バジスバジス亀の子バジス (1)

昔、《ソル》といえば鉄アレイ、《バジス》といえば亀の子タワシだった(私的見解)
ダンベルと聞くと、どうしてもバーベルの縮小版を連想してしまうわけだが、まあそれは今回はさておいて(笑)
亀の子タワシは、ぐるりと輪で結束されているあたりが、いかにも《バジス》っぽくて微笑ましい比喩であったのだ。さて、いよいよその登場回だが。

しかし、まず最初に、わたしの苦手な分野からすませてしまおう。
数字の訂正の話である。
7/31 参考文献追加
   そして単位をそろえてねぇええっorz箇所訂正

テラワットとキロワットの深くて暗い溝

■ハヤカワ版(P15)
「計測可能な活動に必要な消費エネルギーの総計は、十八テラキロワットに相当しますが、実際の消費量は二十六テラキロワットになっています」

原文:
  “Die Summe aller beobachtbaren Tätigkeiten der Hyperinpotronik entspricht einem Leistungsverbrauch von achtzehn Terawatt. Der tatsächliche Leistungsverbrauch liegt bei sechsundzwanzig.”

試訳:
「ハイパーインポトロニクスの公開された活動を合計すると、消費電力は十八テラワット。ですが、実際の消費電力は二十六テラワット前後に達しています」

Leistungsverbrauch は「消費電力」。何ワットの電力を消費するか、という言葉である。相当する、じゃなくて、まんま電力のお話。
「ネーサンは、公称18テラワットの出力(発電能力)がある発電所をフル稼働させますといいながら、実は26テラワットの出力(電力)を使用していました」ということだ。

○「26テラワットを使った」
×「1時間あたり26テラワットを使った」
×「年間累計で26テラワットを使った」

「あとがきにかえて」で訳者さんがいろいろと書いているが、どうやら、意味をちゃんとわかっていないデータを横並べにして、意味の異なるデータを「比較」して、とんでもなく間違った結論を導き出している。
本文で話題になっているのは、出力(発電能力)をどう分配(使用)しているかである。
作業内容が明らかなものが18テラワット、隠蔽されていたものが8テラワットということだ。合計26テラワット。

さて、そこで問題なのが、

■ハヤカワ版(P262)
日本の電力会社の総発電量というものが、(中略)それを合計してみたところ、一時間あたり最大で二億キロワットほどになった。

一般にいう日本の電力会社の総発電量、というのは出力(発電能力)の話。「東電が6500万キロワットの発電能力がある」とか、TVでもよく見かけるようになった。日本全体では最大2億キロワット前後を生産できる。
ただし、(キロ)ワットに、「1時間あたり」という意味などない。

単位をそろえて比較してみよう。

ネーサン管轄下の発電能力 26テラワット=26兆ワット
日本(2012年)の発電能力 2億キロワット=2000億ワット

26兆ワットって、「すくなすぎる」かな?

次に問題なのは、

■ハヤカワ版(P262)
二〇〇八年の世界の総発電量は二十兆キロワット、そのうち日本が一兆キロワット

そんなデータはない。とゆーか、そもそも単位が間違っているのだ。
正しくは、「二〇〇八年の世界の総発電量は二十兆キロワット時、そのうち日本が一兆キロワット時」である。

キロワット時は、「ワット(仕事率)×時間」であらわされる、仕事量である。
日本の総発電量が一兆キロワット時、というのは、2008年の1年間に作った電気を【1ワット×1時間】という単位で数えたら、1000兆個あった、と言っているのだ。
なので、上記・年間の総発電量とは、出力××キロワット(日中or夜間や、季節ごとに可変)で8784時間(366日×24時間)にわたり発電したエネルギー総量のこと。それは桁もくりあがろうというもの。そもそも前2つと同列に論じるべきではない。

ちなみに、18テラワットの出力で発電し続けた場合の総発電量は:
1時間で、“18テラワット時”である。
2時間で、“36テラワット時”である。
1年間では、18テラワット×(366日×24時間)=158,112テラワット時
となる。

単位をそろえて比較してみよう。

ネーサン管轄下の年間発電量 15京8112兆ワット時
2008年の世界の年間発電量 20兆キロワット時=2京ワット時

15京ワット時は、「すくなすぎる」だろうか?

ちゃんと検証しないで、原文の内容を改竄するとか、噴飯モノである。
上記総発電量などを参照すると、世界に占める日本の発電力は5~6%だから、2012年における地球の総発電力は大雑把に4テラワット前後と考えられる。その数倍である原文の数字のままで、なんら問題はないのであった。

ひるがえって、Perrypedia等をひもといてみると、
・ダッカルカムによる銀河系=グルエルフィン間通信に必要な出力が50テラワット
・《クレストIII》の発電力18995テラワット
・《TS-コルドバ》の発電力80万テラワット
といったものすごい数字(笑)がぽろぽろ出てくる。軍事と民生等の差もあろう。しかし、1978年時点でこの話を執筆したマールは、むしろ比較的「現実的な」数字を出したと、そう考えてしかるるべきではないだろうか。

そもそものはじまりは、《バジス》の重量や形状について、訳文でわからない箇所について質問を頂いたことだった。本題にいく前に、このありさまである。いやはや。
と、いうわけで、次回は「謎の宇宙船1万隻」について考証する。

■総務省統計局:世界の統計 第6章 エネルギー 最新版(2019年時)のページ
■時事ドットコム:42年前と現在の電力事情比較 (リンク切れ)

ファンタスティーク大賞2012本選はじまる

7月14日付けで、ドイツ・ファンタスティーク大賞の2012年本選がはじまった。
期間は8月31日まで。

主だった部門のノミネート作品は以下のとおり:

長編部門 Bester deutschsprachiger Roman:

Andreas Eschbach / Herr aller Dinge / 森羅万象の王 (Bastei Lübbe)
Bernd Perplies / Gegen die Zeit / 時間との競争 (Lyx)
Gesa Schwartz / Nephilim / ネフィリム (Lyx)
Kai Meyer / Arkadien fällt / アルカディア崩壊 (Carlsen)
Markus Heitz / Vernichtender Hass / 破滅もたらす憎悪――アルバの伝説 2 (Piper)

ベルント・ペルプリースは、4月にローダンNEO12巻を担当したばかり。スタトレの翻訳なんかも手がけている。今回の作品は、現代を舞台にした〈魔法のたそがれ〉三部作の第2巻。『時を遡れ!』にしようかとも思ったが……遡んないような気もするし(笑)、無難な仮題で。
大御所カイ・マイヤー、常連マルクス・ハイツともども、シリーズ作品が多い。そして、先般の受賞作リストを見ればおわかりのとおり、これまでノミネートされれば必ずハイツが大賞を獲得している。4連覇(対象作がなかった年を勘案すれば実質7連覇)は、はたしてどうなるか。

短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:

Armin Rößler / Das Versprechen / 約束 (収録:Emotio)
Eddie M. Angerhuber / Die darbenden Schatten
      / 餓える影 (収録:Die darbenden Schatten)
Karla Schmidt / Auf dem Wind. Allein / ただひとり。風に乗り。 (収録:space rocks)
Karsten Kruschel / Violets Verlies / ヴァイオレットの地下牢 (収録:Emotio)
Nina Horvath / Die Duftorgel / 芳香オルガン (収録:Prototypen)
Uwe Post / Träumen Bossgegner von nackten Elfen?
      / ボスキャラどもは裸エルフの夢を見るか? (収録:Prototypen)

収録短編集詳細:
・Emotio: Armin Rößler und Heidrun Jänchen編, Wurdack Verlag
・Die darbenden Schatten: Eddie M. Angerhuber著, Atlantis Verlag
・space rocks: Harald Giersche編, Begedia Verlag
・Prototypen: Harald Giersche編, Begedia Verlag

今回は、わりと前の2賞関連で見たような作品が並んでいる。
その中で、『かつえる影』は、ホラー短編集からの1作。『餓影』だと、どこかのコミックスみたいなので、ちょっぴりルビさんに頑張っていただいた(笑)

海外作品部門 Bester internationaler Roman:

Brandon Sanderson / Der Weg der Könige / The Way of Kings / 王の道 (Heyne)
Carlos Ruiz Zafón / Marina / マリナ (S. Fischer)
Iain Banks / Krieg der Seelen / Surface Detail / サーフィス・ディテール (Heyne)
Patrick Rothfuss / Die Furcht des Weisen 1 / The Wise Man’s Fear
      / 賢者の怖れ (Klett-Cotta)
Ransom Riggs / Die Insel der besonderen Kinder
      / Miss Peregrine’s Home for Peculiar Children / ミス・ペレグリンの特異児童院 (Pan)

ブランドン・サンダースンはミストボーンや時の車輪(最終章)が本邦紹介済み。
カルロス・ルイス・サフォンはスペインの作家で、〈失われた本の墓場〉四部作(4巻未刊行)が順次翻訳出版中。
イアン・バンクスの作品は〈カルチャー〉シリーズの一作。
ロスファスの作品は〈キングキラー・クロニクル〉三部作の二巻目(を二分冊にした前半)。
ランソム・リッグズの処女小説は21世紀FOXが映像化権を購入済みとのこと。

新人部門 Bestes deutschsprachiges Romandebüt:

Andreas Gross & Hans-Peter Schultes / Im Schatten des Blutmondes
      / 血の月影 (Saphir im Stahl)
Janika Nowak / Das Lied der Banshee / バンシーの唄 (Pan)
Kerstin Pflieger / Die Alchemie der Unsterblichkeit / 不死の錬金術 (Goldmann)
Thilo Corzilius / Ravinia / ラヴィニア (Piper)
Thomas Elbel / Asylon / アシュロン (Piper)

やはりファンタスティーク大賞、ファンタジー系が主流である。
とはいえ、シリーズ部門にはアメコミ悪役からの派生シリーズをハイツがノヴェライズしていたり驚くことはいくつかあった。とりあえずは、本選の行方を見守るとしようか。

■DPP公式サイト:Deutscher Phantastik Preis

ファンタスティーク大賞とは&受賞作リスト

ドイツ・ファンタスティーク大賞(Deutscher Phantastik Preis)は、ごやてんで取りあげるSF関連三賞の中では一番歴史が短い……のだが、1999年スタートだから、気がつけばもう10年以上継続しているのだった。

ファンタスティーク大賞は、SF、ホラー、ミステリー、ファンタジー他ジャンルを問わずファンタスティックな情報を掲載するニュースサイト Phantastik-News が主催する、読者投票による文学賞。春に予選(Nominierungsrunde)、実行委員会によるノミネート作リストアップを経て、夏に本選(Endrunde)がおこなわれる。授賞式はフランクフルト書店見本市の期間中に開催。

もともと、Phantastik-News 自体がジャンルを問わないうえ、紙媒体、電子書籍、コミック、映画等々取りあげる関係もあって、カテゴリーも実に多彩である。

  • 国内長編部門(Bester deutschsprachiger Roman)
  • 国内新人部門(Bestes deutschprachiges Romandebüt)
  • 海外長編部門(Bester internationaler Roman)
  • 国内短編部門(Beste deutschsprachige Kurzgeschichte)
  • アンソロジー部門(Beste Original-Anthologie/Kurzgeschichten-Sammlung)
  • シリーズ部門(Beste Serie)
  • グラフィッカー部門(Bester Grafiker)
  • 二次創作部門(Bestes Sekundärwerk)
  • ホームページ部門(Beste Internet-Seite)

以上9部門に分けて表象される。賞金はなし。
今回は、他の2賞との兼ね合いで、長編・短編・海外作品・新人(長編デビュー)の4部門だけをリストアップした。

それらの受賞作は以下のとおり:

長編部門 Bester deutschsprachiger Roman:

1999: Andreas Eschbach / Das Jesus Video / イエスのビデオ
2000: Wolfgang & Heike Hohlbein / Krieg der Engel / 天使戦争
2001: Michael Marrak / Lord Gamma / ロード・ガンマ
2002: Monika Felten / Elfenfeuer / エルフの火
2003: Monika Felten / Die Macht des Elfenfeuers / エルフの火の力
2004: Andreas Eschbach / Der Letzte seiner Art / その型式、最後のひとり
2005: Markus Heitz / Der Krieg der Zwerge / ドワーフの戦争
2006: Markus Heitz / Die Rache der Zwerge / ドワーフの復讐
2007: Markus Heitz / Die Mächte des Feuers / 炎の力
2008: Cornelia Funke / Tintenwelt 3: Tintentod / インキワールド 3: インキたちの最期
2009: Markus Heitz / Das Schicksal der Zwerg / ドワーフの運命
2010: Markus Heitz / Gerechter Zorn – Die Legenden der Albae 1
      / アルバの伝説 1 ――正義の怒り
2011: Markus Heitz / Judastöchter / ユダの娘たち

短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:

1999: Joachim Körber / Der Untergang des Abendlandes / 西洋の没落
2000: Michael Marrak / Wiedergänger / 再行者
2001: Manfred Weinland / Herz in Bernstein / 琥珀の中の心臓
2002: Andreas Gruber / Die letzte Fahrt der Enora Time / エノラ・タイム最後の航海
2003: Michael Marrak / Numinos / ヌミノス
2004: Markus K. Korb / Der Schlafgänger / 夢遊病者
2005: Andreas Eschbach / Quantenmüll / 量子ディスポーザ
2006: Jürgen K. Brandner / Moordämonennacht / 湿原の悪魔の夜
2007: Martin Schemm / Das Lazarus-Projekt / ラザルス計画
2008: Jörg Olbrich / Herz aus Stein / 石の心臓
2009: Christian Endres / Feuerteufel / 炎の悪魔
2010: Karina Cajo: Der Klang der Stille / 静寂の響き
2011: Vanessa Kaiser & Thomas Lohwasser / Das Herz des Jägers / 狩人の心臓

海外作品部門 Bester internationaler Roman:

1999: Terry Pratchett / Schweinsgalopp / Hogfather / 豚のギャロップ
2000: Stephen King / Atlantis / Hearts in Atlantis / アトランティスのこころ
2001: Joanne K. Rowling / Harry Potter und der Feuerkelch
      / Harry Potter and the Goblet of Fire / ハリー・ポッターと炎のゴブレット
2002: Eoin Colfer / Artemis Fowl / Artemis Fowl / アルテミス・ファウル 1: 妖精の身代金
2003: Stephen King & Peter Straub / Das schwarze Haus / Black House / ブラック・ハウス
2004: Joanne K. Rowling / Harry Potter und der Orden des Phoenix
      / Harry Potter and the Order of the Phoenix / ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
2005: Stephen King / Der Turm / The Dark Tower VII: The Dark Tower
      / ダーク・タワー 7: 暗黒の塔
2006: Joanne K. Rowling / Harry Potter und der Halbblutprinz
      / Harry Potter and the Half-Blood Prince / ハリー・ポッターと謎のプリンス
2007: Trudi Canavan / Gilde der schwarzen Magier 1: Die Rebellin
      / The Magicians’ Guild: The Black Magician Trilogy Book 1
      / 黒の魔術師 1: 魔術師のギルド
2008: Joanne K. Rowling / Harry Potter und die Heiligtümer des Todes
      / Harry Potter and the Deathly Hallows / ハリー・ポッターと死の秘宝
2009: Patrick Rothfuss / Der Name des Windes / The Name of the Wind
      / 風の名前(キングキラー・クロニクル 1)
2010: Sergej Lukianenko: Die Ritter der vierzig Inseln / Рыцари Сорока Островов
      / 四十の島の騎士たち
2011: Neil Gaiman / Der lächelnde Odd und die Reise nach Asgard
      / Odd and the Frost Giants / オッドと霜の巨人たち

新人部門 Bestes deutschsprachiges Romandebüt:

2003: Markus Heitz / Die dunkle Zeit 1: Schatten über Ulldart
      / 暗黒時代 1: ウルダートを覆う影
2004: Nina Blazon / Im Bann des Fluchträgers / 呪い持ちの呪縛
2005: Christoph Marzi / Lycidas / リシダス
2006: Andreas Gruber / Der Judas-Schrein / ユダの聖堂
2007: Christoph Hardebusch / Die Trolle / トロール
2008: Oliver Plaschka / Fairwater oder Die Spiegel des Herrn Bartholomew
      / フェアウォーター あるいは バーソロミュー氏の鏡
2009: Ju Honisch / Das Obsidianherz / 黒曜石の心臓
2010: Oliver Dierssen / Fledermausland / 蝙蝠の国
2011: Gesa Schwartz: Grim – Das Siegel des Feuers / 炎の鏡
※日本語タイトルは、邦訳が確認できたもの以外はすべて仮題

2012年がないのは、この賞だけ、まだ選考中だから……というか、予選が終わったばかりである。

こちらは、最近のベストセラー常連作家 Markus Heitz の人気の物凄さが如実にわかる結果となっている。2003年、新人部門創設と同時に受賞し、以降、長編はほとんど一人勝ちの様相を呈している。ドワーフ・シリーズは指環&ハリポタ・ブームが去った日本だと厳しいかもしれないが、ユダの子ら三部作はハヤリの(?)女性ヴァンパイアだよっ >どこぞの出版社さん
また、こんな作家さん(メインはファンタジーだ)でも、声かけられるとひょいひょいゲスト参戦(2615話)しちゃうあたり、ドイツにおけるローダン・シリーズの評価も、われわれが思う以上に高いのかもしれない。高いといいなあw

しかし、ドイツにおけるSF、ホラー、ミステリー、ファンタジーの分類は、わたしあたりの感覚とは相当異なっているのは確かだが、ファンタスティーク(ファンタスチカ、か?)とひとくくりにすると、意外とファンタジー色が強いのには驚かされる。
パベル=メーヴィヒが70年代にDRAGON、MYTHORと、初のドイツ産ファンタジー・ヘフトで苦戦していたのも今は昔ということか。

■DPP公式サイト:Deutscher Phantastik Preis
■母体のニュースサイト:Phantastik-News.de

ラスヴィッツ賞とは&受賞作リスト

クルト・ラスヴィッツ賞(Kurd-Laßwitz-Preis)は、日本のSFファンにも比較的名前が知られている……かもしれない。その名を冠された近代ドイツSFの父ラスヴィッツ(1848 – 1910)の代表作『両惑星物語』が、非英米SFとしては早期(1971年)に早川書房から翻訳出版されているからだろうか。松谷先生、やっぱすごいな。

ラスヴィッツ賞は、1980年、アメリカのネビュラ賞を雛形に創設された、「ドイツ語圏のSFのプロフェッショナルの投票によって選ばれ」た作品に授与される文学賞である。

ここでいうプロとは、作家、翻訳家、グラフィッカー、編集者、出版社、ジャーナリスト、歴代受賞者etc.あたりを指す(ドイツ版Wikiより)。こうした「投票権」を持つ人々に、選考委員会がリストアップした対象作品とともに投票依頼を送っているようだ。中には棄権する人もいらっしゃるみたい。
(本屋大賞……いやSFラノベ好き書店員大賞みたい、といった方が、若い人には通じたりするのかなあw)

当初6つだったカテゴリー(長編、中編、短編、翻訳者、グラフィック、特別賞)は、幾度かの変遷のすえ、現在8部門(長編、中短編、海外作品、翻訳者、グラフィック、サウンドドラマ、特別賞x2)におさまっている。
サウンドドラマ、翻訳者の両部門には別途、専門の選考委員会が置かれる。

前回、ドイツSF大賞の紹介時にちらりと書いたが、ラスヴィッツ賞の場合、必ずしも商業ベースの作品には限らない(前年に初版刊行、の縛りがあるが)。主として特別賞が、マージナル的な位置づけの活動や、作家・ファン活動への功労者賞的な役割を果たしている。
歴代の受賞作品は以下のとおり:

今回は、他賞との兼ね合いで、長編・中短編・海外作品のみリストアップした。

長編部門 Bester Roman:

1981: Georg Zauner / Die Enkel der Raketenbauer / ロケット製作者の孫
1982: Wolfgang Jeschke / Der letzte Tag der Schöpfung / 創世最後の日
1983: Richard Hey / Im Jahr 95 nach Hiroshima / ヒロシマから95年
1984: Thomas R. P. Mielke / Das Sakriversum / 聖宇宙
1985: Herbert W. Franke / Die Kälte des Weltraums / 大宇宙の冷気
1986: Herbert W. Franke / Endzeit / 終末の時
1987: Carl Amery / Die Wallfahrer / 壁をゆく者
1988: Gudrun Pausewang / Die Wolke / 雲
1989: Norbert Stöbe / New York ist himmlisch / ニューヨークは天国だ
1990: Wolfgang Jeschke / Midas / マイダス
1991: Carl Amery / Das Geheimnis der Krypta / 地下聖堂の秘密
1992: Christian Mähr / Fatous Staub / ファトウの塵
1993: Herbert Rosendorfer / Die goldenen Heiligen oder Columbus entdeckt Europa
      / 黄金の聖者たち あるいは コロンブス、ヨーロッパを発見
1994: Thomas Ziegler / Die Stimmen der Nacht / 夜の声
1995: Hans Joachim Alpers / Das zerrissene Land / 引き裂かれた国
1996: Hans Joachim Alpers / Die graue Eminenz / 灰色の枢機卿
1997: Andreas Eschbach / Solarstation / ソラー・ステーション
1998: (該当作なし)
1999: Andreas Eschbach / Das Jesus Video / イエスのビデオ
2000: Andreas Eschbach / Kelwitts Stern / ケルウィットの星
2001: Michael Marrak / Lord Gamma / ロード・ガンマ
2002: Andreas Eschbach / Quest / クエスト
2003: Michael Marrak / Imagon / イマゴン
2004: Andreas Eschbach / Der Letzte seiner Art / その型式、最後のひとり
2005: Frank Schätzing / Der Schwarm / 群体(邦題:深海のYrr)
2006: Wolfgang Jeschke / Das Cusanus-Spiel / クザーヌス・ゲーム
2007: Herbert W. Franke / Auf der Spur des Engels / 天使の足跡
2008: Andreas Eschbach / Ausgebrannt / 石油の枯渇する日
2009: Dietmar Dath / Die Abschaffung der Arten / 種の根絶
2010: Andreas Eschbach / Ein König für Deutschland / ドイツに国王を!
2011: Uwe Post / Walpar Tonnraffir und der Zeigefinger Gottes
      / ヴァルパー・トンラッフィルと神の人差し指
2012: Andreas Eschbach / Herr aller Dinge / 森羅万象の王

中編部門 Beste Erzählung:

1981: Thomas Ziegler / Die sensitiven Jahre / 多感な歳月
1982: Wolfgang Jeschke / Dokumente über den Zustand des Landes vor der Verheerung
      / 荒廃以前の国情に関するドキュメント
1983: Wolfgang Jeschke / Osiris Land / オシリスの国
1984: Thomas Ziegler / Die Stimmen der Nacht / 夜の声
1985: Wolfgang Jeschke / Nekyomanteion / ネクヨマンテイオン
1986: Hans Joachim Alpers & Ronald M. Hahn / Traumjäger / ドリームハンター
1987: Karl Michael Armer / Umkreisungen / 周回
1988: Karl Michael Armer / Die Endlösung der Arbeitslosenfrage
      / 失業問題の究極的解決
1989: Karl Michael Armer / Malessen mitte Biotechnik / バイオテクノロジーの問題
1990: Werner Zillig / Siebzehn Saätze / 十七の文章
1991: Thomas Ziegler / Eine Kleinigkeit für uns Reinkarnauten
      / われら転生航法者にとっては些末な事柄
1992: Horst Pukallus / Das Blei der Zeit / 時間測鉛
1993: Erik Simon / Von der Zeit, von der Erinnerung / 時間について、記憶について
1994: Wolfgang Jeschke / Schlechte Nachrichten aus dem Vatikan / ヴァチカンからの凶報
1995: Simon Zwystein (Erik Simon, Angela & Karlheinz Steinmüller)
      / Leichter als Vakuum / 真空よりも軽く
1996: Norbert Stöbe / Der Durst der Stadt / 都市の渇き

短編部門 Beste Kurzgeschichte:

1981: Ronald M. Hahn / Auf dem großen Strom / 大いなる河の流れに
1982: Ronald M. Hahn / Ein paar kurze durch die Zensur geschmuggelte Szenen
        aus den Akten der Freiheit & Abenteuer GmbH
      / 自由と冒険有限会社文書より検閲官たちが抜き出した二三の短い場面
1983: Andreas Brandhorst / Die Planktonfischer / プランクトン猟師
1984: Herbert W. Franke / Atem der Sonne / 太陽の息吹
1985: Carl Amery / Nur einen Sommer gönnt ihr Gewaltigen / ただ夏だけの力
1986: Reinmar Cunis / Polarlicht / 極光
1987: Rainer Erler / Play Future / プレイ・フューチャー
1989: Rainer Erler / Der Käse / チーズ
1990: Gisbert Haefs / Wanderlust / 旅情
1991: Peter Robert / Simulation / シミュレーション
1992: Peter Schattschneider / Pflegeleicht / 世話いらず
1993: Angela Steinmüller / Der Kerzenmacher / 蝋燭職人
1994: Gert Prokop / Liebe, Du zärtlicher, zitternder Vogel / 愛、汝かよわき震える鳥よ
1995: Peter Schattschneider / Brief aus dem Jenseits / 彼方からの手紙
1996: Michael Ende / Der lange Weg nach Santa Cruz / サンタ・クルスへの長い旅

中短編部門 Beste Kurzgeschichte/Erzählung:(1997年に中編・短編両部門を統合)

1997: Wolfgang Jeschke / Partner fürs Leben / 生涯のパートナー
1998: Malte S. Sembten / Blind Date / ブラインド・デート
1999: Marcus Hammerschmitt / Wüstenlack / 砂漠ワニス
2000: Wolfgang Jeschke / Die Cusanische Acceleratio / クザーヌス加速
2001: Marcus Hammerschmitt / Troubadoure / 吟遊詩人
2002: Wolfgang Jeschke / Allah akbar And So Smart Our NLWs
      / アッラーは偉大なり――とってもスマートな僕らの無力化兵器
2003: Erik Simon / Spiel beendet, sagte der Sumpf / ゲームはおしまい、と沼が言った。
2004: Angela Steinmüller und Karlheinz Steinmüller / Vor der Zeitreise
      / タイムトラベルの前に
2005: Wolfgang Jeschke / Das Geschmeide / 宝石
2006: Rainer Erler / An e-Star is born / e-スター誕生
2007: Marcus Hammerschmitt / Canea Null / カネア・ゼロ
2008: Michael K. Iwoleit / Der Moloch / モロク
2009: Andreas Eschbach / Survival-Training / サバイバル訓練
    Heidrun Jänchen / Ein Geschäft wie jedes andere / ごくありふれた職業
2010: Ernst-Eberhard Manski / Das Klassentreffen der Weserwinzer
      / ヴェーゼルヴァイン農家の同窓会
2011: Michael K. Iwoleit / Die Schwelle / 門
2012: Frank W. Haubold / Am Ende der Reise / 旅の終わりに

海外作品部門 Bester ausländischer Roman:

1984: Brian Aldiss / Helliconia Frühling / Helliconia Spring / ヘリコニアの春
1985: Philip K. Dick / Valis / VALIS / ヴァリス
1986: Daniel Keyes / Die Leben des Billy Milligan / The Minds of Billy Milligan
      / 24人のビリー・ミリガン
1987: Jerry Yulsman / Elleander Morning / Elleander Morning / エリアンダー・Mの犯罪
1988: Christopher Priest / Der schöne Schein / The Glamour / 魔法
1989: Orson Scott Card / Sprecher für die Toten / Speaker for the Dead / 死者の代弁者
1990: Lucius Shepard / Das Leben im Krieg / Life During Wartime / 戦時生活
1991: Iain M. Banks / Die Brücke / The Bridge / 橋
1992: Iain M. Banks / Die Wespenfabrik / The Wasp Factory / 蜂工場
1993: Iain M. Banks / Einsatz der Waffen / Use of Weapons / 兵器の投入
1994: Connie Willis / Die Jahre des Schwarzen Todes / Doomsday Book
      / ドゥームズデイ・ブック
1995: Ian McDonald / Schere schneidet Papier wickelt Stein
      / Scissors Cut Paper Wrap Stone / 鋏>紙>石
1996: Stephen Baxter / Zeitschiffe / The Time Ships / タイム・シップ
1997: Kate Wilhelm / Inseln im Chaos / Death Qualified: A Mystery of Chaos
      / 死の資格あり:混沌のミステリー
1998: Iain M. Banks / Die Spur der toten Sonne / Excession / エクセッション
1999: Ian McDonald / Narrenopfer / Sacrifice of Fools / 愚か者の払う犠牲
2000: Greg Egan / Qual / Distress / 万物理論
2001: Mary Doria Russell / Sperling / The Sparrow / 雀
2002: Connie Willis / Die Farben der Zeit / To Say Nothing of the Dog,
        or How We Found the Bishop’s Bird Stump At Last
      / 犬は勘定に入れません – あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
2003: China Mi?ville / Die Falter/Der Weber / Perdido Street Station
      / ペルディード・ストリート・ステーション
2004: Vernor Vinge / Eine Tiefe am Himmel / A Deepness in the Sky / 天の底
2005: China Miéville / Die Narbe/Leviathan / The Scar / 傷痕
2006: China Miéville / Der Eiserne Rat / Iron Council / 鋼鉄評議会
2007: Robert Charles Wilson / Spin / Spin / スピン(邦題:時間封鎖)
2008: Sergej Lukianenko / Spektrum / Спектр / スペクトル
2009: Charles Stross / Das Glashaus / Glasshouse / グラスハウス
2010: John Scalzi / Androidenträume / The Android’s Dream / アンドロイドの夢
2011: China Miéville / Die Stadt und die Stadt / The City & the City / 都市と都市
2012: Paolo Bacigalupi / Biokrieg / The Windup Girl / ねじまき少女

※日本語タイトルは、邦訳が確認できたものを除いてすべて仮訳である。

と、まあ、ドイツのSFプロパーな皆さんは、エシュバッハがとっても好きらしいという(笑)

【参考】 エシュバッハの長編小説(と、ジュヴナイル小説)
△Die Haarteppichknüpfer / 髪織絨毯職人 (1995)
◎Solarstation / ソラー・ステーション (1996)
◎Jesus Video / イエスのビデオ (1997)
◎Kelwitts Stern / ケルウィットの星 (1999)
◎Quest / クエスト (2001)
 Eine Billion Dollar / 一兆ドル (2001)
△Perfect Copy / パーフェクト・コピー (2002) [J]
 Exponentialdrift / 指数関数的ドリフト (2003)
◎Der Letzte seiner Art / その型式、最後のひとり (2003)
△Die seltene Gabe / 稀代の才能 (2004) [J]
 Der Nobelpreis / ノーベル・プライズ (2005) ※非SF
 Das Marsprojekt 1: Das ferne Leuchten / 火星計画(1) 遠い光 (2005) [J]
 Das Marsprojekt 2: Die blauen Türme / 火星計画(2) 青い塔 (2005) [J]
△Das Marsprojekt 3: Die gläsernen Höhlen / 火星計画(3) ガラスの洞穴 (2006) [J]
 Das Marsprojekt 4: Die steinernen Schatten / 火星計画(4) 石化した影 (2007) [J]
◎Ausgebrannt / 石油が枯渇する日 (2007)
 Das Marsprojekt 5: Die schlafenden Hüter / 火星計画(5) 眠れる守護者 (2008) [J]
◎Ein König für Deutschland / ドイツに国王を! (2009)
 Black*Out / ブラック☆アウト (2010) [J]
 Hide*Out / ハイド☆アウト (2011) [J]
◎Herr aller Dinge / 森羅万象の王 (2011)
 Time*Out / タイム☆アウト (2012?) [J]
◎=KLP受賞 △=KLPノミネート [J]=Arena社刊のジュヴナイル

前回のDSFPにフェルトホフがいたように、ローダン参加前のツィークラーが受賞していたりするのだが、やっぱり邦訳が存在するのは、『イエスのビデオ』、『深海のYrr』そしてミヒャエル・エンデの中編くらいなのかな。

参考までに取りあげた海外部門は、どっかで見たような作品が並んでいる。翻訳がポシャったらしい「カルチャー」シリーズとか、現在翻訳が進行中のチャイナ・ミエヴィル等は例外として、それでも過半数は邦訳が存在した。いいなあ(笑)

■ラスヴィッツ賞公式サイト:Kurd Laßwitz Preis
■Wikipedia(de):Kurd-Laßwitz-Preis