惑星小説318巻『暗黒の諸世紀』

惑星小説318巻『暗黒の諸世紀(Die dunklen Jahrhunderte)』は、当時の草案作家ヴルチェクによる、1400話「夜の神々」において発生した、停滞力場による主人公ローダンらの時間ジャンプで跳びすごした695年――後の世に「暗黒時代」と呼ばれる――の歳月を埋めるオムニバス短編集である。キーとなるのは1隻の船。時に名を変え、役割を変えつつ、その船が体験した事件を描写している。
また、プロローグとエピローグの舞台となる「宇宙船の墓場アッシー=バラン」については、本巻と同時発売である正篇1464話の付録レポートで紹介がなされるが、次サイクルになって、リング人が急速な技術革新をなしとげた背景には、上記の廃棄場から再利用可能な機器を回収した事実があったと言及がある。

時系列としては、当時ローダンらは銀河障壁をなんとか突破。抵抗運動と合流するも、カンタロとの会戦で一敗地にまみれる。
星の暗黒回廊のかなたからカンタロの母種族アノレーの代表を連れもどったティフラーらも合流し新たな作戦を実行に移す一方で、ローダンを“敵”と呼ぶ謎の存在〈モノス〉があらわれたり、ソル系が消失したり、“幽霊船”の新たな被害者が出たりしているのだが、本巻の事件自体はそれらとまったく関わりがない。

プロローグ

新銀河暦1145年10月、「宇宙船の墓場」の噂をたどったひとりの男がアッシー=バランへと足を踏み入れた。その男デンソッダーはカンタロのパトロールの目を逃れ、1隻の残骸に潜り込む。その船の名は《エリシアン》。
時間つぶしに、まだ機能が生きていた艦載シントロニクスと会話をはじめたデンソッダーは、その計算脳に、驚くべきことに銀河系の“真の歴史”が記録されていることを知る。

1 命名

I 日曜日の子どもたち

新銀河暦480年、地球ではデルタ・スペース社の新型プライヴェート・ヨットのプロトタイプが完成。名誉会長ジェローム・モンテフェッロの一人娘にちなみ《エリシアン》と名づけられた。だが、アダムスをはじめとする貴顕も列席したセレモニーは、デイトンの発令したブリッツァー警報のため中断される。
それが運命を象徴したかのように、戦時経済で個人向けヨット市場は壊滅的打撃をうけ、翌年デルタ・スペース社は倒産。建造済エリシアン型500隻は医療船として転用される。《エリシアン》自体は485年、25歳の誕生プレゼントとして娘へ贈られるが、翌年彼女が惑星マルディ=グラへ転勤する際、タフンへと送り返された。
490年のブリッツァー禍で惑星マルディ=グラが壊滅した際にエリシアン・モンテフェッロは死亡。悲嘆に暮れたジェロームも娘の後を追った。

II 未来からの逃亡

新銀河暦490年にペリー・ローダンらが不可解な帰郷と“死”を遂げたあと、ヴァニティ・フェアは逃げることにした。デイトンが怖ろしかった。自分の宿した生命を守らねば。逃亡に使用した《エリシアン》の艦載脳に細工をして、“真の歴史”が記録されるよう手配したのは彼女である。
当時すでにアダムスは行方が知れず、デイトンも491年1月に“事故”に遭い、以後人前に出る際にはフルフェイスのヘルメットをはずさなくなっていた。

フルフェイス版のデイトンは、第2の過去編「ヒューマニドローム」で正篇に登場。
当時わたしは「ロボ天使かよ!w」とツッコミを入れていた(『悪が呼ぶ!』は当時連載中)。
すでに“ブルの子”であることは確定だったらしいシーラ・コレルは、紆余曲折あって次サイクルで出てくる。

また、これはさらに別の外伝の話も含め、当時すでにシメド・ミュルフやエイガー・カトメン、ファーロン・ストレッターら、後に“回廊の主人”として名の挙がる者たちが、歴史の表裏で活動をはじめている。

III システムの虜囚

490年5月、アダムスは(おそらくカンタロの)せむし船によって誘拐され、どこかもわからぬ場所に幽閉されていた。1年後ようやく脱出した彼は、そこが惑星タフンであることを知る。
《エリシアン》で逃走したアダムスは、カンタロの目的を探るため極秘に組織していたハンザ下部組織の秘密商館へ。銀河系の現況を聞かされ、アダムスは地下へ潜ることを決意する。

2 月曜日の装置

I 獣の咆哮

新銀河暦545年。すでに個人での宇宙航行は禁じられている。ただ、怪しげな特例法として、「テラで生まれた者及びその子孫には帰郷を許可する」というものがあった。
“ビーストロア”の異名をもつ惑星ショウルマーガーには多数のテラ植民者の末裔がいた。そのひとりである老人ジョック・タマリンは、数々のお役所仕事との格闘を経て、ようやく渡航許可を手に入れた。だが、用立てられた船はわずか1隻、定員8名(乗員込み)の《エリシアン》だけだった。

II テラ

《エリシアン》はヴェガ星系、惑星ゴルを経由してテラへ到着した。唯一無二の楽園へ! そこで人は精神の力で老化することなくすごせるのだという……。
だが、すべては虚構。テラへの旅自体がVRによるものだった。ジョック・タマリンは年老いた身体が負担に耐えきれず死亡した。装置はさらに改良されねばならない。

月曜日(Montag)は、組立・編集の意があるモンタージュ(montage)の含意がありそう。
要は、シミュセンス・ネットワークの実験は当時すでにはじまっていたということだ。

3 ヴァレンタイン・デイ

新銀河暦684年。《エリシアン》は《クラマウク》と名を変え、惑星エベナードの周回軌道に停泊していた。スカーシュと女ダンサー、パイパーの率いる興行チームは、また密かに抵抗運動のサポートもおこなっていた。不意に訪れた第一ギャラクティカー、ガルブレイス・デイトンはすべてをお見通しらしかったが。
そこへ入った、工作員エルマー・ヴィロンからの救難信号。実はヴィロンはカンタロの二重スパイであり、他の工作員たちを逃がすため、スカーシュはヴィロンを虚空のただなか行きの転送機へと誘き寄せる。失敗を悟ったヴィロンはスカーシュをまきぞえに自爆をはかる。しかし、スカーシュは生き残った――繭マスクを損傷しつつも、ヴァリオ=500は生きのびたのだ。

実はこの事件がもとで、エルマー・ヴィロンは抵抗運動の“英雄”として後世まで語り継がれる。新銀河暦1146年、テケナーがエルトルス潜入に使った偽装商船が《エルマー・ヴィロン》である。
そしてこの事件にまつわるパイパーへの悲恋からヴァリオ=500にはある種の“自殺願望”がめばえるのだが、正篇だけだとその行動の理由がさっぱりわからないというw

4 水曜日はエルトルス人の日

新銀河暦738年、《エリシアン》は6名のエルトルス人を乗客としていた。彼らは第一ギャラクティカー、デイトンの与えた試練に挑んだ戦士たち。
半世紀前、エルトルスを襲った疫病と飢饉の災禍に対する援助の代償として、デイトンは強化クローン、ヒグフォトとの対抗戦での勝利を求めたのだ。だが、デイトンは約束を守らなかった。翌年の再戦が要求され、援助はその勝利の代価とされた。そして、6名が故郷へ戻ることはなかった……。

5 緑なす聖木曜日

新銀河暦490年のブリッツァー禍で壊滅した惑星マルディ=グラ。150年間の再テラフォーミングを経て、新銀河暦875年に復興を遂げたとされたこの星だが、実態はまるでちがっていた。防御ドーム内でしか人は生きられず、アラスのジェネシス計画による怪物的なキメラが跳梁する世界と化していた。

6 13日の金曜日

新銀河暦1000年の到来をきっかけに大赦がおこなわれた。懲罰キャンプから解放された元サテライト・サイボーグのサムソン・ヤエリーは仲間たちとサカラ星系アウテムに入植する許可を得た。だが、そこはあまりに苛酷な惑星だった。
移民の際に知り合い、結婚した女性が死亡したとき、サムソンはもう我慢ならなくなった。元指揮官のもとへ集ったサテライト・サイボーグらを加えた抵抗運動は、惑星アウテムを火花へと変えた。

サテライト・サイボーグはエクトポッドとも呼ばれ、体組織、主に四肢などに“サテライト”と呼ばれるロボット・セグメントが使用され、脳インパルスによって遠隔操作が可能なタイプ。

7 土曜日のたそがれ

新銀河暦1071年。カンタロのナオショムによってアラロンから培養惑星シュウンガルへと貴重な細胞試料を運搬中だった《エリシアン》は機関トラブルで虚空で立ち往生する。
抵抗運動の船《クイーン・リバティ》が接近したとき、ひとつのインパルスがナオショムの心臓に組み込まれたモジュールに受信された。

培養惑星シュウンガルはサイクル後半で名称だけ出てくる。偵察へむかった艦は後に残骸で発見される。
《クイーン・リバティ》は抵抗運動組織ヴィダーの指導者ロムルスの旗艦。1440話「暗号名ロムルス」で登場。デイトンはその偽名のかげにワリンジャーがいると思っていたようだが……。「ロムルスはウィルス・ウォールで死んだ! たった今から、(序盤で潜伏した人)の新たな人生がはじまるのだ!」はサイクル名場面のひとつ。

エピローグ

デンソッダーの船はパトロールに破壊された。脱出の道はなく、このまま《エリシアン》で死を待つしかないのか。いや、《エリシアン》のシントロニクスには、まだいくつものエピソードが納められている。そして、その中には希望が――。
可動式宇宙要塞オリオン=738の攻防戦に参加し大破した《エリシアン》は、死の世界とされる銀河障壁の“外”からの来訪者の情報を得ていた。惑星シュティフターマンIIIにあらわれたカンタロ、ダールショルと人質ペドラス・フォッシュ。そして障壁のはざまで擱座した2隻の船……《シマロン》と《ブルージェイ》の。
システム倒壊の時は近い!


そしてデンソッダーと《エリシアン》がどうなったかは不明(おい
上述の通り、本巻が刊行された時点(1464話)では、ローダンは抵抗運動組織ヴィダーと合流し、モトの真珠に残されたエラートのメッセージも届いて、ストーリーはカンタロを支配する〈回廊の主人たち〉――“ロード・マスター”とかになるのかにゃあ――の謎へと展開している。
しかし、ハヤカワ版も『ヒューマニドローム』まで到達したし、このくらいのネタバレは大丈夫だろうという個人的判断(笑)で公開に踏み切った。

ローダン外伝:ポケットブック・シリーズ

ローダン外伝のポケットブック・シリーズ(Perry Rhodan-Taschenbuchserien)は、主にグループ会社であるHeyne社から刊行された、ポケットブック型のシリーズ。旧惑星小説を指すローダン・ポケットブックス(Perry Rhodan-Taschenbücher)と酷似しており、大変まぎらわしい(笑)
2002年スタートの『アンドロメダ』から2011年の『ジュピター』まで、ほぼ年1シリーズ。巻数は1~6冊と様々。多くは合本・電子書籍化されている。また、ペーパーバック時の表紙イラストの大半は、元・ローダン断面図解作家であり、現在は『インディペンデンス・デイ』や『スパイダーマン・ホームカミング』などでプロダクションデザインを手がけるオリヴァー・スコールである。

アンドロメダ

  1. 燃える船 (アントン)
  2. メタン呼吸種族 (ヘーンゼル)
  3. 無重力列車 (ルーカス)
  4. 星に耳をすます者 (ベーメルト)
  5. 影の鏡 (ボルシュ)
  6. 時間都市 (ヴルチェク)

新銀河暦1312年。〈トラドム帝国〉サイクル中盤。ゼーレンクヴェルとの戦いの過程で誕生したモノクローム・ミュータントの精神集合体〈ニュークリアス〉の使者キリアーデにより、アンドロメダに迫る危機を伝えられたローダンは追跡巡洋艦《ジュルネ》で急行する。
到着直後、アンドロメダは時間バリアによって外界と隔絶。ローダンは強力な“燃える船”ことカストゥン艦隊とサイボーグ部隊ギュ・エネーイを率いる〈黄色の王〉の侵攻に立ちむかうため、テフローダーやマークスを糾合しようと奔走するが……。
黄色の王が2000話台でエスタルトゥ(第一期)を殲滅した(《ソル》とも交戦する戦士種族ムンデーンを派遣した)超知性体ク・ウーガルのなれの果てであるとか、並行して進む2100話台の敵〈理性の異端審問〉が実は本作で活躍した《ジュルネ》メンバーのなれの果てであるとか、エグい意味で相当凝った造りになっている。フェルトホフ草案。

オデッセイ

  1. 未来の植民者 (ヘーンゼル)
  2. 秘密戦争 (ルーカス)
  3. エネルギー礁 (クナイフェル)
  4. ドリーム・カプセル (ベーメルト)
  5. 輝ける帝国 (ボルシュ)
  6. 生命の使者 (アントン)

2199話で、トレゴンと無限架橋をめぐる事件の閉幕にともない、惑星トロカンと入れ替わる形で太陽系第四惑星として復帰した火星――に酷似した赤砂の処女惑星・新火星。新銀河暦1329年、入植者の一団とかの地を訪れたローダン、ブルらは、奇妙な高次元性障害で意識を失った際、10億年の未来に転移してしまう。この時代でヴァーリゴと呼ばれる銀河系は、斜陽の宇宙に新たな生命の息吹をもたらす〈大群〉として生まれ変わろうとしていた。テラと火星はその制御惑星バランス=A、バランス=Bとなる。だが、一致協力して大計画に邁進するかに見えた種族連合にも、おのが野望のため、大群を手中におさめようとたくらむ者たちが存在した……。
この時護衛として同行しているフラン・イミスさんは、旅のあいだにブリーと親しくなり、現在時に帰還した後、正篇で結婚式をあげる。フェルトホフ草案。

レムリア

  1. 星の箱船 (ボルシュ)
  2. 幾星霜眠れる者 (クナイフェル)
  3. 世代のエクソダス (ブラントホルスト)
  4. 最初の不死者 (ルーカス)
  5. レムリア最後の日 (ツィーグラー)
  6. ロンゲスト・ナイト (ヘーンゼル)

新銀河暦1327年、レムール時代の“箱船”《ネタク=アクトン》が発見される。5万年に渡り、亜光速で星の海を飛びつづけてきた世代船は、すべてで44隻あるという。そのエクソダス計画の背後には、細胞活性装置を持ち、時間転送機で過去へ遡ったレヴィアン・パロンなるレムール人の存在があった。また運命のいたずらか、時を同じくして、けだものの兵器敞惑星がめざめ、クローン培養を開始していた。
全巻ちゃんと読んでないので、イホ・トロトが滅亡間近なレムールに転移して何やってたのかよく知らないんだ……ごめんよ……。でもこの時代、あっちもこっちも時間転送機使ってりゃ、そりゃトラウマ持ちなウレブは攻めてくるわな……。草案はヘーンゼル。

パン=タウ=ラ

  1. 生命の戦士たち (ボルシュ)
  2. 廃墟球圏 (ブラントホルスト)
  3. 量子の要塞 (ヒレフェルト)

新銀河暦1341年、超空間インピーダンスの上昇を“コスモクラートによる攻撃”とみなした(あながち間違っていない)ルーワーの艦隊が銀河系に集結。胞子船《パン=タウ=ラ》を通常空間へひきずり落とすべく、多方面で戦線を展開。そして、ペリー・ローダン死すの急報が銀河系を揺るがした……!
そして別の時間線のバヤちゃんとか出てくる。草案はフランク・ボルシュ。全3巻。

ポスビ戦争

  1. 難船帝国 (ターナー)
  2. ラール人の星 (ルーカス)
  3. 宇宙船の墓場 (ハルトマン)
  4. 十億殺し (ヘーンゼル)
  5. プシ=ファブリ (ベーメルト)
  6. 創世マシーン (アントン)

新銀河暦1343年、ペリー・ローダンは〈それ〉の使者、メタルマン=ロト・ケレーテにクエリオン技術の〈銀球〉を授けられ、500万光年離れたアンブリアドル銀河(IC 5152)へ飛ぶ。ハイパー嵐によって外界との交通のとだえたアンブリアドルは、ハイパー次元アトラクターによって、さまざまな銀河でハイパー嵐のトリョルタン喉に呑み込まれた種族が漂着・定住していた。テラナーの末裔アルテラナー、マークス、ラール人、そしてポスビ……。ケロスカーの開発した〈七頭回路〉によって憎悪回路を中和されたはずのポスビが侵略をはじめ、すでに数十年続く〈ポスビ戦争〉を終わらせよ、というのだ。
わずかばかりの協力者とともに調査を進めるうち、テラナーはこの銀河に眠るコスモクラートの超マシーン《トラグトドロン》の存在を知る……。
終末戦隊トライトアの侵攻がはじまる1年足らず前。そして混沌の進撃はアンブリアドルにも及び、テルミオクのもとへ運ばれたはずの《トラグトドロン》も前線に再登場する。フェルトホフ草案。
作家・編集者・SF研究家として著名なアルパース、唯一のローダン参加作品。

アラ=トキシン

  1. 銀河医師族 (ルーカス)
  2. メド・ノマド (アントン)
  3. ネクロジェネシス (アルパース)
  4. 鋼鉄キャラバン (ファンデマーン)
  5. 残骸の橋 (ヘーンゼル)
  6. 無光惑星 (ターナー)

新銀河暦1340年、惑星タフンを訪れたローダンとティフラーは、アラスの暗殺者によって誘拐される。ふたりは「アラ=トキシン(アラスの毒薬)計画」の情報を探る暗殺者に心ならずも協力。アラス伝説の名医モーの狂信者たちが企てる“毒薬”はあらゆる生命を根絶やしにし、モビーのような鉱物疑似生命へとつくりかえる。そして、すべての背後には叛逆の島の王アセト=ラドルの存在が……。
暗殺者71号ちゃんは、後にティフラーの恋人として正篇にも登場する。ターナー草案。

赤い宇宙の帝国

  1. 化石都市 (ターナー)
  2. ドルーフォンへの鎮魂曲 (モンティロン)
  3. 未来の砦 (ファンデマーン)

新銀河暦1344年、トライトアの侵攻の前にテラノヴァ・バリアによる籠城が続くテラで、ローダンは突如異宇宙へ転移させられる。かつて構造漏斗から太陽系にも侵攻したドルーフの赤い宇宙。時間経過の速度が西暦21世紀に比べ飛躍的に早くなっているという異時間平面に、トライトアへの対抗手段開発の時間を稼ぐべく送り込まれた惑星コペルニクスの科学者たち。だが、主観時間で2000年が経過し、独裁国家へと変貌した“赤い帝国”は通常宇宙への逆侵攻をもくろんでいた! 捕らえられ、VR空間〈メンタル・シンポジオン〉に閉じ込められたローダンは、はたして脱出の、帰還の、逆転の機会をみつけることができるのか?
1971年のエラートとか絡んで、時系列がもうぐっちゃんぐっちゃんである。ファンデマーン草案。

テフローダー

  1. 遺伝子の封印 (モンティロン)
  2. 星風の帆船 (ターナー)
  3. 千の世界の都市 (ファンデマーン)

超知性体コルトロクを倒し、トライトアを撃退してから百年余。銀河系諸種族はそれぞれに復興をなしとげていた。テフローダーとブルー人の一部が建てた小国家〈トランス遺伝同盟〉における極秘プロジェクト〈ヴォーテクス〉が噂を呼んでいた新銀河暦1458年、ローダンはその公開テストに招待される。〈リニア・ヴォーテクス〉とは特殊なブイを配置してリニア空間に鉄道のような航路を敷き、HIショック以前に匹敵する高速度を実現する技術だった。だがテストは事故のため頓挫、ローダンとヴォーテクス・パイロットのカーディル・クレーは1100万光年離れたちょうこくしつ座の銀河ゾモートに漂着してしまう。現地で“カネをもたらす悪魔”と怖れられる奴隷商人チャ・パングと敵対しつつ、帰還の方策を探るが……。
このカーディルさんが、ファリエさんのおばあちゃんに当たる。後、駐テラ大使として正篇にも登場。ファンデマーン草案。

ジュピター

  1. ジュピター (ファンデマーン/ヘーンゼル/モンティロン)

作家3名共著による全1冊。
新銀河暦1461年(スターダスト・サイクルのちょっと前)、“超能力を呼びさます”麻薬〈タウ=8〉が問題になる。ローダン自身も乗り出した調査の手は、入植三千年祭の迫る、木星の衛星ガニメデのメルリン商館へと続くが……。
この外伝、カイ・ヒルト加筆によるヘフト版ミニシリーズ全12話も存在し、そちらにはマンチェスターに住む、カール伯父の末裔が登場する。ファンデマーン草案。

暗黒惑星

  1. 黒い種子 (ターナー)
  2. 黒い果実 (コーヴス)
  3. 黒い収穫 (プリュイック)

星墓/ジェネシス・サイクルの空白期間(1536年?)。これのみBastei社からの刊行。時期も2019年とかけ離れている。全3巻。
アトプ法廷が別の時間線に去った後、残留した一部のオンリョン人が暮らす暗黒惑星ジョリオナを訪れるローダン。古代地球の現住種ケーロウトの手がかりを求め、播種船の残骸が眠る暗黒惑星スティクスを訪ねるブガシドフ。植民惑星で発生した超能力犯罪を捜査して暗黒惑星にたどりつくモンキー。
タイトルからして、微妙にからみ合う展開が予想されるが、概略設定のみで、草案作家は不在らしい。

以後、というか『ジュピター』から少しの空白をおいて、2014年からは現在まで続くヘフト版「ミニシリーズ」がスタートするのだが、それについてはまた機会を改めて。

コミック『リトル・ペリー 1. 放浪惑星の秘密』

8月29日、ローダンのジュブナイル・コミック『リトル・ペリー 1. 放浪惑星の秘密(Der kleine Perry 1: Das Geheimnis des Wanderplaneten)が発売された。

ハードカヴァー 総天然色オールカラー本文92頁
ストーリー:オーラフ・ブリル
作画:ミハエル・フォークト
対象:8歳から

シナリオ担当のオーラフ・ブリル(Olaf Bril)は1967年生まれ、フリーの作家兼編集者。70年代からのローダン・ファンで、1000話記念のヴェルトコンにも参加し、多くのファンジンやLKSへの投稿も。
2007年からアリゲーター・ファーム社(ローダン・コミック『ペリー』の版元のひとつ)で原作を務め、作画担当のフォークトと知り合う。2人で組んで業界紙phantastisch!等に掲載されたコミック『奇妙な一日』シリーズは複数の出版社から集成版も出ている。
近年は編集者・作家としてローダンに協力。多くのミニシリーズやNEOにも執筆している。

奇妙な一日(Ein seltsamer Tag):
『奇妙な一日/ロボット寓話』(Atlantis社)、『奇妙な一日/宇宙間鉄道その他のロボット寓話』(Panini社)等。ロボット労働者ノーバディを主人公に、だいたい2頁1話構成とのこと。写真は前者の表4だが、エシュバッハが「phantastisch!を買ったら一番最初に読むとこだよ!」と献辞を寄せている。

作画担当ミハエル・フォークト(Michael Vogt)は1966年ベルリン生まれのイラストレーター。Bastei社から出ていたホラー・コミック『ゴースト・ストーリーズ』や、風刺雑誌“世界一理性的な雑誌MAD”などを手がけていたが、有名所としてはSFシリーズ〈宇宙パルチザン、マルク・ブランディス〉のイラストやコミカライズ、ジュブナイル・サッカー小説〈サッカー鮫〉のイラスト、上記ブリルとの共作〈奇妙な一日〉シリーズ等。
アリゲーター・ファーム版『ペリー』の作画も一部担当している。

マルク・ブランディス(Mark Brandis):
1970年から1987年にかけて全31巻が刊行されたジュブナイルSFシリーズ。キャッチフレーズが“信ずるもののために生きて死ね”で、パルチザンと銘打たれたように、地球を東方共和国と二分する欧米阿連合に出現した独裁者の野望に、中立の〈金星=地球・宇宙航法協会(VEGA)〉のテストパイロット、“呪われたプロシア人”ことマルク・ブランディスが立ちむかう。
2008年からWurdak社よりコレクター・エディションとしてペーパーバック版が出たほか、2012年からコミカライズ版がPanini社から、前日譚である〈宇宙候補生マルク・ブランディス〉のオーディオドラマ版が制作されるなど、息の長いシリーズである。

サッカー鮫(Fußball-Haie):
ストリート・サッカーを題材にしたジュブナイル・スポーツ小説。S.Fischer社から全10巻が刊行されている。シリーズ名は、おそらくチーム名。サッカーの才能に自信のある少年ペドロが、自分のサッカー・チームを立ち上げ、仲間を集め、監督をみつけ、ライバルとサッカー・コートや大会出場権をめぐって小競り合いをくりかえしつつ、成功をつかむ(?)まで――スポンサーのついた最終巻タイトルが『友情か勝利か?』なので、サクセスを投げ出している可能性も――を描く。

「ホントにここで降りるのかい、坊や。戻ってくるのは5時間あとだよ」「 だいじょうぶ、バターブレッドあるし。乗せてくれてありがとう」

ペット(?)のグッキーを連れてネヴァダ・フィールドに月ロケットの打ち上げを見に来たペリー少年。ママの設計したスターダスト号を遠くに眺めながら、「ああ、ボクもスターダストで宇宙へいってみたいなあ」
次の瞬間、グッキーに手をとられた少年は、ポン、という音とともに見知らぬ場所へ。
そこはカウントダウンの進む、レジナルド・ブル大尉、ラス・ツバイ大尉(おお、フリップ……)、コンピューターの専門家、女性科学者ハミルトン博士と船医エリック・マノリ博士の乗り組んだスターダスト。このへんポリコレのためくさい。
打ち上げからまもなく発見されたペリー(とグッキー)。緑のエネルギー・ビームを浴びたスターダストが月に不時着し、地球との通信途絶や、未知の球形宇宙船の発見等もあり、当初スパイと思われ軟禁されるが、またグッキーがテレポート。

「ああ、ボクもスターダストで宇宙へいってみたいなあ……え、なに?」

月の裏側に難破した球形船《アエトロン》にとびこんだ1人と1匹は、アルコン人の少女トーラとクレストおじさん(アップになると目尻にシワが……)に遭遇。ブルの誤解もとけ、不時着の原因となった未知のエネルギー力場を発する放浪惑星ワンダラーの秘密を探るため協力することとなる。

クレストの説明によると、1000年前アルコン星系にあらわれた放浪惑星〈永遠の若さの星〉の守護者ガーディアンは、当時の水晶王子率いるコマンドを一蹴し、すぐ武力に訴えるものはワンダラーの秘密を得るに値しないと姿を消したという。歳月のすえに平和を愛する種族となったアルコン人の高等議会は、ワンダラーを再発見すべく、非武装の研究船として《アエトロン》を派遣。シュプールをたどり太陽系へいたったのだが、スターダストと同じく緑のエネルギー場によって月面への不時着を余儀なくされた。

(上から) ワンダラーのガーディアン、〈出題者〉、火星大迷宮の門番、ヒュジオトロンの管理人

なお、本来の乗員はクレストただ1人で、トーラはいつのまにか潜り込んでいたらしい。「どっかで聞いたような話だな……」とつぶやくブル(笑)

突如《アエトロン》に侵入してきた〈出題者〉の言葉をうけ、ペリーらは“資格”を賭けた謎解きに挑むことに。月から火星の大迷宮、そして準惑星ケレスへと冒険はつづき、ついに7つの謎を解いた一行は生理学的装置ヒュジオトロンの管理者からその使用を認められる。一種の“アップデート”で、異星の大気や水に含まれる毒素への耐性を得るペリーとトーラ。
一方、クレストやブルらは副作用で少年少女に……さすが永遠の“若さ”の星(笑)

ヤング・ローダンの冒険とするにあたり、ペリーがおそらくローティーンの少年となった他、アルコン人が頽廃デカダンに陥ったという描写がなかったり、スターダストに新型エンジン〈リブロトロン〉が搭載されていたりする。

■リブロトロン駆動(Librotron-Triebwerk):
ローダン正篇におけるリブロトロン駆動は、カルプやワリング・コンヴァーターの発展形。2700話台に使用されているホークV型補正コンヴァーターで三層構造の補正フィールドを展開し、内側二層のフィールドで牽引力を発生。亜光速・超光速航行時の推進にも使用するというもの。なお、“ホーク”も元々の開発者名に由来する。
本コミック中での機能は、昔ハヤカワ版巻末のローダン百科で訳出された「フィールド・エンジン」に近いようだ。

もっとも、一番の改変はペリー少年のママ、メアリさんだろう。正篇では看護師だったメアリさん、本コミックでは“スターダストの設計者”という肩書き。(準惑星ケレスにいる)ペリー少年から電話がかかってきたときも、お庭で小型ロケットみたいな代物をトンテンカンテンやっており、その風体は科学者というより市井のあやしい発明家である。
「あら、ペリー。いまどこにいるの? グッキーもいっしょ?」
「ボクらスターダストに乗ってるんだ。月に、火星に、ケレス……。ねえママ、新しい友だちとちょっと銀河へいってきていい?」
「ふーん、わかったわ」(まったく、男の子の想像力ときたら……)
まるで動じないのがステキだママw

ともあれ、ママ・メアリのアドバイスを受けて、スターダストを上極にドッキングした《アエトロン》。地球人テラナーとアルコン人が手を携えて、ワンダラーの超知性体のもととなった種族の母星〈浮浪者トラムプ〉の手がかりをもとめて、銀河系の星の海へといま旅立つ。
「イルトも忘れないで?」
「イルトもいっしょ!」

……そして、冒険はつづく。
第2巻、ヴェガ星系を舞台とした『2. 四十二世界の国』は2024年発売予定とのこと。

■Carlsen社公式:Der kleine Perry

新ATLANヘフトの概略

ローダンの姉妹シリーズATLANは1969年に正篇と同じヘフト形式の月イチ(正確には4週ごとに1話)刊行でスタート。1年後に隔週刊、1978年には週刊と刊行ペースを上げるが、1988年、850話をもって終了した。
その後、1998年にロベルト・フェルトホフ草案の独立した〈トラヴェルサン・サイクル〉全12話が週刊で刊行され好評を博したのを契機に、2003年にケンタウリ・サイクル全12話が、さらに2004年のオブシディアン・サイクルからは「新ATLANヘフト」として通し番号が振られるようになり、2006年の炎塵サイクルで完結するまで全60話が刊行された。
現在Perrypediaでは各12話の7つのサイクルを「ATLANミニシリーズ」に分類しているが、個人的にはひっくるめて「新ATLANヘフト」と呼んでいる。

現在の正篇、3200話からのフラグメント・サイクルでは、「850年前にアトランがグルエルフィン銀河を訪れた」ことが語られるが、それを含め、正篇に影響を及ぼす設定等もあるので、おおまかなストーリーの流れを概括してみた。

1 トラヴェルサン / Traversan

新銀河暦1290年、惑星トラヴェルサンで島の王の遺産が発見され、急報をうけて駆けつけたアトランが島の王と誤認されたため、時間ステーションの秘密プログラム〈星の露〉が発動。アトランは紀元前5772年に移送されてしまう。現地領主の娘タマレナとねんごろになったアトランは、トラヴェルサンの人々とともに悪逆非道の星区総督の陰謀に立ち向かう。
正篇1900話台で、ギャラクティカム議場を「ちとヤボ用で」と中座してトラヴェルサンへ向かうシーンがある。次に登場するまでに1万年が経過しているとは誰も思うまい(笑)
草案:ロベルト・フェルトホフ

2 ケンタウリ / Centauri

正確にはオメガ・ケンタウリ(球状星団ケンタウルス座ω)。
新銀河暦1225年、アトランは建国まもないアルコン水晶帝国において、レムール人の遺産をめぐる陰謀にまきこまれる。ケンタウルス座ω星団に眠る恒星転送機と意識転送技術を先んじて見出したツォルトラル家当主クレスト=ターロ、そしてコスモクラートのロボット、サムカーもからんで錯綜した事態のいきつく先は――。
この頃は、まだ別れた恋人でもある女帝シータさんが健在なので、アトランも帝国内で比較的自由に行動できた。この事件で発見されたω星団中心部の恒星転送機〈カラグ恒星十二面体〉は、後の正篇、ハイパーインピーダンス上昇により超光速航行技術の衰退した状況で、銀河間移動のための恒星転送機網再稼働の中心的役割を担い、長らく活躍する。
草案:ウーヴェ・アントン

3 オブシディアン / Obsidian

カラグ恒星転送機の事故で、未知の空間〈オブシディアン・ギャップ〉へはじきとばされたアトラン。それは5億年以上昔に、あまたの宇宙に於いて活動した原初の〈大群〉リトラクドゥールムのバックアップ・システムの座。そして、ヴァルガン人女性キサラの協力もあり、アルコン人はω星団が混沌勢力の攻撃で銀河系に擱座したリトラクドゥールムの一部であったことを知る。そして、100万年前銀河系に残留したサイノスのひとり、旧知の山師カリオストロことサルダエンガルが、銀河系を犠牲にリトラクドゥールムの再起動をもくろんでいることを。
ヴァルガン人はATLANシリーズにおけるサイノスやクエリオン人的位置づけの種族で、七強者の城で出てきたマイクロ宇宙との往来を可能とするドルグン転換器を開発した種族の末裔。若き日のアトランはその叛徒の女王、〈黄金の女神〉イシュタルと出会い、一子カパトをもうけている。

4 大法官 / Die Lordrichter

カラグ恒星転送機の制御惑星カラグ鋼鉄界に出現したカピンから、〈ガルブの大法官〉と〈秩序の剣〉について警告をうけたアトラン。キサラとともに、銀河系のサウスサイドに遺されたヴァルガン人の施設で、その尖兵が活動していることをつかむ。〈プシの泉〉ムルロースの破壊には成功したが、すでに回収されたエネルギーは〈ダークスター〉と呼ばれるプロジェクトのため、1600万光年かなたのドゥインゲロー銀河へ移送されていた。
ガルブヨル――ガルベッシュを連想させる――は現在グルエルフィンに侵攻し、カピンに血みどろの内戦をひきおこしているという。

5 ダークスター / Der Dunkelstern

マイクロ宇宙からの暗黒物質に侵された恒星〈ダークスター〉。不死性を求める大法官の〈突破計画〉を阻止するべくドゥインゲロー銀河に進撃したアトランとキサラは、現地のヴァルガン人やカピンの協力を得て、ダークスターの破壊に成功する。

6 イントラワールド / Intrawelt

ドゥインゲロー銀河に構築された直径30万キロの人工空洞惑星イントラワールド。ガルブヨルの叛乱勢力コンタークラフトによれば、そこに隠された〈炎塵〉があれば戦局を好転させうるらしいが、空洞惑星には「物質の泉の彼岸に到達した」者しか立ち入れないという。アトランはキサラを残し、単身イントラワールドへ進入する。
先んじて空洞世界に来訪していた、かつてカオタークの協力者であった〈ソウルイーター〉ペオヌとの競争を制し、アルコン人は謎に満ちた〈炎塵〉を確保する。
ペオヌはカオターク・クズポミュルが蠱毒のように養成したソウルイーターであり、《トレーガー(母艦)》と呼ばれる特殊艦で活動する特殊部隊〈チャンピオン〉の一員だった。チャンピオンは2000話以降の正篇にも2名ほど登場する。また、ヘクサメロンの主ヘプタメルに力を与えたのもクズポミュルである(ただしこの設定は惑星小説のみで正篇には出てこない)。
草案:ミハエル・マルクス・ターナー

7 炎塵 / Flammenstaub

炎塵は服用者に現実改変能力を与える。だがそれは諸刃の剣であり、使いこなせなければ死をもたらすもの。自分にその力は余るとアトランは銀河系への戦略的撤退をはかるが、ガンヤスのペドパイラー船はグルエルフィン銀河を目的地に選んでしまう。
ガンヤス人とタケル人の会戦にまきこまれたアルコン人は、介入したジュクラ人に救出される。ジュクラ氏族を糾合する会合はガルブの親衛隊ザコールとタケル人によって粉砕されるが、会場を脱出したアトランらは山脈に隠された〈家臣〉を発見、脱出した先の自由貿易区の中心ボイシュ・ステーションで瀕死の言葉を伝える者インタプリタから〈永遠のガンヨ〉オヴァロンの意識片を受け入れる。
ガルブヨルはガルベッシュと同じくトロダル――勇猛に戦いぬいた戦士のみがたどりつける死後の世界――を信奉するヴァンカナル銀河の戦士種族集団。14名の大法官と最高大法官、そして頂点に立つ〈秩序の剣ガルボグテラ〉に率いられる。だが、当代の〈秩序の剣〉エミオンは、実は異なる蓋然性平面からの来訪者で、苦痛でしかないこの宇宙での生を終わらせる手段を求めていた。
海星船《フム》での最終決戦でエミオンが異なる存在平面へ放逐された後、新たに〈秩序の剣〉に就任した大法官、タケル人サリラはオヴァロンの意識片を受け入れ、ガルブヨルのヴァンカナル銀河への撤退を開始した。

……本編ではなく、Perrypedia収録のあらすじをざっと眺めただけだが、それだけでも〈永遠のガンヨ〉あたりに誤解のあったことが判明した。
正篇3200話で付帯脳が「前に来たのは800年以上前のこと」とつっこみを入れるのが、最後の炎塵サイクルの事件(新銀河暦1225年)である。ただし、これだけ見ても、正篇1277話で成立したグルエルフィン同盟がどうなったかはっきりしない。インタプリタ(と書くと、某コンパイラを思い出してしまうなw)が出てくるので、15年前に内戦が勃発するまでは基本構造は似通っていたものと想像される。
正篇でパンヤス人のトップが〈永遠のガンヤ〉(ガンヨの女性形)なのは、オヴァロン崇拝が廃れたのか、シラリアの後継たるガンヨが下克上したのかも不明。このへんはおいおい明らかになると思われるが、どうかなあ。

■Perrypedia:ATLAN-Miniserien

ヘクサメロンの王国

昔々、の話ではある。
私が時々話のタネに挙げる本のひとつ、シリーズ25周年記念『ワークショップ・ファイル(Werkstattband)』が発売されたのは1986年。1万部限定のペーパーバック〔写真左〕と増補改訂ハードカヴァー版〔同右〕がある。

そして後者に追加収録された記事のひとつが、1986年ザールブリュッケンで開催されたヴェルトコンでの草案コンビ、ヴルチェクとマークによる今後の展開についてのトークの書き起こし、〈ヘクサメロンの王国(Herrschaft des Hexameron)〉だ。
ヴェルトコン開催が9月なので1306話が出たばかり。イベントの模様がLKSに掲載されたのが1315話~19話。この時点で、コンに参加するほどアクティヴなファンには周知の内容だった。公式サイトもフォーラムもまだない(1996年開設)。de.rec.sf.perry-rhodanあたりがどうだったかは、残念ながら知識がない。現存するログでは1993年までしか遡れなかった。

チーム作家、元メンバー、遺族、編集者、断面図解作家らが回想録・こぼれ話・エピソードを寄せた1冊。現在はPerry Rhodan-Chronik I-IVという編年体の資料が刊行されているが、当時公式でこれだけの裏話が出たのは初めてだった。

で、ハヤカワ版も674巻まで到達したし、本格的なネタバレもないし、紹介したいと思ったはいいが。これ、銀本と同フォーマットで20pあるのだ。さすがにいまだと訳すヒマがないので、最後のあたり、ヘクサメロンについてそれらしい言及のある個所をピックアップしてみた。全体の1割程度。
なお、以前Twitterでつぶやいたとおり、完全にこの通りには進まないので、念のため。


EV:
 カルタン人は天の川銀河をこう呼ぶ。「遠き星雲」、彼らの言語で〈サヤアロン〉と。奇妙なことに、彼らは宇宙にも固有名を持っている。〈メーコラー〉、「膨張する巨大なもの」という意味。だが、次の言葉は誰のものだろうか?
『メーコラーの中にしか生命はない。縮みゆくタルカンに潜むは死だけだから!』
 カルタン人でない者がそう言うから、奇妙なのだ。また、アッタル・パニシュ・パニシャことオーグ・アト・タルカンとは?
 カルタン人はまだまだ驚くべきことがある。しかし、ようやくその糸が解けるのは、巨大な門が開き、この宇宙のごく狭いエリアに未曾有の洪水が押し寄せたときとなる。

KM:
 なぜなら、孵卵器ドリフェル反応せざるを得なくなれば、起こるのはまちがいなく、あらゆる想定を超えた大災害である。
 そして、ドリフェルに幾百万と蓄積された蓋然性の未来のひとつが現実となる。
 ドリフェルには自らを護る力がない。かつてプシ定数が上昇した際には、我々が〈深淵〉として知る構造を強化した。これ以上の定数上昇は宇宙的規模のカタストロフィにつながる。あらゆる元素の大洪水がこの宙域に押し寄せ、モラル・コードによって支えられた秩序をかき乱すだろう。。
 ここで〈ヘクサメロン〉を名乗る勢力が登場する。この名は、彼らにとり世界の余命は6日しかないことによる。そして、ドリフェルが反応し始めた瞬間、ペリー・ローダンはヌクレオチドの中におり、なすすべもなく飛ばされてしまうのだ。生命が否定され、死こそがすべての努力の目標とされる領域、滅びこそが新たな生命を生み出すと渇望される場所へと。そして、死後の生ではなく、いまある生のため努力する無力なものたちは、混乱にまきこまれつつヘクサメロンの戒律に絶望的な抵抗をつづけている。

EV:
 すべてが中央集権的に志向され、自然の力そのものが崩壊を助長するこの領域に、ペリー・ローダンは囚われることになる――帰還の可能性などない。アトランは、友を救うためには自らも渾沌たる死のゾーンへと続くしかないと気づく。カルタン人の語る天使のような言葉は誰にも理解できない。〈丸太〉には双子の兄弟が存在することが判明し、オーグ・アト・タルカンは復活すると、戦士崇拝の信徒たちに、ばかげた行いには終止符を打たねばならないと語りかける。
 そして、あらわれた使者たちは告げる:

――ネットウォーカーの終焉を。

KM:
――永遠の戦士たちの滅びを。

EV:
――エスタルトゥの奇蹟の消滅を。

KM:
――ひとつの銀河の誕生を。

EV:
――ひとつの宇宙の死を。

 しかし、アトランは外部の助けがなければ友を救出しえないと悟る。テラナーはシンギュラリティへ突き進む渦に呑み込まれ、沸騰するプロト物質の中へと落ちていくのだ。そして、あらゆる刻印から解きはなたれた意識を持つものとして新生する。

KM:
 〈それ〉が命綱を投げる。ローダンにだけでなく、
――エスタルトゥ十二銀河で危機にあるものたちに、
――苦境に立つ局部銀河群の居住者たちに、
――無から生まれた銀河の、無力な居住者たちに。

EV:
 〈それ〉は力の集合体の支配者としての役割を正しく務めるが、とうとうその存在の謎を明かさねばならない。
 だがそれまでには、克服すべき幾多の脅威がある。死をもたらすものたちは、おのが勢力圏が壊れた砂時計のように漏れ落ちるのを看過しない。自分たちの信ずるところを守りたいのだ。

KM:
 彼らの望むは完全なる万物の死。
 厳しい戦いになるだろう。
 ペリー・ローダンよ、心のままに進むがいい。

ENDE


原文ではヴルチェクはErnst、マールはKlaus(本名)だが、筆名のイニシャルで統一した。
なお、最後の原文は DAS WALTE PERRY RHODAN. で、「神の御心のままに」の常套句のダジャレである(笑)

たぶん、どーにか収縮プロセスを加速させて、宇宙の新生、までやるつもりだったんじゃねーかと思ってるんだけども。それで1500話あたりが「〈それ〉」になったり。
サリクの献身とか、そのへんどー扱うつもりだったのかはともかく、この通りに進んだら、後々何度も出てくる〈騎士のオーラ〉もリセットされて、ローダン・シリーズ全然ちがう話になったんじゃあと思うのだけど。いろいろ残念。

あと、〈深淵〉を強化したとあるが、プシオン網の間違いじゃないかなあ……。

以下、余談。
時代を感じるのは、“これまでの話”をふりかえる中で、マールがメッセンジャーの作用等を詳細に説明していること。そうね、この2年前、大学1年の私は出版されたばかりのブルーバックス『バイオテクノロジー』をテキストに村上教授の講義を受けたもので、まだホントの意味で一般教養ではなかったかな。

元ATLAN作家の回顧録

ファルク=インゴ・クレー(Falk-Ingo Klee)は1946年ボーフム生まれ。ヴルチェクあたりと同年代にあたる。80年代に主としてATLANシリーズのレギュラー作家として1割前後を執筆していた。旧ATLANヘフトが850話で“完結”した後、彼がローダン本篇に参加する機会はなかったのだが、近年になって当時の内幕を知る人物として公式サイトに度々コラムを寄稿している。

今回掲載された“Das Triumvirat der Expokraten”は彼が参加していた頃のATLANヘフト草案作家についてのもの。
Triumviratは古代ローマの「三頭支配者」であり、ローダンではカルスアル同盟の寡頭制としても使用されている。一方のExpokratenは草案作家(Exposé-Autor)とコスモクラートの合成語で、ローダンの草案がヴルチェク+マールの合議制になったのよりさらに後、技術草案やブレーンを含めて草案工房(Expose-Factory)と呼ばれる時期を経て、だいたいフェルトホフとクラウス・フリックが主導権を握った時代から使われるようになった。
いずれにせよ旧ATLANヘフトが刊行されていた時代にはなかった言葉だが、ここでは基本、当時のATLANをウィリアム・フォルツから引き継いだマリアンネ・シドー、ペーター・グリーゼ、H・G・エーヴェルスを指すと思えばよかろう。

個人的に興味深かったのは、原稿には作者の考案したタイトル×3とタイトル下のあおり文句×3を添付され、当時の原稿審査係(Lektor……編者を、往年のファンダムでは慣習的にこう訳していた)であるシェルヴォカートが1点を選ぶか、ピンとこない場合は自分で新たにひねり出す……という仕組みが明記されていたこと。
もう前世紀の話だと思うが、1500話台のとある草案のコピーを見る機会があって、そこに3つのタイトル案が列記されていたのは知っていたが、オフィシャルに書かれたのはこれが最初じゃなかろうか。知らんけど(ぁ

あとは、Terra-Astraの一部でも草案制は採用されていた、とか。
Terra-Astraは70年代から80年代にかけて、週刊・後に隔週でメーヴィヒ社が刊行していたSFヘフト叢書。全タイトルがペリペに掲載されていることにいまさらながら気がついたり。ヴルチェクの『銀河の奇蹟』とか、クナイフェルの『宇宙船オライオン』とか、翻訳モノとしてスタトレやダーコーヴァとかデュマレスト、銀河辺境なんかも収録されていた。日本でいう銀背あたりに相当するのかなあ。
細かく調べていけば、それ以外に、複数作家で執筆されたミニシリーズがあったりするのだろう。それはそれで楽しそうだが。

あと笑ったのは、作家間の連携のため、草案は直接担当しない全作家へも送付され、また書きあがった原稿を次話担当の作家に送付する決まりになっていたのだが、何分インターネットなど普及していない当時、フロリダ在住のマールへ送る便は高額で、後年会った際に「ちゃんと送ってきたの、キミだけだったよ……」なんて言われたとか(笑)

まあ、今は昔。とっぴんぱらりのぷう(違

草案作家の三頭支配者

MADDRAX x Perry Rhodan

受け攻めの話題ではない、念のため(笑)
昨日、2月4日で、Bastei社から隔週で出ているSFヘフト・シリーズ《マッドラックス》が20周年を迎えた。これを記念して実現したコラボ企画が、「マッドラックス・ミーツ・ペリー・ローダン」なわけ。

マッドラックスでは現在「並行宇宙」サイクルが進行中なのだが、同日刊行の523話タイトルは、そのものずばり「クロスオーヴァ」。作者はローダン作家でもあるオリヴァー・フレーリヒ。
そしてNéstor Taylor描くところの表紙絵がこれ。主人公マシュー・ドラックスとヒロインのアルーラ、金色のやつは〈記録者〉ダルトン・シェア(Dalton Shair)……のはず、だが。そう、ローダン・ヘフト第1話「スターダスト計画」のオマージュである。

西暦2550年、旧韓国西方のクレーター湖(2012年のクリストファー=ロイド彗星が激突した場所)を訪れたマシュー・ドラックスとアルーラは、グライダーで旧チベット近傍のアガルタへと向かっていた――のだが、不意に衛星システムとのリンクが切れた。ふたりは並行宇宙の地球に転移していたのだ。
時は西暦1971年、アジア連合支配下のゴビ砂漠。月面でアルコン宇宙船と遭遇したペリー・ローダン少佐は《スターダスト》で不時着をよそおい、当地に〈第三勢力〉をうちたてたばかり。東西両ブロックとアジア連合は月着陸船周囲にはりめぐらされた輝くドームの秘密を探るべく工作員を送り込んでいた。

マシューらは、アガルタの科学者の末裔たる〈記録者〉のひとりダルトン・シェア(ダールトンとシェールであるw)に遭遇。アルコン技術のエネルギー・ドームの影響で装備を使えないというダルトン・シェアをともない、《スターダスト》へ接近する。おりしも、IIAのマーカントの命をうけたアルブレヒト・クライン少尉が当地を訪れていた。クラインがドームを離れるのと入れ替わりに侵入したマシューらだが、ローダンとクレストにあっさり捕まってしまう(笑)
交錯するふたりのSFヒーローの軌跡。見知らぬ種族(ダルトン・シェア)に遭遇して燃え上がるクレストの知的好奇心!(爆) マッドラックスのバック・トゥ・ザ・フューチャーは成功するのか(おい

元米国軍人というキャリアを同じくしつつも、まったくちがう時空の出身であるマシューとローダン。マシューにとって最初の月着陸船はアポロ11号だったりして、微妙にすれちがう様は微笑ましい。もちろん最後には、マシューとアルーラは〈記録者〉の用いる〈時を超える空間〉経由で2550年へ帰還するのだが……“知りすぎた”クレストの対処もちょっとアレである。精神干渉装置大活躍(笑)

巻末にはクラウス・N・フリックのコラボ挨拶や、これまたローダン作家にしてマッドラックス作家でもあるミハエル・マルクス・ターナーのシリーズ回顧録が収録されている。
近年は、暗黒惑星3部作等、ローダン関連書籍がBasteiから出ていたりもするのだが、こんな共演が実現しようとは思わなかった。みんな、イロイロと考えているんだねえ……。

■beam-shop.de:MADDRAX trifft Perry Rhodan

銀本タイトル2020

公式サイトNewsで、来年2020年の銀本タイトルが公表された。

149. Der Einsame der Tiefe / 深淵の隠者
150. Stalker / ストーカー
151. Sternenfieber / 星々への熱狂
152. Die Raum-Zeit-Ingenieure / 時空エンジニア

銀本(Silberbände)は、ペリー・ローダン・ヘフトを合本化・再編集したもので、3月・5月・9月・11月の年4回刊行。19巻までをフォルツ、80巻までをホフマン、以降をフーベルト・ヘーンゼルが再編集を担当している。
1巻あたりの分量はヘフト版6話程度。必ずしも1話すべてが1巻に収録されるわけでもなく、収録話数はかなり変動する。また、再編集の際にエピソードの取捨選択がなされ、金星のジャングルとか、グレイビーストの流刑囚とか、プロフォスの叛逆とかがカットされているのは、過去の記事でも言及したとおり。

ヘーンゼルは、クロノフォシル・サイクルについては比較的“時系列順”へと再編集している感じ。
現在最新巻の148巻『ドリーマーの力』は、前巻『サイコフロスト』の末尾、1234話「海賊放送局アケロン」のエピソードを受けた〈警告者〉探索編からヘフト版サイクル中盤のクライマックス、クロノフォシル・テラをめぐる攻防を描くが、これが1241~1246の全6話収録である。

149巻がおそらくサイバーランド編5話+α、150巻が1251~1257の〈最後の会戦〉編、151巻がエデンII編、152巻がヴァゲンダ編から1250話「時空エンジニア」(編集次第では1269~1272話のフロストルービン帰還編も)だと思われる。1235話「エデンの電光」は149巻か151巻か。
1250話は、当時も、なんか深淵編だけやけに時間進んでない?という話はあった。影の感化力……ハヤカワ版だとグレイ作用だっけ?の侵蝕が限界まで進んでから、ストーカー(当時よりだいぶ、悪い意味が拡散したけど、訳語どうすんのかなあw)登場からのエレンデュラ編、エデンII編で、だいじょうぶかと思ってたら、フロストルービン帰還でローダン側の話が追いついたので、苦笑した記憶がある。再編集で、そのあたりが均される感じだ。

ただ、このへん、実はもうすぐハヤカワ版にも登場する変なヒト(笑)が、深淵の地とエデンII、両方に顔を出すので、ヘーンゼル大変そうだなあと……。
クロノフォシル・サイクルはもう30年以上前、エーヴェルス先生が大暴れしていた頃である(爆)

■公式News:DIE PERRY RHODAN-HARDCOVER IM JAHR 2020

本日のお買い物

今朝、仕事が明けた帰途たちよった秋葉原で数冊の本を購入。

1冊は、ネット界隈でも話題になっている中国SF『三体』。U隣堂は品切れだったが、3省堂にはまだ在庫があった。
訳も大森さんだし、原書と英訳版を参照しつつみたいだし、クオリティは心配していない。問題は、わたしの腐った脳ミソで理解できる話かどうか……。

で、『三体』は2017年のラスヴィッツ国外部門受賞作なわけだが。

今年の同賞同部門受賞作品、Early Riserの邦訳が、実は先月末に出版されていたことを先般知った。
『雪降る夏空にきみと眠る』(上・下)……あら、なんだか素敵な邦題に。
こちらは3省堂で無事捕獲。いやー、近場の本屋だと、竹書房文庫ほとんど置いてなくって(笑)

竹書房は、ゼラズニィの『虚ろなる十月の夜に』みたいに、たまーに変なの(褒め言葉)があるからチェックしなきゃと思いつつ、思い切り見落としていた。
#あれ、今見たら、『虚ろな~』の訳者、森瀬さんか。

ラスヴィッツ賞の記事を、邦題に変更した。

そして、創元の『銀河核へ』も出てるのを横目で見つつ、もう1冊買ってきたのが……『聖女の魔力は万能です』コミック版3巻。えー、いいじゃん好きなんだもん(笑)

銀河の叛徒フレイミング・ベス

こちらはちゃんと読んだ(笑)SFシリーズ。
先頃、ちょっとだけ名前を挙げた、元ローダン作家トマス・ツィークラーの手になる2つのシリーズものの一方。もうひとつは〈ザルドア〉というファンタジーだが、それはまた別の機会に。

1巻『地球の遺産』表紙

大いなる危機のとき、
死が人々を脅かし、万策つきはてて、
希望のうしなわれるとき、
船長コマンダーはめざめる。
――ターミナスに残る〈旧船長〉の伝説

時は遥かな未来。人類の歴史は風前のともしびであった。
星間連盟中央星セントラスも陥落し、戦士氏族クランズマンの星クランズホルムも陥ちた。わずかに残った難民たちは、連盟非所属の辺境星ターミナスへと落ちのびていたが、そこすらも仮借なき侵略者〈ヘラクレアン〉に隠しおおせることはできなかった。気がつくと、まるで影の中から歩み出るように、ヘラクレアンのクローン兵団が押し寄せ、ターミナスは灰燼に帰そうとしていた。
難民の一団が、警備するものとてない〈旧船長の聖堂〉へと逃げ込んだ。旧船長オールド・コマンダー――遥か太古から氷の中に眠る女性。失われた人類発祥の惑星・地球に生まれ、人類に危機が訪れたとき、めざめてこれを救うと言い伝えられている――フレイミング・ベス。しかし、伝説は伝説にすぎなかった。星間連盟の内世界がヘラクレアンの襲撃をうけ次々と失陥していくにもかかわらず、彼女はめざめなかった。
最後のクランズマン・カーは、クローン兵を撃退しつつ、そんなことを思った。彼ひとりでは、もう長くはもつまい。だが、そのとき、奇跡は起こった。氷がたちどころに消え失せ……フレイミング・ベスは人類の敵へと最初の一撃をはなったのだ。

ツィークラーがローダン・チームを脱退した翌1986年から1987年にかけて発表された〈銀河の叛徒フレイミング・ベス(Flaming Bess – Rebellin der Galaxis)〉はポケットブック版で全9巻。Kindle版は全2巻。
判型がちがうので、ディンフォの「あなたが知らないヘフト」コーナーでも紹介していない……と思う(汗) ミュトールやデーモンキラー形式でやろうと準備して中絶していたはず(原稿を見る限り)。

フレイミング・ベス。人類最初の星間宇宙船《ノヴァ・スター》船長。サバイバル・スペシャリスト。彼女の任務は、《ノヴァ・スター》の運ぶ数千名の植民者の安寧を護ること。彼女はコールドスリープ状態におかれ、《ノヴァ・スター》あるいは植民者たちに危険がおよんだとき、覚醒されるようプログラムが組まれていた……はずだった。
だが、ここは《ノヴァ・スター》ではない。植民者の入植キャンプですらない。プログラムに重大な支障をきたす何事かが起こったのか。ともあれ、フレイミング・ベスは瞬時にして周囲の状況を見てとった。女こどもが大半を占める避難民と、それを襲う黒い装甲スーツを着用した兵士たち。護るべきものがどちらかは、言うを待たなかった。

かつてこの宙域を治める星間帝国の中心であったという、ターミナスのマギスター宮殿。年老い、死を前にしたマギスター・タメーランは、その超常能力で“助け”を呼びつつ、後事をフレイミング・ベスに託す。巨大なピラミッドに見えた宮殿こそ、太古の宇宙船《ノヴァ・スター》!
電磁パルス砲でヘラクリアンの旗艦を一時行動不能に陥れた《ノヴァ・スター》は離陸をはたすが、太古の船には星系を離脱する能力がない。そのとき、タメーランの呼んだ“救援”が外宇宙から姿をあらわした。1隻の船。人類より数百万年を閲した爬虫類種族ドラカン……これまで人類とのコンタクトを拒絶してきた太古種族がなぜ?
そして、ドラカンの船は途上ヘラクレアンと交戦でもしたのか、スクラップ同然に見えた。むしろ、救援が必要なのはそちらではないのか。そのとき、フレイミング・ベスの脳裏に声が響いた。ドラカン船唯一の乗員、プラ=ヤスワンの声なき声が。

――地球の人間よ。道を遡るがいい。蜥蜴の統べる地を越え、無人の異界へと。源まで。道の果ては闇の中にあり、待つが勝利と敗北のいずれかは、われにも見えぬ。されど、それこそ目標へといたる唯一の道。わが贈り物を受け取るがいい。そして往け……。

ドラカンの円盤船が分解し、唯一残った純白のシリンダーが《ノヴァ・スター》と融合する。超光速パラ・エンジンが、死せるプラ=ヤスワンの贈り物だったのだ。
ヘラクレアンの追撃を振り切って、人類最後の希望《ノヴァ・スター》はパラ空間へと突入した――。

-*-

……という感じで第1巻『地球の遺産』は閉幕し、同時に伝説の故郷・地球をめざす旅がはじまるわけで。
当然、待っているのは平穏とは程遠い旅路。

完全勝利を鼻先でひっさらわれたヘラクレアンの司令官〈戦王クロム〉はベスを宿敵認定。ある手段によって《ノヴァ・スター》の所在をたどれるクロムは、行く先々で人類を滅ぼさんと執念を燃やすことに。
一方で、人類側も一枚岩とはいかない状況。難民の中には、旧連盟の軍指導部や政治家、上流階級のご婦人なんかも混ざっていて、ことあるごとにベスの方針と対立。クーデターまで発生する事態に。
さらに正体不明の〈預言者〉が難民の中にシンパを拡大。フレイミング・ベスを預言の成就を邪魔するものとして排除をもくろんだり。

あれやこれやを、ベスに心酔したクランズマン・カーや、《ノヴァ・スター》機能回復の立役者である天才エンジニア・カッツェンシュタインらの協力を得てフレイミング・ベスは乗り越えていく。
ドラカンの境界ステーションを通過した彼女たちの前に広がるのは、〈無人の異界〉……と呼ばれる、銀河中枢部を超えた先の、旧人類が栄えた領域。かつてドラカンとの防衛線を支えた〈鋼鉄要塞〉や、〈赤色巨星男爵領〉崩壊後、放射能を逃れて地下へ落ちのびた人々のブンカー、かつて〈銀河アーカイヴ〉と呼ばれた惑星規模の生命体ラルン=サーン。
そして、かつて太陽系が存在した場所を覆い尽くす青いエネルギーの壁。その向こうには何が待つのか。そして、ヘラレクアンと地球人類の太古から続く因縁とは?

最終巻『地球』、クライマックスは死の淵からさえ蘇る戦王クロムとフレイミング・ベスの地球での一騎打ちですよー♪

タイトルリスト:
1. Das Erbe der Erde / 地球の遺産
2. Wo die Echse herrscht / 蜥蜴の統べる地
3. Gefangene der Schattenwelt / 〈影世〉の虜囚
4. Das Grauen an Bord / 艦内の戦慄
5. Raumfestung Arak-Nor / 宇宙要塞アラク=ノル
6. Sternbaronat Roter Riese / 赤色巨星男爵領
7. Das galaktische Archiv / 銀河アーカイヴ
8. Die elektrischen Ritter / 電気じかけの騎士たち
9. Die Erde / 地球

以下余談:
前回書いたときに、ロックバンドしかひっかからんとぼやいたが、創設1969年の超歴史のあるプログレバンドであった。ひょっとしてツィークラー、ファンだったのかな。
80年代のツィークラーは胸までかかるロン毛で、どう見てもバンド野郎だったのだ(笑)