訃報:H・G・フランシス

H・G・フランシス (H. G. Francis)
1936.1.14 – 2011.11.3

公式その他に掲載された情報によると、去る11月3日、元ローダン作家であり、シナリオライター、H・G・フランシスが長い闘病生活のすえ、ハンブルクにて死去したとのこと。享年75歳。
フォルツやマール、クナイフェルあたりが同年代で、現在のハヤカワ版あたりだと一番ばりばり書いている世代だが、クナイフェルがひとり気を吐いている以外、みな鬼籍に入ってしまった。時の流れは無常だ。

本名 Hans Gerhard Franciskowsky 。北部ドイツ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州シュタインブルク郡イツェホー生まれ。
今回、改めてフランシスの経歴を見ると、なんというか、ちょっと独特である。アビトゥーア取得後ハンブルクで経済学や社会学を学ぶとあるが、大学で、と書かれていないとか(まあ言い回しの問題だろうが)。ジュニア時代に州の水泳大会で優勝しているとか。作家になる前は製薬会社のエリア・マネージャーだったとか。
SFには幼少期から関心があり、アシモフやポール・アンダースンのファンであったようだ。最初に発表したSF長編は1962年の『五人のオリゴ』。その後もヘフト・シリーズ Mark Powes や Ren Dhark 、Rex Corda 等で執筆。ローダン・チームには1970年頃から参加し、まずはATLANシリーズから、次いで71年、518話『死への突撃』からローダン本編のレギュラー作家となる。

Perrypedia によると、残したローダン作品は本編ヘフト208話(うちの計算だと207なのだが……まだどっかリスト違ってるか^^;)、ATLANヘフト97話、惑星小説21巻。スペース・スリラー1巻、ローダン・エクストラ1話、ローダン・アクション1話、ヘフト特別号や記念号に掲載された短編が8編。あと、記載がないけど、Werkstattband で草案から書き起こす実例として、エスタルトゥの奇蹟・エメラルドの鍵の月がらみの話を書いていたはずだ。
2004年にチームからの引退を表明、2237話が最後の本編執筆。

フランシスの担当作品をつらつら眺めてみると、決して伏線回収がドーンとあるとか、エーヴェルスみたいにトンデモキャラクターがバーンとか、そういう作家ではないことがうかがえる。キーになる話のひとつ前とか、ひとつ後とか。サブキャラクターを少し深く描写する話とか。ハヤカワ版だと、闇のスペシャリストの昔話はフランシス担当だった。アプルーゼ・サイクルのアコン編もそうだし、トルカンダー・サイクルでの惑星ラファイエットの幕間劇とか、ギャラクティック・ガーディアンズ潜入編とかもそうだ。ゼーレンクヴェル問題の真っ最中に、ジャーナリストがボスティク皇帝のプライヴェートに突撃したりもする。キャラクター描写やストーリーを膨らませたりするのがうまい、ということなのか。
#ああ、アリオルクの宇宙城もフランシス担当か!(笑)

キャラクターの把握がうまい、と考えれば、フランシスがサウンドドラマのシナリオライターとして著名であることも納得できる。ここでいうサウンドドラマは、日本で言うドラマCDである。それぞれのキャラクターをアクターたちが声で演じるもの。
(ローダンのシルバー・エディションは「朗読CD」である)
実に600以上のサウンドドラマの脚本を書き、延べ購買数は1億2000万枚に達するという。ゴールドディスク(10万枚)が120枚、プラチナディスク(20万枚)が6枚だとか。「ローダン映画のシナリオはフランシスが書くのか?」と言われていたのも、いまさらながら頷ける。
#いまちょっと計算してみたけど、ゴールドが10万枚、じゃないかもなあ……。

先読みなどをやっていると、荒筋にしてみて「今回も話が進んでないよ……」とボヤくことも多々あったのだが、決してよく言う穴埋め(Lückenfüller)作家では、彼はなかったのである。
ローダン宇宙を彩った作家がまたひとりこの世界を退場したことを、残念に思う。

■公式News:H. G. Francis ist verstorben (リンク切れ)
■Perrypedia:H. G. Francis
■Wikipedia:H. G. Francis

訃報:フォルカー・クレーマー

フォルカー・クレーマー(Volker Krämer)
1955.10.12 – 2011.9.3

ドイツの出版者、編集者、そして作家でもあるフォルカー・クレーマーが、先週末に死去したとのこと。享年55歳。
※土曜深夜から日曜未明にかけて、という表現なので、日付は4日になるかも。

1955年、ドイツ西部の都市ゲルゼンキルヒェン生まれ。
1986年、メルクーア出版を立ち上げ、SFヘフト『スター・ゲイト~星界への門』(全18話)を刊行。同作はヴェルナー・クルト・ギーザとウーヴェ・アントンによる共同作品で、90年代に制作された米映画『スターゲイト』とは関係ない(監督・脚本がドイツ人だが、プロット自体ぜんぜん異なる)。
1998年からはBlitz-Verlagで編集者として活動。この時期は、過去のSF、ホラー、ファンタジーが続々再刊されていた時期で、上記『スター・ゲイト』もラインナップに含まれている。
2001年にはWilbert-VerlagのSFシリーズ『ジョン・コアン』で初執筆(1編)。

そして、2002年から、ギーザの招きに応じてダークファンタジー・ヘフト『超常現象マイスター、ザモラ教授』に参加。一部共著を含むが、ほぼ1割程度を担当することになる。
健康を害したギーザが2007年に草案作家を降板、翌年死去した後も、メインライターのひとりとして執筆を続けていたが、クレーマー自身もまた健康に問題を抱えていたことは、どうやらファンの間では周知の事実だったようだ。

『ザモラ教授』は来年には1000話を迎えようとしているが、大きな説目を目前に、重要な戦力がまた欠けて去ってしまった形である。

■Phantastik-News: Gestorben: Volker Krämer

訃報:H・J・アルパース

ハンス・ヨアヒム・アルパース(Hans Joachim Alpers)
1943.7.14 – 2011.2.16

ドイツSF文学関連の作家・編集者として著名なH.J.アルパースが、2月16日、死去したとのこと。享年67歳。病死のようだが、詳細は不明。

アルパースはドイツ北西部のヴェーゼルミュンデ市(現在のブレーメルハーフェン市)生まれ。造船工として職業訓練をうけた後、ハンブルク大学で機械工学、政治学、教育学を学んだ。60年代末からSFアンソロジーの編者として活動する一方、様々なペンネームを駆使して作家としても活躍した。初期にはテラ・アストラ・ヘフトやジュヴナイルSF「宇宙船エンスリン・ノヴァ」シリーズ、近年ではシャドウラン・シリーズや、TRPGと世界観を共有するファンタジー「暗黒眼」シリーズ(DSA)にも参加していた。

個人.的には、主としてロナルド・M・ハーンと共同で編集した各種SF年鑑や、『SF文学レキシコン』(1988年刊行、90年に増補改訂版)の筆者、というイメージが強いが、欧米作家の解説書(アシモフ、ブラッドリー、ラヴクラフトetc.……ん、ひょっとしてオリジナル・アンソロジーなのかも)、ホラー文学レキシコン等、活動内容は実に多岐にわたる。つい先年も、「長年の活動に対して」クルト・ラスヴィッツ賞の特別賞が授与されたばかりである。
(短編作品、編集作品等でも、何度も受賞歴アリ)

なお、日本の読者には馴染みのない名前だが、アルパースはローダン作家のひとりでもある。唯一の参加作品は、ハイネ版ペーパーバック・シリーズ「アラ=トキシン」第3巻『ネクロジェネシス』となった。

以下、私事となるが、マイPCのタイトル・リスト用フォルダには100個近く、容量800KBのテキストファイルが収納されているのだけど、そのうちかなりが上述のSFレキシコンに掲載されたものを入力・翻訳したものだ。大半はrlmdi.のサイト上で公開されているが、あれだけ訳しても、苦労とも思わなかったのは、同書のおかげでドイツSFのいろんな情報に接しつつ遊び感覚でできたからだろう。実に勉強になった。ありがとう、アルパース。

■Wikipedia: Hans Joachim Alpers
■Bibliographie: fictionfantasy.de

訃報:E・C・タブ

更新もせずにオンゲ三昧な日々をすごしているうちに、こんなニュースもあったわけで。

E・C・タブ (Edwin Charles Tubb)
1919.10.15 – 2010.09.10

デュマレスト・サーガ等の作者として知られる、イギリスの作家E・C・タブが亡くなったとのこと。90歳というから大往生である。ご冥福をお祈りする。

ローダン作家ではないし、ドイツ人SF作家でもないが、愛読したシリーズの作者ということで。にしても、ドイツのSFサイトで欧米作家の訃報を仕入れてくるって、わしも偏ってるなあ……。
閑話休題。

エドウィン・チャールズ・タブは、生粋のロンドンっ子らしい。若い頃パルプ雑誌を愛好したというだけあって、1951年のデビュー後は、SF以外にもミステリ、ウェスタンなど大量に執筆しているようで、このへん、初期のローダン作家(ヘフト作家)と酷似している。
(例えば、ハヤカワ版だと来月登場するペーター・テリドを紹介するときにも、似たような文面になるはずだ。)

代表作となるデュマレスト・サーガは、1967年に第1作『嵐の惑星ガース(The Winds of Gath)』が刊行され、以後85年までに31作が出版されている。邦訳はここまでだが、92年に『帰還(The Return)』(当初、仏語版のみ発売、97年に英語版)と、2008年に『地球の子(Child of Earth)』(短編集?)が刊行され、ストーリーはおおよその完結をみている……らしい。見失った故郷・惑星アースを探し求めるアール・デュマレストの旅路の結末、ちょっと読んでみたい気もするが、はたしてどんなものだろうか。サイクランとの決着ついたのかなあ(笑)

ごやてんらしいイチャモンをつけてみると、邦訳を読んでいた当時、『~の惑星××』と統一されたタイトルが、ちょっと不満だった。まあ、原題だと途中、ヒロインの名前だけというのがやたら多いので(Kalin, Lallia, Mayenne etc.)やむなしとも言えるが、ちょうど刊行に追いついたあたりで入手した30、31巻のタイトルが『テラのシンボル』『真実の神殿』で、とうとうアールが地球の座標(に近いもの)を入手するあたりが、邦題だけ眺めているといまいちに思えたこともある。
でも、あれはあれで、かなり縛りのきつい代物だと思うので、考えたヒトはほんとうにお疲れ様でした、と言っておこう。

タブの作品としては、他にグレゴリイ・カーン名義で書かれたキャプテン・ケネディ・シリーズがある。邦訳5冊はハヤカワ文庫初期の刊行で、再版される様子は見うけられないので、実はわたしも未読(笑)

そして、ちょっとおもしろいのが、原作は17編存在するのだが、ドイツ語版Commander Scottは、1975・76年にかけて42編出版されていること。著者はすべてGregory Kern名義……。出版社所有の共同ペンネーム制は、ヘフト物にはよく見うけられる(ザモラ教授や、初期のシンクレアなんかもそうだ)のだが、これはまた豪快である。
(なおかつ、独版Wikipediaを見ても、タブ執筆作が18編になっているのがなんともw)

ケネディという名前はともかく、少々ダークヒーローじみたキャラクターは、ドイツ人の方にウケたということなのだろうか。

■Wikipedia:E・C・タブ

新作家:マーク・A・ヘーレン

23日付けの公式Newsで、マーク・A・ヘーレン(Marc A. Herren)の正式な作家チーム加入が告知された。スイス出身の最初のローダン作家であるそうだ。

ヘーレンは1976年3月21日、スイスの首都ベルン生まれ。ご両親はパン屋さん。経済専門の高等スクールを経て、ある大銀行の幹部社員というから、かなり優秀なのだろう。学生時代から興味のあった作家養成セミナーに何回か参加している際に、ローダン編集部のクラウス・フリックの目にとまり、ローダン・アクションに参加(第5話『ラザルの死』~)する形で作家デビュー。Heyne社から出ているアトランの『モノリス』三部作の一編を担当、他にSFファンタジー「サンクエスト」シリーズにも執筆した後、来年刊行される2531話『Das Fanal(烽火)』からローダン本編に参加する。

また、2007年のガルヒンコンで行われた、シリーズへの登場権のオークションを115ユーロで確保。2400話代前半にかれをモデルにしたマーク・アルフォンシヌス・ヘーレンという薬学者が《リチャード・バートン》乗員として登場している。確か、現在(シリーズの)ではテラニア大学にいるんだったっけな……?(笑)
#本物のミドルネームは不明である。

なお、余談に属するが、2009年夏から1年間休職し、カナリア諸島で執筆とダイビング(インストラクター)にいそしんでいるそうである。すっげーうらやましい話だなぁヲヒw

■公式News:Marc A. Herren wird Teamautor (リンク切れ)
■Perrypedia:Marc A. Herren

脱退:ホルスト・ホフマン

また、悲しいお知らせである。チームの現役最古参作家である、ホルスト・ホフマンがシリーズから退くことを発表した。ホーホー、おまえもかー!?

ホルスト・ホフマン(Horst Hoffmann 通称HoHo)は1950年生まれ。アトラン・シリーズや、メーヴィヒ社が当時出していたファンタジー・ヘフト『ミュトール(MYTHOR)』への執筆を経て、1982年刊行の1076話『ポルライターの道』からローダン本編に参加。
ただし、この最初の参加は、1111話『十一の力』(伝説的な楽屋ネタ話w)にていったん終了。草案作家ウィリアム・フォルツ没後、銀本の編集校訂や、ヘフトの読者ページ担当など、編集サイドにまわる(~1987年まで)。

その後、リング人サイクルからチームに復帰。年に5話~10話を書く、基幹作家のひとりとなる。
シリアスからユーモアまでなんでもいけるうえ、イラストや4コマ漫画まで披露する多芸な人であるが、個人的に印象に残っているのが、ユーモラスな作風である。当時の作家チーム全員をモチーフにした?1111話や、ローダン・ファンが宇宙船スターダスト号でローダンを探しに出発する短編「《スターダスト》の素晴らしき旅路」、イエスと答えてもノーと回答しても撃ってくるフラグメント船を前に窮したエクスプローラー船のたどる運命を描くギャグ連作「君らは本物の生命体か?」等々……。

PrivateCosmos20で、

「温和で引っ込み思案のトリム住民トリマーとの心あたたまる交流の物語」
「迷子の犬さがして」
「ロックコンサートして」
「かんどー」
「うまいんだなーコレが」

とあるコレも、ホフマンの担当だ(1913話……紹介の時事ネタ風化は度外視w)
「新しい世代に道を譲る時がきた」と、公式フォーラムにあげられたホフマンの訣別の辞は告げている。
ただ、これが編集部からの告知でないことや、知人を経由してスレッドが立てられているあたりに、少々きなくさいものを感じるのは自分だけだろうか。タイミング的には最悪だと思うのだが……。
そういえば、春の作家会議、ボビーの他にホフマンも、体調不良で欠席してたんだっけか。だ、大丈夫なんか?
#スレッドにはホフマン本人もレスをつけている。念のため。
ともあれ、これでシリーズから、またひとり、偉大な才能が去ることになった。130編を超えるローダン・ヘフトと、関連作品を多く残していくホーホーに、一ファンとして感謝したい。

ホフマンの著作で本邦に紹介されたものは、SFマガジン増刊に掲載された「ローダンx2」と、ファンジンに収録された「死者とのランデブー」がある。後者はアンドロメダ戦争終結後、島の王のトラップにはまったローダンの前に、死者たちのデュプロが次々と登場する。オーヴァヘッド、トマス・カーディフ、そして……。多少くさいオチは、やっぱり、うまいんだなーコレが(笑)

■公式Forum:Abschiedsmail von HoHo (リンク切れ)
■Perrypedia:Horst Hoffmann

訃報:ロベルト・フェルトホフ

ロベルト・フェルトホフ (Robert Feldhoff)
1962.7.16 – 2009.8.17

今年、一番心配していたことが事実となってしまった。21日付けの公式サイトで公開されたニュースは、8/17早朝、闘病中であったシリーズの草案作家、ロベルト・フェルトホフが世を去ったことを告げた。享年47歳、あまりにも早すぎる死である。

1962年生まれのフェルトホフは、作家チームの中でも最も若い世代に属する。しかし、最も愛された作家のひとりでもあった。
1987年、弱冠24歳にして、惑星小説『アルファ=アステロイド』でプロ・デビュー。同年1328話『死のハーモニー』からヘフト執筆チームに参加したフェルトホフは、またたく間に人気作家となる。事実、タルカン・サイクル終了後に行われた1300話台を対象とした読者投票では、並みいる古参作家をさしおいて、1328話と1376話『ヘクサメロンの徴兵者』が、それぞれ1位・2位を獲得している。
かつての学友ライバルの罠にかかり母校を追われたオファル人の“名歌手”サラーム・シーンや、シャルンとシャーの悲運のハウリ兄弟といった、フェルトホフ描くところのキャラクターたちは、どこか故ウィリアム・フォルツの十八番おはこだった、不遇の中からなおも立ち上がろうとする人々を思い出させるもので、そこもかれの人気に一役買ったことはまちがいない。
しかし、基幹作家のひとりとして常に1割強を担当するうちにその人気を不動のものとし、当時草案作家のひとりであったクルト・マールの急死後、1700話『メビウス』からは100話単位の記念巻をまかされるまでになる。
また、アイデアマンでもあったらしいかれは、マールの後釜として、1800話『クイックモーション』からエルンスト・ヴルチェクと組むシリーズ草案作家となる。トレゴン・サイクルの大筋はほぼフェルトホフの腹案に沿って組み立てられたと言われる。そして、ヴルチェクの引退にともない、2000話以降は単独で世界最長のSFシリーズを背負って立つ形となった。

実際には、編集長のクラウス・フリックや作家チームのアルント・エルマー(後にライナー・カストルが取って代わる)らを加えた「草案ファクトリー」と綽名される中核チームが存在し、作家会議以前にストーリーやアイデアについて協議する体制がヴルチェク=マール時代からできていたようだ。

作家チームの最若輩(後にフランク・ボルシュやミハエル・ターナーら若手も加わるが)にしてリーダーであるという、やや変則的な立場でありながら、〈北の静かなる男〉の異名をとった(かれの終の住処となったオルデンブルクはドイツ北方のニーダーザクセン州にある)口数少なく穏やかなフェルトホフは、作家仲間にも信頼されていたようだ。とはいえ、その活動は実に旺盛である。
アトラン「トラヴェルサン・サイクル」のコンセプトは、現在もポケットブック形式で継続される新アトラン・シリーズにつながるし、「無限への架け橋」を題材にしたコンピューター・ゲームはその後のマルチメディア展開にひとつの領域を切り拓いた。「シルバー・エディション」をはじめとするドラマCDが本格化したのも最近の話である。一方、単行本形式のスペース・スリラーは残念ながらわずか3作に終わったし、ヘフト「ローダン・アクション」シリーズは36話で事実上の打ち切りとなったが、どちらも一定の成果は得られたように思う。

スペース・スリラー第1巻『スタービーストの挑戦』はフェルトホフ自身によるが、かれはこの作品で1998年ドイツSF大賞を受賞している。

しかし、これら重責もあってか、2000話以降、自らヘフトを執筆する量は激減。わずか年に1~3編程度にまで落ち込んだ。そして2009年春には作家会議にも参加できないほど体調を崩していることが明らかになった。2504話までの草案は用意されていたが、先ごろ刊行された2500話を執筆することはすでに不可能で、同僚フランク・ボルシュが代役を果たした。
現在、草案作業はウーヴェ・アントンが代行しているが、今後のシリーズの舵取りを誰が担当するのかは、続報を待つほかない。

フェルトホフの作品は、
・ローダン・ヘフト:101編
※他に、2200話に手を加えた『人類調査隊』がRhodan-Extra1に掲載
・ポケットブック:11冊
・ローダン短編:3作
・アトラン・ヘフト:1編(トラヴェルサン)
・ローダン・アクション:1編
・スペース・スリラー:1冊
日本で紹介されたのは、ローダン・ハンドブック2に掲載された、ヴルチェクとの共著である2000話『それ』のみ。
また、非ローダンとして、イラストレーターのディルク・シュルツと組んで『インディゴ』というコミック・シリーズも手がけていたそうだが、詳細は不明。

……もっともっと書いてほしかった。むしろ、草案なんか誰かにまかせて、どんどん自分で作品を書いてほしい人だった。
『死のハーモニー』もおもしろかったが、個人的には、ヘフト4作目、1360話『ヴィーロノートたちの訣別』からファンになったのだ。夢見果てぬまま、大宇宙への道を閉ざされることを知ったヴィーロノートたちが、永遠の戦士たちに追われつつ、集結し、かつて捨て去ったはずの故郷へ還るさまが、ひどくこころに残った。

その後も、自ら毒を呑んで身体能力を強化しローダンを追撃する〈赤いハウリ〉シャーの末路、そのからだを爆弾に改造されたガルブレイス・デイトンの最期、エラートとテスターレのバルコン人をめぐる冒険、サンプラー惑星が開いたメビウスの環、ヒルドバーン銀河の深奥でアトランの心に語りかける「修理せよ! 神々しきゴマシュ・エンドレッデを呼び戻せ!」の声、そして銀河社会に忌避されたローダンら活性装置携行者の隠遁にはじまるトレゴン・サイクル……と、いつしかボビーの指さす方角を、ぼくらはたどってきたのだ。
単独で草案作家を担うようになってからは、サイクルの〆というか、大団円の方向がいまひとつソリがあわないように感じ、文句をたれつつ、もっとキャラを立たせたフェルトホフっぽいノリなら必ずおもしろいストーリーになるのに、と信じてもいた。
だが、道はここで途切れ、その機会は永遠に失われた。

なんだよ、ボビー。夭折ようせつするところまでフォルツに似ることなかったじゃないか。もっと、君の作品を読みたかったんだ、ぼくは。

■公式News:Robert Feldhoff ist tot (リンク切れ)
■公式News:Nachruf: Robert Feldhoff (リンク切れ)
■bloße Worte:Robert Feldhoff: ein Nachruf (リンク切れ)
■NWZonline:Er holte Perry Rhodan in das neue Jahrtausend (リンク切れ)
■Perrypedia:Robert Feldhoff

草案作業、一時アントンが代行

2500話の担当作家にからんで、草案作家ロベルト・フェルトホフが何らかの疾病のため年1回の作家会議を欠席したという話をここでもお伝えしたが、6月5日付けの公式ログブーフによると、(依然、病名は明らかになっていないが)治療には当初予期されたよりも時間がかかるため、草案執筆を一時ウーヴェ・アントンが代行することになったらしい。
フェルトホフは2504話までの草案を執筆済みとのことだが、病気治療のためか予後回復のためかは不明ながら、以降の執筆が困難なため、素材をかかえた編集のフリックがヴッパータール在住のアントンのもとを訪れ、以後の展開を協議した経緯が、上記ログブーフで語られている。

草案執筆が激務であることはつとに知られているが、フェルトホフはヘフト本編の執筆量が近年かなり落ち込んでおり、個人的にちょっと心配していたこともある。一日も早い回復を祈りたい。

■公式Logbuch:Exposé-Besprechung in Wuppertal (リンク切れ)

2500話:『サターン計画』 担当:ボルシュ

藤岡ボルシュ「セガ・サターン、シロ!」 ……うそうそw

5月7日付け公式Newsによると、スターダスト・サイクル開幕である2500話は、フランク・ボルシュ執筆の『サターン計画(Projekt Saturn)』とのこと。すでに原稿は書きあがり、編集の手にわたっているらしい。……2月のNewsに載った内表紙写真は、ダミーであったということか。くうっ(汗)
■問題の紹介記事(ごやてん):新サイクル:星屑星系の伝説

100年超の時間ジャンプがおこなわれることも、平和呆けドライバー氏が『テフローダー』の記事にコメント下さった内容のとおり。
ちょっと気になるのは、ボルシュが担当することはいつから決まっていたのだろう。『エイリアン・アース』でボルシュが名をあげたのは去年の話だし、4/7に開催された新サイクルに向けた作家会議はフェルトホフが体調不良で欠席しているそうだし。ラージ・サイクルの切り替え地点にもあたる2500話を、草案作家が書かないって、実は大事件なんじゃないのか?

ちなみに過去100話単位で草案作家以外が執筆したものは、
600. Kurt Mahr / 不可視の境界 (草案:シェール)
700. Kurt Mahr / アフィリー (草案:フォルツ)
1200. Kurt Mahr / オルドバン (草案:フォルツ)
のわずか3編であり、600話と700話はシェール罹病による草案作家交代前後、1200話はフォルツ死去による空白時のこと。……おーい、ボビーはだいじょうぶなんだろなあ。

■公式News:Frank Borsch schreibt PERRY RHODAN-Roman 2500 (リンク切れ)
■公式News:Autorenkonferenz vor dem Stardust-Zyklus (リンク切れ)

んで、ついでといってはなんだが。『テフローダー』のニュースにびっくりして取りあげるのが遅れた、件の作家フランク・ボルシュのブログについても、公式Newsで紹介されている。
タイトルは Bloße Worte で、辞書をひくと「口先だけのこと、空言」と、なんかえらく悪印象な訳語が載っている(汗) これ、たぶん、「チョットイッテミタ」とか、そんな感じなんだろう、と勝手に考えているのだが。
今回の件や、Extra8の『スターダスト暗殺事件』についてなど、ローダン関係含め、わりとまじめに語っている。興味のある方はぜひご一読を。

■公式News:Bloße Worte (リンク切れ)
■ボルシュのブログ:Bloße Worte (リンク切れ)

そしてシリーズは続く……

ふとバスタイのサイトを覗いてみたところ、話数がえらく進行していた。

John Sinclair
1600. Jason Dark / Willkommen im Hades / ハーデスへようこそ
(2009/03/10刊行)

Professor Zamorra:
900. Volker Krämer / Der Magier / 魔術師
(2008/11/25刊行)

手元のファイルを見ると、シンクレアのタイトルはちょうど3年前から更新していなかった。ジョン・シンクレア(rlmdi.での通称は「じょんじょん」)は、だいぶ以前のd-infoでも紹介しているが、スコットランドヤードの心霊捜査官(をひ)である主人公シンクレアが幽霊妖魔悪魔吸血鬼ゾンビーエトセトラの引き起こす事件を解決する……と書くとすっごくおもしろくなさそうであるが、とにかく週刊で延々とつづいてるホラー・シリーズなんである。
Sinclairの語源は「光り輝くもの」ないし「聖別されしもの」で、実際シリーズの進行につれ、ジョンは「光の子」の転生の最後のひとりであるとかいう設定がついてくるが、バスタイ社の紹介を見ているかぎり、たいていのお話はそこまでビッグな設定とは関係なさそうなもの(たまにギャグとしか思えないタイトルも)が続いている。
にしても、作者Jason Darkはたったひとりで、週刊1600話突破である。これ以外にも薄手のペーパーバック版も毎月出ているわけで……某豹頭なシリーズの作者よりも筆が早いんではなかろーか。

一方のザモラ教授。隔週刊行のやや厚手、平綴じのヘフト・シリーズで、ドイツ版Wikipediaによるとダーク・ファンタジーにジャンル分けされるが、多分にSF要素も含まれている。悪魔や魔法使いの他に、舞台は宇宙や過去・未来にまで広がりを見せる。
実は今回、バックナンバーを調べようとして驚いた。シリーズの中興の祖とも言える作家ヴェルナー・クルト・ギーザ(Werner Kurt Giesa)が昨年2月に亡くなっていたのだ。
1977年から携わっていた……というか、元々共同ペンネームのロベルト・ラモント名義の複数作家制だったザモラを、400話前後から10年近く、ただひとりで背負って立っていた(現時点でシリーズの1/3はかれの手になる)ギーザだが、2003年に事故のため瀕死の重傷を負い、長期の入院生活を余儀なくされたうえ後遺症に悩まされたことから、もっぱら草案作業に専心(2007年末まで)せざるを得なくなった。また、編集その他でいわば共同製作者でもあった妻が2005年に亡くなったことも執筆意欲の減退に拍車をかけたらしい。
ギーザの作品はこれまで邦訳は存在しない。その大半がヘフト小説であるからいたしかたないのだが、ローダン惑星小説に作品があったり、ファンタジー小説MYTHORの後期プロット作家であったり、クルト・ブラント没後に再評価されたレン・ダークの新シリーズで執筆していたり、過去d-infoで紹介した「PS-ジム」「トラッカー・キング」にも参加しているなど、活躍の場は多岐にわたっている。
享年53歳。その早逝が惜しまれる。いつか機会をみつけて、かれの業績を再確認してみたい。

■Bastei社のホラー作品ページ

※3/14 ギーザの健康問題につき訂正。複数のサイトで「罹病(erkranken)」という表現が用いられているが、ギーザ自身の叙述によると「失血が多すぎて死にかけた」というから、事故が主たる原因と推察した。