テル女:用語チェック (2)

過去III・ヴリション編の照合に移る前に、用語チェックの第2回を。
人名とかは、わざとちがう読みにしているものもある。自分なりの理由はあるが、それはそれ、適当に読み流してかまわない。

■人物
ヴリション Vlission
フョルト Fyolt
ドラシオル Dlassior
ウォウルトー Woulto
グヌルウォン Gnurwon
ソティウル Sotiul
コスペーリオル Kospeelior
ミリュス Miryus

■科学技術等
ナルヴィオン艦 Narvion-Raumer
ナルヴィオン艦隊 Narvion-Flotte
超光速シュプール Überlichtspur
浮遊ピストル Schwebepistole
浮遊シェル Schwebeschale
計算・通信設備 Rechnen- und Kommunikationsanlagen
情報壁 Informationswände
のこぎり波 Welle in Form einer gezackten Linie
矩形波 Welle in Form des Rechteckimpulses

浮遊ピストルは昔の「宇宙銃」みたいなイメージなんかなー(笑)とか、せっかくそーゆー妄想をたくましくできる原語なのに、普段使っている用語に脳内変換して飛翔装置とかグライダーとか、MOTTAINAIじゃろw

計算・通信(コミュニケーション)設備、というのは、ティオトロニクスの別名。カラジアン編から出ている言い回しだが、ヴリション編だと、とある個所で重要なポイントになる。
情報壁は、カラジアン編に出てきたティオトロン(情報)壁と同じものだろう。これ、何にもないところにいきなりスクリーンがにょきっと出現するっぽいのだが。フォルムエネルギー製だったりするのか?

のこぎり波は……Wikiじゃそうなっているのだが……鋸歯状波の方が絶対かっこいいよねぇ……。鋸が常用漢字に入ってないとかその程度の理由なんだろうなきっと。だったら矩形波もラーメン波とかに(巻いてません)。

■その他
わたしの場合、たとえば Milchstraße は「(天の川)銀河系」、Galaxis は「銀河」と、決めうちで訳す単語がある(前者は人類銀河の固有名詞、後者は一般名詞)。以下は、それに類するものをいくつかまとめて取りあげた。

街路 Schneise
回廊 Korridor

Schneise は辞書を見ると「林道」となっている。「(森の中に)切り開かれた道」がルーツ。ローダンだとこれまで、平和ドライバー関連の「宇宙林道」や、アンスレスタ銀河の高エネルギー宙域〈林道〉で訳語として使用している。
今回、この単語は、ヴリション編途中まではすべて「通廊」と訳されているが、1回出てきた Korridor を「通廊」とやって以降、いきなり「街路」一辺倒になっている。編集さんが手をいれたのかなーとも思うが、できたら統一してほしかった。
基本的に、建物の間にある歩道と思われるので、Schneise は「街路」でよかろう。Korridor は建物内だったので「通廊」ないし「回廊」で。

情報 Information
ニュース Nachricht
メッセージ Botschaft

ヴリション編では、Botschaft がすべて「情報」になっている。インフォメーションとの違いが顧慮されていないのと、普通 Botschaft は「大使、遣い、知らせ」であって、「情報」と訳すことはまずない。これまでの経験からいって、人物を指さなければ「メッセージ」と訳しておけばだいたい問題ない。
余談だが、アンドロメダのケムテンツは「大使館惑星」Botschaftsplanet である。

永劫 Äon
永遠 Ewigkeit
無限 Unendlichkeit

前者2つは時間的、Unendlichkeit は空間的に使われることが多いように思う。他にも「永久」とか「久遠」とか訳の候補はあろうが、そのへんは体感的に(笑)
Unendlichkeit は、終わり(限界)がないこと、なので、たいていは「無限」。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の原題が Die unendliche Geschichte なのはご存じの方も多かろう。

数百万 Millionen
数十億 Milliarden
数兆 Billionen

数の単位で、ローダンでわりとよく出てくる。TNT火薬でメガ・ギガ・テラ屯相当、とかやるのと対応している。
ところがこれが、英語だと million – billion – trillion になる、のかな。ビリオンの位置が異なるので要注意、なのだが……。

というわけで、ヴリション編本編照合へつづく。

テル女:誤訳チェック (3)

さて、3回目はカラジアン編の最終回、アーカイヴ操作センターのドンパチ・シーンである。
データの「吸出し」がすべて「受信」になっていたりするが、そのへんはさておいて。
原文と内容にゴッドハンドな隔たりがあるのを2箇所ほど。あとはついでである。

ハヤカワ版:(p156)
最後の接続も、まもなく完了するはず。

原文:
Schon nach wenigen Augenblicken hatte er die letzten Anschlüsse hergestellt.

試訳:
まもなく最後の接続も完了した。

接続が終わった=変な考えを起こす余地がなくなった。なので、ヘイセルは部屋を出ていくのだ。

ハヤカワ版:(p157)
通廊を抜けられない以上、戦闘が終わるまで、そこで待つしかなかった。

原文:
Er hatte keine Wahl, als hier zu warten, bis der Kampf, über dessen Ausgang keine Zweifel bestanden, beendet war.

試訳:
結末のわかりきった戦闘が終わるまで、ここで待つ以外に選択肢はなかった。

Ausgang は「出口、結果」で、この場合は、「そのAusgangについて疑いの生じることのない」戦闘、という風にかかるので、物理的な「操作室からの出口」ではなく、戦闘の結果・結末を意味する。物量からして、負け戦は確実、なのだ。

ハヤカワ版:(p158)
クロノグラフ

原文:
Zeitmesser

試訳:
時計

まあ、ローダンには 時計 Uhr という単語自体、それほど登場しないのだが。
計算機(脳)→ポジトロニクスみたいな特殊な例はともかく、電子→エレクトロンみたいな無理やりな変換はどーかと思う。これも、クロノメーターだったりクロノグラフだったりするけど、たいていツァイトメッサー(時間計測器)だから、ふつうに時計でよさげ。

さて、ここで、この場面の状況を思い出していただこう。

・カラジアンが、定時をすぎて違法残業をおこない、アーカイブセンターに潜む。
・ヘイセルら竜騎兵が、開かない扉に業を煮やして爆破・侵入。
・データのダウンロードには徹夜と言われて、ヘイセル「この部屋を防衛する」と宣言。
・外の通廊から銃撃音。
・ドンパチを潜り抜けられそうにないので、センター操作室でカラジアン泣き寝入り。

ハヤカワ版:
自分が操作室にひとりでいるということは、竜騎兵たちがまだ立ちふさがっているのだろう。

原文:
Die Tatsache, daß er sich noch immer allein innerhalb des Schaltraums aufhielt, ließ ihn vermuten, daß die Dragoner standgehalten hatten.

試訳:
自分が操作室にひとりきりということは、どうやら竜騎兵たちは持ちこたえたらしい。

持ちこたえたと、推察させる、が直訳。結末(負け)は確実と考えていたから、すなわち【防衛中】のはず。
だから、ここは実は誤訳ではない。くりかえす、防衛中のはずである。

ハヤカワ版:
 ヘイセルたちが撤退したとは思えなかった。

原文:
  Callazian konnte sich nicht vorstellen, daß die Angreifer aufgegeben und sich zurückgezogen hatten.

試訳:
 攻撃サイドがあきらめ、撤退したとはカラジアンには思われなかった。

ここで防衛と攻撃がパラダイムシフト(笑)

そもそもヘイセルたちは撤退しようにも、銃火の応酬は、這い出るすきもない、とカラジアンがひきかえしたくらいである。まして革命兵士なんて言ってみれば狂信者なので、死守、が前提のはず。
自分がまだここにいる→ヘイセルたちはもちこたえた→攻撃側(体制側)があきらめるはずがない→なんで静かなんだろう、と続く。

ハヤカワ版:(p159)
「ここにいろ」

原文:
  “Sie werden gleich hier sein”, sagte der Dragoner.

試訳:
「すぐに、やつらが、来る」と、竜騎兵。

この場合 Sie は三人称複数の sie「彼ら」= Angreifer である。
カラジアンに「ここにいろ」と言ったわけではない。

他の原文を見ればわかるが、ソベル人は互いに呼び合うときに尊称 Sie は用いず、du を使う(命令形なら、”Du bleibst hier!”)。そもそもカラジアンを指しているはずがないのだ。

2019/06/23 ハヤカワ版抜粋追加

テル女:誤訳チェック (2)

で、今回、いちばん泣けた誤訳である。

ハヤカワ版:(p150)
「生きのこる者はいるかもしれないが、あてにはできないだろう。いや、宇宙と、そこに生きる人々に遺産を託すことはできない。われわれの知識をうけつぐ者は、そこに内包されている危険に対する警告もうけいれなくてはならないから

原文:
  “Es läßt sich nicht ausschließen, daß es Überlebende geben wird aber darauf wollen wir uns nicht verlassen. Nein, wir übergeben unser Vermächtnis dem Universum und den darin lebenden Völkern. Sie sollen unser Wissen erhalten und damit verbunden die Warnung vor den Gefahren, die es beinhaltet.”

語義:
Nein いや
wir われわれは
übergeben 引き渡す
unser Vermächtnis われわれの遺産を
dem Universum 宇宙に
und そして
den darin lebenden Völkern そこ(宇宙)に生きる種族たちに
Sie 彼ら(そこ(宇宙)に生きる種族たち)は
sollen べきだ
unser Wissen われわれの知識を
erhalten 受け取る
und そして
damit verbunden それ(われわれの知識)に付随して
die Warnung 警告を
vor den Gefahren 危機に対する
die 〔関係代名詞〕(=危機)
es それ(われわれの知識)が
beinhaltet 内包する

直訳:
いや、われわれは引き渡す、われわれの遺産を、宇宙に、そしてそこ(宇宙)に生きる種族たちに。

彼ら(そこ(宇宙)に生きる種族たち)は受け取るべきだ、われわれの知識を、そしてそれ(われわれの知識)に付随した、それ(われわれの知識)が内包する危機に対する警告を。

余計な装飾を排除して考えれば、
遺産を・宇宙と・種族に・引き渡す。
種族は・知識と・警告を・受け取る・べきだ。
となる。

試訳:
「生き残りがいる可能性も除外できないが、それをあてにはしない。いや、遺産を託すのは、宇宙と、そこに生きる無数の種族にだ。われわれの知識と、付随して内包される危機への警告とを伝えねばならぬ

かれらはこの後、何をしようとしている? プリオール波動を介して遺産(知識と警告)を大宇宙の諸種族に伝えようとしているのじゃないか?(それは、失敗して、ヴリションの世代を待たねばならないわけだが)
頭にナインがついているだけで、ソベル人の決意を全否定してどーするの。話がそこで終わっちゃったじゃないか。

テル女:誤訳チェック (1)

ヴリション編、ざっと見たところでは、重大な誤訳といえるものはなさそうだ。細かいとこは、まあいっぱいあるのだが……後半はまとめてざっとアップする形になるかもしれない。
とりあえず今回は、カラジアン編のなかでも、なんでそーなるの、というヤツだけピックアップしてみた。

ハヤカワ版:(p126)
ドリソル光路で娯楽公園にたどりつける確率はあまりにもちいさく、カラジアンはしばしば、ソベル人数百万人のなかに、ドリソル光路を使おうなどと考えるほどの楽天家が何人いるだろうと自問した。

原文:
Die Wahrscheinlichkeit, über Drysor-Strahl in die Vergnügungsparks zu gelangen, war so gering, daß Callazian sich oft genug gefragt hatte, wer die vielen Millionen Soberer waren, die soviel Optimismus aufbrachten, Drysor-Strahl zu benutzen.

試訳:
ドリソール射路で娯楽公園にたどりつける確率はおそろしく低く、カラジアンはしばしば、数百万はいるドリソール射路の利用者とはどれほど楽天家なのだろうかと自問するのだった。

直訳すると、「ドリソール射路を利用するほどの楽天主義を発揮する数百万のソベル人とは何者であろうか、とカラジアンがしばしば自問するほど、ドリソール射路で娯楽公園にたどりつく確率は低い」である。実際、大勢が使っているから、混雑しているわけで。

ハヤカワ版:(p128)
 通廊の両側の壁には、ティオトロニクスから大衆に向けたニュースが流れていた。通廊のすぐ上では警告灯が点灯し、ニュースを見逃した者たちのために、意識不明者が二名でたとの情報を流している。
 ブロストの中心部に、情報も知らずに行こうとする者はいない。

原文:
Die tiotronischen Wände zu beiden Seiten der Zugangsschneise plärrten ihre Nachricht auf die Menge hernieder, und unmittelbar über dem Zugang blitzten die bunten Lichter zweier Unterbewußtseinsinformationen für die Soberer, die die Pflichtnachrichten versäumt hatten.
Kein denkendes Wesen würde uninformiert in die Zentren von Blosth gelangen.

試訳:
 進入路両側のティオトロン情報壁が群集へとニュースを声高に叫び、入口直上では義務ニュースを見逃したものむけに、極彩色のライトが二種類の潜在意識インフォをきらめかせる。
 いやしくも思考する存在なら、ブロスト中心部へむかうとき、情報を与えられずにはおれないのだ。

ティオトロン情報壁は、ヴリション編の描写から映像を映し出すと思われる。潜在意識インフォは、意訳として「サブリミナル情報」でも通じるかもしれない。
そして、能動的に情報を取得しようとせずともそこにあるからこその完全情報化社会なのだ。

フォルツの造語が、訳すのめんどくさかったのは、百歩譲っていいとして(個人的にはよくないが)も、「意識不明者」ってのはなんだい。bewußtlos でも ohnmächtig でもないだろう。

ハヤカワ版:(p134)
「重要なのは、なによりも情報化だ!」

原文:
“Es ist wichtig, über alles informiert zu sein!”

試訳:
「重要なのは、すべての情報を得られることだ!」

ありとあらゆるものについての情報を与えられること、である。
カンマの位置がちがえば、まだわからないでもないのだが。

ハヤカワ版:(p140)
 コストロイは心配無用というが、情報がすくなすぎて、カラジアンは不安だった。

原文:
Es waren weniger die Informationen, die Callazian beunruhigten, als die ruhige Selbstverständlichkeit, mit der Kostroy sie ihm übermittelte.

試訳:
 カラジアンを不安にさせたのは、情報の内容よりも、むしろそれを伝えるコストロイの静かな自信だった。

weniger …… als ~ で、「……よりも~」となる。英語の no less …… than ~ と似ているんじゃなかろうか。
weniger / die Information なので、「情報が少ない」わけではないのだ。「情報は、自信より(比重が)少ない」である。

で、「どうにも訳知りげな顔してしゃべるんだよなー」と、つづくわけ。

ハヤカワ版:(p143)
旧宇宙軍のエリート部隊がこんな……こんな……」
「反動的なことを?」ヘイセルがあとをつづけた。

原文:
Die Elitetruppe unserer ehemaligen Raumstreitmacht gilt doch als… als…”
“Reaktionär?” half Heysel aus.

試訳:
旧宇宙軍のエリート部隊は、だが、どちらかというと……その……」
「反動主義者のはず?」と、ヘイセルが語をついだ。

これから彼らが何をやろうとしているか、もう一度よく考えてみよう。言葉をとりつくろってはいるが、要するに革命である。革命は、ふつう反動的とは言わない。革新的とか、せいぜい反体制、だろう。
Reaktionär「反動主義者」なのは、「体制側」であるはずのドラゴナーを指す。カラジアンとしては、「竜騎兵は反動主義者(ティオトロニクスの秩序の走狗)とみなされているのに、どうしてここに?」と言いたかったのだ。

ハヤカワ版:(p145)
さらにその口調から、かれが懐古趣味に好意を持っていないことも推測できた。

原文:
der ungeduldige Unterton in seiner Stimme bewies, daß Heysel nichts für zeitraubnende Zeremonien übrig hatte.

試訳:
いらだたしげな口調は、時間のかかる儀礼的な会話を無駄とみなしていることの証。

時間のかかる儀式のためには何も持っていない――はじめましてとか、説明なんてめんどっちぃ、と思っていることがバレバレなのである。

ハヤカワ版:(p147)
「ブロスト全体のことを心配している人たちよ」と、ずんぐりした女性がいう。

原文:
“Wir haben Sympathisanten auf ganz Blosth”, fügte eine stämmige Frau hinzu,

試訳:
「わたしたちのシンパはブロストじゅうにいるわ」と、ずんぐりした女性がつけたした。

ブロスト全域にシンパシーを持っている、と読んだのだろうか。斜め読みすぎだろう。
ここで会った人はほぼ科学者→他にもおるでえ、みたいな流れなのだ。

ハヤカワ版:(p148)
「そうだとしても、この地区はうまくやっています」

原文:
“Aber es wird doch sehr viel auf diesem Gebiet getan.”

試訳:
「ですが、その分野では多くの対策が講じられています」

とても多くのことがなされている、が直訳。それを「対策」としたのは意訳である。

ハヤカワ版:(p152)
「これまでにテルムの女帝について判明したことには、まだ推測の部分が大きい」

原文:
“Alles, was wir über die Kaiserin von Therm bisher in Erfahrung bringen konnten, gibt der Spekulation breiten Raum”,

試訳:
「これまでテルムの女帝について知りえたすべてが、推測に大きな幅をもたらす」

いろんなことが考えられるけど、結局、百聞は一見にしかずだよねー、というお話。
これなんか、訳文だけみるとつじつま合っているから、よけいタチ悪いよねー。

……とまあ、過去I が大半だが、主なところはこんな感じ。
そして、もうひとつ。最大の読解ミスは、次の項で。

2019/06/21 ハヤカワ版抜粋追加

テル女:用語チェック (1)

800話『テルムの女帝』の照合は、複数回に分けておこなうが、

(1) カラジアン編  人類I ~ 過去II
(2) ヴリション編  人類III ~ 創生III
(3) 超知性体編  人類IV ~ 人類VII

くらいの感じでいこうかと。
第1回目の今回は、(1) カラジアン編の用語一覧である。

■ 場所
ゴルガトヌル銀河 Galaxis Golgatnur
セールコシュ星系 Seerkoch-System
ブロスト Blosth
ソベル人 Soberer

■ 人物
カラジアン Callazian
コストロイ Kostroy
ヘイセル Heysel
ゾサリオス Zosarios
無性者 Geschlechtslose
アーカイヴ管理者 Archivverwalter
竜騎兵 Dragoner
ティオトロン工学者 Tiotroniker

……なんでゾサリオスだけ読みが変なのかはよくわからない。
ソベル人が魚の末裔かトカゲの末裔かは不明だが。「竜」騎兵というから爬虫類型か。
ティオトロン科学者、よりは、ポジトロン工学者に倣って、という程度。

■ 科学技術
ティオトロニクス Tiotroniken
搬送射路 Transportstrahlen
クリオール射路 Cryor-Strahl
ドリソール射路 Drysor-Strahl
プリオール波動 Prior-Welle
居住ケトル Wohnkessel

……光路、という訳は悪くないと思う。つーか、かっけー。あえて変えてみたのは、地下鉄を駆逐したこの技術、たぶん転送機(超光速ベース)である。

「プリオール」は、ラテン語で「第一の、(優)先の」で、プライオリティ(優先度)とかと同根。あえて意味のわかりづらい英語読みで、ペンチっぽくしなくてもいいはずだ。せめて第一波動とかだったらなー。

Kessel は「鍋、釜、盆地」で、それなりに建物の形が想像できるはず。

■ 情報化社会
〈ティオトロニクスの秩序〉die tiotronische Ordnung
情報不与者 Informationsunwürdige
非情報 Uninformation
義務ニュース Pflichtnachrichten
ティオトロン情報壁 tiotronischen Wände
潜在意識インフォ Unterbewußtseinsinformationen

……ティオトロニクスの「秩序」は、今後のフォルツ話でキーとなる「宇宙秩序と混沌の二極対立」のかたわれ。もう一方をカオス、カオスと連呼しているのは、ちょっとさびしい。
情報不能者、という訳語はすっきりしていていいと思うが、これって「子供とお年寄りは免許の対象外」なので、もうちょっといい訳ないかなあ。昔の同人訳では「情報不適格者」にしたが、長いよねぇ。
非情報は、非(取扱)情報なのかな。昨今では個人情報として非開示のものも含まれるけど、非(開示)情報にしては、わりとよろしくないイメージもありそうだし。不(可触)情報かもねえ。
最後の3つは――ハヤカワ版には存在しない。まあ、カラジアン編以降には登場しない用語だし? めんどくさくなる気持ちもわからないではない……けどね。あんなひどい誤訳さえしなければ。

と、いうわけで、次回はカラジアン編本編の照合。

まじ泣けてきた……

ラスヴィッツ賞をディンフォに丸投げしているあたり、やる気と時間の足りてないことが推察していただけそうな昨今。ハヤカワ版で、記念巻というべき400巻『テルムの女帝』が刊行された。された……んだけど……。
ぶっちゃけ、「内容よりも月2巻刊行」なのがひしひしと感じられる翻訳だった。グインの方もたいがいだが、そろそろこっちも本気で解脱せにゃならん時機やもしれぬ。

本題である「テルムの女帝」は、また後日として。
前半「テラとの別離」冒頭部と、某掲示板で誰かが書いてた部分について:

ハヤカワ版:(p11)
「ずっと疑問なのだが、なぜそんなことをするのだろう?」と、カウク。
「どこが疑問なんだ? 敵がもう、こちらのかくれ場を知っているとでも思うのか?」
「そうだ。地球に抵抗組織があることはわかっている。旧政府の中心地がここにあったことをしめす情報にも、ことかかないはず。われわれがここにかくれていることは、とっくに気づいているにちがいない」
「(中略)ここにきて手段を変更したのは、われわれの抵抗が長びくと判断したからかもしれない」

原文:
“Ich frage mich schon die ganze Zeit über, warum sie solange dazu brauchen”, sagte er.
“Wieso? Hattest du erwartet daß sie uns früher auf die Schliche kommen würden?”
“Natürlich”, antwortete Kauk. “Sie wissen, daß es auf der Erde eine Widerstandsgruppe gibt. Sie können überall Informationen finden, daß das Kontrollzentrum der früheren Regierung in dieser Gegend liegt. Also müßten sie schon längst auf den Gedanken gekommen sein, daß wir hier untergekrochen sind.”
” (…) Erst jetzt greifen sie zu anderen Methoden. Sie hatten nicht damit gerechnet, daß wir so lange Widerstand leisten könnten.”

試訳:
「ずっと疑問だったんだが、むしろどうしてこんなに時間がかかったんだろう?」
「なんだって? もっと早期に看破されるのを予想してたっていうのか?」
「もちろん。地球に抵抗組織があるのはわかってる。旧政府のコントロール・センターがこのへんだったという情報ならそこらじゅうでみつかる。われわれがここに隠れていると、とっくに考えてなきゃおかしい」
「(中略)ここにきて、ようやく別の手段を講じてきた。われわれがこれほど長期にわたって抵抗するとは思ってもみなかったのでしょう」

テラの神経中枢(インペリウム=アルファ近辺)で捜索がおこなわれないのはなぜかなー、というかねての疑問、である。 続く後続の文章がほぼ原意通りなので騙されるが、索敵自体を不思議がるカウク、相当おかしい。
まあ、それだけフルクースが小陛下だよりで、ルーチンワークしかしてないってことだが。

ハヤカワ版:(p23)
「五十体のK=2が駐屯していた地域ならわかります。地区までは不明ですが」

原文:
“Wenn es sich bei den fünfzig Ka-zwos um die gesamte Streitmacht des Standorts gehandelt hat, dann kann dieser Standort nur eine Präfektur, nicht aber ein Bezirksamt gewesen sein”, erklärte er.

試訳:
「全戦力でK=2五十体というなら、地域ではなく、地区ですね」

中国東部、というネタ(の一部)から絞り込んでいくのであって、知っているわけではない。
ここはあくまで戦力と管轄エリアの規模の相関関係の話。邦訳が正しいなら、話の流れは、50体が常駐していた地区は、どこそこ……となるはずだし。

直訳すると「ただの県ですね、区じゃありません」なんだけど。日本の感覚とちがうから……。

■100p

ハヤカワ版:(p100)
周囲の恒星のスペクトルを観測し、女帝の研究員が“たぶん惑星あり”と分類する恒星を発見。それはテラナーの航宙士が数世紀前から知っている星系だった。

原文:
Er untersuchte die Sterne der näheren Umgebung auf ihre spektrale Beschaffenheit. Die Kriterien, nach denen der Forscher der Kaiserin einen Sternen als “wahrscheinlich planetenbesitzend” einstufte, waren dieselben, die auch die terranische Raumfahrt schon seit Jahrhunderten kannte.

試訳:
周囲の恒星のスペクトルを分析。女帝の研究者が“たぶん惑星あり”と判断する基準は、テラナーの宙航士が数世紀来知っているものと同一だった。

未知恒星系だから、命名とかするんじゃないかなあ。

……こっちは全文照合なんてしてる余裕ないし。冒頭部しかないのは、ぶっちゃけた話、そっから先を読んでないからである。
800話は、過去、訳した経験(と、恥ずかしい過去もとい翻訳原稿)があるから、近々に、ちゃんとしたカタチでやるつもり。たぶん、最後の照合になるだろうし。
5/19 原文くらいつけなはれというご指摘に対応
2019/06/21 ハヤカワ版の抜粋を追加&説明文を若干修正