ラスヴィッツ賞、ドイツSF大賞2009ノミネート作

Phantastik-Newsによると、クルト・ラスヴィッツ賞2009年のノミネート作品が発表された。前年に発表された作品が対象となり、5/31までに投票が行われ(投票権を持つのは作家、編集者、ジャーナリスト等プロの人々)、6月に受賞作が公表される。

長編部門:
Dietmar Dath / Die Abschaffung der Arten / 種の廃絶
Heidrun Jänchen / Simon Goldsteins Geburtstagsparty
/ シモン・ゴルトシュタインの誕生パーティ
Christian Kracht / Ich werde hier sein im Sonnenschein und im Schatten
/ わたしはここ、陽光の中、陰の中に
Siegfried Langer / Alles bleibt anders / すべてちがったまま
Armin Rößler / Argona / アルゴナ (三部作最終巻)

短編部門:
Nadine Boos / Omajova / オマジョヴァ
Nadine Boos / Photosolaris / フォトソラリス
Andreas Eschbach / Survival-Training / サヴァイヴァル訓練
Matthias Falke / Harey / ハーレー
Frank Hebben / Côte Noir / コート・ノワール(黒海岸)
Helmut Hirsch / Rückkehr nach Nomori / ノモリへの帰還
Desireé und Frank Hoese / Eine Studie in Null und Eins / 0と1の研究
Heidrun Jänchen / Ein Geschäft wie jedes andere / ごくありふれた商売
Karla Schmidt / Weg mit Stella Maris / 去れ、海の星よ

その他、ラジオドラマやイラスト、翻訳等、全部で8部門。詳細はd-infoあたりで。

また、ドイツSF大賞(DSFP)のサイトでもノミネート作品が掲載されている。こちらの選考委員はドイツSFクラブ(SFCD)のメンバーで、発表も6/6のSFCD年次大会で行われる。

長編部門:
Dirk C. Fleck / Das Tahiti-Projekt / タヒチ計画
Heidrun Jänchen / Simon Goldsteins Geburtstagsparty
/ シモン・ゴルトシュタインの誕生パーティ

短編部門:
Matthias Falke / Harey / ハーレー
Frank Hebben / Côte Noir / コート・ノワール
Frank Hebben / Imperium Germanicum / インペリウム・ゲルマニクム
Desireé und Frank Hoese / Eine Studie in Null und Eins / 0と1の研究
Elisabeth Meister / Die Andere / 異なるものたち
Uwe Post / Noware / ノーウェア
Karla Schmidt / Weg mit Stella Maris / 去れ、海の星よ

こちらも詳細はd-infoあたりで(笑)
ここ数年、短編部門に必ずからんできた、Shayol社のアンソロジーVisionシリーズが昨年は刊行されていないので、ちょっと寂しいかも。

そしてシリーズは続く……

ふとバスタイのサイトを覗いてみたところ、話数がえらく進行していた。

John Sinclair
1600. Jason Dark / Willkommen im Hades / ハーデスへようこそ
(2009/03/10刊行)

Professor Zamorra:
900. Volker Krämer / Der Magier / 魔術師
(2008/11/25刊行)

手元のファイルを見ると、シンクレアのタイトルはちょうど3年前から更新していなかった。ジョン・シンクレア(rlmdi.での通称は「じょんじょん」)は、だいぶ以前のd-infoでも紹介しているが、スコットランドヤードの心霊捜査官(をひ)である主人公シンクレアが幽霊妖魔悪魔吸血鬼ゾンビーエトセトラの引き起こす事件を解決する……と書くとすっごくおもしろくなさそうであるが、とにかく週刊で延々とつづいてるホラー・シリーズなんである。
Sinclairの語源は「光り輝くもの」ないし「聖別されしもの」で、実際シリーズの進行につれ、ジョンは「光の子」の転生の最後のひとりであるとかいう設定がついてくるが、バスタイ社の紹介を見ているかぎり、たいていのお話はそこまでビッグな設定とは関係なさそうなもの(たまにギャグとしか思えないタイトルも)が続いている。
にしても、作者Jason Darkはたったひとりで、週刊1600話突破である。これ以外にも薄手のペーパーバック版も毎月出ているわけで……某豹頭なシリーズの作者よりも筆が早いんではなかろーか。

一方のザモラ教授。隔週刊行のやや厚手、平綴じのヘフト・シリーズで、ドイツ版Wikipediaによるとダーク・ファンタジーにジャンル分けされるが、多分にSF要素も含まれている。悪魔や魔法使いの他に、舞台は宇宙や過去・未来にまで広がりを見せる。
実は今回、バックナンバーを調べようとして驚いた。シリーズの中興の祖とも言える作家ヴェルナー・クルト・ギーザ(Werner Kurt Giesa)が昨年2月に亡くなっていたのだ。
1977年から携わっていた……というか、元々共同ペンネームのロベルト・ラモント名義の複数作家制だったザモラを、400話前後から10年近く、ただひとりで背負って立っていた(現時点でシリーズの1/3はかれの手になる)ギーザだが、2003年に事故のため瀕死の重傷を負い、長期の入院生活を余儀なくされたうえ後遺症に悩まされたことから、もっぱら草案作業に専心(2007年末まで)せざるを得なくなった。また、編集その他でいわば共同製作者でもあった妻が2005年に亡くなったことも執筆意欲の減退に拍車をかけたらしい。
ギーザの作品はこれまで邦訳は存在しない。その大半がヘフト小説であるからいたしかたないのだが、ローダン惑星小説に作品があったり、ファンタジー小説MYTHORの後期プロット作家であったり、クルト・ブラント没後に再評価されたレン・ダークの新シリーズで執筆していたり、過去d-infoで紹介した「PS-ジム」「トラッカー・キング」にも参加しているなど、活躍の場は多岐にわたっている。
享年53歳。その早逝が惜しまれる。いつか機会をみつけて、かれの業績を再確認してみたい。

■Bastei社のホラー作品ページ

※3/14 ギーザの健康問題につき訂正。複数のサイトで「罹病(erkranken)」という表現が用いられているが、ギーザ自身の叙述によると「失血が多すぎて死にかけた」というから、事故が主たる原因と推察した。

358巻『異次元からの災厄』

ハヤカワ版358巻『異次元からの災厄』である。著者は前半「《ソル》での戦い」がエーヴェルス、後半「異次元からの災厄」がダールトン。訳者は天沼春樹氏。

前話「《ソル》の子供たち」からひきつづき、セネカを取り込んだケロスカーの策謀で、《ソル》乗員たちが麻痺させられ、外部探索に出ていたローダンたちや、《ブレシア》ごとケロスカーにこきつかわれるジョスカン・ヘルムートらが打開策をもとめて悪戦苦闘する。
ってーか、前回のタイトルロールだったエムラディン兄弟だが、実に活躍しない……エーヴェルス・キャラなんでとんでもないパワーの持ち主なのは毎度のことだが、あまりに幼く設定しすぎて動かしきれなかったか。

後半は、ケロスカーが《ソル》を運送トラック代わりにバラインダガルから運び出そうとしている「七次元数学の粋」たるセタンマルクトに肉薄する。ボルガール星系外縁部に置かれた巨大な構造物はいったい何で、それをどうすることがケロスカーの考えなのか。囚われたデイトンたちはどうなるのか……。
正直、ケロスカー編がこーんな話だとは予想だにしていなかった。踊る七次元数学者種族とかどんだけー(笑) なうえに、人の話聞く耳ありゃせんがな。そして次巻は、もう『バラインダガル銀河の最期』なんである。

さて、今回のいちゃもん(をひ)は、とりあえず「セタンマルクト」。原語はShetanmargt――どう見ても「シェタンマルクト」である。トリトレーアの時といい、絶対その発音だけはありえねー!(´д`)ウボアー ドイツだってシェイクスピアをセクスピーアとか読まんじゃろー。7次元がらみのセプティムとかと音をそろえたかったのかもしらんが、何の根拠もないのにいじると、後で苦労するぞ? まあ今回のコレは800話あたりまでだから苦労せんかもだけど。
あと、まだ原書を発掘していないので、詳細はまたにするが、「針金ボックス」。何やそれ。Dr.メフィストかい(笑) まさかとは思うけど、原語Blechkastenだったりしないよね?
#だったらセネカを意味する「ブリキ箱」なのだが。