2900話:こぼれ話

わりと長くなった……というか、1回目を通した後、アタマから読み直しつつ書いているので、こうなるのは必然というか……。

『エスタルトゥへの道』にまとめ直す前、1200話台後半各話のあらすじをマガンに(一方的に)送りつけていたのが、ちょうどこんな感じだったろうか。今更ながら、すみませんw
そんな手順のわりに、いまいち話のおさまりが悪くて取りこぼしたエピソードなどもある。蛇足ではあるが、少しだけ解説につきあっていただきたい。

2900話の詳細な目次は、以下のとおり:

プロローグ 新たな絆
 1 水星へのピクニック
  考古学者寝坊する
  深淵へ
  長閑なスプリント
  覚醒
幕間 前夜
 2 邪魔の入るレセプション
  タワーにて
  そわそわ、もぞもぞ
  大きな兄弟分
  光、灯る
幕間 最後の夜
 3 指をさす
  死にゆく恒星
  生と死の狭間で
  新しいホーム
  〈ネット〉
幕間 宇宙を観る目
 4 世界滅亡の日記
  誘導灯
  メッセージ
  此処にいる友
  最後の瞬間
エピローグ 星々へ!

1章の「考古学者寝坊する」と「長閑なスプリント」は、共に寝坊したデジオ・ガッタイが大焦りしながら発掘現場へたどり着くまでのエピソードなのだが、全カットした(笑)
現場では、「普段は信用のおける人物なんですが……」とかロッツィ女史がフォローしたりしているのだ。
序盤でさほど役割をなしていないわりにこの取り上げようなので、準レギュラーなのではという予想は当たったっちゃ当たったんだけど。今後出番あるのかにゃあ。

ローダンたちがハレム・アーミーを初めてみるシーンでは、ひとつ重大な問題がある。
58m×135mの洞窟にずらりと並んだハレム兵。最終回でちょっと書いたとおり、縦横まんなかに通路みたいな隙間が空いていて、四等分されているのだが……。
ファリエさんがローダンの後につづいて、通路を歩きつつ勘定している。
左に15体の兵士、右に15体。(中略)23、24、25。列の背後に、彼女の歩むものと直行する隙間が(中略)ファリエは第2のブロックの後列を見やった。ざっと数えて、また25列。
(中略)
15×25、ということは象限ごとに3000体の人形。すなわち全部で……
「12000体」と、口をついて出た。

……えーと。15x25x4はいくつだろうか(爆)
何回読んでも、x8を意味するフロアとか見つからないのだ。
これ、公式フォーラムでもひとりだけツッコミっぽいの入れてるんだけど。レスがつかないなあ(–;
……やっぱナニか読み落としてるのかなあ。

3/29追記:
レスがついたー……けど、なんだコレ(笑)
『15×25、象限ごとに3000体――ほぼ、ってしとけばいいのでわ。』
……超意訳だけど。いや、マジでなんだコレorz

幕間「前夜」は、タルターン系第1惑星エペチュアンにおかれたジャーバッジ基地駐在の2人の科学者、170歳の宇宙心理学者ミュルディン・ホークと、50歳の宇宙言語学者ユーマ・リーさんのエピソード。
お互いになんとなく気になっているのに、年齢が壁になったご様子。(……わしがもう100歳若かったらなあ)とか大爆笑していたw

実はこの段階で、マンダーム人の主導的な国家がクルマー帝国だとか、帝国が惑星の反対側に築いた開拓コミューンが重税にあえいでいるとか、あとでテーラー君の境遇にからんでくる説明が書かれている。
最終的に、可動式災害時避難セルで生き延びたふたりはイロイロ吹っ切れた感じ。“職場”が消滅した両名は、ローダンの誘いに乗って《ラス・ツバイ》のメンバーとなる。考古学者より出番ありそーな気もするが、さて。

オピテル・キントの綴りはQuint。ナイク・キント(Quinto)とは微妙に異なる。エルトルス人の血をひくという話は、実はひと悶着終わってローダンと自販式レストランに入ってからの会話。
出会い(笑)のわりにファリエさんと脳筋思考が合いそうとか、多少気になるところはあるが……職業柄、《ツバイ》に搭乗することはなさそうだし、アダウレスト関連で今後の活躍があることを期待したい。

「そわそわ、もぞもぞ」あたりで到着する、ファリエさん指揮下の陸戦隊兵士は全員名前もあるのだが、こちらも全カットした。再登場したら考えよう(笑)

幕間「最後の夜」は、テーラー君が被災する話。惑星反対側のコミューンから、伝統的なお仕事について教育する余裕がないのでいとこの家に預けられたとか、いとこ一家とうまくいってないとか、いろいろ書かれている。

カントヴァイネンが留守番パイロット……というのは、《ツバイ》では一番新米だから、ということみたい。他のパイロットとしては、ブリオニー・レフ(たぶん初登場)、《アトランク》の生還組、ルアさんとフォーゲル君の名前も挙がっている。本来、能力的にはファリエさんもこっちだと思うのだが。はてさて。

幕間「宇宙を観る目」で登場するブルー人ユスリュユンだが、問題は彼のプロジェクトの名称〈無限の昏き獣の目〉。
シリーズのどのあたりからこうなっているのか、わたしはよく知らないのだが。ブルー人の驚くセリフなどで「ほにゃららの○○色の獣(クリーチャー、被造物)に賭けて!」みたいな表現が慣例である。第××先見とかと同じく、ブルー人特有の文化といえよう。
なので、これは〈無限(に広がる大宇宙)の昏き(背景色の)獣の目〉あたりが、正しい意訳(笑)なんじゃないかな?
シャロウンとか、LFGの関係部署のヒトが略したくなるのもむべなるかな。

英語が「死語」「学術用語」扱いされているのは、今回はじめて明記されたみたい。
確かに太陽系帝国の時代から、「公用語はインターコスモ」だった気がするし。
でも、改めて母国語を「死語」扱いされたローダン氏は寂しそうであった(笑)

グッキー・テレポート・アンリミテッドは、有限会社の逆、無限責任会社の意味だろうが、なんとなく「無責任会社」と訳してしまいたくなるのはなぜだろうか。

最後に、タイトルの「宇宙遺産」だが。
タイトルは中性名詞なので、遺産でまちがいないだろう。
そして「メッセージ」において、ハレム・アーミーがローダンのことを「放浪者の継承者(男性名詞)」と呼びかけていることから、ローダンが・〈それ〉の力の集合体を・継承する、と、そうみなされているようだ。

このサイクルは、銀河系を含む〈それ〉の力の集合体の帰属をめぐる物語、ということになるのかならんのか。
なんせもう次は3000話である。期待したい……というか、頼むぜヲヒ(笑)

2900話:おいでませ〈黄金の国〉!! 遺産って、死んでないよね?w

2900話あらすじ、最終回をお届けする。
すでに2901話が発売されており、ゴンドゥナトでは「〈それ〉を追い払うのに一役買った英雄ペリー・ローダン!!」としてめっちゃ歓迎されている一方で、殺人事件など発生して早速キナ臭くなっている模様。
3000話へむかって、どうなる宇宙英雄!?w

これまでのお話:
■ごやてん:>2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆
■ごやてん:>2900話:莫迦には見えない新星!? 灯火は点された!
■ごやてん:2900話:時間との競争・ノヴァの下の救出劇

(承前)

時間との競争は続いた。
大規模なガス噴出によってプロジェクターの半数を失いながらも、〈ネット〉はその所期の目的を達し、高熱ガスはマンダームから逸れた。上空にくりひろげられるオーロラの乱舞はなおも怖気だつものではあったが、パラトロン・バリアは人々を護り抜いた。そして――。

以降、大規模なガスの噴出はなかった。というより、バランスの崩れたタルターンは急激に恒星としての態をうしなっていった。惑星マンダームも従来の軌道をはずれ、高熱ガスよりも、急激に下がっていく気温への対処が急がれた。
《ラス・ツバイ》が現地に到着してから4日後には、恒星タルターンはもはやわずかに輝くガス雲でしかなくなっていた。

現地の指揮を後続の《ミル・ヴァタリ》にまかせ、ソル系への帰途についた《ラス・ツバイで、ローダンは第1惑星エペチュアンから奇跡的に救出された2名の研究員を艦内クリニックに見舞った後、科学チームとの会議に臨んだ。

突然のノヴァ化といい、その後の経過といい、通常の自然現象ではとうていありえない。現状、最終的回答は出し切れないとしながらも、シクさんはこれを“システマティックな恒星の非安定化”と評した。本来、恒星の燃焼圧とバランスの取れているはずの重力が、時を追うごとに低下していくのが観測されていた。まるで反重力場か、重力定数が恒星内部でだけ下がってしまったかのような急激なものだった。
この「重力分解」現象の原因は当然のごとく不明。では、何者かが、意図的にタルターンの重力を操作したのだろうか。シクさんは、「意図的」という部分に疑念を示した。

赤色巨星オテルマも、想定された時期より100万年も早く新星となったわけだが、こちらではそれ以外の異常は観測されていなかった。シミュレーションは、オテルマがつかのま閃光をはなち、核へとむかって内破していく様を映し出した。後には白色矮星が残される。
ただし、ノヴァ化が急速に進展した結果、その重力域に囚われずにいる質量もかなり残存しており、こうした場合には、ごくわずかな年月のうちに赤色巨星へと“反転”するケースも過去に見られるという。

これに比して、タルターンで起こったのは星の進化の“加速”ではなく、完全な破壊である。“点火ミス”であるか、〈灯火〉からのライン上にたまたま位置していたため、オテルマのノヴァ化の副次現象としてこうなった可能性が高いのではないか。
ローダンはなるほどとうなずきつつ、内心うすら寒いものを感じていた。もし、ノヴァ化を使嗾した何者かが悪意をもっていたならば、クリスタル・バリアの有無にかかわらず、今頃ソルも新星となっていたのではなかったか……。

太陽系政庁でヘケナー・シャロウンに報告をおこなったローダンは、内惑星のお祭騒ぎは依然継続してはいるが、水星へむかったグッキーのおかげでパラ暗示関連の調査が進展していると聞かされる。

「彼の派遣は、いいアイデアでした」
「時折、いいアイデアが浮かぶものでね。その最たるものは――この“下”にあるよ」
「ちがいない」

つかのまの談笑。続いて話題は〈無限の昏き獣の深き目〉に移った。
シャロウンの曰く〈ディープ・ダーク・アイ〉――現代のラテン語ともいえる英語で、〈無限の昏き獣の深き目〉につけられた“略称”――の探査結果が届いていた。ソルとオテルマを結んだ直線の延長線上、銀河間の虚空に、さらに2つのノヴァを示す微弱なハイパー・シグナルが確認されたという。
最初のものはソルから5000万光年。つづいて、さらにまた5500万光年の距離に。
こうして揃った“3つのノヴァ”の、その直線を伸ばし続けると、2億光年かなたのひとつの銀河へといたる。
NGC4622……銀河の回転が渦状腕を追いかける形の、異形の銀河である。

転送機で水星アサルク・シティへと到着したローダンを、すでにグッキーが待ち受けていた。テレポートで連れてこられたのは、〈セト〉の演算ホールである。

「グッキー・テレポート(無限)のご利用、誠にありがとうございまぁす」

グッキーは一本牙をきらめかせ、ちょうど判明したばかり、という分析結果を告げる。
まず、各惑星で生じている多幸症的感情の発露。これは予想通り、ハレム・アーミーからのパラ暗示的感化力が確認された。すでに現在、遮蔽のための作業に取りかかっている。数日中に事態は好転するだろう。
そして、メンタル安定化処置を受けたものの多くも見た、夜空の光の染みについては――

「手品のタネ明かしみたいで笑っちゃうけどね?」

各惑星の磁気圏に、何者かが散布した大量のナノ粒子が発見されたというのだ。
何十億というそれらが、金星や火星のようなごく弱い磁場の惑星においても、長い時間をかけて所定の場所に集まり、特定のキーワードのようなもので光る染みを発生させる。ハレム・アーミーの暗示波とあいまって、3つの新星のつらなり――〈灯火〉の誕生である。おいおい(笑)

と、そこで見慣れない科学者がひとり、近寄ってきて、

「ペリー・ローダン、その、ご伝言をお預かりしているのですが。いえ、その、別にわたしは暗示で強制されているとかではなく、お願いされただけで。伝言というのも、あなたへのお願いといいますか」

聞いてないことまでペラペラしゃべり出す男。
やむなし、と先をうながすローダンであったが。

「ハレム・アーミーのところへ、もう一度訪れてほしい、と」
「……誰からだね?」

科学者は、そわそわした笑みを浮かべて、

「その……ハレム・アーミーから、です」

ローダンが、グッキーとオピテル・キントを伴い訪れた発掘現場は、依然として兵とタラ型ロボットによって封鎖されていた。
ハレム・アーミーが立ち並ぶ洞窟も、無数の拘束フィールド搭載ゾンデが飛び交い、ことあらば取り押さえる準備が整えられている。もっとも、あれ以降、敵性ロボットの出現は確認されていなかったが。
また、洞窟内には可搬式パラトロン・バリア発生装置も据え付けられ、暗示波の遮蔽も実行されているようであった。

洞窟上部のプラットフォームから見下ろすと、ハレム・アーミーは皆一様にかなたの一点……NGC4622の方角を見据えていた。
グッキーを見やると、どうやらメッセンジャー・ボーイの仲介は無用みたいだね、とつれない返事。
致し方ない。目を閉じて、覚悟を決めたローダンが再び目を開けると――すべてのハレム・アーミーの視線が、彼へと集まっていた。これはビビるwww

そして、ハレム・アーミーの声が――音声が――空洞に響き渡った。

「ペリー・ローダンよ。放浪者はその力の集合体を放棄した。その種族たちは再び自由だ。だが、放浪者の退去は、他の悪しき勢力の欲望を喚起することになるだろう」

一瞬の間をおいて、十字通路によって4組に分けられたハレム兵の、左手前の集団が、

「われら〈追われし種族〉が庇護を提供しよう」

右手前から、

「われらは放浪者の継承者に、われらとの盟約を申し出る」

左後ろの集団は、

「灯火をたどりて黄金の国へ来たれ」

右後方からは、

「銀河系が生き延びることを欲するなら、キミと、人類と、ゴンドゥナトとの間の盟約が必要だ」

わずかの間――そして、再びすべてのハレム・アーミーの声が、

「ペリー・ローダン。キミには、期待している」

-*-

完璧に刈り込まれた芝生は、やんだばかりの霧雨の滴できらめいている。ツツジ、ゼニアオイ、ラベンダー。可憐に咲き誇る薔薇。湿り気を含んだ芳香を吸い込みつつ、ペリー・ローダンはこの英国庭園の主と言葉をかわしていた。

「……で、そのお誘いを断ろうとか、考えてもいないんでしょう?」
「クサい臭いは元から断たなきゃダメだからねっ」

元々、イロイロな事件が同一の方角を指ししめしていたのだ。ハレム・アーミーの勧誘は、いわば最後の一押しにすぎない。

「でもなあ……そのイロイロがなあ。マンダーム人やら、アダウレストやら、ラール人やら。これほっぽり出して、出かけちゃっていいもんかなあ、と」
「いや、それをあたしに言ってちゃいかんでしょう。シャロウンとかに相談なさいな」
「いやいや、あいつらがなんて言うか、わかってるもの」

自由テラナー連盟から自由ギャラクティカー連盟へと発展的改組を指導したヘケナー・シャロウンは『連盟は成長したんです。大丈夫ですよ』と根拠のない自信をしめすだろう。
イロイロと他者を信用しないヴィンガーデンなら『あなた抜きでも、アダウレストをつかまえるくらい朝飯前です』と胸をはるだろう。逃げられたクセに。
英国庭園の主はため息をついて、グラスに注いだウイスキーを勧めた。

「アイラのシングル・モルト、18年ものです。これ以上古いやつは、アメリカ人にはもったいなさすぎて」

ローダンはジト目を返して、

「ミスタ・アダムス、キミは時々ひどいこと言うね……。それはそれとして、頂こう。相変わらずオンザロックにはしてくれんのだな」
「良いウイスキーに対する冒涜ですぞ――で、あたしに、背後にかくれた灰色の枢機卿になれ、と」

ローダンはうなずいた。シャロウンやヴィンガーデンには、彼やアダムスの持つ幾千年の経験がない。それを必要とする事態がやってくることを、なぜか彼は確信していた。

「いつご出発です?」
「6月10日に」
「では、それまでにあたしも準備しておきましょう。いってらっしゃいな、その“黄金の国”とやらを探しに」
「ありがとう、ホーマー」

かくして(ローダン的には)準備は整った。

出発の日――ローダンは最終乗組員を出迎えるコルヴェットの搭乗ランプの下で、テラ・パラノーマル人材研究所(TIPI……なんか動画になりそうな略称w)のアタピリー教授と談笑していた。このミュータント学校の長からは、今回の遠征にあたり、ドン・ヤラドゥアを紹介してもらっていた。おそらく、彼の不在中にも、連盟が頼りにするだろう人物である。
そこへ、最後のひとり――考古学者のデジオ・ガッタイがグライダーで乗りつけてきた。発掘作業の引継ぎに今朝までかかったとボヤきつつ、ランプを悠々と上がっていく。《ラス・ツバイ》では、パラトロン・バリアで遮蔽されたハレム・アーミー2体が彼を待っているのだ。

「新たな旅、新たな航海、というところですか」
「新たなる、未知への突撃です。教授」
「幸運を」

ローダンの乗り込んだハッチがプシュっと閉ざされ、テラニア・スペースポートの喧騒を断ち切った。

「呼ばわる声があり、乞われた願いがあり、届いた招待がありました。それに応えるため、この幾週、巨人をめざめさせる準備が進められてきました」

〈刮目放送〉アウゲンクラーリポーター、ナーティヤ・コマルカンのアナウンスの流れる映像は、天の川の星々を背景に浮かぶ《ラス・ツバイ》を映し出していた。もっとも、クリスタル・バリアが展開されてひさしく、星々の光をさえぎっているため、CG加工したものである(笑)

「3万名を超える志願者――大半はテラナーですが、多くの友好種族からも乗組員は構成されております。これはもう、空飛ぶひとつの都市であり、自由ギャラクティカー連盟のみならず、これを超えた共同作業の理念を体現する世界といえましょう」

船殻から光の漏れていた格納庫に、1隻のコルヴェットが吸い込まれてゆき、ハッチが閉鎖された。やがて、インパルス・エンジンの輝きとともに、巨船が動き出す。

「大航海がはじまりました。いまグラヴィトロン・フィールド・エンジンが作動し、見えない力が船体を牽引していきます。ホークIVコンヴァーターが動き出すまであと数分。《ラス・ツバイ》はリニア駆動で銀河系のはずれまで飛び、そこから本来の意味での冒険、ハイパートランス・プログレッサーによる銀河間航行がはじまります」

船影が微細な点となり、まもなく消え失せた。
その針路へむかって、3つの光点が輝く。

「旅路の終点で、ペリー・ローダンと乗員たちを待つものはいったい何か? それを知るものは、彼ら自身だけでしょうが……冒険を終えた彼らが戻り次第、われわれ〈刮目放送〉はどこよりも早く、テラナーの心に寄り添いお届けることをお約束します!!」

(終)

■Wikipedia:NGC4622 (英語版)

ペリー・ローダン、日本(の大学)に現わる

公式サイトによると、2017年春からの日本の大学向けドイツ語教科書として郁文堂から出版された『Wir kommen aus Deutchland(ドイツから来たよ!)』の題材のひとつとして、ペリー・ローダンが取り上げられたとのこと。

実はこのニュース、すっかり読み落としていて、まるぺメーリングリストの話題で知ったという(笑)
先ごろAmazonに注文したものがようやく届いたので、簡単に紹介…でも……しようにも、わりと順当な文法テキストなんである。全12章で、各々に「名詞の性・格変化」とか「前置詞」等のテーマがある。ただ、章ごとの例文の題材が、ドイツで有名ないし一般的なキャラクターたちのことを取り上げているというものなのだ。
昔話の登場人物、歩行者信号のキャラクター、伝統的人形劇、人気コミック等々。その中のひとりとして、“ドイツ発の世界最長SFシリーズ”の主役たる我らがペリー・ローダン氏も登場しているわけだ。
詳しい内容については、下記出版社のリンクを参照してほしい。

第10章「PERRY RHODAN」は8ページあって、テーマは「zu 不定詞」。
例文として、主な登場人物からローダン、アトラン、グッキーの簡単な紹介と、シリーズの概要やマルチメディア展開を説明したものが、それぞれ1ページ。あと6ページがそこから回答を考える穴埋め問題等という形。しごくまっとうである。
ただ、ローダンの説明で、

Er hatte und hat zahlreiche Beziehungen zu Frauen und hat viele Nachkommen.

という一文。これ、

「ローダンは幾度かの結婚を経て、子だくさんである。」

あるいは、

「ローダンは昔から女性関係が派手で私生児や孫までいる。」

どっちにも訳せるなあ、と苦笑した次第(ぁ

学生に興味を持たせる教材には、先生方もご苦労されているのだろう。わたしの学生時代、ヨソの第二外語クラスでは少し前(当時)のヒット曲、NENAの『ロックバルーンは99』を読解の授業で用いていたそうで、ちょっとうらやましかった。
……まあ、テスト以外ろくに顔も出さない学生にアレコレ言われたくないだろうけど(爆)

とゆーか、実際どれだけの大学に出現取り上げられているのかなあ。
オレんとこ使ってるぜ、とゆー方は、ぜひご一報を(まだいねぇw
ちなみにAmazonにはまだちょっとだけ在庫があるみたい。

なにぶんドイツ語教材なので、お値段もそこそこする。
単に話のタネにするには、少々お高いかもしれない(^^;

■公式サイト:PERRY RHODAN jetzt an japanischen Universitäten
■郁文堂:ドイツから来たよ!

2900話:時間との競争・ノヴァの下の救出劇

2900話あらすじ、3回目である。
気づいたら、ほぼ4章構成の原書どおりの進行になっている(笑)
明日明後日は仕事の都合上不在にするので、最終回(予定)は、たぶん日曜じゅうには、どうにか(^^;

これまでのお話:
■ごやてん:>2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆
■ごやてん:>2900話:莫迦には見えない新星!? 灯火は点された!
ホントはもう1つ記事はさむつもりであったのだが……連続アップだと、必要ないなココw

(承前)

司令室のパノラマ・ギャラリーに映るのは、中間空間のゆらめくもや。その中でただひとつ輝いているのは――目標星。タルターンである。リニア空間を移動しながら見えるものが即現実とイコールなわけではないが、ゆらめき、脈動するその様子は、恒星が極度に不安定であることを実感させた。
そして、通常空間への突破の瞬間、スクリーンをそれまでとは異なるゆらぎと輝きが満たした。警報サイレン。パラトロン・バリアが展開される。
《ラス・ツバイ》は荒ぶる恒星が吐き出した熱波と高温のガスに呑み込まれつつある惑星系に飛び込んだのだ。

第一惑星は熔鉄のかたまりにしか見えない。駐在していた科学者2名がどうなったのか、現段階では判断がつかなかった。
一方、かつては広大な極冠を有し、大きな大陸のない多島世界であった第2惑星マンダームでも、混沌が渦巻いていた。海は一部蒸発し、昼の側の植物相は炎上している。悪天候に阻害され、被害状況の確認もままならない。
《ラス・ツバイ》発進前に連盟から発された要請を受け、近隣にあった宇宙船が官民を問わず近傍宙域に集まっていたが、彼らにはこの極限状況で救助活動をおこなうだけのキャパシティが足りない。
ホロンダーの号令一下、惑星周回軌道に入った《ツバイ》から8隻のマーズ級巡洋戦艦が分離し、惑星各所へ散っていく。司令室のホロ・グローブには、そこからさらに射出された搭載艇が降下していく様子が見てとれた。

本来残留組であったパイロットのカントヴァイネンも、ただ見ているだけの状況に耐えられず、志願してスペース・ジェットの1機を指揮して出動する。嵐の雲間を抜けたジェットが目の前にしたのは荒れ狂う海であった。一部の海水の蒸発に伴い、海流すら変わっている。もし出航していた船があったとしても、望みはあるまい。
おそらく津波に襲われたのだろう、海岸部も目に映るのは岩と泥ばかり。ジェットは逆流する波に洗われた谷と丘を越え、内陸部へと飛んだ。
ようやく発見した村……かつて村であったらしい、倒壊家屋の集まりで、捜索活動が開始される。

「残された時間がどのくらいかわからない。長々と論議しているヒマはない。いざとなったら……コレだ」

カントヴァイネンは、麻痺モードにセットされたコンビ銃を示した。うなずくあと5名。おいおい(笑)
#結果的に、(このチームは)使わないで済んだよーだがw

ゾンデが瓦礫の中の空洞や温度を走査し、可能性のある場所でロボットが木材石材を撤去する。やがて、ようやく、ある敷物の下に探知された空間から、ほっそりした4本指の手がのびているのが発見された。青い肌はほこりにまみれている。カントヴァイネンは、安心させようと、その手をそっと握りしめた。
救出されたマンダーム人は、青紫の肌をもつ、無毛のヒューマノイドだった。身長およそ3m。身体も四肢もおそろしく細い。

(ニョロニョロ? いや、こんなん動画サイトで見たぞ……棒人間!?)

ただし、棒人間には背中に羽など生えていないのだが(ぁ

2時間後、カントヴァイネンたちが汗みどろになって救出したマンダーム人はやっと18名。運良く生き埋めになっていなかった者は、大半が近隣の街へ救援を求めにむかったらしい。
避難をうながすテラナーたちだが、そもそも運命論者的なこの種族、異人への疑念が捨てきれないらしい。この事態を引き起こしたのがオレたちじゃないって、ホントにわかってもらえてるんだろうか……(汗)

状況が好転したのは、村はずれにあった残骸の地下から、ひとりの少年――といっても、身長2.5mで、カントヴァイネンよりはるかに背が高いのだが――を救出してからだった。

「変な服着てるね! 星から来たの? エペチュアンのヒト? ジャリクイの巻物には、エペチュアン人は鋼鉄のシリンダーを大砲から撃ち出して宇宙を飛ぶって書いてあったけど。こんな小さいとは思わなかったな!」

このテーラー君、好奇心旺盛で10歳の少年にしては知識豊富だが、イロイロと偏っているご様子(笑) 初めて読んだ本(巻物)がSFもしくはトンデモ本だったようで、以来ずっと宇宙へいってみたかったんだとか。
ともあれ、テーラーがカントヴァイネンの言葉を信じ、受け入れてくれたことで、他の村人たちとの関係もぐっと改善された。スペース・ジェットは道――の名残――沿いに飛行し、街へとむかった者たちをも順次回収してから、母艦への帰途についた。

「星は? 空のむこうには星があるんじゃないの? それとも、あれは空に貼り付けてあっただけなの?」
「いまここは明るすぎて見えないだけだよ。もっと大きな船に着いたら見せてあげよう」
「ん? これが大きな船じゃないの?」
「いやいや、一番小さいやつさ。これならマンダームのあちこちで同時に人を収容できるからね。これから、まず母船へ帰って、それからもっと大きな船に戻るんだ。こいつはもう空飛ぶ都市でね、いろんな種族、総勢35000人が生活している」
「へーえー?」
疑ってる疑ってる(笑)

《ラス・ツバイ》へと帰還したカントヴァイネンは、テーラーを連れて司令室へむかった。ローダン、シクさんとの打ち合わせがちょうど一段落したらしい艦長に、直談判して曰く――
テーラーは、惑星の反対側にあるコミューンから、いとこの元へ預けられていたらしい。上階にいたであろういとこの一家は全員消息不明。惑星の裏側にいた家族は言うにおよばずである。テーラーは孤児となったのだ。
そして、マンダーム人の間では、コミューンの異なる孤児を受け入れることは稀であるそうで、実際、あの村で他に救助された面々は、テラから来た救援艦隊へとすでにまとまって収容済みである。

テーラー自身はよるべのない身となったことを、わりと淡々と受け入れていた。ボク、科学者になりたかったんだ。でも、コミューンの手伝いをしなきゃいけないからって……だけど、もうコミューン自体がなくなったのなら、ひょっとしたら、ボクでも科学者になれるかな?
そう語ったマンダームの少年は、いま、「クニで最高の科学者」と紹介されたシクさんと楽しそうに言葉をかわしている。

さて、そこで本題。

「飼っていいでしょ。ボクがちゃんと世話するから」
「ダメです。元の場所へもどしてきなさい!」

……とは、ならなかった(爆)
艦長は苦笑して、テーラーを被保護者にするというパイロットの要望を承認した。
カントヴァイネンは、笑わない男であった。どうしてか、無理矢理そうしているような表情になるせいだった。自分の顔は、笑うようにできていないのだ。そう思っていた。
なのに、なぜだろう。テーラーと話していると、笑みがこぼれるのだった。

マンダームにおける救助活動の時間を稼ぐため、シクさん立案の〈ネット〉作戦が開始された。疎開したマンダーム人に、できうる限り住み慣れた環境を再現するためには、多数の動物・植物をも収容したいところでもある。
恒星タルターンのマンダームに面する位置に、複数の電磁場を展開し、噴出する高熱ガスをそらそうというものだ。同時に、惑星各所にパラトロン・バリアを設置する。
不安定な恒星近傍での危険な作業であり、実際、起動直前にタルターンが吐き出した熱波のため、第1層を構成するゾンデの半数が破壊されるというトラブルも生じたが、カントヴァイネンら作戦に従事する者たちはひるむことなく働きつづけ、〈ネット〉は作動をはじめた。これで、《ラス・ツバイ》でなくとも後続の船団が救援活動を続行できる状態が整った。

一方、その頃。
ブルー人の科学者ユスリュユンは、座席にもたれ鼻歌を歌っていた(ブルー人に鼻の穴はないかもしれないが)。
彼の主導するプロジェクト、〈無限の昏き獣の深き目〉が、その本領を発揮すべき時が訪れたのだ。
要請は、自由ギャラクティカー連盟主席と、なおユスリュユンをやる気にさせることに、サン計画担当連盟コミッショナー、すなわちペリー・ローダンの連名で届いたもの。
ローダンの唱える種族の協調……ユスリュユンのような科学者にとって、国境とか紛争とか、実に噴飯物である。力を合わせることによって、不可能も可能となるというのに。
ちょうど、彼の〈深き目〉のように。

〈無限の昏き獣の深き目〉は、銀河系各所の天文台を連動させることによる、深宇宙の探査プロジェクトである。様々な波長の可視光、電磁波、ハイパー・スペクトル……無数の天文台で観測されたそれらデータを、ハイパー波の同期通信で結び、彼のもとにあるポジトロニクスに集約する。
探すべきものがあれば、〈深き目〉は必ず見いだすであろう。

新星化したオテルマのせいで、ソル系からケンタウルス座方向の観測は、現在、事実上不可能だ。しかし、銀河系の他所に複数の視点を持つ〈深き目〉にとっては、何の問題もない。
水星上空に生じた〈灯火〉の指し示す方角に、いったい何があるのか――。細工は流々、後は待つだけである。
静かな部屋に、ユスリュユンの――人類には機械的補助なしでは聞くことのできない――鼻歌が、悠々と流れ続けた。

(続く)

■Wikipedia:棒人間

2900話:莫迦には見えない新星!? 灯火は点された!

と、ゆーわけで2900話あらすじ第2回目(笑)
……んーと、やっぱり終わらんかったorz
かなり強引なアダウレスト登場()の後、舞台は再び水星へ――

一応、ここまでのお話あらすじは、
■ごやてん:2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆

(承前)

ローダンとファリエさんが転送機でアサルク・シティに到着したのは、標準時で日付が5月15日に変わったころのこと。
前回のようにのんびり祖父と孫の行楽気分ではなく、緊急事態ということで《ラス・ツバイ》へと10名の戦闘集団派遣も要請し、ファリエさん自身もすでに戦闘服に着替え済み……なのだが、なぜか、まるで人目をひかない様子。
群衆は、なにやら興奮して「何か」を待っているような雰囲気なのだ。ニュースを確認しても、とりたてて大事件の起きた風でもない。

「ひょっとして、キミがファリエかな?」

そこに現われたのが、これといって特徴のない顔立ちの40代とおぼしき男性。だが、レスラー体型なせいか、フォーマル・スーツがもうぴちっぴちである。胡散臭そうな表情を隠しもしない、けんもほろろなファリエさんの対応に、アウチ、と顔をしかめた男性は、

「私はキント。オピテル・キントだ」

ナンパかと思われた男は、ヴィンガーデンが派遣を約束したTLDエージェントであった。
ファリエさんの操縦するグライダーで遺跡に到着すると、デジオ・ガッタイが一行を待っていた。
ハレム・アーミーが妨害フィールドを放射しはじめ、転送機を停止せざるを得なくなったらしい。何名か取り残された作業員もいるそうだが、資源探査ボーリングの際のシャフトを再び開放し、救出の準備を進めていた。

前回の時点からの、洞窟内の監視映像を早送りしたところ、PEW活性化と思われる発光現象とともに急激に動いた彫像の首の動きは、まもなくゆっくりとしたものに戻っていた。ただし、すべての彫像が、顔をそろえて同じ方向を見据えた状態で。
惑星の固有運動に影響される様子のないことから、ローダンはその仮想点がソル系外のどこかと予想。水星中央ポジトロニクス〈セト〉への計算を依頼する。
と、そこで、オピテル・キントが、

「すみません。いまの映像、もう一度再生していただいても?」

幾度かの再生と拡大をくりかえして、キントの目にとまったものが、一同の前に明らかになった。
対戦車障害物のように、細い軸3本が縦横に組み合わさったもの。サイズは最長部分で5ミリ。
そして、驚くべきことに、転がるように移動する“ガーダー(桁)”は、壁から出てきて、壁へと消えていた。そこが岩ではなく、流体であるかのように。

「確率論的にこいつがひとつってことはありえないが……難しいな」
「難しいって、何がです?」

キントのつぶやきに首をひねるガッタイ。
ファリエさんとキントが、異口同音に、

「こいつをつかまえるのが」

1時間後、10名の兵士と同数のタラ=VIII=Uh型ロボットが現地に到着。
タラのうち4体は牽引ビーム放射器装備。拘束フィールド・ジェネレーターを搭載したゾンデ多数。“壁抜け”については、5次元性妨害フィールドが有効と予想された。
予想外にwキビキビしたファリエさんの指示に従い、要所要所に兵とタラを配置する形でシャフトへ進入するローダン一行。地上からはガッタイが3Dマップを参照しながら誘導する。並行して、すべての民間人が遺跡から退去した。

ローダン、ファリエさん、キント、そして牽引ビーム搭載のタラを連れた兵4名が、ハレム・アーミーの洞窟上部に設置されたプラットフォームに散開して、待つこと数分。
センサーが反応した瞬間、ゾンデの拘束フィールドが展開し、4本の牽引ビームがこれを支えた。難しい、とか言っておきながらちょっぱやの逮捕劇であった。

ハレム・アーミーの洞窟に続く通路脇の仮設ラボで、サンプルの分析を開始。拘束フィールドにとらえたままなので、外部からの拡大撮影が主となる。やや膨れた接合点。各枝にセンサー類と思われるリング。先端部は凹状となっており、おそらくその内部には……武器。
これ以上は分解するしかなく、レーザー・ボーリング装置やらマイクロ分子破壊装置などを駆使してどーにかする他ないかと思われたその時、遺跡各所に配置された兵たちから急報が入った。最大2mの異なるサイズのガーダー・ロボットが出現、攻撃をかけてきたのだ。その数、およそ10体。

ラボにも1mほどのガーダーが現われ銃撃戦となるも、オピテル・キントの予想以上の活躍もあり、どうにか撃退に成功する。このレスラー体型、実はエルトルス人の血を引いているとか。まあ、さすがにどっかの“コンパクトタイプの環境適応人間”ほど人間離れはしていないようだが。某USO司令とか、いま何してるんだろか。
そして、活動を停止したロボットは――最初に捕獲したサンプルを含め――中心部に出現した“ブラックホール”へ吸い込まれるように消えていった。分子破壊フィールドと局部的重力増加のコンビネーションによる、自爆装置の一種らしかった。
これ以上の情報は、どうやら入手できないようだ。

休養を取るためカラド・タウンへ戻り、レストランへ繰り出したローダンとキント。喰って太れの文化も受け継いだのか、キントの健啖にはローダンも舌を巻いた。

「ところで、ここらでは近々、なんぞ重大イベントでもあるんですかね? モグモグ」

ローダンも気づいていたのだが、アサルク・シティ同様、ここでも群衆はなにやら落ち着かず、何かを待っている様子だった。
大半はテラナーだが、ブルーの肌であったり鱗であったり、羽を持つ種族も見受けられる。そして、老若男女を問わず、誰もが同じ雰囲気を共有している。しかし、何を、なのかは、おそらく彼ら自身にも説明できないのではないだろうか。水星執政府への報告後、宇宙心理学者とパラアナリストの出動を要請した方がよろしかろう。

だが、一行がアサルク・シティへ出立しようとした深夜、先手を打つように“それ”は起こった。
群衆が夜空を見上げて騒いでいた。興奮して、家族や友人に何か叫んでいる。総合すると、こんな感じだ。

星だ――3つの星――いや、ノヴァだ――ケンタウルス座の方向へ一直線に並んでいる――!

メンタル安定化処置を受けたローダンもキントも、そこにはなにやら光のしみが生じている、程度にしか見えない。そもそも、恒星が一直線上に並べば、背後の2つは最初のものの影に隠れて見えるはずがないのだ。
つまり、この“灯火”は、パラ暗示的な性質の何かである。
直後に連絡のついたファリエさん――メンタル安定化処置済み――に「3つのノヴァ」が見えていると聞いて、ちょっぴり自信をなくす男たちであったが(笑)

一行がアサルク・シティ、水星執政官ドリス・ベニスに面会した明朝の時点で、すでにそれは社会現象となっていた。熱狂する人々が〈灯火〉の見える場所へとこぞって移動をはじめたのだ。
〈セト〉の報告では、すでにこの現象はテラや金星、さらに火星でも生じているという。
そして、悪い予感は当たるもので、ハレム・アーミーの“視線”も〈灯火〉の観測された方位と一致していたのだった。

テラニア上空に浮かぶ鋼鉄の蘭、太陽系政庁。
TV会議で悲鳴があがっていた。地球でも赤道以南の〈灯火〉が見える諸都市では、北半球から集まってきた人々によって日夜を分かたずカーニバルの様相を呈しているという。インフラは瓦解寸前だった。
水星でも、調査チームを編成しようにも人手が足りない状況だ。ローダンの提案により、グッキーが現地へ派遣されることとなった。メンタル安定化処置を受けており、なおかつパラ能力の“専門家”である。

太陽系政庁のポジトロン脳〈老師〉の分析では、水星、位置的に近かったテラ、ソルの反対側にあった金星、それから火星と、この多幸症的な騒ぎは水星からの距離に応じた順序で発生していた。小惑星帯以遠ではさほどの動揺が見られないことから、やはり原因は水星にあると推定された。
ケンタウルス座方向の〈灯火〉延長線上には、現在2つの恒星が確認されている。ソル系から12000光年のタルターン星系、同27000光年のオテルマ星系である。前者は一般的な主系列星。オテルマは5000年ほど前にヘリウム燃焼がはじまっているが、ノヴァになるにはまだ100万年以上かかるはずだったのだが――

「オテルマ近傍をパトロール中の巡洋艦からの計測レポートが届いています。予測より早く、実際にノヴァ化しているとのこと」

では、タルターンは?

「ハイパー通信リレーを介したジャーバッジ基地への問い合わせにこれまでのところ返信なし。ポジトロニクスによる自動返信もです」

タルターン星系では第2惑星マンダームに前宇宙飛行期の文明が確認されており、その観察のため第1惑星エペチュアンに有人基地が置かれていた。
ローダンは《ラス・ツバイ》で現地へ急行することを提案。高速、科学・医療チームも兼ね備え、なおかつ……万が一の接敵時に対応する戦力もある。
連盟主席シャロウンはこれを承認。同時に、ソル系を包むクリスタル・バリア展開を命じた。

《ラス・ツバイ》艦橋に到着したローダンは、艦長のエルトルス人カスカード・ホロンダー大佐、パイロットのアンドリス・カントヴァイネン少佐、連盟首席科学者であり、10年来の妻でもあるアトル人シク・ドルクスタイゲルに迎えられた。すでに発進準備は整っており、一部休暇からもどっていない乗員等もいたが、航行には支障がないと判断したローダンは、発進ごーの命令を下した。

(続く)

■Wikipedia:チェコの針鼠 (対戦車障害物)

ミニシリーズ:ローダン・ターミナス

4月21日から刊行予定のミニシリーズ〈ペリー・ローダン=ターミナス〉。
相変わらず内容については未詳であるが、現在までに判明しているところを列挙してみる。

草案をウーヴェ・アントンが担当する全12話。表紙絵は現在の看板イラストレーター、ディルク・シュルツによる。

時は新銀河暦1523年。
太陽系外縁カイパーベルトの小惑星で発見された、浮遊し回転する9体のオベリスク。“影を落とさない”オベリスクというと、やはりサイノ人関連だろうか……。
謎に包まれたオベリスクだが、ペリー・ローダンは記憶をたどり、1500年前に銀河系じゅうで騒動をまきおこしたある存在を想起する。その存在とは、〈ターミナス〉――。

で、ここで問題である。紹介文では上記のとおり「1500年前」と書いてあるが、同様に「旧暦35世紀」とも明記されている。西暦3400年代ならまさに〈大群〉襲来の時代なのだが、新銀河暦元年前後だと、ひょっとしたらガルベッシュ軍団がらみかも? と、一瞬思ったのだが、「反テラ連合」とか「秘密帝国」なんて単語もあるから、1600年前が正しいみたい。

とりあえず、「現在」と「過去」がからみあうストーリーとなるようだ。惑星ターミナス、なんて表現もあるので、秘密帝国の拠点世界とかそーゆーのになるのかなあ。
怪しい財団が百科事典とか刷ってなきゃいいんだけど(ぁ

先行して開始されるヘフト版の新サイクルが〈ジェネシス〉――創生、はじまり、誕生、根源である一方で、〈ターミナス〉が末端、終末、ゴール、境界と、対になる名称っぽくて話題を呼んだが、うん、やっぱそれほど関係はしてなさそうかな(笑)
ソル系の「終端」であるカイパーベルトでの発見とか、かけてそうなところはあるが。

2900話「宇宙遺産」冒頭で、水星に向かう途上のローダンが、彫像がたくさんとゆーレムール遺跡の話から、「ターミナス事件のときみたいな目に遭わないといいわねえ」と孫娘につっこまれるシーンなどあるが……さて、よりタチが悪いのは、どっちだろうかw

現在判明しているタイトル等:
1. Uwe Anton / Zeitspringer / 時間スプリンガー
2. Dennis Mathiak / Flucht durch Terrania / テラニアの逃走劇
3. Roman Schleifer / Konfrontation auf Mimas / ミマスでの対決
4. Susan Schwartz / (未詳)

■公式Produkte:PERRY RHODAN-Terminus

2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆

3月17日発売の、ヴェレーナ・テムゼン著の2900話「宇宙遺産(Das kosmische Erbe)」をもって、新サイクル〈ジェネシス(Genesis)〉が開幕した。

ぶっちゃけ、2700話からはじまった「3000話へむけての壮大な物語の緒」であったはずのアトピック法廷/時のかなたの地の両サイクルが、「すべての時間の果て」までいってまた戻ってくるとゆー超荒技のすえ、「すべての未来を知る」超存在テズが別の時間線にひっこんですべてご破算とゆー超グダグダな結末をむかえたため、2900話から仕切り直しというとんでもない事態になっている……のだが。
残り100話、いったい何がどうなるのやら。

ともあれ、今回はあらすじ書いてたらやたら長くなってきたので、まずは序盤のみで。
前サイクル終了から29年を経た、新銀河暦1551年5月のある日に、物語は幕を開ける。

「歴史的瞬間です! テラナーの心に寄り添いお届けする〈刮目放送〉アウゲンクラー、こちら現場のナーティヤ・コマルカンです。いま並び立つ2人の男性、どちらもヒューマノイドですが、異なる惑星、それどころかちがう島宇宙の生まれであります……!」

握手する2人の男。ひとりは自由ギャラクティカー連盟主席、フェロン人ヘケナー・シャロウンであり、この場においてはギャラクティカムをも代表する。いまひとりは、着任したばかりのラール人大使カドホノル=ロム。かつて敵対した両銀河が、新時代に友邦として新たな絆を結んだ瞬間である……。

……プチ。
「ちょっと消さないでよおじーちゃん見てるのに」

水星へ向かう直径30mのマイナー・グローブ《カッツァー7》。操縦席に座るファリエ・セフェロア=ローダン中佐が茶々を入れる。

「このあと、おじーちゃんも出てるんでしょ?」
「まあ、そうだがね。大使殿とは握手しただけで、あとはそっけないものだよ」

ある意味、それも当然といえよう。おじーちゃんこと、自由ギャラクティカー連盟のサン計画担当コミッショナー、ペリー・ローダン氏は、2110万光年かなたのラルハトーン銀河では〈ヘトールク・テッサー(すべての破壊者)〉として悪名を馳せているのだ。
ちなみにサン計画とゆーのは、アトピック法廷にまつわる事件が起きる直前、ローダンの提言を受けた、時のギャラクティカム議長にしてアルコン皇帝ボスティクによって命名された、多銀河連合的な星間防衛プロジェクトである。由来は会談の舞台となった星系からで、決してSAN値が下がるとかそーゆーのでわない。

ともあれ、ローダン、ボスティク両名の“エクピュロシス実行(予定)犯疑惑”からこっち、すったもんだのあげく放置されていた計画が、近年ようやく実現へと進捗を見せ、いっそラルハトーンも仲間にしちゃえばいいじゃないと、大規模転送ステーション〈星門〉連絡網の再建にかかる財源やら人材やらも、プロジェクトの範疇とみなされている。
オルプレイド銀河での事件が終わりを告げ、銀河系に帰還した後、ローダンの孫娘ファリエさんは、パイロット一筋だったはずがなぜか軍人さんになり、いまでは《ラス・ツバイ》所属空間揚陸部隊の指揮官である。

である……が、今回、水星に向かう搭載艇を運転操縦しているのは、単に孫との時間をとりたいおじーちゃんのたってのご指名であった。まあ、孫の方は孫の方で、最新型の艇を飛ばせるとあってパイロットの血が騒ぎ二つ返事で承諾したらしい。
ひとりで水星側ステーションと連絡をとっている少尉はいい面の皮である。

「それで、いま向かってる遺跡って何なの?」
「ふむ。古代中国の兵馬俑というのは聞いたことがあるかね?」

テフローダーのお嬢さんには無理な話である。
古代中国、秦の始皇帝がその墓所に、生前を模した軍隊やらなにやらの焼き物の人形(等身大)8000体余りを配置したとされている。サンシャインに見にいったぜ兵馬俑展。
で、今回、地下資源探査の折に発見されたレムール人のステーションに、多数のレムール兵の彫像が発見された。前例のない発見であるだけに、古代レムールのオーソリティというか、実際にレムール人に“会った”経験をもつ稀有な人材であるところのペリー・ローダンにお声がかかったという次第。

水星の小都市カラド・タウンからほど近い遺跡発掘現場。
ボーリングによって開けられた縦穴は現在封鎖されており、転送機を介してのみ立ち入りが可能である。発掘主任である考古学博士ファデラ・ロッツィ女史に案内されて踏み入ったローダンたちの前に、ずらりと並んだ赤みがかった金属でできたレムール兵の彫像。その数、12000体。

「ハレム・アーミーの国へようこそ」

考古学者のひとりナカチェのセリフに首をひねるファリエさん。
ハレムといっても後宮ではありません(ぁ 彫像の素材の名称なのでした。
ふたつと同じもののない、まるで各時代のレムール兵をとりそろえたような彫像は、その99.99%がレムール合金(テルコニットより硬いぞ)製。赤みがかった色はここからきているのとこと。残りの0.01%のそのまた99%は、レムール人がドロカルナム(竜の金属)と呼んだPEWメタル。
そして、最後に残るのが正体不明のハイパーアクティヴな素材、仮称〈ハイパー作用剤X(Hyperagens-X)〉、略してHAX。
HAX入りレムール金属製アーミー・スタチュー。略してハレム・アーミーなわけだ。

発掘の副責任者デジオ・ガッタイも合流し(寝坊した)、解説は続く。彫像の様々な“装備品”中で最新と思われるものや、ステーション内部の調査は、この遺跡がおよそ55000年前のものと結論づける。一方、ガッタイによる素材の年代測定は、彫像が作成されたのは35000年前とする――すでにソル系にレムール人など存在しない時代だった。
そして……

「退屈した学者のひとりが、たまたま監視カメラの映像を早送りしたところでわかったのですが」

彫像の顔が、かすかに動いているのだ!
ボーリングと、引き続いての発掘で、ステーション内部に再び空気が満たされた結果と目されている。当初はごく顕微鏡サイズ的に、徐々にその動きの度合いは増しているらしい。まるで彫像たちが、天井の、あるいはその彼方の一点を凝視しているかのように。
そこで、ナカチェが驚愕のうめきをあげた。彫像たちの“動き”が肉眼で確認できるほどに加速していた。しかも、かすかな緑色の輝きをおびて。
ハレムに混入されたPEWメタルが活性化しつつあるのだ。

……舞台はいったん地球へと戻り、ローダンはラール人大使歓迎のレセプションへと出席する。
改めてカドホノル=ロムと対面したローダンであるが、このラール人、必ずしもサン計画に賛同する立場ではないが、「ヘトールク・テッサー」との言葉のキャッチボールを楽しんでいる様子。案外仲良くなれるやもしれず。

ここでローダンは懸案事項を切り出した。かつてアトピック法廷に収監された後、ローダンとボスティクは囚人仲間ラール人アヴェストリ・パシクとともに脱獄しラルハトーン銀河へ逃げたわけだが、彼らを救出にきた《ラス・ツバイ》から、幾名かが現地に残留した経緯があった。
レジナルド・ブルやイホ・トロトらである。
消息のわからない友人たちの捜索のため、近年になってエクスプローラー船《オヴァロン》がラルハトーンに派遣されたが、こちらもその後、音信が絶えていた。
《オヴァロン》の名こそ知っていたものの、再建途上のラール人文明にとって重大事ではなかったため、現状はわからない。だが、いくつか伝手をたどってみよう、と答えるカドホノル=ロム。

「貴公のような人間に、貸しをつくっておくのも、悪くない」

ラール人大使との会話を終えたローダンに、護衛として随伴していたファリエさんが、水星から至急再訪を求める連絡が入っていることを告げる。
レセプションを中座する旨を告げ、水星首都アサルク・シティへの転送機連絡使用の許可を得ようと連盟主席シャロウンを探しあてたところ、その前に〈タワー〉へ来るようTLD長官からの要請が入っていた。

アッティラ・レッコルの後を継いだマウリッツ・ヴィンガーデンは、薄くなった頭髪をオールバックにした身長1.6mの小男だが、目の前にして感じるオーラはけっして馬鹿にしたものではない。
ポジトロニクス、特に生体ポジトロニクスというものを信用しない(前サイクル、ポスビがらみでいろいろあったしね)ヴィンガーデンが、あらゆる盗聴から遮蔽されたと語る執務室で、ローダンが告げられたのは予想だにしない話であった。

「2時間ほど前、水星のバックドア転送機で到着した旅客の中に、不審人物がおります」

受入転送機からあらわれた5m角の貨客コンテナがほどけ、乗客が三々五々歩み出る。そのひとり……身長はおよそ1.8m、30歳前後、暗色の髪と無精ひげ。多機能ジャケットもズボンもカーキ色だ。荷物といっては、レザー製のバックパックひとつきり。
ローダンには見覚えのないこの男について、わかっているのは搭乗員名簿にあった名前だけ。

〈アウレスのアダム(Adam von Aures)〉


アウレス……それは、ローダンの息子デロリアンがかつて契約を結んでいた、知性ある都市の名前。だが、そこは本来、デロリアンが伴った数名の協力者を除いて無人であったはず。この男が、そこと関係があると?

だが、ヴィンガーデンが懸念を抱いているのは、それだけではなかった。
綴りの一部を消し、組みなおし、1文字付け足して……現れた名称は、ローダンをも戦慄させた。
新銀河暦1514年、銀河系に現われたアトピック法廷は、将来起こりうるべき重大な宇宙的災厄〈銀河系の劫火エクピュロシス〉の主犯格(Kardinal-Fraktor)として、3名の人物を糾弾した。
ペリー・ローダン、アルコン皇帝ボスティク1世、そして、最後の、正体不明の人物が……

〈アダウレスト(Adaurest)〉

会わねばならない。いまや超存在〈テズ〉の存在しない時間線にあるこの銀河系において、エクピュロシスは実際に起こりうる脅威である。もし、この男がアダウレストであるなら、危機を未然に防ぐためにも情報源たりうる。

しかし、アウレスのアダムは、TLDエージェントの追跡にも関わらず、忽然と行方をくらませていた。
レムール遺跡から急を告げる連絡が入った、まさにそのタイミングで。

(続く?)

ローダン作家会議2017あれこれ

公式サイト他の情報によると、2月27日(月)、謝肉祭に沸き立つラシュタットに於いて、今年の作家会議が開催されたとのこと。
残念ながら、今後のストーリー展開については一切触れられていないが、いくつか興味深い点を挙げてみたい。

まず、前日にあたる2月26日に、謝肉祭休暇終盤の混雑と交通規制まっただなかのインナーシティに集合したのが、草案作家両名、クラウス・フリックとヴェレーナ・テムゼンの4名であること。
テムゼンが物理学専攻であること、本業が工業機械製作会社勤務であること、文中に「彼女のデータペーパー」という表現があることから、2015年のカストル没後における“理系担当”であることが窺える。
#モンティロンやファンデマーンは、ペリペを見るに「聖歌研究」とか「オランダ語専攻」とか、もろ文系である。

そして、この陣容で「データペーパーの効果的な使いかた」やら「作家陣にわかりやすい草案のつくりかた」を打ち合わせているということは、この4名が現行の〈エクスポゼ・ファクトリー(草案工房)〉なのだと思われる。

また、会議当日の記事中ではさらりと「スーザン・シュヴァーツもまた臨席している」と書かれているだけだが、Infotransmitter(公式のメルマガ)最新号でははっきりと「再びレギュラー作家に」とある。シュヴァーツによるブログの見出しは「I’m back.」。I’ll be back. じゃないわねえ、とは彼女自身の弁である(笑)
シュヴァーツは2202話「ハイパーショック」(2003年)をもって作家チームを脱退。Bastei社のSFシリーズ『バッド・アース』『マッドラックス』に参加したり、自身も共同経営者であるFabylon出版からファンタジー・シリーズ『サン・クエスト』『エルフの時代』を刊行したりする一方で、2412話「アアルの水」以降、年に1~2話のペースでゲスト作家としてローダン(と、ローダンNEO)も執筆しており、“レギュラー・ゲスト作家”なる言いかたまであったらしい(笑)
正式レギュラーとしての復帰作wは2907話「若芽《イエト》」である。

さらにInfotransmitterでちらりと書かれているのが、参加者の中にいるアルント・エルマーについて「遠からず、彼の書いたものが読めると期待したい」という表現。エルマーは25年間務めたLKS担当を降板することを告知した2740話「ギャラクティカム掌握」以降、作品を発表していない。昨年の会合のポートレートにも姿が見受けられるので、必ずしも体調が悪いとか、そういうわけではないようだが……。
エルマーは1954年生まれ。まだ枯れるには早いし、彼のローダン第1作1155話「目覚めさせるもの」も、そう遠からずハヤカワ版が到達するはずである。がんばってちょ(^^)

Infotransmitterには、参加者の集合写真も掲載されている。
なんというか、個人的に、ぱっと見でわかる作家さんが少なくなったな……と。まあ、そうだよね。わたしがローダン原書で読むようになったのは1985年。公式サイトができて、作家さんの情報とか簡単にアクセスできるようになったのが96年。あのへんで大量に画像情報とか脳内インプットされてから、すでに20年だもんなあ。
それこそエルマーくらいしか残ってる作家いねぇ。
#某レギュラー・ゲスト作家さんと、フーベルト・ヘーンゼルもいます(ぁ

■公式Logbuch: Autorenkonferenz im Februar 2017
■Uschis Blog:I’m back.

訃報:ミハエル・H・ブーフホルツ

ミハエル・H・ブーフホルツ (Michael H. Buchholz)
1957.03.12 – 2017.03.06

公式サイトによると、ローダンNEOの草案チームのひとりミハエル・H・ブーフホルツが、3月6日、闘病生活の末、死去したとのこと。享年59歳。

ハノーヴァー生まれのブーフホルツがSFと出会ったのは10歳の頃。当時、本放送が始まったばかりのドイツ初のSFTVシリーズ『宇宙パトロール(宇宙船オライオン)』に夢中になったらしい。そして、これをノヴェライズしたハンス・クナイフェルがローダン作家であったあたりから、シリーズとの縁が(やや遠回りして)つながったみたい。

90年代にはリュディガー・シェーファーらと共にアトランのファンシリーズ(全23話)を執筆。ATLANヘフト完結(打切)に我慢ならず、“その後”のアトランの物語を自らひねり出したわけである。フェネルゾーン銀河を舞台に、コスモクラートが脅威とみなす謎の《ゴーア》をめぐる冒険は、後に書籍化もされている。
その後は、自己啓発本を書いたり、故郷ハノーヴァーに創設した団体でセミナーを開いたりしていたようだ。

2004年にATLANミニシリーズ〈オブシディアン〉で第11話を、翌年〈ダークスター〉で第7話を担当。2007年にはポケットブック版ATLANのルデュン三部作完結編『8日間の永遠(Acht Tage Ewigkeit)』を執筆している。
そして、若干の期間をおいて、2015年の89巻『豹のチャト(Tschato, der Panther)』からローダンNEOの作家チームの一員となり、2割程度を担当しつつ、101巻からは僚友シェーファーと共に草案作家を務めていた(NEO第2期、と呼称される)。

ぶっちゃけ、前任ボルシュが“やりすぎ”て事実上解任された後を両名はうまくひきしめ、立て直した感がある。ただし、別記事のコメント欄でも書いたが、現在のNEOは、ローダンの登場人物とガジェットを用いたまったく別の物語となっている。そのへんは賛否両論あるだろうが、ともあれ新サイクル〈メテオラ〉がはじまった(かつ、日本での翻訳プランが公表された)ばかりのところで、NEOは重要な舵取りを失った。今後どのような対応が取られるか、心配なものだ。

■公式サイト:Michael H. Buchholz ist verstorben
■公式サイト:Michael H. Buchholz
■Wikipedia:Michael H. Buchholz

ドイツSF大賞2017年ノミネート作一覧

3/1付けSFCD公式サイトで、ドイツSF大賞2017年のノミネート作品が公表された。
2016年中にドイツ語圏の印刷媒体で発表された作品が対象。授賞式は6/16、今年の欧州SF大会兼SFCD年次大会である、U-con(於ドルトムント)にて開催予定。なんだか今年は、若干スケジュールが前倒しっぽい。たぶんユーロコンの日程から逆算なのかも。

ノミネート作品は以下のとおり:

長編部門 Bester deutschsprachiger Roman:

Dirk van den Boom / Die Welten der Skiir 1: Prinzipat / スキイルの世界1:元首政
Andreas Brandhorst / Omni / オムニ
Christopher Ecker / Der Bahnhof von Plön / プレーンの駅
Marc Elsberg / Helix / らせん
Andreas Eschbach / Teufelsgold / 悪魔の黄金
Jo Koren / Vektor / ベクトル

ディルク・ヴァン・デン・ブームの『元首政』は、2月末に第2巻『保護領』が刊行されたばかりのスキイル3部作第1巻。
200年前、地球は昆虫種族スキイルに征服され、完全に孤立した状態に置かれていた。今、その雌伏の時代が終わり、人類は「目覚め」たものとして、銀河社会への扉が開かれたのだ。しかし、それは地球が銀河に渦巻く陰謀と暴力へと巻き込まれることをも意味した。未知の敵はスキイル帝国本星をも攻撃対象としており、また地球にも根深い反乱勢力が存在した……。

クリストファー・エッケルは1967年ザールブリュッケン生まれ。SF作家……では、どうもないような。代表作である小説『ファールマン』は、19世紀の詩人にちなんだフリードリヒ・ヘッベル賞を受賞しているし、また別に詩集やエッセイも出している。
『プレーンの駅』は、ニューヨークのぼろアパートに、トロールみたいな従僕と住んでいる「僕」が主人公。「僕」は、〈水先案内人〉を通してとある組織の仕事を請け負っているのだが、たいていは死体運び。地下鉄を経由して、パリへ、アムステルダムへ、北独のキールへ……。だが、「僕」は疑問を抱いてしまう。なんで、地下鉄でアメリカからヨーロッパへ? しかも一瞬で? 自分はいったい何をしているのか、いや、そもそも自分はいったい何者なのか――?
独ツァイト誌の書評の見出しが「北国のマトリックス」、小見出しが「北ドイツのゲーム・オブ・スローンズ」である。参考までに(笑)

エシュバッハ『悪魔の黄金』は、〈賢者の石〉をめぐるスリラー……と、出版社は分類しているが、前作『イエスの取引』もスリラー扱いだったのだ。タイムマシン登場しちゃうのに(笑)
主人公ヘンドリク・ブスケはフィナンシャル・アドバイザー。愛する妻子がありながら人生への不満、世界からの疎外感を抱きつづけていたヘンドリクが、とあるアンティークショップで万引きした一冊の古書には、十字軍末期に発見された〈賢者の石〉にまつわる歴史の断片が記されていた。
放射能に汚染された金を生み出す〈賢者の石〉は、錬金術師とドイツ騎士団の暗闘を経て、ついに現代に蘇るのか。それは人々を楽園へといざなう鍵、それとも地獄の門を開くものなのか……?

短編部門 Beste deutschsprachige Kurzgeschichte:

Dirk Alt / Die Stadt der XY / XYの都市 (Exodus34号収録)
Gabriele Behrend / Suicide Rooms / 自殺部屋 (Exodus35号収録)
Andreas Eschbach / Acapulco! Acapulco! / アカプルコ!アカプルコ! (Exodus34号収録)
Marcus Hammerschmitt / Vor dem Fest oder Brief an Mathilde
    / 祭の前 あるいは マチルデに宛てた手紙 (Nova24号収録)
Michael K. Iwoleit / Das Netz der Geächteten / 無法者のネット
    (『ゲーマー』Gamer 収録)
Frank Lauenroth / Tubes Inc. / チューブス(株)
    (『健康第一!』Hauptsache gesund! 収録)
Ernst-Eberhard Manski / Korbball / バスケットボール
    (『80SF世界一周』Rund um die Welt in mehr als 80 SF-Geschichten 収録)

エシュバッハ、ハマーシュミット、イヴォライト、マンスキと、常連の名前が並んでいる。特にエシュバッハは長編でもノミネートされているが、どうなるやら楽しみである。

マンスキ「バスケットボール」が収録された『80SF世界一周』(正確には、“80以上のSFで世界一周”であるが、ヴェルヌへのオマージュなので)は、4年間かけてあちこちの国のSFを集めて編集されたもの。これまでドイツでは紹介されたことのない国の発掘をめざしたらしい。さすがに80ヵ国は無理だったらしいが、41の国々から集めた総94編。
あの……日本の Akiko Kawabata ってどなたですかね……。

■SFCD公式:DSFP 2017: Die Nominierungen
■参考:Around the world in 80 science fiction stories (リンク切れ)

んー……去年の顛末を報告してない……とゆーか、デスクトップに残る「ファンタスティーク大賞2016年ノミネート作一覧.txt」が……(汗)