと、それこそイルミナ、なに考えてんだと(笑)

超空間をこじあけて 尋問編

試訳中、「均衡回路」Ausgleichsschaltung は、「イコライザー」としている。
当初、ON/OFFの切り替わるイメージから「バランス・スイッチ」としていたが、要するにインパルス強度を安定させる機能だと結論した。ちなみに、電気関係では「平衡回路」が一般的のようだ。
#Ausgleiichsschaltung の機能に関しては、モデムや電子回路に置きかえたアドバイスをマガンからいただいた。調べなおした結果、訳語をイコライザーに訂正した。多謝。100%そのまま活かしたわけではないが、(12)の訳は、やっぱりこうだと思うのだ。

(1)

原文:
“Sehr wissend sehen sie aber nicht aus.” Kiran Bay deutete zu den Gefangenen hinüber. “Wer sind sie?”

wissend は「知っている」状態。名詞形 Wissende は「事情通」と訳したり、カピン・サイクルでは「智者」の称号であったりする。
ここをちゃんと訳さないから、次のグッキーのセリフとの接続がおかしくなって、文章の順番を入れ替えたりしている。本末転倒。

(2)

原文:
Doch wie befürchtet, konnte er mit ihren technichen Angaben nichts anfangen. Er mußte die Laren dazu bringen, daß sie über den Translator ihr Wissen preisgaben.

知らない言葉は訳しようがない……のは、この場合、トランスレーターではなくてグッキーのボキャブラリーの問題である。あと、科学者たちが使う翻訳機に、科学用語が登録されてなかったら意味ないし。

(3)

原文:
aber wenn ihr offen zu uns wäret, wurde es uns leichter fallen, euch am Leben zu lassen.”

「正直にゲロするなら、生かしといてやろうって気になるかもしんない」である。この尋問、グッキーはわりと鬼畜なのである。後の超重族のエピソードも、ある意味プレッシャーになっていると思われるし。

(4)

原文:
Aber warum, wenn ihr es gewußt habt?”

イコライザーの存在を知っているなら、見落とすはずがない、とバーリル=トルンは言いたいと思われ。そしてつっこまれたグッキーは、

(5)

原文:
“Nein, nicht ich sage es euch, sondern ihr werdet es uns sagen, damit wir euren guten Willen erkennen.

「いや~、いま尋問されてるのはどっちだっけ?」と、シラを切るどころか回答を拒否している。助かりたかったら、よけいなことは訊くな、ということだ。き、鬼畜。
……あ、グッキーは元々ケダモノだっけ(笑)

(6)

原文:
In der Hand hielt er einen leichten Impulsstrahler, dessen Lauf verborgen war.

Lauf には銃身の意味もある。これを「走り」と読んだのだろうか。

(7)

原文:
und fast hätte mich einer dieser Giganten umgebracht.

「あの巨人たちのひとり」が、「わたし」を「殺しかけた」のである。憶測だが、239pでばったばったと倒れていた超重族のうち、ひとりが活殺自在の術(死んだふり)を駆使したのではないか。追いかけてきたの、ひとりだけだし。

(8)

原文:
Die Laren aber, das wußte Guchy nun, waren die einzigen Geschöpfe, die sie vor dem sicheren Tod retten konnten.

ラール人を殺しちゃったら、超重族だって助からないのに、とグッキーとしては教えてやりたい気持ちでいっぱいに……ならなかったみたいだけど。少なくとも、この文章には超重族の動機は描写されていない。

(9)

原文:
Es fiel ihm nicht leicht, aber er sah keine andere Möglichkeit, als schnell und hart zu handeln.

やりたくはなかったんだけれど、である。他をソフトに訳すくらいなら、ここんとこはちゃんとグッキーの主張を聞いてあげなくては。

(10)

原文:
Wenn Gucky für eine Sekunde ratlos war, so sah man ihm das nicht an.

実際に途方にくれたのかもしれないが。まわりの人間(man)には、そうは見えなかったのである。

(11)

原文:
Hoffentlich ist es nicht zu spät.”
“Vielleicht nicht”, gab der Lare zurück. “Das Versuchsobjekt ist schließlich mit Überlicht-Antrieb ausgerüstet.”

Vielleicht nicht (zu spät). と読むべきだろう。疑問形でもないし、試験機体(テンダー)にカルプが搭載されているという描写とのつながりを考えると、ここは肯定的な意味になるはず。

(12)

原文:
Ich kann mir nur vorstellen, daß sein Einschalten die Impulsmodulation innerhalb des Abstrahlfelds derart anreichert, daß die sogenannte Ausgleichsschaltung eintritt.

sein は前述の「カルプ」であり、Abstrahlfeld は転送機の「送り出しフィールド」。この文章を訳せないと、この話全体の説明がおしゃかである。まあ、マガンの指摘を受けるまでナニだったので、あまりエラそうなことは言えないが……。

(13)

原文:
“Und wenn wir aus der Kreisbahn geraten?”

カルプ=超光速エンジンを起動することで、推力が発生し、現在の周回軌道をはずれたら、あるいは太陽に転落してしまうかもしれない。マリノワ少佐はそう言いたいのだと思われ。そして、ベイ博士がその誤解を、次のセリフで解くわけである。

(14)

原文:
der Schlauch

確かにチューブの意味もあるが、この場合、「大酒飲み」ととった方が、文脈はすっきりする。

(15)

原文:
Du vielleicht?

あんたノーマルじゃないしぃ? という含意があるとみた方が、笑える。

(16)

原文:
und sah sich vergeblich nach einem Sitzplatz um. Die Sessel hatten sich ebenfalls nicht vergrößert.

vergeblich は「虚しく」で、ある行為が成功しなかった場合の副詞。
……拡大されてないと、ロルヴィクの巨体はおさまりきれないのだ。カウチ(長椅子)ひとつ占領しちゃうくらいだから。実は1章のアレは伏線だったのだ!(爆)

(17)

原文:
“Der Mensch denkt aber auch nur ans Essen!”

einとderの法則からして(笑)、der Mensch=ロルヴィクである。

(18)

原文:
Nara wollte gerade etwas sagen, als etwas eintrat, mit dem niemand gerechnet hatte.

ここで、「何かが起こった」のである。「起こるだろう」ではない。
「なんか起きたっ」「時間反動だっ」「うわーみんなバラバラに~っ」……ときて、次章へつづく。だから、時制はちゃんと訳せと。

えーと。メタメタである。
なにが困るって、今回の担当、翻訳統括者なんである。訳文を原文見ないで編集したら……という、いつもの憶測は適用不可である。
飯のタネは、もーちょい真摯に取扱い希望、なのだ。

超空間をこじあけて -5-

337巻も購入済みだが、とりあえず、こっちを済ませておきたい。前にちょっと書いた「尋問編」である。
335巻239pからはじまるラール人尋問あたりがすごいことになっているので、ちょいと長丁場だが、お付き合い願いたい。はじめに、ざっと流す。239p終盤から、246pの章末まで。

試訳:
「さして事情に精通しているようには見えないのですが」と、キラン・ベイが捕虜を指ししめして、「彼ら、何者でしょう?」(1)
「思考を読んでわかったんだけどさ、あのふたりは科学者だよ。名前はバーリル=トルンにヴェイー=トアク。ぼくがとっちめるべきかなあ……」
「いますぐにでも!」キラン・ベイが大声で、「わたしも同席します。あなたではわからない概念が出てくるかもしれませんから、グッキー」
 これはキラン・ベイの誇張ではない。実験コマンドの首席科学者として、まちがいなくグッキーよりもこうした分野の経験を積んでいるのだ。
 ラール人は無表情だが、これはわざとかもしれない。とにかくふたりがなにを考え、感じているかはその顔からは読みとれない。思考が手に取るようにわかるグッキーにとってはどうということもなかった。だが、恐れていたとおり、専門用語はさっぱり理解できない。ラール人自らに、トランスレーターを介して知識を開陳させなければなるまい。(2)
「よく聞いてよ、バーリルにヴェイー、自分の生命がまだ大切だったらね。そちらの実験は失敗したし、こっちのもそうだ。そのせいで、一蓮托生窮地に陥ってるってわけ。なにが起きたか、それはなぜかを教えてよ。そしたら、あんたたちの身柄を保証してあげるし、ぼくらといっしょに脱出できる」
 答えはない。グッキーはテレパシーで“インパルス変調フィールド”とでもいうべき概念をとらえた。なんのことやらわからないし、そもそもいまの問題とはまったく関係ない可能性もあった。だが、重要かもしれない。
「話してくんないと、あんたたちをここまで連れてきたでぶが、自分なりの方法を試すことになるんだけど。あんまり気持ちいいもんじゃないよ。だから、理性的になってよ、おふたりさん」ふたたび思考をとらえたグッキーは、意味のわからない概念を忘れてしまう前に投入することにした。「こっちもね、転送実験でミスを犯したことはわかってるんだ。イコライザーとインパルス変調フィールド、だっけ? ほら、ぼくらが情報通なことはわかっただろ? でも、あんたたちが正直に話してくれれば、こっちとしても助けやすいんだけどなあ(3)
 このブラフは効いた。はじめてラール人の顔に驚愕らしきものが浮かんだのだ。バーリル=トルンが、
「さよう。諸君が見落としたのはイコライザー。知っていながら、なぜそんなことに?(4)
いんや、いま善意を証明するために話すのは、こっちじゃなくて、そっち。(5)ひょっとして、ぼくの考え、まだわかってくれてない? ここから脱出したあと、ぼかァローダンにこう報告したいんだ。捕虜にしたラール人科学者二名は実に協力的でぼくらを助けてくれたよ、って。あんたたちの側にとっても、多大な貢献とみなされるんじゃない?」
 しばしの思案の後、バーリル=トルンが口を開いた。
「テラナーとの共同作業は、ずっとわれわれの望むところだった。だが、きみはテラナーではないな」
 グッキーはため息をついた。
「いいかげん聞きあきたセリフだね。もちろんぼかァ、テラナーじゃないけど、その一員なんだ。外見で判断しちゃダメだよ、バーリル! それで、転送機の誘導コンタクトがどうしたって?」にんまりと笑って、「ぼくが事情通だってことの、最後の証明さ。さ、いいかげん技術的問題についてしゃべっちゃってよ。ぼくが報告書でふたりのことをポジティヴに書けるようにさ。それに、あんまりためらってると、ぼくら全員おだぶつだよ」
 キラン・ベイ博士は、グッキーがテレパシーによってラール人から引き出した概念に気づいていたが、まだ確固たる手がかりをつかんではいなかった。失敗した転送実験にまつわる事実関係のいくばくかを予感してはいたものの、あまりに漠然としすぎている。
 バーリル=トルンが説明しかけたとき、司令室のドアが開いて若い科学者がとびこんできた。格納庫で超重族に対処していた男だ。手には銃身のほとんどない軽インパルス銃をにぎりしめている。(6)
 居ならぶ人々の驚愕した顔に気づくと、銃をおろして、
「エネルギーが尽きてしまって、あやうく巨人どものひとりに殺されるところでした。(7)間一髪で逃げだしたのですが、やつ、きっと追いかけてくるにちがいありません……」
「どうして替えの銃を持ってもどらないの?」と、ナラが鋭くたずねた。
「そんな時間なかったんです、艦長! いまにもここにやってくるはずで……」
 グッキーはすでに、急速に司令室に接近しつつある超重族の思考をとらえていた。自分をこんな状況に追い込んだラール人二名を殺すつもりだ。しかし、いまのグッキーにはわかっていたが、このふたりこそ、かれらを確実な死から救い出せる唯一の存在でもあるのだ。(8)
 超重族が司令室にあらわれるより早く、テレキネシスでつかみかかった。迅速かつ断固たる行動以外、手段がみつからなかったがゆえの、苦渋の決断である。(9)
 通路で、何か重たいものが床に落ちる音がした。だれかが咳きこみ、くぐもった叫び声がして――静寂が訪れた。
 ナラと若い科学者がドアへと走り、外をのぞき込む。戻ってきたふたりは顔面蒼白になっていた。
「超重族が……」科学者はつかえがちに、「あれは、わたしを追ってきたやつです。通路に倒れて――死んでいる……」
 ナラがグッキーに目で問いかける。ネズミ=ビーバーはうなずいた。
「きっと心臓発作だよ」と、つぶやくように言っただけ。
 無言のまま、ナラは制御卓のシートに戻った。
 キラン・ベイがラール人たちに向きなおって、
「それで、なにがまちがいだったんだ?」
 今回、バーリル=トルンを妨げるものはいなかった。
「諸君は転送機コンタクト間におけるインパルス変調フィールド内のイコライザーを見落とした――それがすべてだ」グッキーに視線をむけて、「満足かね?」
 もしこの瞬間、グッキーが途方にくれたとしても、それは表にはあらわれなかった。(10)おおまかな同意をしめすキラン・ベイの視線をうけて、
「うん、充分だ。あんがと、バーリル=トルン。これから、ミスを修正してみる。手遅れでなきゃいいんだけど」
「おそらく大丈夫だろう」と、ラール人。「試験機体は超光速エンジンを搭載しているわけだし」(11)
 最後の指摘に、キラン・ベイの顔が目に見えて明るくなった。口に出せずにいた質問の回答を得たとでもいうように。ネズミ=ビーバーの腕をとると、ナラ・マリノワたちのもとへもどる。
「問題は解決した、と思う。捕虜はどこかのキャビンに軟禁した方がいいかもしれない。それでもまだ、われわれが五里霧中にいることを知られるわけにはいかないから」
 いまやテンダーのサイズは通常の五倍だった。司令室も広大な部屋と化していたが、制御機器は拡大されていなかった。なんとも説明のつかない現象だ。
 ラール人二名を巨大化したキャビンに収容した後、ナラが首席科学者にたずねた。
「超光速エンジンといっていたけど、カルプ・コンヴァーターのことかしら?」
「ほぼ確実に。おそらく、カルプを起動することで送り出しフィールド内のインパルス変調が促され、いわゆるイコライザーが機能しはじめるんだ。(12)これまでは、五次元エネルギー場の交点が正確に計算されていれば、送り出し効果は自動的に生ずるとされてきた。その点を、フィオラ博士とツルボシェヴスキー教授は見落としたにちがいない。ふたりの指示は矛盾してるし、混乱してる。まだ修正が可能か否かはさておいて、われわれ、やってみるしかない」
「言いたいことはわかったわ」と、ナラがやや不安げに、「危険ファクターはどのくらい?」
「非常に大きい。だが、いまの絶望的状況ではさして意味がない。やってみるべきだ。問題は、コンヴァーターがまだ機能するかだが」
「テンダーが周回軌道をはずれてしまわない?」(13)
「カルプは空転させるんだ、ナラ。推力を生みだす必要はなくて、余剰五次元エネルギーを送り出しフィールドにまわすんだよ」
「どうして? あの大食らい(14)にはすでに超空間からじゅうぶんなエネルギーが送り込まれているはずよ。それに比べれば、カルプが生成するエネルギーなんて微々たるものじゃない?」
 キラン・ベイは肩をすくめた。
「わからないんだ! すべてが一見非論理的で、ノーマルな悟性では理解できそうにない。ある推論は別のと矛盾するし、ひとつの主張は前のとまるでちがって聞こえる。だから、わたしに説明を求めないでくれ、ナラ。わたしには無理だ」
「ぼくもだ」と、グッキーが白状して、ダライモク・ロルヴィクにバトンタッチした。「あんたなら、いけるんじゃない?」(15)
「わたしはノーマルであるからして、無理」巨漢はそういうと、周囲を見まわした。座る場所をさがしたのだが、あいにく椅子は拡大されていなかった。(16)「いいかげん、何か食えるものをもらえんかね」
「あの御仁、考えることといったら食べることばかり!」(17)ヘルタ・ドレンと小声で言葉をかわしていたイルミナが断言した。「わたしは空腹なんて感じないわ!」
 ナラが何かを言いかけたとき、だれも予期していないことが起こった。(18)
 ソルと白色矮星の強い重力場が超空間から流れこむ膨大なエネルギーと結びつき、依然有効なアンティテンポラル干満フィールドとの関係上“時間反動”とでもいうしかない効果が生じたのだ。
 それは人それぞれに異なる作用をおよぼし、四人のミュータントと十五名のテンダー要員は、数百万分の一秒のうちに散り散りとなった……。

2400話公式サイト

8月17日に発売される2400話。その宣伝用の専用サイトが公開されている。
7月5日現在、タイトルと表紙イラストが公開中。著者は予定どおりロベルト・フェルトホフ。タイトルは……『目標時間(Zielzeit)』(仮)である。

なんとなく、コンビトランス艦隊がハンガイにたどりつく話だろうかと予想していたのだが、どうもそちらは2399話の担当になりそうな感じ。2400話は、カロン星団で実験中の〈文脈改竄機〉からの派生っぽい。
テラノヴァ・サイクルはその大半をテラ防衛に費やしてしまったので、そろそろドラスティックな進展が望まれるのだが、なんだか斜め上な展開が待っていそうな悪寒(笑)

■www.pr2400.de (リンク切れ)

テラのカウントダウン -15-

今回は、ちょっとつまんない数のお話。
アポル・デトロイヤー少尉はシガ人で、100人の特別コマンドを率いている。総勢100名である。ここ重要。

■252p

ハヤカワ版:
 部隊は四人ひと組で、同数のプラズマ容器を携行することにした。デトロイヤーが先頭に立ち、地下深くに通じるパイプを降りはじめる。

原文:
Daran mußte Detroyer denken, als er mit einer Gruppe von vier Mann und ebenso vielen Plasmabehältern einen senkrecht in die Teife führenden Belüftungsschaft hinunterschwebte.

試訳:
 それぞれがプラズマ容器を携えた部下四名のグループといっしょに地下深くへ通じる空調シャフトを降下しながら、デトロイヤーはそのことを思いかえさずにはいられなかった。

#前の段落のワリンジャーによる解説は、実は過去完了形。「ワリンジャー教授は~と説明したものである。」くらいが適当かと。レクチャーが終わって作戦はすでにはじまっている。

■254p

ハヤカワ版:
 四名ひと組で二十グループにわかれた部隊は、こうしたセクションをたどって、問題のプラズマ容器に到達することになっていた。かなりの遠まわりになるが、この際しかたない。

原文:
So kam es, daß sich Detroyers Einsatzgruppe, in zwanzig Gruppen unterteilt, auf Umwegen zu dem Zentralplasma durchschlagen müßte, das Nathens Bio-Gehirn darstellte.

試訳:
 したがって、二十のグループにわかれたデトロイヤーの部隊は、ネーサンの生体脳である中央プラズマまでかなりの迂回路をたどらなければならないということ。

#前の段落も、「エネルギー供給を絶たれたセクションを優先的に利用することになっている。病んだプラズマがコントロールしている場所はなるべく避けたい。」である。
#ところで、「四人ひと組」という原語はないわけだが、デトロイヤーたちは何名で行動していただろう?

■255p

ハヤカワ版:
 部隊はさらにパイプ網を進み、ようやく目標に到達した。先頭は三グループ、十二名からなる。

原文:
Detroyer legte Kilometer um Kilometer im Röhrensystem zurück – dann war er endlich am Ziel. Drei Einsatzgruppen von zusammen fünfzehn Mann waren schon vor ihm eingetroffen.

試訳:
 デトロイヤーは通風管内を一キロまた一キロとこなし――ようやく目標に到達した。すでに三グループ、総勢十五名が先着していた。

#最初にまちがえた数字にこだわって、「15人」と明記されているのに3名どこかへやってしまったわけだ。
#余談だが、次の段落は、先着した3グループがすでに仕事にとりかかっていた様子を描写している。これも過去完了形の文章。

冒頭で「100人の特別コマンド」と描写されている。100人を20で割れば、1グループあたり5名のはず。4×20=80で、20名の消息が不明なのを、伏線とでも解釈したのだろうか。少なくとも「3グループ15名」と出てきたあたりで、過去をふりかえってみれば答えはわかりそうなものである。
……お願いだから、数と格と時制くらいは、ちゃんと訳しておくんなまし。

以下、余録。

■260p

ハヤカワ版:
全太陽系人類がローダンの計画に賛成するまで、もう長くはかからないだろう。実際、過激派政党の反政府プロパガンダはすっかり下火になっていた。

原文:
Noch waren lange nicht alle mit seine Fluchtplänen einverstanden; ja, die Opposition forcierte ihre Hetzkampagne gegen ihn mehr als je zuvor.

試訳:
皆がかれの逃走計画に賛同してくれたなどとは、まだとうてい言えない。実際、野党の反政府キャンペーンの勢いはかつてないほどだ。

#次の段落、原文は aber ではじまる。反対は根強いけれど……である。接続詞まで読めないとは、思いたくないのだが?