“ピル”工場は巴蜀の地?

375巻の「成就の計画」を読みつつ、上海以外の中国地名がすべてカタカナ表記だったので、「これ、いったいどこのことやねん……」と、少々調べてみた。まさか、全部架空のものでもなかろう、と思ったのだ。

うん、中国語のドイツ語表記、ウェード式やらなにやら、予想外にめんどかった(笑)
そういえば、昔、ローダン作家もからんだ伝奇冒険小説「冒険者たち」のあらすじ調べてて、中国歴代皇帝の名称とかものすごかったっけ。
※5/2追加情報(ルビ)記載

アンチン (Anching)
 安徽アンホイ省・安慶アンチン
イーシェン (Ihsien)
 安徽省・? (読み及び漢字表記不明)
ヤン・ツェ川 (River Yang Tse)
 長江チャンチアン揚子江) ヤンツーチアン 
フアンシ (Huangshi)
 湖北フーベイ省・黄石市ホワンシー 
チアユ (Chiayü)
 ? (不明)
フン湖とトゥンティン湖 (Seekomplex des Hung und Tungting)
 湖南フーナン省・洞庭湖トンティンフー
セツアン (Szechwan)
 四川省スーチョワン
シチャン (Hsichang)
 四川省・西昌市シーチャン (涼山彝族自治州)


カッコ内はすべて原書での表記。GoogleやWikipediaでも、そのままではひっかからなかったりするものも。

基本的に上海が河口で、長江をさかのぼる方向に話が進んでいくようだ。
洞庭湖は、冠詞がひとつしかないことと、ウェード式が Tung-t’ing Hu なので、「湖」部分がなんらかの形でくっついたままなのでは、という憶測まじり。まあ、洞庭湖自体が東・西・南と大きく3つに分けられることもあって、複合体と読んでもさしつえないかなー、と。

ブリーが発見したピル製造工場は、四川省西部、西昌市北西100キロ余の山岳地帯にあったというから、三国志とかで有名な巴蜀の地だったりするのかなー、などと妄想をふくらませた。

余談:ラオ=シンの中央惑星フーバイ(Hubei)って、湖北省なのか……(笑)

“喉”ブラックホール疑惑

Black Hole / ブラックホール
Schwarzes Loch / ブラックホール

本家・無限架橋の掲示板をご覧のかたはご承知だろうが、375巻『ポスビの友』前半「成就の計画」(マール著)にて、星のメールストロームの特異点“喉”が、なんかしらんブラックホールということになった、らしい。寝耳に水だったので、今回の更新は「時間超越」をお休み(笑)して、かんたんに追跡調査をおこなってみたい。

んーと、まずは“喉(der Schlund)”とはなんぞや、から。Perrypediaの当該項目から、冒頭部分を:

“喉”は星のメールストローム中部、最も濃度の薄い部分に形成されたエネルギー乱流である。
有効範囲、直径240億キロメートルの巨大転送機であり、メールストロームとプローン=ナビル銀河境界の構造漏斗“対向喉”と結ばれている。

そして、一部読者を震撼させた、375巻・裏表紙の紹介文から抜粋:

地球がブラックホールにのみこまれる日が近づいた。(以下略)

テラとルナを含むメダイロン星系自体が、徐々に“喉”にひきよせられており、やがてそこに転落してしまう――という展開は、わりと前から進行中なのだが。はて、ブラックホールだったという設定は、はじめて聞いた。ちと、原文でなんと書いてあるか確認してみよう。

■20p

ハヤカワ版:
地球がブラックホールにのみこまれるより前に、人類は自滅への道を歩むと決めたかのようだ。
原文:
die Menschheit schien entschlossen, sich selbst den Untergang zu bereiten, noch bevor der Schlund ihren Planeten verschlang.

強調部分は、ブラックホールと、原文でそれに対応する部分。
まずは、“喉”がかれら(人類)の惑星をのみこむ前に……である。

■21p

ハヤカワ版:
早朝のこの時間、ブラックホールの活動はとくによく観察することができた。
原文:
Jetzt, in den frühen Morgenstunden, war die Aktivität des Schlundes besonders gut zu beobachten.

“喉”の活動……。

■22p

ハヤカワ版:
ブラックホールにきらめく鮮やかな閃光を浴びて、岸辺の道をやってくる。
原文:
Im Widerschein eines der bunten Blitze, die durch die Öffnung des Schlundes zuckten, erkannte Bull ein Gleitfahrzeug.

“喉”の開口部にひらめく閃光……。

■23p

ハヤカワ版:
ブラックホールにのみこまれる気のない人々が、ひそかにテラを去ってしまったから」
原文:
weil die Menschen den Sturz in den Schlund nicht mitmachen wollen und sich rechtzeitig abgesetzt haben.”

人々が“喉”への転落をともにすることを厭い、まにあううちに退去してしまった……

■42-43p

ハヤカワ版:
月や姉妹惑星ゴシュモス・キャッスルや恒星メダイロンもろとも、地球がブラックホールにのみこまれる日を。
原文:
das Datum (…), an dem die Erde zusammen mit dem Mond, ihrem Schwesterplaneten Goshmos-Castle und der Sonne Medaillon in den Schlund stürzen würde.

地球(と、その他諸々)が、“喉”に転落する日付……。

■47p

ハヤカワ版:
地球とともにブラックホールを通る気はないから。
原文:
Er beabsichtigte nicht, den Durchgang der Erde durch den Schlund mitzumachen.

地球の“喉”通過をともにする気はない……。

ハヤカワ版:
これで、テラがブラックホールにのみこまれる前に脱出できる。
原文:
Damit war gesichert, daß er die Erde rechtzeitig vor dem Eintritt in den Schlund verlassen konnte.

“喉”への突入前に地球を脱出……。

■53p

ハヤカワ版:
ブラックホールの稲妻に照らされた夜の森に、自分以外のだれかがいる。
原文:
er sei nicht alleine in der nächtlichen, vom bunten Zucken der Blitze des Schlundes erhellten Busch- und Waldlandschaft.

“喉”の電光の、色鮮やかなひらめきに……。

■72p

ハヤカワ版:
たとえ、われわれの惑星がブラックホールにのみこまれようとも」
原文:
auch nachdem unser Planet in den Schlund gestürzt ist.”

“喉”に墜落した後でも……。

■113p

ハヤカワ版:
あなたが“喉”と呼ぶブラックホールに、テラがのみこまれるとき」
原文:
Mit dem Sturz der Erde in das Gebilde, das Sie den Schlund nennen.”

あなたが“喉”と呼ぶ構造体に……。

■117p

ハヤカワ版:
あるいはメダイロン星系がハイパー空間をとおってブラックホールの方向に大きくジャンプするか。
原文:
oder das Medaillon-System hat durch den Hyperraum einen Riesensatz in Richtung des Schlundes gemacht.

“喉”の方向へ大ジャンプしたか……。
時制もちがっている。「向かってきたか、ジャンプしたか」は過去、「近日中に起きる」のは、“喉”への墜落である。わざわざ「墜落」を削除して、誤解を助長してどーするよ。

■118p

ハヤカワ版:
 人類の故郷惑星はブラックホールの入口のきわにあった。
原文:
Der Planet der Menschheit befand sich im inneren Einzugsbereich des Schlundes.

“喉”の吸引エリア内にあった……。

■120p

ハヤカワ版:
上海の夜景は輝いていたが、ブラックホールの深淵からあらわれる閃光の明るさとはくらべようもない。
原文:
In Shanghai brannten die Lichter, aber ihre Helligkeit war nichts im Vergleich mit den ewig zuckenden Blitzen, die aus der Tiefe des Schlundes hervorbrachten.

“喉”の深淵からあらわれる……。

ハヤカワ版:
休息をとってもらいたい……ブラックホールにのみこまれるのを待つことなく」
原文:
Sie haben die Ruhe verdient… nicht den Sturz in den Schlund.”

あなたにふさわしいのは休息だ……“喉”への墜落ではなく。

■123p

ハヤカワ版:
ブラックホール近くで頻繁にあらわれるハイパーエネルギーのひずみ効果の影響をうけたとすると、もっと最近の光景なのかもしれない。
原文:
oder auch, infolge hyperenergetischer Verzerrungseffekte, die in der Nähe des Schlundes häufig und mit großer Intensität auftraten, jüngeren Datums.

“喉”近傍にしばしば強くあらわれるハイパーエネルギー性の歪み効果……。

ハヤカワ版:
人類の故郷惑星はブラックホールにのみこまれていないということ。
原文:
hatte der Schlund die Heimat der Menschheit noch nicht verschlungen.

人類の故郷はまだ“喉”にのみこまれていない……。

――と、いうわけで。せっかくだから(笑)斜め読みしつつチェックした16ヵ所で、すべて原語は、ブラックホール「ではない」ことを確認した。まだ見落としがあるかもしれないが、サンプル数としては、どうも原語以外のところに原因がありそうだと判断しても、さしつかえなさそうだ。
となると、本来は原書を全文検索して、ブラックホールに相当する単語or描写が他にないかを確認しなくちゃならないわけだが……全文照合…したくねぇ(笑) つーか、関係ないとこでひっかかっちゃうんだよ、例えば「パートナー1:臨界点まで残された時間単位はごくわずか。最終段階を今すぐ開始しなければならない。パートナー2:準備は完了している。最終段階、開始。」だよなー、とか。

まあ、幸いというか、怪しい個所は発見しているのだ……1ヵ所だけなので、証拠としての効力には乏しいけど:

■21p

ハヤカワ版:
数ヵ月前には星空のまんなかに黒い穴が開いているだけだった。
原文:
Noch vor wenigen Monaten hatte er wie ein schwarzes Loch inmitten des Sternenteppichs gewirkt.

試訳
ほんの数ヵ月前には、星の絨毯のまんなかに開いた黒い穴のように見えたものだ。

これ、小文字だから、ブラックホールじゃなくて、単純に黒い穴、なんだけどね。
まさか、これだけで、“喉”=ブラックホールと判断した――なんてことは、ないよね? ないと思いたいよ?
照合に使用した原書は第3版、1987年印刷のもの。原書のページ数もつけようかと思ったけど、版が異なると役立たずになるかもしれないので、割愛した。

ペリー・ローダン/ジュピター

毎年、秋or年末から春にかけて刊行される、ローダンのHeyne版ペーパーバック・シリーズだが、次回の舞台は木星であるらしい。
※5/2追加情報記載。

SF-Infodienstの情報メールに掲載された、Heyne社の今冬の刊行予定リストによると、次のシリーズのタイトルは Perry Rhodan : Jupiter

『3000年にわたり人類は銀河を翔けめぐり、みずからの太陽系のことなど知りつくしたかに思われた。各惑星からの資源搾取も大車輪で進行中。だが、突如として、木星の致命的な大気が生命にめざめた――ソル星系の最期が迫る。この危機を救えるのは、ただひとり……』
〔同リストに掲載された紹介文〕

通常この時期の刊行だと、2550話あたりの内容と微妙にリンクしてたりするのだが、さて、どうだろう。現在、木星周回軌道にはポリポート駅《ガリレオ》があるのだが。
4/30追記:
土星だ、土星(笑) 2500話のタイトルじゃないか。

著者はWim Vandemaan / Hubert Haensel / Christian Montillon を予定。
刊行日時は、リストでは2011年2月としか書かれていないが、たとえば10月・12月・2月の隔月刊がいちばんありそうな話。まさか、3人分、いきなり合本では出さないと思う……けど……。

5/2追記:
公式Newsによると、Vandemaan草案による、作家3名の合作、ということらしい。同じストーリーを、おそらくそれぞれ別のキャラクターを主役に描く、ザッピング形式になるのだろうか。総900~1000pの大型ペーパーバック。
発売予定日は2011年1月10日(Amazon.deでは予約がはじまっている)。おそらく、今年年末には流通がはじまることになる。

■公式News:»Jupiter«-Paperback ist in Arbeit (リンク切れ)
SF-Fan.de (Info-Dienstの元サイト。上記記事も掲載されている)

時間超越 -10- part2

373巻後半「時間超越」、ごやてん悪魔の照合コーナーも、次でなんと20回w ほぼ隔日で掲載しているから、すでに1ヵ月をすぎていることが体感できてしまう、きょうこの頃……orz
今回は、ちょっと短め。10章の中に含まれる「ヴィジョン」だが、内容のちがいとかもあって、別立てにしたいためである。ちょうど今回分のラストに、分量多いのもあるしね。

駄々をこねたすえ、時間の井戸をテラ宛に調整させることをカリブソに承諾させた(?)、アラスカ・シェーデレーア。でも、なんだか人形使いの口ぶりがあやしい。不吉なものを感じつつ、巨石に囲まれた黒い穴をめざすのだが――

■247p

ハヤカワ版:
おそらく、テラナーよりもおちつきをとりもどすのが早いのだろう。
原文:
Schneller als der Terraner geglaubt hatte, war Callibso zu einem geregelten Leben übergegangen.

試訳:
テラナーが想像したより早く、カリブソは規則的な生活に移っていた。

思ったより早く立ちなおった、とやっちゃってもいいくらいだろうか。
als はこの場合、than なのは確かだが、比較しているのはそこじゃないだろ。

ハヤカワ版:
「ほんとうか?」人形使いは興味なさそうに、
原文:
“Wirklich?” Alaska hatte den Eindruck, daß der andere ihn belauerte.

試訳:
「ほんとうか?」そういう人形使いは、どこかこちらを窺うようだった。

やめときゃいいのになー、というのが、しつこいくらい表われているのだった。

■248p

ハヤカワ版:
「それとも、要求をひっこめるか?」小人がつづける。「好きにしていいのだぞ!」
「なぜ、いまさら?」
原文:
“Ist es möglich, daß due deinen Wunsch zurückziehst?” erkundigte sich Callibso. “Ich würde es dir raten!”
“Weshalb?” fragte Alaska schroff.

試訳:
「要求をひっこめるというのは、ありえないのか?」と、カリブソが探るように、「わたしならそう忠告する!」
「なぜ?」アラスカがけわしく訊ねる。

……そして、ついにぽろりと漏らしてしまう。
まあ、最初から「見たらがっかりする」と言われつづけているわけだから、いいかげんアラスカも怒るわな(笑)

ハヤカワ版:
地表全体を、災厄のオーラがおおっているような、名状しがたい不快感がある。
原文:
Das Unheil lastete wie eine Aura über der Oberfläche dieses Planeten.

試訳:
災いがオーラのように、この惑星の表面を覆いつくしている。

表面にのしかかっている、かな。まあ、これも超訳の部類。
バールのようなものをかまえて這いよってくるのだな、なにかがw

ハヤカワ版:
ない! そう叫びそうになるのをこらえて、踵を返し……また動きをとめる。
原文:
Nein! wollte der Maskenträger rufen und sich abwenden. Aber er blieb stehen und nickte energisch.

試訳:
ない! そう叫んで踵を返したい。だが、マスクの男はふみとどまり、力強くうなずいた。

またしても aber で接続されている文章を、変なところで切断している。
おかげで、決然とかまえるアラスカが、腹の決まらない挙動不審な男になってしまった。
おまけに現在、後ろむいたままだよ、このアラスカ(笑)

ハヤカワ版:
時間の井戸を操作しているのだ。どういう操作か、説明はない。
原文:
Alaska vermutete, daß der Zwerg auf diese Weise den Zeitbrunnen manipulierte, wenn er sich auch nicht vorstellen konnte, auf welche Weise das geschah.

試訳:
小人はそうやって時間の井戸を操作しているのだろうと、アラスカは推測した。もっとも、どういうしくみか想像もつかなかったが。

この文章も、アラスカ視点(笑)
Weise は多種多様な意味合いをもつが、この場合は、基本的に「方法、やり方」だろう。一文章の複数の節で、おなじ auf ~ Weise が使われていて悩ましいが、ここは同じ訳し方はしない方向で。最後の節は、「どんな方法で時間の井戸の操作が起こっているか」かと思われ。

■249p

ハヤカワ版:
 ついで、彫像の反対側に立つカリブソに視線を向け、
原文:
Er drehte sich auf die Seite und sah Callibso an, der abwartend dastand.

試訳:
 身体を横向きにして、傍観者のように佇立するカリブソを見やる。

彫像との位置関係は、どうだろう。だいたい合っている気はするが……。彫像とのあいだに立っていたら、カリブソ邪魔だろうしね(笑)
でも、アラスカ-彫像-カリブソ なのか、カリブソ-アラスカ-彫像 かは、実はわからないよね、この原文だと。

ハヤカワ版:
「きみを罠にかける必然性はないからな。
原文:
“Du brauchst es nicht zu tun.

試訳:
「きみにはそうする必要がない。

絶対のぞかなくちゃならないわけじゃない――と、まだ言うかカリブソ(笑)

■249-250p

ハヤカワ版:
 もう躊躇せず、次の瞬間、底知れない井戸の“水面”に顔をつっこむ。
 黒い鏡だ……一瞬、そう思った。
 だが、物騒ななにかが近くにある。井戸のなかは“永遠”が支配しているようだ。
「思いきって、見てみたらどうだ?」と、カリブソがいった。皮肉な口調だが、悪意は感じられない。
「まだ決断できないんだ!」と、アラスカ。
 だが、もう決定はくつがえせないとわかっている。意を決して両手を横にひろげ、頭を“虚無”につっこんだ。川の流れのようなものを感じる。
 次の瞬間、マスクの男はべつの環境にいた。
原文:
Er setzte sich wieder in Bewegung. Wenige Augenblicke später befand sich sein Gesicht über der unergründlichen Oberfläche des Zeitbrunnens.
: Ein schwarzer Spiegel! dachte Saedelaere unwillkürlich.
In seinem Innern krampfte sich alles zusammen, er spürte die Nähe von etwas Bedrohlichem. Unter dieser Oberfläche herrschte Zeitlosigkeit.
“Wagst du es nicht?” hörte er Callibso mit sanftem Spott fragen.
Alaska sagte: “Ich kann mich nicht entschließen!”
Aber er wußte, daß seine Entscheidung bereits gefallen war. Er streckte die Arme seitwärts am Körper aus und tauchte den Kopf in das Nichts, als wollte er ihn über das Ufer eines Baches hinweg ins Wasser strecken.
Mit einem Schlag erlosch die Umgebung, in der sich Alaska aufgehalten hatte.
Da war

試訳:
 再び身をのりだす。数瞬後には、底知れぬ時間の井戸の表面を眼下にしていた。
漆黒の鏡だ!〉と、われ知らず考える。
 体内のすべてがひきつれよじれるようだった。かれを脅かすなにかが間近に感じられる。この表面の下は、時知らざる空間なのだ。
「やってみないのか?」かすかな皮肉をこめてカリブソの問うのが聞こえた。
「ふんぎりがつかないんだ!」
 だが、わかっていた。自分がとうに決断をくだしていることは。両腕をからだのわきにつっぱり、川岸から水中にするように、虚無へと顔をもぐらせる。
 たちどころに、それまでアラスカのいた周囲の風景が消えうせた。
 そこにあったのは――

ヴィジョン
(DIE VISION)、と、一行空けてつづくのだが。前もちらっと書いたが、この手のフォルツの細工は、さっぱり顧みられることがない。残念な話。

で、訳文を読むと、2回、頭をつっこんでいるのだが、これは誤り。最初の方は、井戸の上方にまで首をのばしただけのこと。だから「ふんぎりがついてない」のである。
ここにも zeitlos が存在するが、どうせならそろえて訳してほしかったねえ。

……。
横書き→縦書き、とか。章立ては改ページとか。障害は、案外そんなところにもあるのだった(笑)
洋の東西の壁は、ベルリンのそれよりも厚いのかのぅ。

時間超越 -10- part1

えーと、予告していた「Zeitlose考」は、なんとゆーか、詰め込みすぎてまとまらなくなったので一時延期(笑)
「時間超越」赤入れ作業もいよいよ終盤。10章はマスクマンとパペットマスターの奇妙な同棲生活からスタートっ(木亥火暴)

■240p

ハヤカワ版:
 アラスカ・シェーデレーアは時間の井戸の近くにとどまった。人形がその町でなにをするかはわからないが、それに興味はない。人形使いの行動についても同じだ。しかし、この状況の心理的効果には期待している。カリブソがあれこれ思い悩めば、それが自分にとって有利に作用するかもしれない。
原文:
Da er in der Nähe des Zeitbrunnens bleiben wollte und auch nicht wußte, wie die Puppen unten in der Stadt auf seine Gegenwart reagieren würden, begann Alaska Saedelaere, sich in der Hütte des Puppenspielers einzurichten. Er erhoffte sich von dieser Maßnahme auch einen psychologischen Erfolg. Er war entschlossen, Callibso solange zu belästigen, bis dieser sich entschloß, ihm zu helfen.

試訳:
 時間の井戸の近くにとどまりたいこと、都市の人形たちが自分にどう反応するかもわからないことから、アラスカ・シェーデレーアは人形使いの小屋に居をかまえた。この措置には、また別の心理学的効果をも期待していた。自分を手伝う気になるまで、カリブソをわずらわすことに決めたのだ。

というわけで「手伝ってくれないかぎりうざったく居候しちゃうぞ作戦」、開始である。
再帰動詞 einrichten sich で「家をかまえる」。人形使いの小屋に~とあるわけだが、訳文だと、アラスカどこいっちゃったんだろ。ひょっとして野宿?(笑)

ハヤカワ版:
 小人はマスクの男の質問に対して、ほとんどコメントしなかった。日中は都市か、あるいは時間の井戸のほとりですごし、夜になると小屋にもどってくる。もっとも、帽子からとりだした各種小型機器については、注意をおこたらないようだが。奇妙なことに、殲滅スーツは椅子にかけたまま、放置されていた。
 時間がたつにつれ、不安がつのってくる。
原文:
Der Zwerg nahm die Gegenwart des Maskenträgers zunächst kommentarlos zur Kenntnis. Er verbrachte die Tage unten in der Stadt oder verließ Derogwanien durch den Zeitbrunnen. An jedem Abend jedoch kehrte er in die Hütte zurück. Alaska registrierte, daß das merkwürdige Wesen mit großer Aufmerksamkeit über seine Instrumente wachte. Dagegen hing der Anzug der Vernichtung achtlos über einem Stuhl.
Alasa begann zu befürchten, daß er auf diesem Wege nicht weiterkam.

試訳:
 小人はマスクの男の存在を、当面無言でうけいれた。日中は都市ですごすか、時間の井戸をもちいてデログヴァニエンを出立する。とはいえ、毎日、夜には小屋へともどってくるのだが。アラスカは、この特異な存在が小型機器類については注意おさおさ怠りないことを認めた。一方で、殲滅スーツは無造作に椅子にかけられたままだ。
 アラスカは、この方法では進展が望めないかと不安にかられはじめた。

neben とか am とか、近く、を連想させる単語すら存在しないんだが。verlassen Derogwanien だよ? なんでそれが井戸端になるんだ……。
で、「手伝ってくれない(以下略)作戦」はいきなり頓挫しかねない状況に……。

ハヤカワ版:
 しかし、数日がすぎても、異人を会話にひきこむことはできなかった。人形使いはなかなか小屋に近づこうとしない。これ自体、シェーデレーアにとっては大きな誤算だったが、すくなくとも異人が行方不明になるよりはましである。
原文:
An dem Tag jedoch, da er sich entschlossen hatte, Callibso wieder in ein Gespräch zu verwickeln, kehrte der Puppenspieler nicht zur Hütte zurück. Für Saedelaere war das ein schwerer Schlag, denn er mußte damit rechnen, daß Callibso für alle Zeiten verschwunden war und den Terraner allein zurückgelassen hatte.

試訳:
 しかし、もう一度会話に持ちこもうとアラスカが決意したその夜、人形使いは小屋へ帰ってこなかった。これは重大な衝撃だった。カリブソが金輪際姿を見せず、ひとり取り残される可能性も考えねばならないではないか。

数日すぎたのは、前の段落。だいたい、前の段落で、「毎夜帰宅する」って書いてあるのに、いきなり「なかなか寄りつかない」って、変だと思わないのかね。ああ、だからまた数日すぎたことになったの?

■241p

ハヤカワ版:
 マスクの男は毎日、日没が近づくと都市を眺め、カリブソの姿を探した。夜は扉の前で、異人がもどるのを待ちわびた。
 カリブソの自我が宿る人形は、日の出のあとまもなく姿をあらわした。時間の井戸からあらわれ、急いで丘を登ってくる。
原文:
Alaska scheute davor zurück, noch an diesem Abend in die Stadt hinabzugehen und dort nach Callibso zu suchen. So verbrachte er die Nacht vor dem Eingang der Hütte.
Die Puppe, die Callibsos Über-Ich in sich trug, erschien am nächsten Tag kuruz nach Sonnenaufgang. Sie kam vom Zeitbrunnen und hatte es offenbar eilig, den Hang heraufzukommen.

試訳:
 その夜すぐに都市へおりてカリブソを探すのは、どうにもためらわれた。そこでアラスカは、小屋の戸口で夜を明かした。
 カリブソの超自我を宿す人形は、翌朝、日の出からまもなく姿をあらわした。時間の井戸から、せかせかと丘を登ってくる。

また数日たってるし。単に、居候先の主人が朝帰りしただけの話である(笑)
井戸とからむ前置詞が、(her)aus ではなく vom (von dem) なので、中からあらわれたのではなく、井戸のある場所から小屋へと移動する位置関係の前置詞と判断した。

ハヤカワ版:
 アラスカを無視して小屋にはいると、寝床をととのえはじめた。
原文:
An Alaska vorbei begab sie sich in die Hütte und warf sich auf ihr Lager.

試訳:
 アラスカのわきを通りすぎて小屋へ入ると、寝台に身を投げだした。
お疲れなのだ。しかし、朝帰りした夫がお疲れのご様子だと、妻は気が気でないようだ(笑)

ハヤカワ版:
「そうではない!
原文:
“Ja – ins Nichts!

試訳:
「ああ――あてどもなくな!

どこなりといけ、じゃ困るのである。

■242p

ハヤカワ版:
だから、きみがこの家に滞在するのに反対ではないのだな。
原文:
Deshalb möchte ich, daß du bei mir bleibst.

試訳:
だから、きみがここにとどまるのにやぶさかでない。

うーん……。「君のような仮面の男に、ずっとそばにいてほしい!」じゃないしなあ(笑)
わりと積極的に認めているようで、一線を越えてない訳ってどんなんやろ……w

ハヤカワ版:
「きみには失望した」と、いった。「では、すべてを見せよう」
原文:
“Ich wollte dir eine Enttäuschung ersparen”, sagte er. “Aber offensichtlich muß ich dir alles zeigen.”

試訳:
「きみを失望させたくなかったのだが、どうやらすべてを見せずばなるまい」

いや、それでアラスカに失望はしないでしょw だって、自分こそ何百万年も同胞のもとへ帰りたかったんだから。中身は、たぶん、わりと似てるのだ、このふたり。

ハヤカワ版:
のぞけるように調整するから。もっとも、きみの予想どおりのものが見えるとはかぎらないが」
原文:
ich werde dir einen Blick dorthin gewähren, damit du weißt, was dich dort erwarten würde.”

試訳:そこが見えるようにしてやる。何が待ちうけているか、わかるはず」

うん、まあ、予想どおりの映像じゃないのは確かだけどね……。

■243p

ハヤカワ版:
「自分自身でありのままを見るがいい。そのあとで、どうするか決定するのだな」
原文:
“Sieh dir an, was ich dir zu zeigen habe. Danach kannst du immer noch entscheiden, was du tun willst.”

試訳:
「まずはわたしがしめすものを見ろ。その後でも、何がしたいかの決定権はきみにある」

疑ってるのはわかるから、とにかくひと目、見てごらん? 見たからって、むりやり売りつけたりしないよ? ……いかん、これじゃ本気で詐欺の手口www

ハヤカワ版:
もちろん、疑念は相いかわらずのこるが。とにかく、一度この小人のやり方を見てみる価値はある。
原文:
obwohl er natürlich nicht sicher sein konnte, ob es ernst gemeint war. Vielleicht wäre es besser, zunächst einmal die Bereitschaft des Fremden zu prüfen, über alles zu sprechen.

試訳:
むろん、本気のことばか確信の持てるはずもないのだが。あるいは、すべてを包みかくさず話す用意があるか、試してみるのもいいかもしれない。

んで、いきなり「大群の秘密知ってるー?」か……。
訳文だと、井戸をのぞくこと=やり方を見てみる、みたいにとれたので、少しいじってみた。

ハヤカワ版:
「きみは遭遇したことがあるのか?」
原文:
“Wie kommst du darauf?”

試訳:
「どうしてそう思った?」

なんで、わたしが大群の秘密を知っていると思ったのかね、だ。

ハヤカワ版:
これはまちがいない。
原文:
(なし)

試訳:
(なし)

こういうの見てると、五十嵐さんは超訳がやりたいんだろうなあ、と思う。
まあ、フォルツの文章って、日本語にするとブツ切りみたいなとこも多いから、ついやっちゃうんだろう。個人的には、やりすぎだと思うんだけどね。

■244p

ハヤカワ版:
「わが種族は大群の建設者の一員だった」
原文:
“Mein Volk ist identisch mit den Erbauern des Schwarmes.”

試訳:
「わが種族は、大群の建設者と同一のものだ」

あー……この設定は、Mächtigen の登場とともに変わるから、実はどうでもいいのだが。
でも、訳文だと、三十六種族のひとつみたいに見えるよね。

ハヤカワ版:
「わたしは若くもないし、年よりでもない……ただ時間を超越しているだけで。
原文:
“Ich bin weder alt noch jung – sondern einfach zeitlos.

試訳:
「わたしは年老いてもいなければ、若くもない――単に、この身は時を知らぬのだ」
誤訳ではないので、念のため。

このへんは「Zeitlose考」でやる…予定…なんだが(笑)
形容詞 zeltlos には「時間を超越した」という意味が確かにある。というか、辞書によってはそれしか載ってない。しかし、カリブソの行く末を思うと、かれは「時間超越者」ではありえないと思う。そういう発想で、在来ファンダム訳の〈時を失いし者〉を多少いじってつくったのが、rlmdi.訳の〈時知らざる者〉である。

結局、五十嵐さんは Zeitlose の固有名詞、種族名としての訳語をつくらなかった。時間超越者、がイヤだったのかもしれない。でも、この単語、カリブソの代名詞だし、〈強者〉は個人的にもっとイヤなんだけどね……。

ハヤカワ版:
「知性は意識と同義だ。意識なしでは、生命にも意味がない。だから、われわれが知性を運ばざるをえなかったのだ」
原文:
“Intelligenz bedeutet Bewußtsein”, gab Callibso zurück. “Ohne Bewußtsein gibt es kein Leben. Deshalb mußten wir es tun.”

試訳:
「知性とは意識。意識ぬきには生命は存在しえぬ。それゆえ、われらはやらねばならなかった」
誤訳ではないので、念のため。

これは、五十嵐さん、きれいにまとめたなー、と思った。
個人的には、生命→意識→知性、の順で発生するもののように思えるので、あえてそれを逆行させる形での試訳となった。後に判明する、胞子船による生命の播種、有望な地域への知性の播種、と連なる活動も、それを踏まえてるんじゃないかな、と。

ハヤカワ版:
なんらかの想像を絶する勢力が、数百万年前に大群建設を計画したのだろう。その存在はすべてをコントロールし、知性が大宇宙に“播種”されるようにした……
原文:
Irgendeine unvorstellbare Macht, die über Millionen Jahre hinweg vorausplante, hatte alles eingeleitet. Sie hatte dafür gesorgt, daß die Intelligenz im Universum verbreitet wurde.

試訳:
数百万年先を見すえて計画を練る、想像を絶する勢力が、すべてをはじめたのだ。かれらは、知性が大宇宙にひろまるよう配慮してきた。

文節ごとの時制を考慮すると、こうなる。

■245p

ハヤカワ版:
「われわれは進化の過程で、時間の秘密を解明した」と、異人がつづける。「そこで、使命の一部をサイノスに委任したのだ」
原文:
“Als unsere Evolution fortschritt und wir das Geheimnis der Zeit begriffen”, fuhr Callibso fort, “übertrugen wir unsere Aufgabe an die Cynos.”

試訳:
「進化の過程で、時間の秘密を解明したとき」と、カリブソがつづける。「われわれはその使命をサイノスに譲りわたした」

一部、ではない。
ただし、この設定も850話でチャイになるわけだし。カリブソの任務が生命の播種・知性の播種であり、サイノスは大群の運行をまかされたわけだから、一部と表現しても誤りとは言いづらいものがある。

ハヤカワ版:
わからない。それと同じだ。われわれはなにをなすべきか、あらかじめ知っていた。どの種族にも、宇宙的拡張に関して、使命を負っているということだな」
原文:
Es gab keinen Auftraggeber. Wir wußten, was wir zu tun hatte. Es ergibt sich so. Jedes Volk, das kosmische Ausdehnung erlangt, erhält eine bestimmte Aufgabe.”

試訳:
依頼者など存在しない。われわれは、なにをなすべきかを承知していた。おのずとそうなるもの。大宇宙にひろがるどんな種族も、特定の使命を得るのだ」

4/26追記:
試訳の時制がおかしくなっていたのを訂正。

ハヤカワ版:
 異人は突然、不安そうなようすをしめし、
「テラナーは結局のところ……これまでの経験からすると、特別なケースだと思う」
「というと?」
「さまざまに解釈できるが……きみの種族は宇宙じゅうにひろがるだろう。寄生虫のようなものかもしれない」
原文:
Callibso wirkte plötzlich ablehnend.
“Die Terraner sind, nach allem, was ich bisher über sie in Erfahrung gebracht habe, ein Sonderfall.”
“Was heißt das?”
“Ihr dehnt euch nur aus”, entgegntete Callibso. “Ihr macht euch im Universum breit. Ihr seid Parasiten!”

試訳:
 カリブソは突然、否定的なおももちになって、
「テラナーは、これまでわたしの体験したかぎりでは、特例だな」
「というと?」
「テラナーはただ単に拡大する。宇宙じゅうに広まっていく。まるで寄生体だ!」

カリブソの知見というと……カトロンでローダンがペールトゥスの遺産とスッタモンダ、ダッカル次元バルーンでツグマーコンとドンパチ、あげくデログヴァニエンで人形が本体をザックリ――かなり個人的恨みもまじってそうだが、ツッパネたくなる気持ちもわからんでもない。

ハヤカワ版:
「それについては、こちらで考えよう」
原文:
“Wir haben auch einen Sinn!”

試訳:
「われわれにも、意味はある!」

む、無意味な寄生虫なんかじゃないもんっ、という、根拠のない膝蓋反射である(笑)

■246p

ハヤカワ版:
「あるいは」カリブソは真剣に応じた。「その可能性はある。たとえば、きみが創造されたのは、あらゆる場所に到達するためかもしれない。他者がフィールドをしめし、きみが成果をとどけるのだな」
 もちろん、この表現はアラスカにおもねったものではない。
原文:
“Vielleicht”, zweifelte Callibso. “Es ist möglich, daß ihr auch nur dazu geschaffen seid, alles zu durchdringen und alles zu besetzen. Andere haben das Feld für euch bestellt, und ihr bringt die Ernte ein.”
Für Alaska war dieser Vergleich alles andere als schmeichelhaft.

試訳:
「あるいは」カリブソは依然、懐疑的だ。「きみたちはすべてを突破し、占領するためだけに創造されたのかもしれないな。だれががきみらのために場を整え、きみたちは収穫を手にする」
 アラスカにとって、その比較はとうてい好ましいものではなかった。

要するに、ぜんぜん寄生虫扱いから脱却していないのだ(笑)
訳文は、なんでかしらんが、アラスカの話になってしまっている。なんで「きみたち」 ihr 単数扱いになるのかねえ。

ハヤカワ版:
「たしかに」転送障害者は種族を弁護した。「大群はわれわれの援助があって、はじめて本来の機能をとりもどしたのだからな」
「それはいずれ起こったことだ」小人はこの話に関心を失ったようだ。「ポジティヴでない発展が、長期にわたりつづくことはない。すべては必ず発展するのだ」
原文:
“Immerhin”, verteidigte er sein Volk, “haben wir mitgeholfen, den Schwarm wieder seiner ursprünglichen Bedeutung zuzuführen.”
“Das wäre früher oder später sowieso geschehen”, meinte der Zwerg gleichgültig. “Keine positive Entwicklung kann auf die Dauer unterdrückt werden. Alles entwickelt sich weiter.”

試訳:
「とにかく」と、アラスカは自分の種族を弁護して、「われわれ、大群が本来の意味をとりもどすのを援助したのだ」
「それはいずれ起こったことだ」小人はどうでもよさげに、「ポジティヴな展開を、長期にわたり抑圧しつづけることは不可能だ。すべては必ず発展するもの」

前の段落の修正にともなって、アラスカの弁論冒頭も変更される。
あと、さすがに「ネガティヴ」とまではできなかったのか。そのくらいなら、素直に訳せばよいと思うがなあ。

ハヤカワ版:
 異人にとって、この百万年は完全に無意味だった。黄色い偽神がこの二倍の期間にわたって、大群を乗っ取っていたとしても、結果は同じだろう。カリブソにも、それを阻止することはできなかったのだ。
 だが、それだけだろうか?
 その背後に、さらにかくされた意味があるのではないか……?
原文:
Eine Million Jahre waren für Calliboso offenbar bedeutungslos. Die Überzeugung, daß auch eine doppelt so lang anhaltende Machtübernahme der Gelben Götzen im Schwarm im Endeffekt nicht andrers geendet hätte, war fest in Callibso verankert. Der Lauf der Dinge ließ sich davon nicht aufhalten.
Aber wohin führte das alles?
Welcher Sinn verbarg sich dahinter?

試訳:
 百万年など、カリブソにとっては明らかに無意味。たとえ、黄色い偽神による権力掌握がその二倍の期間にわたってつづいたとしても、最終結果に変わるところはないと、深いところで確信している。ものごとの流れは、とめられるものではないのだ。
 だが、そのすべてはどこへつづいていく?
 その背後に、いかなる意味がかくされているのか?

einとderの法則じゃないが、不定冠詞が枕なので、不特定、任意、てきとーにピックアップした百万年が対象になる。

発展をつづける、その行く末は、じきに登場する、宇宙進化のたまねぎモデルへといたる。進化のはて――その意味を問いかけつづける、フォルツ宇宙のはしりである。

4/26追記:
脳みそログ・ファンザーな部分を削除。
GW前に終わらせたいと焦ったのが如実にあらわれてるなーm(_ _)m

……。
うーん、明らかに、原文ぜんぶ読んで(読めて)ないよね――というミスが多すぎる気がするんだが。あとは……時制の話は、もう何度も言ってるしなあ。名詞の性と数と格と、動詞の時制がわかれば、そうめちゃくちゃな訳になることはない、はずなんだけどね。仮にもプロ相手にいうことかいな。

ペリー・ローダンのつぶやき

わたしはツイッターって利用したことないのだが。
昨年6月の時点で、日本国内で320万人、全世界では1億1000万人がTwitterにアクセスしているという(Wikipediaの当該ページより)。

そのうちどれだけの人が、どれだけの頻度で実際につぶやいているかは、想像を絶する。しかも、どっかの国ではこれらのつぶやきを細大漏らさず記録することが決まったそうではないか。実にお疲れ~な話である。

そんなツイッタラーの中に、なんと、われらが宇宙英雄が存在した(笑)
先のテラ政庁首席のtwitter-accountは、以下のとおり。

http://twitter.com/Perry_Rhodan

どんなことをつぶやいているのやら、ちょいとログを拝見すると――

「気が狂いそうな痛み! 痛み――わたしの肉体だ! 帰ってきたのだ!」
(2010/03/15 03:10a.m.)

……あ、これ、ポリポート駅でマークスのドンパチに巻き込まれて、瀕死の状態で幽体離脱しちゃったときじゃないか! まさかのリアルタイムなのかいっ(笑)

■公式News:Public-Relations-Preis für PERRY RHODAN (リンク切れ)

公式Newsは、広告業界新聞のアワードで、ローダン2500話の宣伝のマルチメディア展開を担当したエージェンシーが「パブリック・コミュニケーション大賞」なるものを受賞した、というもの。どうやら、このツイッターもそこが関与しているらしい。

2019/06/13追記:当時、このツイッターを担当していたのが、後にローダン作家となるKai Hirdtであったそうな。
ちなみに現在は、広告用アカウントとして運営が継続されている。

時間超越 -9- part3

「時間超越」9章、予告どおり3回目でなんとか~。
多少駆け足になっているのはご愛嬌(ナワケネーwww)

とりあえず、人形のガワをかぶった本物のカリブソと、とうとうアラスカはご対面――

■234p

ハヤカワ版:
 気がつくと、あたりは明るくなっていた。霧が晴れたのだ。都市に目をやると、通りに住人“”がいる。いずれもぎこちなく、同じ速さで動いているようだ。
原文:
Inzwischen war es fast hell geworden. Der Nebel über der Stadt begann sich zu lichten. Auf den Straßen tauchten vereinzelte Gestalten auf. Sie bewegten sich ruckartig und mit gleichförmiger Geschwindigkeit.

試訳:
 いつのまにか、あたりはかなり明るくなっていた。都市を覆っていた霧も晴れはじめて、通りにはちらほらと人影があらわれていた。一様にぎこちなく、おなじ速さで動いている。

これ、明るくなったのって、単に朝になったからでしょう。もともと夜だったこと、ひょっとして忘れた?
動詞 lichten は、名詞 Licht 「光」と同根で、「明るくなる、(薄くなって)透ける」等の意味がある。霧が薄くなり(都市の詳細が透けて)人影が見えた、のだ。前半だけ取り分けて、前の文章の理由にするから、おかしくなる。

ハヤカワ版:
 それに、素材をどこから入手したのか、それもわからない。あるいは、カリブソの種族は、物質を自由に変化させる能力を持っているのだろうか?
原文:
Dabei wußte er allerdings nicht, welche Möglichkeiten Callibso zur Verfügung standen. Vielleicht beherrschte Callibos Volk alle Möglichkeiten zur Veränderung der Materie.

試訳:
 もっともアラスカは、カリブソがどんな手段を有しているのかを知らない。ひょっとしたらカリブソの種族は、物質を自在に変化させる方法を駆使しているかもしれなかった。

Möglichkeit は「可能性」で、経験的に「手段」と訳せる。……素材?
zur Verfügung は「~の意のままになる」で、アラスカも初登場時に、アトランにこう言っている。別に、「わたしを閣下の好きにして」じゃないよ?(笑) ともあれ、これを踏まえて上記の文節を直訳すると、「どんな可能性がカリブソの意のままになるか」となる。

ハヤカワ版:
 自分はカリブソに由来する“出来ごと”の渦中にいる。それはたしかだ。だが、もしかすると、まだ逃れられるかもしれない。なんといっても、殲滅スーツは本来の所有者のもとに、もどってきたのだから。
原文:
Alaska ahnte, daß er bereits zu tief in die Ereignisse verstrickt war, um sich noch zurückziehen zu können. Der Anzug der Vernichtung selbst hatte ihn zu dem ursprünglichen Besitzer des Kleidungsstücks zurückgeführt.

試訳:
 アラスカは、自分がもはや引きかえせないほど深くこの事態に巻きこまれていると予感した。殲滅スーツ自体が、その本来の所有者のもとへもどろうと、かれを誘導したのだ。

ひきかえせるかというと、すでに too deep なのだ。これを逆に読むのって、ある意味、信じられないのだが……。

ハヤカワ版:
 サイノスのシュミットは、こういう展開を事前に予想していたのだろう。だからこそ、自分を“運搬者”に選んだにちがいない。
原文:
In Alaska stieg der Verdacht auf, daß der Cyno Schmitt diese Entwicklung bereits vorausgeahnt hatte. Für Imago I war Alaska nur der Überbringer gewesen.

試訳:
 アラスカの胸中に、サイノのシュミットはすでにこの展開を予感していたのではという疑念が浮かんだ。イマーゴIにとり、自分は“運搬者”にすぎなかったのだろう。

ここが「運搬者」Überbringer とされる唯一の個所。あとは、このちょいと後で Bote が用いられているが、これもだいたい同様の意味。

ハヤカワ版:
 このとほうもない“宇宙的関連”のことを考えると、息がとまりそうになる。イマーゴIと名乗る生物は、成就まで数百年かかる長期計画を、いともかんたんに立案したのだ。これまで、おのれが“宇宙的な力”の道具であることを、全力で否定しようとしてきたが……結局、なにも変化させられなかったようだ。
原文:
Alaska stockte der Atem, wenn er an die unglaublichen Zusammenhänge dachte. Wsen wie Schmitt konnten über Jahrhunderte vorausplanen. Alles in Alaska sträubte sich gegen die Vorstellugn, letztlich nur das Instrument kosmischer Mächte gewesen zu sein, aber er konnte nichts daran ändern.

試訳:
 想像を絶するつながりを思うと、息づまるものがある。シュミットのような存在は、幾世紀もの先を予測して計画を練るのだ。アラスカのすべてが、結局自分は宇宙的勢力の道具にすぎなかったという想像にあらがったが、だからといってそれが変わるわけでもない。

考えるのもイヤだけど、事実は否定できないのだ。
あと、抵抗しているのは、地の文で過去形なので、作中の現在時。過去完了形ではないから、「これまでずっと……」というニュアンスはない。過去をふりかえって、いま想像して、いま抵抗しているのである。訳文、文節ごとの時制がごちゃまぜだ。

■235p

ハヤカワ版:
 シュミットは殲滅スーツを本来の所有者のもとにもどすため、複雑だが効果的な方法を考えたのである。アラスカはメッセンジャーにすぎない。イマーゴIはおのれが消えるのにさいし、その役をひきつぐ存在として自分を選んだ。その結果、自分は“宇宙的生物”になったのである。そう考えても、不快ではない。
原文:
Auf eine komplizierte, aber wirkungsvolle Weise hatte Schmitt veranlaßt, daß der Anzug der Vernichtung wieder an seinen rechtmäßigen Besitzer überging. Alaska war der Bote gewesen. Damit er seine Rolle übernehmen konnte, hatte er sich gewandelt, war zu einem kosmischen Wesen geworden. Der Anstoß war nicht aus ihm selbst gekommen.

試訳:
 複雑だが効果的な方法を用いて、シュミットは、殲滅スーツが正統な所有者のもとへもどるようなさしめた。アラスカは使い走りにすぎなかった。その役割を背負えるよう、かれは変貌し、宇宙的存在となったのである。発端は、かれ自身から生じたものではなかった。

Bote はまちがいなく「メッセンジャー、使者、配達人」であるが、ここはあえて一番ひどそうな訳語を選んだ。むしろパシリにしたい(笑)
Anstoß は、「キックオフ、発端」のほか、「不快感のもとになるもの」という意味も確かにある。でも、これを「不快感のもとは自分自身のうちからくるものではなかった」って読む? しかもそれを、やけに爽やかな一文に変換する? 意味イコールじゃないよねえw

■236p

ハヤカワ版:
だが、いずれはこの新しい状況をうけいれるだろう……ほかに方法はないはずだ。
原文:
Alaska entschloß sich, dieses Wesen eine Zeitlang allein zu lassen. Callibso mußte Gelegenheit finden, die neue Situation zu akzeptieren.

試訳:
アラスカは、しばらくひとりにさせてやることにした。カリブソとて、新しい状況をうけいれるための機会が必要だろう。

アラスカの配慮がすっぽり消えうせているのはなぜ……?

ハヤカワ版:
いくらイマーゴIでも、スーツを返却したあとのことまでは計算していなかったにちがいない。つまり、これから先はおのれの意思で自由に決定できるということ。当然、恐れる必要もない。相手が神秘的な力を乱用するとは思えないから。
原文:
Bestimmt hatte Imago I über den Zeitpunkt der Erledigung dieses Auftrags hinaus keine Pläne mit ihm gehabt. Das bedeutete, daß Alaska jetzt, da er den Anzug zurückgegeben hatte, frei entscheiden konnte. Zum erstmal brauchte er nicht zu befürchten, von geheimnisvollen Mächten mißbraucht zu werden.

試訳:
イマーゴIとて、任務達成のそのあとまで、アラスカに関する計画があったとは思えない。それはつまり、スーツを返却したいま、アラスカは自由に決断できるということ。謎に満ちた勢力に使い棄てられるのをおそれる必要がないというのは初めてだった。

スーツ返還云々をひとまとめにしちゃうのは、シンプルでいいと思うが……その後が悪い。
頭から訳したって、「おそれる必要がない、~することを」なのに、なんで理由になってるの。しかもアラスカとカリブソが混同されてるし。

ハヤカワ版:
 運命について考えても、しかたがない。それこそ、無意味だ。
 いや、そういう考えに与したくはなかった。
原文:
Man hatte ihn benutzt und sich über sein weiteres Schicksal keine Gedanken gemacht. Er war viel zu unbedeutend.
Dieser Gedanke erweckte seinen Trotz.

試訳:
 かれは利用され、しかもその後の運命を顧慮すらされなかった。無意味すぎる存在だ。
 そんな考えが、アラスカの反撥心をめざめさせた。

よくもそこまでゴミ扱いしてくれたなこの野郎――である。がんばれアラスカ! だけど訳者はきみの味方じゃないぞ!(爆)

■237p

ハヤカワ版:
「わたしは帰りたい!」カリブソの注意をひくように、大声を出した。「ショックから立ちなおったら、そのことも考えてみてくれないか」
原文:
“Ich komme zurück!” rief er Callibso zu. “Solange du dich erholst, werde ich mich weiter hier umsehen. Denk darüber nach, ob du nicht etwas für mich tun kannst.”

試訳:
「また戻ってくる!」と、カリブソにむかって叫ぶ。「あなたが休んでいるあいだ、このあたりを見てまわるから。わたしのために何かできることはないか、考えてみてくれないか」

いや……8章あたりのローダンのセリフも、やたらと「~したい」になっているのは気づいてたんだけど。ここまでくると、ぜんぜん意味ちがってるからなあ。

ハヤカワ版:
 壁に近づき、“オリジナル”のカリブソが、さまざまな世界から持ち帰った“土産”をチェックする。
原文:
Die Gegenstände an den Wänden ließ er dabei unberücksichtigt, denn sie stammten von anderen Welten und gehörten sicher nicht zum ursprünglichen Besitz Callibsos.

試訳:
 その際、壁にかかった道具類は無視する。雑多な世界に由来するそれらは、カリブソ本来の所有物ではありえない。

逆だって。
まあ、カリブソ本来の持ち物でなくとも、井戸関連の情報を含むものはありそうだと思うんだけどねえ。

ハヤカワ版:
人形がかぶっていたものだ。
原文:
wie ihn die Puppe ebenfalls trug.

試訳:
人形がかぶっていたのと同じものだ。

人形は、オリジナルのカリブソ(擬)とそっくりであるから、シルクハットも同じものが用意されている……ただし、中身なしで。そう考えないとヤバすぎるでしょw

ハヤカワ版:
 それをテーブルに載せて、ためつすがめつ調べる。
原文:
Überrascht ging Alaska zum Tisch und stülpt den Zylinder um. Als er ihm wegnahm, lagen ein halbes Dutzend merkwürdiger Instrumente auf der Tischplatte.

試訳:
 驚いたアラスカはテーブルにいき、シルクハットをひっくりかえして伏せた。それから持ちあげると、卓上に半ダースの奇妙な道具類があらわれた。

調べているのは、帽子ではなく、道具類である。非常に古ぼけたシルクハットで、しかもまったく異質な文明の産物に見える――って、どんなんだろね。

ここで中身が出ているのに、帽子観察ばかりしている(笑)から、あとの段落で、ちがう文章を「帽子に小型機器をかくしていた」と、原意とぜんぜんちがう翻訳をするハメになるんだよ。

ハヤカワ版:
カリブソはこの帽子に、さまざまな小型機器をかくしていたようである。いろいろためすうちに、ちいさな透明キューブが出てきた。メビウスの環を彷彿させる“リボン”がついた輝く球体、八角形のクリスタルも。しかし、その三つを調べる前に、扉が開いた。
原文:
Er war überzeugt davon, daß Callibso mit diesen kleinen Apparaten eine Menge anfangen konnte. Vor Alaska lagen ein transparentes Röhrchen mit leuchtenden Kugeln darin, eine Metallschleife, die ihn an einen Möbiusstreifen erinnerte und ein achteckiger Kristall mit zahlreichen Auswüchsen. Bevor er die drei anderen Gegenstände näher in Augenschein nehmen konnte, lenkte ihn ein Geräusch am Eingang ab.

試訳:
カリブソがこれらの小型機器でさまざまなことが可能なのはまちがいない。アラスカの前にあるのは、輝く球体がちりばめられた透明なチューブ、メビウスの環を彷彿させる合金製のリボン、無数の突起のある八角柱クリスタル。残りの三つを仔細にながめる前に、入口の方からの物音に注意をそらされた。

最初の一文については、前に書いたとおり。意味、ちがうから。
ええと……前の文章で「半ダース(6個)」の記述があり、いま3個見たので、当然あと3つ(drei anderen)あるわけで。しかも、見た3つも、なんだか描写がいりみだれてるぞ?

■238p

ハヤカワ版:
 カリブソが扉の前に立っていた。
原文:
Callibso stand in der Tür.

試訳:
 カリブソが戸口に立っていた。

誤訳というか、想定の差だけなんだが。前のページで、「強引に扉をこじあけた」わけだけど、ひょっとしてその際に、扉こわれてるんじゃないの?

ハヤカワ版:
その用途や機能を知らないのではないか……最初はそう思ったが、どうやら違うらしい。使い方を心得ているようなあつかい方である。
原文:
Alaska ahnte, daß es nicht klug gewesen war, dem Kleinen diese Utensilien zu überlassen, aber dieser Fehler ließ sich nicht mehr korrigieren. Mit den Instrumenten als Faustpfand hätte Alaska vielleicht etwas erreichen können – so war er dem Fremden ausgeliefert.

試訳:
道具類を小人にわたしたのはまずかったかな、とアラスカは思った。だが、いまさら手遅れだ。機器をしちにすればなんらかの譲歩を得られたかもしれないが――こうなると、異人の出方しだいだ。

ここの訳は、正直むずかしい。はたして試訳で正解かも微妙だが……あくまで最後の一文だけであって、訳文がおかしいことは確実だ。カリブソの中身が、すでに元の人形のものではないことを認めていながら、なに考えてるんだ、このアラスカ(笑)

※4/24追記:最後の一文の試訳訂正
かれ=アラスカの命運はカリブソの掌中にある、くらいの意味と読んだ。

ハヤカワ版:
「ぜんぶ“もと”のあなたの持ち物だ」と、声をかけてみる。「持っていればいい」
原文:
“Es sind Teile deiner ehemaligen Ausrüstung”, vermutete Alaska. “Das ist alles, was dir noch geblieben ist.”

試訳:
「それはかつてのあなたの装備の一部だな」アラスカは推測して、「いまなお残っているのは、それだけなのか」

訳文のアラスカ、何様や……(笑)
この文章は、なんつーか、それだけしか、当初の装備が残っていないほど、長い永い歳月がすぎていることを、アラスカに感じさせたかったんじゃないのかと思うんだが。

■238p

ハヤカワ版:
「どこに向かえというのだ?」
原文:
“Wo würde ich herauskommen?”

試訳:
「どこに出るんだ?」

抜けた先はどこになるのか、である。

ハヤカワ版:
どの世界に向かうかは、時間の井戸が決定するのだ!」
原文:
Auf jeden Fall auf einer Welt, auf der sich ebenfalls ein Zeitbrunnen befindet.”

試訳:
とにかく、そこにも時間の井戸がある世界にだ」

決定するのだ、というより、運しだい、といった方がわかりやすいんじゃないか(笑)
というか、アラスカがティワナクにあると思いだした似たような石像、という伏線はここにつながってくるのだが……。

ハヤカワ版:
「待ってくれ。まだ旅立つ準備がととのっていない」と、マスクの男。「わたしは特定の目標をめざすが、あなたの援助がないかぎり、そこに到達できないだろう。条件をしめしてもらいたい」
原文:
“Ich bin nicht bereit, Derogwanien unter diesen Umständen zu verlassen”, verkündete Alaska. “Ich habe ein bestimmtes Ziel. Solange du mir nicht hilfst, es zu erreichen, wirst du dich mit meiner Anwesenheit abfinden müssen.”

試訳:
「そんな条件下では、デログヴァニエンを離れるわけにはいかない」アラスカは宣言した。「わたしにはここぞと決めた目的地がある。そこへたどりつけるよう手伝う気がないのなら、わたしがここにいることをうけいれてもらうしかないな」

アラスカはテラに時間の井戸があることを疑っていて、また、カリブソに不特定の接続のなかから任意のものを選別する力があることも確信している。そこに「手伝ってくれないかぎりうざったく居候しちゃうぞ作戦(10章part1参照w)」が発動する余地があるわけだ。

……。
いや、そろそろ論評するネタも尽きてきたけど。
よく投げ出さないな(笑) >自分

時間超越 -9- part2

えーと、予定では、9章分は次回で終了。Zeitlose考やって、10章も3~4回かなあ。
終点が見えてきたようで、実際には5月まで食い込むことが事実上確定したので、ちょっとorz状態。

ま、まあとりあえずっ。今回は人形カリブソとのかみ合わない会話編。

■230p

ハヤカワ版:
「感謝するよ」と、くすくす笑いながら、「知ってるぞ。あんたの無知のせいで、こうなったんだよな」
原文:
“Ich sollte dir dankbar sein”, kicherte er. “Aber ich weiß, daß du aus Unwissenheit gehandelt hast.”

試訳:
「あんたに感謝するところなんだろうけど」と、小人は、きしし、と笑って、「でも、知ってるよ、無知から出た行動なんだよね」

相変わらず、文章を結ぶ aber を無視してるなあ。これを加味すると、感謝なんてしてないことになるんだが……。

ハヤカワ版:
「ちゃんと考えるんだ! わたしはカリブソが存続しつづけるための、最後の可能性なんだぞ! わたしを傷つければ、すべてが失われる。わたしの生命と、非物質化した残存物……つまり、魂と、どっちがだいじなんだ?」
原文:
“Überlege, was du tust! Ich bin die letzte Möglichkeit für den wirklichen Callibso, hierher zurückzukehren. Wenn du mir etwas tust, wird er endgültig verloren sein. Letzten Endes wird er ein Leben in mir der völligen Entstofflichung vorziehen.”

試訳:
「よく考えて行動しなよ! あたしはほんもののカリブソがここへと戻るための最後の手段なんだ。あたしになんかしでかしたら、やっこさん、今度こそお陀仏だよ。最後の最後には、完全に非物質化するよりは、あたしのなかで生きることを選ぶだろうさ」

letzten Endes は熟語として「最終的には」。最後の最後に、とやったのは、語感からの趣味といっていい(笑)
また、vorziehen A(IV格) B(II格) で、BよりAを選ぶ、となる。それを、どっちを選ぶ、と解釈しているんだろうか。

うーん、残存物とか魂とか、謎の自分解釈はよくわかんにゃいねぇ。

ハヤカワ版:
「ちいさな怪物というわけか!」と、吐き気をこらえながら、「それで……いまその人形が、本当にその役割を演じるわけか?」
原文:
“Du kleines Ungeheuer!” stieß er angewidert hervor. “Wer bist du wirklich – und welche Rolle spielst du?”

試訳:
「ちびの怪物め!」と、嫌悪が口をついて出た。「いったいおまえは何者で――どんな役割を演じているんだ?」

なになに、怪物の役割を演じるとか、そう読んだの? なんかすごい変化球な読み方してんなー。それとも、ここでも「超自我による演技設定」が頭をもたげたのかしらん?

ハヤカワ版:
「わたしはつまらない人形だった! つまらない実験につきあって……あのあばら屋に“住む”ことを許されたんだ!」
原文:
“Ich war immer nur eine armselige Puppe, mit der er herumexperimentierte. Dabei durfte ich die Hütte oben am Hang niemals verlassen.”

試訳:
「あたしは、やっこさんが実験をくりかえした、哀れな人形の一体でしかなかったとも! おまけに、坂の上のあの小屋を離れることも許されなかった」

この試訳だと、実験に使った人形がいっぱいいるようにも読めてしまう。でも、まあ、人形は千体単位でいるわけだし、いいか(をひ)
小屋を離れる(verlassen)ことが許可されない(dürfen + niemals)。外出禁止令の理由は、まあ今回の顛末を見ていればわかろう。

■231p

ハヤカワ版:
自分の似姿がほしかったんだ。危険な状況に乗りこんでいかないとならないから。姿を似せたのは、アイデンティティをたもつためだな」
原文:
Er wollte mehrere Ebenbilder seiner selbst schaffen und sie in gefährlichen Situationen einsetzen. Sie sollten ihm gleichen, ohne seine Identität besitzen.”

試訳:
自分のコピーをたくさん造って、危険な状況に投入しようってえのさ。アイデンティティを持たないだけで、自分と同等のやつでないとね」

察するに、これら人形も、“監視者”や“意識ある夢”とおなじく、殲滅スーツ探索のための方策としてスタートしたのかもしれない。メンタルディスロケーション能力に近いものがあったのかもなあ、カリブソ。(注:→ゴン=オルボン)

ハヤカワ版:
「どうも、告発のように聞こえるな」アラスカはそういうと、考えこんだ。さしあたり、殺人については不問にすると決める。もしかすると、理解しているつもりの状況が、見当違いなものかもしれないから。
 それにしても、この死者、こうしてグロテスクな状況で終わりを迎えるような、大罪をおかしたのだろうか?
原文:
“Das hört sich wie eine Anklage an”, stellte Alaska fest. Er war jetzt wieder ruhiger. Der Mord hatte ihn zunächst völlig aus der Fassung gebracht. Vielleicht beurteilte er die Situation völlig falsch.
War am Ende der Tote schuldig für diese groteske Situation?

試訳:
「まるで告発めいて聞こえるな」アラスカはかなり落ちつきをとりもどしていた。あの殺人で、まったく度をうしなっていた。ひょっとしたら、状況にまったくあやまった判断をくだしているかもしれない。
 結局のところ、このグロテスクな状況は、死者の責任なのだろうか?

schuldig は英語でいう guilty (有罪)だが、一般的には責任として使われる方が多い気がする。
あと、訳文みたいな構成になるには、so schuldig, daß ~な感じの原文になるんじゃない?

ハヤカワ版:
「それがほんもののカリブソなのか?」
原文:
“Wer ist dieser wirkliche Callibso?”

試訳:
「そのほんもののカリブソとは何者?」

訳文、文頭の Wer を完全無視だな(笑) ある意味とっても豪快だが……。ああ、230pの人形のセリフで、「ほんものの~」をカットしちゃってるから、つながり具合が悪くなってるのかな。

ハヤカワ版:
“永遠の同盟”
原文:
Verbund der Zeitlosen

試訳:
“時知らざる者の同盟”

訳文は、過去登場した Verbund der Ewigen のときの訳語そのまま。だいたいこの訳だって、「永遠人の同盟」になるはずなんだがな……。Ewige 単数だと男性名詞だし。
Zeitlose の訳については、別項目を立てて取り扱う予定。

■232p

ハヤカワ版:
「話を聞くんだ! あんたは恐ろしい殺人をおかした。わたしとしては、不安を払拭しておきたい。最後はわたしも殺そうとするんじゃないのか?」
「わたしには関心がないんだな」と、人形がうなる。
「大群のことを話しただろう?」転送障害者はいささか混乱しながら、
原文:
“Ich will, daß du mir zuhörst! Du hast einen grauenvollen Mord begangen. Wie kann ich sicher sein, daß alles stimmt, was du mir erzählst? Am Ende wirst du versuchen, mich auch noch umzubringen.”
“Du bist mir gleichgültig.”
“Dieser Schwarm, von dem ich gesprochen habe”, fuhr der Transmittergeschädigte unbeirrt fort.

試訳:
「話を聞くんだ! あんたは恐ろしい殺人をおかした。そのあんたの言うことが、ぜんぶ正しいと、どうして納得できる? 最後にはわたしも殺そうとするかもしれない」
「あんたには興味ないね」
「いま話した大群のことだが」転送障害者は惑わされずにつづけて、

訳文、なんだか人形がスネているようで笑える。ないがしろにされているのは、むしろアラスカの方なんだけどねw

■233p

ハヤカワ版:
アラスカは目眩をおぼえながら、
原文:
Alaska hatte das Gefühl, sich im Kreis zu bewegen.

試訳:
アラスカは堂々巡りをしている気分だった。

木村・相良でも sich im Kreis bewegen は「回転する、循環する」だが、語義的には nicht vorwärts kommen ……「前に進まない」なので、「堂々巡り」と訳した。このへんは、昔の〈警告者〉がらみの経験からでもある。
まあ、ぐるぐるまわる→目がまわる、という判断は、そんなにまちがってない気もするんだが(笑)

ハヤカワ版:
ほかの世界で活動する場合は、わたしの姿を好んだ。
原文:
Wann immer er auf Welten zu tun hatte, sah er aus wie ich jetzt.

試訳:
ほかの世界にかかわるときには、ちょうどいまのあたしと同じ姿をとったものさ。

真・カリブソの偽装(擬態?)が、人形カリブソの原型である。

ハヤカワ版:
「最後に成功するところだったわけか」と、テラナーは考えながら、「だが、結果的にそうはならなかった。もう一歩のところで、あんたが殺したから……カリブソはどのくらい、ここに滞在していたのだろう?」
原文:
“Das ist ihm offenbar endlich gelungen”, sinnierte Alaska. “Allerdings kann er sich seines Erfolgs nicht mehr freuen – du hast ihn vorher umgebracht. Wie lange lebte er schon hier?”

試訳:
「ついにそれに成功したわけだ」と、アラスカは思案しつつ、「もっとも、その成果を祝うことはできなかったが――その前に、あんたが殺したから。かれはどのくらいのあいだ、ここで暮らしていたのだろう?」

成功したのかしないのか。最初のスタート地点からちがうので、後半が変わるのは、当然といえば当然だが。なぜ変えるんだ、スタート地点www

個人的には、なんもかんも三点リーダーというのが、一種生理的にイヤなんだよね。しかも上記の訳文だと、ハイフンの個所は普通に文章切ってしまって、別の文章と三点リーダーでつなげているという。うーん。

ハヤカワ版:
「いいタイミングの質問だ」
原文:
“Das fragt du ihn am besten selbst”,

試訳:
「そいつは自分で訊ねるがいいさ」

それを・訊ねる・あなたが・かれを・最良・自分で。一瞬、訳文でよさそうな直訳語列(謎造語w)だが、よくよくみると、そこには時間に関する要素はない。

……。
時間が足りないんだろなぁとは思うが……この翻訳、胸はって「わしがやった!」って言えるのかね。頼むから、「すんません、わしがやりました…」みたいな代物にはしないでにゃ~。

時間超越 -9- part1

フォルツ著の「時間超越」、アラスカと、真偽双方のカリブソがからんで、いよいよ混迷をふかめていく第9章――なので、あるが。
えーと、これ……何語? と質問したくなるような、ものすごい文章が並んでいる。い、いったい、なにごとwww

とりあえず、一番すげかった、最初の*印までを、ざっと流そう。

■227p

ハヤカワ版:
 カリブソの超自我は捜索を終え、物理的肉体にもどる準備にかかった。
 いままで、このプロセスで問題が起きたことはない。
 だが、今回は帰還できなかった。
 超自我は虚空にとどまったままだ。
 肉体が死んだのである。
原文:
Callibsos Über-Ich hatte die Suche erfolgreich beendet und schickte sich an, in den physischen Körper zurückzukehren.
Bisher war dieser Vorgang ohne jede Zwischenfälle verlaufen.
Diesmal jedoch gelang der Rückkher nicht.
Callibsos Über-Ich stieß ins Leere.
Sein Körper war tot.

試訳:
 カリブソの超自我は実り多き捜索を終え、肉体への帰還にとりかかった。
 これまで、このプロセスは問題なくおこなわれてきた。
 だが、今回は帰還できなかった。
 カリブソの超自我は空を切った。
 かれの肉体が、死んでいたのだ。

erfolgreich があるので、「捜索を成功裏に終え」。なんらかの成果があったことは、後の文脈から読みとれる。
Leere は確かに、銀河間の虚空、とかに用いられる単語だが、この場合、stoßen ins Leere で「何もないところに突きあたる、空を切る、空振りに終わる」である。ここで「虚空」とやったため、あとの方で、カリブソが作った虚空、なんて表現が出現することになる。

ハヤカワ版:
 しばらくのあいだ、茫然自失の態で、死んだ肉体の上を漂いつづけた。この事実をうけいれることができない。この虚空はカリブソ自身が拡張したものだが、超自我がその“不存在の縁”から落下しそうになる。それを察知して、また言葉にあらわせないほどの恐怖にとらわれた……“意識の一端”でこの状況を“恐怖”ととらえたというほうが、より正確だろう。とはいえ、この“空間”では叫び声を発することもできない。虚空には、聴覚も視覚も存在しないのだ。
原文:
Eine Weile war nichts, nicht einmal Entsetzen. Callibsos Über-Ich schwebte über dem totem Körper, unfähig, diese ungeheuerliche Tatsache zu akzeptieren. Die völlige Leere, die sich in Callibso ausbreitete, hätte fast zu einer Verflüchtigung seines Über-Ichs geführt. Eine Zeitlang bewegte es sich am Rande der Nichtexistenz, dann machte sich der Schock bemerkbar. Er füllte Callibso aus und verlieh dem namenlosen Grauen eine neue Dimension. Mit jeder Faser seines Bewußtseins empfand Callibso nun die Schrecken dieser Situation. Der Raum, in dem das Über-Ich sich befand, ließ keinen Schrei zu, bot keine Möglichkeit zu hörbarer oder sichtbarer Klage.

試訳:
 しばらくは茫然自失の態で、おそるべき事実をうけいれることもできず、超自我は死せる肉体のうえを漂っていた。カリブソのうちにひろがった例えようもない虚無は、あやうく超自我を雲散霧消させるところだった。存在を失うすれすれの状態をすごして後、ようやくショックを自覚する。それがカリブソを満たして、名状しがたい戦慄に新たな広がりをあたえた。いまや意識のひとすじごとに、この状況のおそろしさが感じられた。超自我のいる空間では、叫ぶことも許されず、聴覚や視覚に訴えて嘆く手段もなかった。

前の段で、空振りを「虚空にとどまった」と訳した関係で、なぜか「超自我のいる空間=虚空」という発想が根づいてしまったらしい。おなじ Leere だが、ここでは明白に「胸中のむなしさ」である。むなしさの余り超自我をたもてずカリブソ一巻の終わりになりかけている(笑)
そこがわかれば、「不存在の縁」というのも、消えそうなところで持ちこたえたことが理解できるはずなのだが……。
また、意識の「一端」としている Faser は、「(繊維等の)一筋」ではあるのだが、原文だと jeder 付きなので、「意識を構成する糸の一本一本にいたるまで」が正しい。

※4/20追記:
大事なこと書き忘れてた。「茫然自失」の訳は、いいね。わたしじゃ、ちょっと出てこなかった。
直訳すると、「唖然とするまもないほど、しばらくはただ空っぽだった。」てな文章なんだけど。熟語として活用するような定型じゃないのが残念なくらい。いつもこう書ければいいのになぁ。

ハヤカワ版:
 死んだ肉体には、最後に感じた想像を絶する痛みがのこっていた。超自我は動かない。デログヴァニエンに帰還するたびに感じたよろこびは、もはや過去のものになった。
 使命達成を目の前にして、すべてが絶望の淵に沈んでしまったのである。
 もはや、この肉体にもどることはできない!
原文:
In seinem unbeschreiblichen Schmerz verharrte das Über-Ich wie gelähmt vor dem toten Körper. Vergessen war die frohe Erwartung, mit der es nach Derogwanien zurückgekehrt war.
Die Erfüllung, die in greifbare Nähe gerückt war, räumte völliger Hoffnungslosigkeit das Feld.
Er würde nie mehr in diesen Körper zurückkehren können!

試訳:
 筆舌に尽くしがたい痛みに、超自我は麻痺したように死せる肉体の前から動かない。デログヴァニエンへと持ちかえった、喜びあふれる期待感は忘れ去られた。
 手の届く距離にあった成就は、絶望にとって代わられた。
 もはや、この肉体にもどることはできないのだ!

痛みの由来は原文だけだとはっきりしないが、ここでは前段までに描写された内容を超自我が「痛み」としてうけとったと判断した。そのほうが、変に文章を分けるよりすっきりするし。
喜ばしい期待感――これが最初の、「実り多き」とつながってくるわけだが――を修飾している節(mit der 以降)は、過去完了形である。で、この節には「毎回」を示唆する単語はない。今回限定、願望成就しそうなので、期待大なのである。

■228p

ハヤカワ版:
 それでも、もう一度この殺された肉体に意識を集中させる。しかし、なにが起きたかはわからない。それに関する記憶はなかったから。つらい調査をつづけたが、結局、肉体の見えない部分もショックで破壊されたと確認できただけである。
 それでも、ひとつわかったことがあった。
 ここには、殲滅スーツを所有するテラナーがいる。
 正確には、この生物はカリブソの棲み家を訪れたのだ。たぶん、無意識のうちに、スーツの力によって導かれたのだろう。殲滅スーツに関する伝説を、あらためて思いだした。スーツは正統な所有者のもとにいたる道を見つけたら、自発的にそこに向かうという……
原文:
Callibsos Über-Ich war so stark auf den ermordeten Körper konzentriert, daß es die Ereignisse in der Umgebung noch nicht registrierte. Abgesehen davon, daß der Schock fast den unsichtbaren Teil seines Körpers vernichtet hatte, litt Callibso noch an den Strapazen der Suche. Er hatte sich mehr zugemutet, als unter diesen Umständen gut gewesen war.
Dabei hätte er sich alle Anstrengungen ersparen können.
Tatsächlich war es ein Terraner, der sich im Besitz des Anzugs der Vernichtung befand.
Dieses Wesen hatte gerade im Begriff gestanden, den Aufenthaltsort Callibsos aufzusuchen. Der unbewußte Vorgang war wahrscheinlich durch die Kräfte des Anzugs bewirkt worden. Callibso erinnerte sich an Legenden, die es über diesen Anzug gab. Wenn er eine Möglichkeit dazu fand, kam er seinem rechtmäßigen Besitzer auf halbem Wege entgegen.

試訳:
 カリブソの超自我は殺害された肉体に集中しすぎて、その周囲でなにが起きたのかをまだ認識していなかった。ショックが肉体の目に見えぬ部分を破壊しかねなかったことを度外視しても、カリブソはまだ探索の疲労に苦しんでいた。この状況下でよしとすべき以上を自らに課していたのだ。
 しかも、それらすべての労苦は、せずにすんだはずのもの。
 実際、殲滅スーツを所持していたのは、ひとりのテラナーだったのだ。
 それもちょうど、カリブソの居場所を訪れようとしていた。無意識のプロセスは、おそらくはスーツの力が作用したのだろう。カリブソはスーツにまつわる伝説を思いだした。そのための手段さえみつかれば、スーツは正統な所有者のもとにたどりつくという。

えーと、探索がんばりすぎて、まだまわりがよく見えていないようである(笑)
しかも、無駄にがんばりすぎたせいで、探し物がみずから懐中にとびこんできたタイミングを逸してしまったという……
「肉体の目に見えぬ部分」は「超自我」に置き換えた方がわかりやすいかも。
hätte ersparen können は接続法II式だろうか。「節約することができたかもしれない、できたはずだ」→しなくてもよかったのに、とした。

熟語 im Begriff stehen で、「まさに~しようとしていた」。で、これはどうやら、カリブソが探索のすえにつかんだ事実、であるようだ(どうやって知ったのかは、さっぱりw)。これだけ遠方まで探しにきてみたら、いまオレの家にむかってるだってー!?なのだ(笑)

熟語part2は entgegenkommen auf halbem Wege で、「中途で出会う、妥協する」。英語の歌でたまに meet me halfway とあるのと意味的にはおんなじ。上記文章の場合だと……「鉢合わせする」くらいが妥当な訳なんじゃないかと愚考するしだい。

ハヤカワ版:
 そのとおりのことが起こったにちがいない。スーツがテラの“運搬者”を導き、時間の井戸の輸送フィールドに侵入させたのである。このフィールド自体は、さまざまな大宇宙が共有していたから、侵入は容易だったはずだ。
 テラナーはデログヴァニエンに、必然的にやってきた。ここに一関連ポイントがあったため、“軽率”にジャンプしてきたのだろう。
 しかし、いまはかなりはなれた場所にいるようだ。
原文:
Genau das war jetzt geschehen. Die Kräfte des Anzugs hatten seinen terranischen Träger allmählich dazu befähigt, in die Transportfelder der Zeitbrunnen einzudringen. Diese Felder bestanden in vielen Teilen des Universums.
Zwangsläufig war der Terraner auf Derogwanien herausgekommen, denn hier befand sich der einzige Bezugspunkt für einen offenbar unüberlegt ausgeführten Sprung.
Mit dem Anzug hätte Callibso zum Verbund der Zeitlosen zurückkehren können.
Doch davon war er jetzt weiter entfernt als jemals zuvor.

試訳:
 まさにそのとおりのことが、いま起こったのだ。スーツの力が、装着したテラナーにしだいに及んで、時間の井戸の搬送フィールドに侵入を可能たらしめた。このフィールドなら、宇宙のあちこちに存在する。
 テラナーは強制的にデログヴァニエンに出現した。不用意におこなわれたジャンプに対する、唯一の関連ポイントがここにあったからだ。
 殲滅スーツがあれば、カリブソは“時知らざる者の同盟”に帰還できたはず。
 なのに、いまやその目標から、これまで以上に遠ざかってしまった。
下線は西塔による。

いや、なんでこの文章が削除されてるのよ?! そんなに訳したくなかったのか、Zeitlose ……。
“運搬者”に相当する原語は、この後、234pでシュミットにからんで1ヵ所だけ出てくるが、他は基本的に Träger ……「着た人、装着者」である。

■229p

ハヤカワ版:
 いずれにしても信じがたい状況である。
 超自我は異人を追ってカリブソの小屋に向かい……そこで“人形”を見た。では、テラナーがコンタクトしたため、この不吉な生命が目ざめたのか……
 人形はすぐに反応する。
 “これ”が本当に“生きる”つもりなら、カリブソの超自我が必要だろう……べつの表現をすれば、“魂”が。
 “カリブソ”の未来ははっきりしている。可能性はふたつしかない。いずれ超自我が完全に溶解するか、または自身が合成したこの肉体に住むか、どちらかだ。
原文:
Der unabwägbare Zufall hatte eine unerwartete Situation geschaffen.
Er hatte den Fremden in Callibsos Hütte geführt und ihn die Lieblingspuppe finden lassen. Dann hatte er sie berührt und auf diese Weise zu unheilvollem Leben erweckt.
Die Puppe hatte sofort reagiert.
Um wirklich zu leben, brauchte sie ein Über-Ich – eine Seele.
Damit war Callibsos Zukunft klar umrissen. Er hatte nur zwei Möglichkeiten. Er konnte warten, daß sein Über-Ich sich völlig auflöste, oder er mußte fortan in einem künstlich geschaffenen Körper weiterleben.

試訳:
 まったくの偶然が、予期せぬ状況をつくりあげたのだ。
 それは異人をカリブソの小屋へと導き、お気に入りの人形を発見させた。そうして、異人が触れることによって、人形は災いに満ちた生命へと目ざめたのである。
 人形は即座に反応した。
 真に生きるために、人形は超自我を――魂を必要とする。
 かくして、カリブソの未来は明確に描きだされた。可能性はふたつしかない。超自我が完全に融解するのを待つか、あるいは人造のボディに宿って生きるかの。

前の段落からつながって、「なぜ遠ざかったかというと、こーんな状況が生じたから」と読む方がすんなり理解できるだろう。このあたり、すべてがカリブソの脳内で事態の把握が進んでいくので、基本的に回想である。とうとつに超自我が移動して観察とか、時系列がぐちゃぐちゃになってるのになあ。

異人(アラスカ)を小屋へと導いた「それ」は、原語が er なので男性名詞が第一候補となり、前の文章の「まったくの偶然」であろうと推測される。
動詞 umreißen は「スケッチする」だが、同根の名詞 Umriß が「輪郭、略図」であることを考えると、「人生設計のスケッチが描きあがった(強制的に)」のである(笑)

……。
誰がいつ、どこで何を、なぜ、どのようにやっているのか。5W1Hって、わりと大切である。
それすらわかってない訳では、形だけ日本語でもワケワカメのは当然だよなぁ。

時間超越 -8-

「時間超越」の赤入れ、第8章は短いので、さくっといこう。

あたりまえだが、ブラックホールに消えたアラスカから、何の連絡もないまま48時間が過ぎようとしている。いらだつ司令室の面々に対し、いろいろ責任でも感じたのか、ローダンだけが堤防と化したようだ。
……ある意味、漫才であるw

■224p

ハヤカワ版:
ペリーは苦笑した。
原文:
(なし)

試訳:
(なし)

見破られたっぽいなー、だ。そこで笑ったらバレバレである(笑)

■225p

ハヤカワ版:
「約束する。ただのルーチン作業だ。心配はいらない」
原文:
“Ich verspreche, daß wir uns nicht weiter darum kümmerun, wenn es sich um etwas Alltägliches handeln sollte”,

試訳:
「約束する。もしこれが日常的なものであれば、それ以上関知しない、と」

作業がルーチンではない。通信の内容がルーチンか否か、なのだ。

ハヤカワ版:
「いえ」と、ジェフリー・アベル・ワリンジャーが皮肉に、「正確には、すでに三分半ほど超過しています」
原文:
“Nein”, bestätigte Waringer ironisch. “Es fehlen noch dreieinhalb Minuten.”

試訳:
「それはもう」と、ワリンジャーが皮肉に、「あと三分半も足りませんな」

前の文章が「まだ経過していない(noch nicht vorbei)」だから、Nein は肯定の回答である。
だからこそ、ワリンジャーは「皮肉に認めた」のだ。

ハヤカワ版:
「非常シグナルか!」ローダンは満足そうにくりかえした。
原文:
“Notsignale!” wiederholte Rhodan. Fast hätte er seine Zufriedenhait zu deutlich gezeigt.

試訳:
「非常シグナルか!」ローダンはくりかえした。あやうく満足げな表情を浮かべるところであった。

だから、そこで満面の笑みを浮かべたらバレバレだとさっきから(笑)

ハヤカワ版:
偶然に拾った非常シグナルにいちいち反応してたら、
原文:
Wenn wir uns um jedes Funksignal kümmern wollen, das wir zufällig aufschnappen,

試訳:
「たまたま小耳にはさんだ通信にいちいち反応してたら、

非常シグナル、ではない。なんか通信に、である。
あと、非常シグナルっつーか、「救難信号」じゃない?

■226p

ハヤカワ版:
無理もない。宙航士たちは一秒でも早くこの空間をはなれ、銀河系に向かいたいのだ。この十年、ずっとそうだったように。
原文:
Kein Wunder, es hielten sich fast ausschließlich Raumfahrer in diesem Raum auf, die die Milchstraße als ihre Heimat ansahen und endlich wissen wollten, was sich dort in den vergangenen Jahrzehnten ereignet hatte.

試訳:
無理もない。いまこの部屋にいる宙航士の大半が、銀河系を故郷とみなし、そこでこの数十年に何があったかを知りたくてやきもきしているのだ。

《ソル》生まれはどっかで凱旋パーティでも開いてるのか?(笑)
fast ausschließlich は「ほぼ独占的に」。Jahrzenten は複数形なので「数十年」。まあこの数字は、具体的にはメールシュトロームへの誤転送以降のことだろうから、「一世紀余り」などとする手もあるだろう。だいたい、「この十年」って、ストーリー上はしょられてる部分じゃないの。

ハヤカワ版:
 この時点では、そこでなにを発見するか、だれにもわからない。
原文:
Niemand konnte zu diesem Zeitpunkt ahnen, daß dies der Auftakt einer unheimlichen Entdeckung sein sollte.

試訳:
 この時点では、これがあるぶきみな発見の序曲であることを、だれひとり予感すらしていなかった。

次が新人作家パットンなので、見え見えの伏線というかヒキである。

……。
よーし、終わった終わった(笑)
笑いごとじゃないや。9章、マジどーすっかなぁ。最初の3ページ、文字通り真っ赤なんだよなぁ……。