続・アルコン人は大統領!?

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というわけ(承前)で、その後、手元にある原書から700話台を発掘してみた。5、6冊しかないうえ、大半はアラスカ関係だったのだが……722話「オヴァロンへのメッセージ」があった。プロローグ部分で、アトランがおもいっきし、「人類新帝国の Lordverwalter」と名乗ってるなっ?!

この単語を「大行政官」と訳したのなら、まァ納得。Verwalter は「管理人」だし、Administrator とほぼ同義だし。
#前回も書いたけど、Administrator はローダンにおいては「執政官」である。

気になるのは、Perrypediaでみつけてしまった、Prätendent の項の「単発の事例として Lordverwalter もある」という但し書き……(汗)
上記722話でも、実際にこの単語なのは、アトランのセリフ中の2回のみ。あとは Atlan の置き換えなんである。
#以前にも言ったとおり、この手法自体は否定していない。

単発なのか、極初期型の単語なのか。これは初出の巻をさがすしか手はないしなァ。
あと、個人的には、この場合の Verwalter って、「管財人」なんじゃーねーかという気もするのだ。いや、それは Prätendent の意味にひきずられてるだろという反論は認めるともさっ(笑)
#そもそも administrator 自体にも、管財人の意味はあるしなー。

ま、あれだ。とりあえずの調査報告ということで、ひとつ。

夜の闇と矇昧の昏闇

Spezialisten der Nacht / 闇のスペシャリスト

どうでもいいことと、どうでもよくないことが、世の中には確かにある。んで、どうでもいいことを極めるのは、それはそれで才能だと思うが、中途半端はよろしくない。というか、どうでもよくないことをよろしくしてくれてからに願いたい、いやホント。
以下は、「どうでもいいこと」の最たるものなわけで。だから、覚書。

ツグマーコン人ガルコン・エルヨグが培養した合成生命体〈闇のスペシャリスト〉。原語のNachtが、主として「夜」を意味することは、多少ドイツ語をかじった人ならすぐわかる。モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は「小夜曲」と訳されるから、音楽関係の人も知っていそう。

そして、「夜の~」と冠された単語が、なんとなくいかがわしく失笑のタネになるのも、たいていの日本人なら理解できるだろう。いや、「夜の大執政官」は吹いたともさ(笑)
実際、rlmdi.のタイトル・リストでも、失笑を避けんがために「闇のスペシャリスト」とした。10年ちょっと昔の話だろうか。夜=ブラックホール=闇、という考えもまったく同じ。

しかし、今ならば、同じ「闇」でも、内在する意味はまったくちがう、と言うところだ。
Nacht の持つ意味合いは非常に広い。夜、闇、黒……はもちろん、比喩的に、醜悪さ、野蛮、深淵、冥府・地獄、死、罪業、秘密・神秘、無明――と、実に多種多彩である。共通するのは、やはり暗い(昏い)イメージであろう。無明の闇、無知蒙昧の闇だ。
ただ、なんとなく、啓かれるべき、駆逐されるべき「闇」の中でも、神秘――という単語は、一種宗教めいたガルコン・エルヨグとその“子どもたち”の一団に似つかわしい意味といえよう。種族を救う秘密の知識を、かれらは共有しているのだ。
#ま、秘密というよか、理解が得られなかったようだが……。

フォルツやフランシスが当時どういう構想で、かれらを Spezialisten der Nacht と名づけたのかはわからない。しかし、個人的には、1000話へむけて、ややオカルトめいたバックボーンが構築されていく過程で、そうした命名もありえないことではない、と思われる。

――とはいえ、こんなことは、すべてどうでもいい話なのだ。
どれだけぐるぐる回ったとしても、残った結果は、「闇のスペシャリスト」という訳語だけである。迂路をとって得た知見は、あとがき(ブログ)のネタ以上のものではない。
ここまで読んできて、「無駄なことに時間使ってんな~」と思わない人がいようか(反語表現)

というわけで、(以下略)щ(゚ロ゚щ

364巻『闇のスペシャリスト』雑感

で、やっと今月の新刊、364巻『闇のスペシャリスト』である。これまた先週には読了してたんだけど……まァ気力がうせたのは本編の内容とは関係ない。前後編とも、著者はH・G・フランシス、訳者は統括・五十嵐さん。

前半「闇のスペシャリスト」、後半「千年眠る者」を通して、闇のスペシャリスト・オルウの目から見た、ツグマーコン人と公会議発展の歴史が描かれる。ただし、スペシャリストの能力を利用することをもくろんだツグマーコン人の権力者によってオルウら12名は幽閉の憂き目をみるため、とてつもなく断片的である。
基本、ダッカル空間に転落した惑星グロジョッコから、新たな銀河への次元トンネルを開通させ、公会議を構成する種族を(オルウが望むと望まざるとにかかわらず)リクルートする場面の連続である。ずっとかれにつきまとう、謎のグリーンの顔のヴィジョン(ホントにマスティベックなのかなあ……)との闘い、ツグマーコン人の歴代独裁者の野望に対する静かなる反抗――

と、書くと聞こえはいいが、オルウたち、ただひたすら流されていくだけである(爆)
いまは何もできないが、そのうち、そのうち……と言いながら、実際に対策を講じたようすがまるで見られない。かれら12名を培養したガルコン・エルヨグは優秀な科学者だったようだが、根本的に育て方を誤ったようだ。

※以下、重度のネタバレを含むため要注意(^-^)b

そもそも、かれら12体は、コルトン人が最終的に公会議を支配するため、エルヨグをひそかに感化して創らせたというが、この性向じゃ、本来の目的にそった使用にたえないことはなはだしい。いいのか、フォイロクロン、こんなんで(笑)
さらに余談として、スペシャリストの名前は、Wが含まれると男性、Yが含まれると女性で、これはコルトン人の元首の称号“ウィ(WY)”を分割したという設定もあるらしいが、翻訳、考慮してなさそうだな……。

ともあれ、次元トンネルをあやつる技術をもつオルウを友にしたことで、期せずしてダッカル次元バルーンに漂着した《ソル》の人々にとっては、脱出への道が大きく開けたかに見える。だが、この空間を支配するのは公会議の実質的支配者ツグマーコン人で、かれらの手中にはまだ残り12名のスペシャリストたちが囚われている。
そもそも、1人仲間にしただけで満足するローダンでもあるまいw 次回以降の展開は、読者としてもなんとなく予想がつくというものである。発進ごーっ。

ATLAN: 地獄惑星、刊行近づく

ファンプロから刊行中のATLANポケットブック・シリーズは、8月に出た『彼岸への跳躍』をもって、モノリス・サイクルが完結。次なるサイクル〈地獄惑星(Höllenwelt)〉が、10月からスタートする。ただ、一部情報だと11月とゆー説もあるヾ(^-^;

公式のニュースでは、すでに8月初頭に告知があったのだが、これまで内容についての情報がさっぱりだった。それが、先日ファンプロのサイトが大幅リニューアルして、従来シャドウランとバトルテックしかクローズアップされていなかったのが、トップページからATLANおよびATLAN-Xの紹介ページへ行けるようになった。のぞきにいったら、1巻の紹介文もあがっていた、という次第。
〈地獄惑星〉は三部作を予定しており、草案はモノリス・サイクルに引き続いてゲッツ・ロデラー(Götz Roderer)が担当。第1巻『レーンの招き(Rhaens Ruf)』をリュディガー・シェーファーが、第2巻(タイトル未詳)をアキム・メーナートが執筆する。最終巻の担当作家は現状不明で、通常ならプロット作家のロデラーが書くはずだが、この人、モノリスでも1巻も執筆していないのだ。ここは続報待ちである。

時は西暦3113年――モノリス事件解決から1年――、外交ミッションに従事していたアトランのもとに、かつての恋人、レーン・トルソムからの招待が届く。疫病のため隔離されている彼女の故郷惑星レッドアイで、異常事態が進行中だという――駆けつけたアトランを、暗殺者が強襲する!
レッドアイの闇でうごめく勢力は何を企むのか。無害に見える解放運動〈リブラ〉の正体は? そして、人間の脳の断片を宿した奇怪なロボットは、いかなる役割を担っているのか……。〈地獄惑星〉をめぐる謎は、いやますばかりだった――。
と、まあ、ちょっとおもしろそうな出だしではある。正直、モノリスの方が全然追いついてない状況なので(笑)、どこまで紹介できるかは不明だが、姉妹シリーズの方も、ぜひがんばってもらいたいものだ。

■公式News:ATLAN bei Fantasy Productions (リンク切れ)
■FanPro:Höllenwelt 1 Rhaens Ruf (リンク切れ)

アルコン人は大統領!?

Prätendent / 【試訳】“継承者”、嗣執政官

アフィリー・サイクル、銀河系編の各話を読みつつ、ずっと気になっていること――。
それが、新アインシュタイン帝国における、アルコン人アトランの役職だったりする。

大行政官、という訳語がどこからきたのか。それ自体が、手元に原書のない現状だと確認できないのだが。推測されるのは、Regierungschef からきたという説。でも、これ、役職名じゃなくて、政府首班の意味だで?
ともあれ、NEIの元首は Prätendent と呼ばれるわけだが、辞書をひくと、「1. 要求者、請求者 2. 王位継承要求者」とある。第×位王位継承者とか、そのへん。または、継承権を有し且つ王位に就くことを要求している者、と書くとこんがらがってくるけれど(笑) ヴァターシこそは正当な王位継承者~みたいなノリと考えるといいのかも。

そこで、アトランの場合に当てはめてみると:
最初考えたのが、銀河系の解放(自由)を要求する者。しかし、描写を拾っていくと、「NEIが太陽系帝国の正当な後継国家である」ことを強く主張する政体であるので、「(テラを)継承する者」と読むのが正しいと思われる。そのあたりの文意を反映させると、上記のような試訳になる。

この原語、日本ファンダムでは長らく President と誤解されていた。わたしも大統領だと思ってたし。まぁ、まちがってたら正せばよいわけで。Yes, we can!(爆)

9/24 追記:
英語のpretenderは、確かにあんまりいい意味なさそう。「王位請求者(不当な)」ってついちゃうし、身元詐称者だしね(笑) でも個人的にはクリッシー・ハインド姐御の堂々たるイメージがあるので、まいっかと。
また、邦訳の出始めの頃、先読みの先達が、Großadministrator を「大行政官」と訳してたこともありましたなァ。

363巻『ギャラクティカーの同盟』について

もはや先月分のやり残しではあるのだが、363巻『ギャラクティカーの同盟』について。著者は、前半「ギャラクティカーの同盟」がクナイフェル、後半「ダッカル・ゾーンにて」がフォルツ。訳者は渡辺広佐さん。

まず、前半はアフィリー・サイクル前半の転回点(一応)、ガフェク(あァ、銀尊連とかになるのか?コレ)の成立である。で、あるが……なんというか、かなり投げっぱなしな感は否めない。誰も彼もが「ハルト人がくるまで議決は先送りだぁ」って、そんならまず、確実にハルト人を呼ぶための工作エピソードがないとまずいだろ、アトラン閣下。
あとは、アンティ使節パアルノクの顛末、知ってはいたが、やっぱり後味悪いわ。ヴラトも実に都合よく使われてるし、これじゃ、ホントに銀河諸種族がひとつになったとは、とうてい言えまい。もともと、主立った種族、というメンツが、かなり限定的というか、一部をのぞきテラナー友好票が幅利かせすぎなのは、機密保持の観点もあれ、どーなのよ。
そういえば、ラール人が銀河を征服して、これまで未知の星間帝国とか出てこないのは、わりと不思議。大群のときの“秘密帝国”で、銀河系文明種族は弾切れということなのだろうか。
#まぁ、1500話のリング人の例もあるけどね

後半はバラインダガル崩壊にまきこまれた《ソル》のローダンたちに場面転換。
ダッカル空間に吐き出された亜鈴船は、次元風船(……)内部を支配するツグマーコン人と遭遇。かれらこそは公会議の実質的支配種族であり、コンタクトの際のトラブルから、グッキーたちコマンドは、厳重に秘匿された“闇のスペシャリスト”オルウの眠る霊廟を発見し、状況打開のため、めざめた隠者を“誘拐”することに――。
と、書くとすごそうだが、ツグマーコン人が強力な科学力をもつすンごい種族なのか、実はそれほど大したことない連中なのか、いまいち見極めがつかないせいで、そこはかとないgdgd感ただようストーリーになっている。まあ、たった1話で敵との遭遇から弱点鷲摑みまでいっちゃってるので、シリーズ的にはちょっぱやな展開なことはまちがいない。

個人的には、“扇”関連の描写がわかりづらくて気になるのだが――というか、これまで流布しているドイツの二次資料の描写とちがいすぎるので――、このへんの原書は大半が実家に置きっぱなしなので、次に帰省・回収してきたらまた検証してみたい。

以下、ちょっと話はちがうが、依光先生のご体調はいかがなのだろう。都合により休載がこれだけ続くと、心配な一方で、ハ●ター×ハン■ーじゃないんだから、ハヤカワそろそろなんとかせいという気持ちがふつふつと。ハヤカワ・デザインというと社内に制作スタッフがいると思われるが、コラージュで表紙つくって、サインだけ依光先生ってェ形式は、いいかげん限界ではないのか。
実際、表紙はイメージ先行でなんとかなっても、一場面を描写する口絵などは、正直ひどいものだ。それぐらいなら、挿画だけでなく口絵も廃止して、その分、値段下げろと思うのは、ぶっちゃけすぎだろうか。

脱退:ホルスト・ホフマン

また、悲しいお知らせである。チームの現役最古参作家である、ホルスト・ホフマンがシリーズから退くことを発表した。ホーホー、おまえもかー!?

ホルスト・ホフマン(Horst Hoffmann 通称HoHo)は1950年生まれ。アトラン・シリーズや、メーヴィヒ社が当時出していたファンタジー・ヘフト『ミュトール(MYTHOR)』への執筆を経て、1982年刊行の1076話『ポルライターの道』からローダン本編に参加。
ただし、この最初の参加は、1111話『十一の力』(伝説的な楽屋ネタ話w)にていったん終了。草案作家ウィリアム・フォルツ没後、銀本の編集校訂や、ヘフトの読者ページ担当など、編集サイドにまわる(~1987年まで)。

その後、リング人サイクルからチームに復帰。年に5話~10話を書く、基幹作家のひとりとなる。
シリアスからユーモアまでなんでもいけるうえ、イラストや4コマ漫画まで披露する多芸な人であるが、個人的に印象に残っているのが、ユーモラスな作風である。当時の作家チーム全員をモチーフにした?1111話や、ローダン・ファンが宇宙船スターダスト号でローダンを探しに出発する短編「《スターダスト》の素晴らしき旅路」、イエスと答えてもノーと回答しても撃ってくるフラグメント船を前に窮したエクスプローラー船のたどる運命を描くギャグ連作「君らは本物の生命体か?」等々……。

PrivateCosmos20で、

「温和で引っ込み思案のトリム住民トリマーとの心あたたまる交流の物語」
「迷子の犬さがして」
「ロックコンサートして」
「かんどー」
「うまいんだなーコレが」

とあるコレも、ホフマンの担当だ(1913話……紹介の時事ネタ風化は度外視w)
「新しい世代に道を譲る時がきた」と、公式フォーラムにあげられたホフマンの訣別の辞は告げている。
ただ、これが編集部からの告知でないことや、知人を経由してスレッドが立てられているあたりに、少々きなくさいものを感じるのは自分だけだろうか。タイミング的には最悪だと思うのだが……。
そういえば、春の作家会議、ボビーの他にホフマンも、体調不良で欠席してたんだっけか。だ、大丈夫なんか?
#スレッドにはホフマン本人もレスをつけている。念のため。
ともあれ、これでシリーズから、またひとり、偉大な才能が去ることになった。130編を超えるローダン・ヘフトと、関連作品を多く残していくホーホーに、一ファンとして感謝したい。

ホフマンの著作で本邦に紹介されたものは、SFマガジン増刊に掲載された「ローダンx2」と、ファンジンに収録された「死者とのランデブー」がある。後者はアンドロメダ戦争終結後、島の王のトラップにはまったローダンの前に、死者たちのデュプロが次々と登場する。オーヴァヘッド、トマス・カーディフ、そして……。多少くさいオチは、やっぱり、うまいんだなーコレが(笑)

■公式Forum:Abschiedsmail von HoHo (リンク切れ)
■Perrypedia:Horst Hoffmann