ドイツ・ファンタスティーク大賞2009受賞作発表

10月17日、ラインラント=プファルツ州シュプレントリンゲンで開催された、ブーフメッセ・コン2009において、ドイツ・ファンタスティーク大賞の発表および授与式がおこなわれた。
主立った受賞作は、以下のとおり。
《ノミネート作品等はこちらの記事を参照のこと》

■ドイツ語圏小説部門 Bester deutschsprachiger Roman:
Markus Heitz / Das Schicksal der Zwerge / 侏儒の運命

■ドイツ語圏新人部門 Bester deutschsprachiger Roman:
Ju Honisch / Das Obsidianherz / 黒曜石の心臓

■ドイツ語圏短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:
Christian Endres / Feuerteufel / 炎の悪魔(『ディスターバニア』収録)

■海外小説部門 Bester internationaler Roman:
Patrick Rothfuss / Der Name des Windes / The Name of the Wind / 風の名前

■アンソロジー部門 Beste Original-Anthologie/Kurzgeschichten-Sammlung:
Christoph Marzi / Nimmermehr / もう二度と

■シリーズ部門 Beste Serie:
Perry Rhodan / ペリー・ローダン

アンソロジーについては、ノミネート関係のトラブルがあった『もう二度と』の受賞である。……まあ、それだけ得票が集まってたら、いまさらひっこみがつかなかったのもわかるというものだ。
なお、その他部門や、受賞作の詳細については、そのうち、いつか、例のでぃんふぉあたりで(笑)

■公式サイト:Deutscher Phantastik Preis
■関連サイト:Phantastik-news

ダッカル次元の鞭?( ̄∀ ̄)/~~~ピシピシ

Die Rute / 【仮訳】〈鞭〉

ダッカル次元バルーンにある、星座というか星団というか。現在、ハヤカワ版では“扇”と訳されているもの。
その原語はRuteといい、同義語は Peitsche……“鞭”のことである。過去接してきた先読み情報におけるそれと、訳語がぜんぜん一致してないので違和感ありまくりだったのだが。少し、調べてみた。

鞭、というと、ふつー連想するのは、以下のようなものだろう。

鞭1
《鞭》

ただし、鞭といっても、Rute の場合、打楽器であることが通例のようだ。

《Wikipedia「むち(楽器)」からの引用》

一般には、2枚の細長い木板の一端を蝶番で留め、それを閉じることによって鋭い音を発する。これをwhipとも呼ぶ。また、この構造のため、ドイツ語ではHolzklapperとも呼ぶ。
なお、日本語に「むち」と訳される楽器には、ドイツ語でRuteと呼ばれる楽器もある。これについてはルーテ参照のこと。

上記「むち(楽器)」は、こーんな感じ。

《むち(楽器)》

間のジャバラがないけれど、なんとなく扇に見えなくもない。たぶん、このへんのイメージから、“扇”という訳語が出てきた――んじゃないかな?(憶測)
ただ、扇という語からだと、しごく平面的なイメージがある。初登場の号である「ダッカル・ゾーンにて」の原書を参照してみないと確実なことはいえないが、そんな扇状地みたいなものとは、少々考えづらい。

ところで、上記引用には、Ruteについては「ルーテ」の項が立っていると書かれている。ちょっとそちらを見てみよう。

ルーテとは、柔らかい鞭の形をした楽器(打楽器)のことである。日本語に「むち」と訳されることが多いが、むちには別の楽器もあるので注意を要する。
(中略)
柔らかい1本の棒、もしくは細い棒や細い枝を束ねたものを、2個用意して打ち合わせる。または、1個で大太鼓のヘッド(皮)やリム(枠)を叩いて音を出す。

……別のモンなのかよっ(笑) なんともまぎらわしい話である。
で、Googleの画像検索でさがしてみた。正直、上記Wikiの「柔らかい鞭」という表現から、こんなものを想像していたのだけどw

鞭2
《一見柔らかそうな鞭》

実際には、なんだか茶筅か竹箒みたいな代物が出てきたり。
これを2つ互いにぶつけ合ったり、太鼓をたたいたりして、鞭のような効果音を出す、らしい。

ルー手
《ルーテ》

さて、ここで今度はPerrypediaのダッカル次元バルーンから引用してみよう。一応、仮訳である。

転移によって、恒星と惑星は全長およそ0.21光年の宙域にふりまかれ、ルーテに似ていなくもない星座を構築する。星の密度が最も凝集しているのは、〈ビロードの目〉の直近で、ルーテの握りに類似している。

上掲のルーテの写真でいうと、左上にブラックホールがあり、吐き出された星々が放射状に配置されていく……と考えるとわかりやすいかもしれない。個人的には、茶筅よりも「ドラゴン花火」と言ってしまった方が理解できる(爆)のだけれど。ドイツにドラゴン花火はないのかのぅ。

そんで結論としては、(ルーテ)でよかったんじゃーないのかなーと。思うんだけど……ハヤカワつーかローダンってこんなラノベやファンタジーめいた用法は避けてるっぽいしなー。

■Perrypedia: Dakkardimballon (Ruteの検索転送先)
■Wikipedia: むち(楽器)
■Wikipedia: ルーテ

365巻『ゼロ守護者』雑感

ハヤカワ版365巻『ゼロ守護者』である。著者は前半「ゼロ守護者」がエーヴェルス、後半「虚無への通廊」がフォルツ。訳者は嶋田洋一さん。
今月は、前後編通して、闇のスペシャリスト・プィ救出作戦をめぐる顛末である。

前半「ゼロ守護者」においては、ゼロ守護者ミトロンを中心に、プィを餌に異人たちを罠にかけようとするツグマーコン人サイドと、トラップの可能性を知りつつ惑星レイニスへと派遣された救出コマンドのグッキーらテラナー・サイドとでストーリーが進行する。メントロ・コスムが息子に説教するのを見たローダンが苦笑するあたりはご愛嬌。
表題でもある、ツグマーコン人の権力者、ゼロ守護者の皆さん。富裕層にすりすりして権力のバックアップをさせるのは、まあ、わからないではないんだけど。独裁……つーか寡頭専制国家だけに、その富を収奪して権力者自身が富裕化するんじゃないのかなあ。だいたい、後継に指名されるのって、もともと財力あるやつなわけだし。どんどん富が集中していきそうなものである。

また今回、分子変形能力者=MVが、いちおう訳文に出てきた。うーん。著者がエーヴェルスだし、ドルシュバー=ルウルスが外来生物であること、元々は1回しか変身できなかったことなど、それっぽい設定も出てきてはいるんだけど。ギュス・フォールベーラー(マタールやナポレオンの種族)とは別物じゃないかにゃあ。

後半は、ゼロ守護者後継候補ジャットンによってさらわれたプィを回収するため、ツグマーコン人はゼロ守護者サプーンの視点から策謀を練り、またテラナー側ではシェーデレーアを中心とした《マリアッチ》の面々が、グライコ人の銀河へ通じる次元トンネルへと突入を図る。しかし、その艦上ではイホ・トロトにとある異変が生じていた……。

さて、今回は原書がある(笑)のだが、一番の難物“扇”については別項に譲るとして。なんとゆーか、訳語の統一がしきれてないような感が否めない。Sextadim-Halbspur が、セクスタディム半シュプールだったり六次元半シュプールだったりはては同義の用語であるハイパーセクスタ半シュプールに置き換わっていたり……。ダッカルディムバロンを「ダッカル次元風船」としたのだから、「ダッカルディムの泡」とかやめようよ、わかりづらい。
#「ゼロ守護者センター」が「執政官庁舎」になってたりね……。せめて執政府庁舎か執政官公邸じゃね?

来年から月2回刊行という、某シリーズの頓挫をうけた僥倖が告知されたわけだが、正直、心配である。よけいなお世話ではあるけど、心配だよなぁ。
表紙イラストも、別のイラストレーターとかみつけるよりコラージュの方が楽チンだーとかいう結論に達しないことを祈るばかり。

とりあえず、来月は《ソル》のための特殊エンジン窃盗大作戦と――アフィリカー最大(というか唯一の)大物、トレヴォー・カサルの登場である。