ウィリアム・フォルツ賞について

ウィリアム・フォルツ賞(William Voltz Award)。ローダン・シリーズの二代目草案作家ウィリアム・フォルツの名を冠されたSF文学賞である。

2004年、フォルツ没後20年に際して立ち上げられたホームページと同時に、未亡人インゲ・マーン=フォルツにより未発表短編の募集が呼びかけられた。後進育成に熱心だったフォルツにならって、主としてまだ作品を発表する機会を持たなかった若手がターゲットだったらしい。
ファンダム時代のフォルツが短編で名を馳せたことから、募集は短編に限定(第2回は16000字まで)。各回とも、ローダン作家や著名なSF評者が審査員として名を連ね、オンライン投票も実施された。募集総数225編と大盛況だったため、単発企画の予定が2回、3回と回数を重ね開催は5度に及んだ。2回目からはお題を決めての募集となる。
賞金も出ていて、1席300ユーロ、2席200ユーロ、3席100ユーロ。各回とも変更なし。

昔、ごやてん、というか、前身の無限架橋NEWSができたばかりの頃、第1回のことを取りあげている。たぶん、わたしなりに刺激をうけたんだと思う……おぼえてないけども(笑)

近年、当該サイト(www.williamvoltz.de)からフォルツ賞のページ自体が消滅していることに気づき、ちゃんとまとめていなかったことを悔やんだのだが、一旦この記事をアップした後で、ふとInternet Archiveのことを思い出して確認したところ、往時のデータがサルベージできた(汗)
おおよそ必要な資料は揃ったけど、なるたけデータは保存しておこうっと。受賞作、一部プロになって短編集を出したりアンソロジーに収録されたり、著者自身がオンラインで公開しているものを除けば、このサイトのデータ以外に読む手段もないのだし。
#いや、ホントにないのよ。“William Voltz Award”で検索して、15年前のごやてんの記事が上位でヒットするくらい(笑)

なお、後進の育成、という意味では、3回目の受賞者Uwe Postは後に『ヴァルパー・トンラッフィルと神の人差し指』でラスヴィッツ賞とドイツSF大賞を受賞(応募作だった「edead.com」自体も出版後ラスヴィッツ賞にノミネートされた)したり、現ローダン作家ミシェル・シュテルンが本名で応募(第3回、次席)していたり、第4回1席のマティアクがこの度ローダン本篇に参加と、立派にその役割をはたしている。

受賞作一覧

第1回(2004年)

1. Thomas Hocke / Die Zeitmaschine / タイムマシン
2. Wulf Dorn / Activity / アクティヴィティ
3. Rüdiger Lehmann / Adler und Geier / 大鷲と禿鷹
3. Carsten Fromme / Tod eines Hochhauses / ある高層ビルの最期

審査員:ボルシュ、ヘーンゼル、ヴルチェク、ミハエル・ナグラ(以下、註釈無しはローダン作家)

第2回(2005年) お題:ロボット

1. Julia Blaschke / 12 Minuten / 12分間
2. Frank Hoese / Botch / ボッチ
3. Gerhard Franz / Über den Tod hinaus / 死を乗り越えて
3. Damian Wolfe / Die perfekte Maschine? / 完璧な機械?

審査員:エルマー、シュヴァーツ、シュテフェン・フリードリヒ
※フリードリヒはPROCのニューズレターTERRACOM編集長(当時)

第3回(2006) お題:22世紀の物語

1. Uwe Post / edead.com / edead.com
2. Stefanie Rafflenbeul / Der Letzte seiner Art / その種、最後のひとり
3. Gerry Haynaly / Gefangene der Stadt / 都市の虜囚

審査員:アントン、ターナー、アルフレート・ケルスナー
※ケルスナーはジョニー・ブルック没後、メインで表紙絵を担当。(現在もサブで描いている)

第4回(2007) お題:異世界SF

1. Dennis Mathiak / Abschied / 訣別
2. Dirk Eickenhorst / Nummer Neun / ナンバー9
3. Norbert Mertens / Bitte lächeln! / さ、笑って!

審査員:カストール、アキム・メーナート、カティア・リヒター
※リヒターはホイゼンスタム(フォルツの居住地)の書籍販売・地方紙の書評ライター

第5回(2009) お題:SF

1. Christian Kathan / Ein Augenblick Unendlichkeit / 一瞬の永遠
2. Dieter Bohn / sefer chajim / セフェル・ハジム
3. Frederic Brake / Flüchtige Gedanken / 逃避的思考

審査員:クナイフェル、ディルク・ヘス、クラウス・ボールヘフナー
※ボールヘフナーは他記事で書いたとおり、BNF、SF紙編集者、VPMマーケティング担当

なんか一日じゅうネット漁りをしていた気が(笑) でも、リスト埋まってよかったぁ。
フォルツ・リスペクトなのか、Uwe PostやDieter Bohnは書籍プロフィール等に「William Voltz Award受賞者」と明記してたりする。この賞が存在した意味はたしかにあったと思うのだけど、インゲさんがマールと再婚(マーンはマールの姓(本名))して、子息らの活動もアメリカ中心であることから、復活はもうないだろうねえ……。

アムリンガルの年表にからむもにょもにょ

先日、マガンと電話しながら女戦士の新刊チェックをしていたら、NEO22巻でヴェガ星系にかつて存在した惑星がアンブルになっていた。これ、原語はAmburで、オリジナル版の読者なら、人工惑星ワンダラーの別名アムブルであることをご存じだろう。
まあ、NEOは別シリーズなので、なにがなんでも固有名詞を統一する必要もない。ただし、正篇については、アムブルでよかったなあと個人的に思っている。そう遠からず、とある壮大なミスリードがやってくるからだ。
#単に、わたしがひっかかっただけともいう。としか言わないかw

ここに来る方に言うまでもないかもだが、今回、いろいろネタバレである。念のため。

-*-

タルカン・サイクル中盤。当時(1987年)、すでに年に2、3作しか執筆しない状態のダールトンに、草案作家ヴルチェクは、タルカン宇宙に漂着したローダンとも、ハンガイ銀河の四半分とともにこの宇宙で作戦を開始したヘクサメロン勢力とも関係のない挿話を担当させる。エルンスト・エラートの放浪である。
ヴィールス・ボディを失ったエラート、シェーデレーアから分離したカピン精神体テスターレの両名は、“バルコン人の斥候(バルコン)”が語った、新たな肉体を与えてくれる〈成就の地〉へとたどりつくべく、バルコンのシュプールをたどり、深淵の騎士団の聖堂惑星クラトにいたる。バルコンを加えた3名が、惑星地下、ポルライターの極秘データ・バンクでバルコン人について調べたところ――

1 バルコン人のシュプール

出てきた検索結果が、

 1)アムリンガルの年表(Zeittafel von Amringhar)
 2)スープラヘトの封印者(Bändiger des Suprahet)
 3)〈それ〉の誕生協力者(Geburtshelfer von ES)
 4)ヴィオモンの賢者(Weiser von Wyomon)

という、箸にも棒にもかからない情報である。〔1366話〕

当時のテラナーがつかんでいたところでは、「スープラヘトの封印者」とは130万年前、力強き者の命をうけ大群の進路を脅かすスープラヘトを封印した大群建造者の一団のこと。当初オールドタイマーと呼称された彼らは、後に「キトマの種族」とか「クエリオン人」と呼ばれることになる。〔1275話〕
そして、惑星ケムバヤンの〈成就の地〉にいたる過程で、3人はバルコン人が「スープラヘトの封印者」の系譜につらなる者であることを知る。さらに〈成就の地〉でバルコン人(=クエリオン人)の斥候が用いる作業用ボディに宿ったエラートとテスターレは、謎の声(〈それ〉という見解が有力)から「アムリンガルの年表をみつけよ」という指令を下される。〔1384話〕

え、んじゃ3とか4もバルコン人のこと? なんて思う間もなく、プロットの卓袱台返し、1400話のドリフェル・ショックによって、物語は一気に700年の時間を超えてしまう。
作家会議のカリカチュア『カオターク・ミーティング』をある程度信用すると、ヘクサメロン・ストーリーが没ったのは、1395話の原稿ができているか、最低でも草案がグリーゼに配布されてからという急転直下。それじゃあアムリンガルの年表って伏線もポシャったか、というと、これがそんなことはなかった。

封鎖された銀河系への道を探るローダンらは、〈四腕の予言者〉ことイホ・トロトの足跡をたどり、大マゼラン星雲のパウラ・ブラックホールの事象の地平の下に隠された小惑星で、アムリンガルの年表の“残骸”を発見する。もとは、林立する水晶柱ひとつずつの頂上にデータ・クリスタルが鎮座していたという。
トロトの検証によれば、どうやらドリフェル・ショックで巨大構造体が破壊される以前に、エラートがこの地を訪れていたらしいのだが……。〔1418話〕

2 星の暗黒回廊とアミモテュオ

イホ・トロトが現地にいたる、ほぼ700年前からの経緯が語られて、そこで〈ミモトの宝玉(Das Juwel von Mimoto)〉というものが出てくる。エスタルトゥ十二銀河に潜入したM-87の斥候が語り、サイノスやポルライターもからんできたそれは、〈暗黒のキューブ〉とともに〈星の暗黒回廊〉の星図をなすという。また、その時点ですでにトロトは“カンターロ”の名も耳にしている。怪しからん、と読者は当然思うわけで。〔1419話〕

ほぼ同時期に、マールの書いた惑星小説309巻『アムリンガルの宝玉』が刊行されている。タルカン宇宙にいた頃のローダンを描いたエピソードで、そこでテラナーはアムリンガルとは「公会議が招集されたとき、ヘクサメロンの領主たちが会合する場所」と聞かされ、これと関連があるっぽい映像をおさめたデータ・クリスタルを入手する。ただし、このアーカイヴのその後は不明。まあ、外伝だし。

で、星の暗黒回廊というのが、ブラックホールを結ぶ搬送路であることがわかり、訪れたシラグサ・ブラックホールにはカルタン人伝承者の《ナルガ・サント》の残骸が。どうやら、銀河系を包む障壁を突破しようとして失敗したっぽい。同胞たちの惨状をみかねたダオ=リンは巨船をピンホイールへと運ぶのだが、そこへ首を突っ込んできたのが、ハンガイ銀河におけるカルタン人の分派カラポン人。
「本船に〈モトの真珠(Perle Moto)〉があるはずだ!」と、居丈高に要求する軍人さんの言葉に興味を抱いたダオ=リンは、ハンガイ銀河、カラポン帝国の首星まで遠征して、みごと皇帝所蔵の〈モトの真珠〉を奪取する。これもまたデータ・クリスタルであり、エルンスト・エラートのメッセージがおさめられていた!〔1427話、1449話〕

アムリンガルの年表に由来するデータ・クリスタル。例の水晶柱のてっぺんに設置されていた、全長14cm、幅8cmほどの代物だが、その名をアミモテュオ(Amimotuo)という。ミモト、モト、という名称はここからきている。

このあたりで、上記ミスリードというか、わたしは妄想したね(笑)

 アムブル(Ambur)
 アムリンガル(Amringhar)
 アミモテュオ(Amimotuo)

あれ、Amからはじまるのって、ひょっとして、バルコン人じゃなくて〈それ〉関連なんじゃね?

そうして、まるで待っていたかのようにやってくる新たなるAm!(爆)
ローダンの手にわたったモトの真珠は、エラートのメッセージを紡ぎ出す。彼は小惑星アムリンガルでクエリオン人キトマから「アムリンガルの年表は“〈それ〉の年代記作者”が綴ったもの」と聞かされると同時に、アミモテュオを託され〈それ〉のための使命を果たすことになる。ネーサンを経由した《バジス》の分解、そしてゲジルの捜索……だが、数十年の捜索のすえにわかったことといえば、〈アマゴルタ(Amagorta)〉なるものが関与しているとだけ……。〔1460話〕
#ちなみに〈それ〉の年代記作者については、1349話に初出である。

すでに星の暗黒回廊の管理種族アノレーと接触していたローダンたち。アノレーによると、アマゴルタとは回廊の建造者たる種族〈始祖〉が隠遁した場所だという。カンターロのデータバンクから抽出された情報は、それが銀河系中枢部のブラックホールと明らかにした。〔1470話〕

アマゴルタの事象の地平下に潜入したローダンらは、〈アマレナ(Amarena)〉の手記を入手。ヴァウペルティアの子孫だる2種族が統合されたアマレナ(彼らの言語で“民族”)こと〈回廊の主人たち〉は、星の暗黒回廊の管理をアノレーに譲渡した後、さらなる進化の道をもとめてアマゴルタに隠遁。しかし、ドリフェル・ショックの影響で退行をはじめた自分たちが局部銀河群を破壊することをおそれた彼らは、アノレーの分派たるカンターロに協力を依頼し、種族規模の自死を選んだ……。〔1471話、1472話〕

あ、あれ。なんか、そこでプッツリ切れちゃったんだけど?(汗)

3 妄想の果て

アムリンガルの年表ネタは、次のサイクルも継続された。
エラートの依頼でパウラ・ブラックホール内の小惑星アムリンガルを調査したナックのパウナロは、残骸が“不完全なコピー”であると断定。なら、まだ年表捜索というオレたちの使命は終わってないんだ、と安堵するエラートとテスターレ。〔1500話〕
活性装置を返却せいと言われたローダンたちが右往左往するのを尻目に、彼らはナックの妨害をうけつつ惑星ケムバヤンを再訪、年表(偽)の断片から、〈それ〉の最も古い同行者が炉座銀河にいることを知る。〔1510話、1519話〕

眼光星系の惑星宵影に、水晶生命体ノクターンの集積体〈炉座の賢者〉を訪れたエラートらは、ノクターンこそが「〈それ〉の誕生協力者」であることを知り、その援助で、“真の”アムリンガルの年表へと到達する。〔1535話、1536話〕

ただし、それがドコであり、ナニが書かれているものなのかは、一切触れておらず、次にエラートが登場するのは〈それ〉の使者としてなので、ワンダラーなのかにゃあ、と非常にもにょもにょした幕切れであった。

一応、サイクル終盤の時期に、1000万年前、局部銀河群のどこか、アムリンガルと呼ばれる場所で“公会議”が開かれ、ヘクサメロンの主ヘプタメルが臨席したことが述べられたり〔1593話、惑星小説358巻〕
真のアムリンガルの年表はほぼ超空間に存在し、ワンダラーと紐付けられているっぽいと描写されたり〔1598話〕
もして、個人的にはアムリンガル=銀河系だと筋も通るしおもろいのになあとちょっとだけ期待したのだが、基本、これ以降アムリンガルの年表についてシリーズで取りあげられることはなくなってしまった。

はるか後、ヴルチェクが草案作家を引退する直前の2000話において、「誕生協力」の詳細が描かれたり(バルコン人ではなく、ヴォジャル人だった)、銀河系の古名が〈アマンドゥル(Ammandul)〉であるとされ、ああ、やっぱヴルちゃんはAmイコール〈それ〉関連のサインのつもりでいたのかなァとちょっとほっこりしたのだけど。まあ、それはそれ。
#〈それ〉以前にはファリスケ=エリゴンと呼ばれていた(さらに後付け)。

そして、ヴルチェクの後を継いで草案作家となったフェルトホフの時代、おもむろに、700万年前に大マゼラン星雲をアムリンガル、小マゼラン星雲をキリンガル(Kyringhar)と呼称していたことが明らかとなる。〔2149話〕
だが、これもフェルトホフが夭折したため、以降の展開はなかった。せめて、なぜアマンドゥルの年表ではなく、アムリンガルなのかくらいはと期待したのだが。残念。

-*-

……とまあ、ミスリードなのか、伏線が死んだのか、わたしが妄想ふくらませてヒトリ踊っていただけなのかは、さだかではない。ないんだったら(笑)

ヴィーロノート編からはじまるエスタルトゥ話には、ほかにもいろいろと伏線がある。
カルタン人……とわたしは訳しているが、原語はKartanin。母星の名がカルタンで、女系(猫型亜人)種族なので女性名詞を意味する語尾-inが優先されるが、男性単数だとKartaneとかだったりもする……のだけど、一番の理由は、「タルカン」との類似がわかりやすいから。これ、カータニンとか訳したらアウトである。
エスタルトゥ(Estartu)及びその中央星エトゥスタル(Etustar)、ピンホイール(さんかく座銀河)のカルタン名アルドゥスタール(Ardustaar)の近似とか。
ストーカーがチョモランマにぶっ建てた〈英雄の学舎〉に設置された、5万年前の第三の道の哲学の創始者と伝わる男性オーグ・アト・タルカン(Oogh at Tarkan)の彫像の描写が、よく見るとお猫様であるとか。

30年前のわたしは、上記のような妄想だだもれるくらい楽しませてもらったのだが。
日本の読者さんたちにも、そんな楽しみ方ができることを願いたい。
べ、別に同じ穴のムジナが欲しいわけじゃないんだからねっ(オイ

銀本タイトル2020

公式サイトNewsで、来年2020年の銀本タイトルが公表された。

149. Der Einsame der Tiefe / 深淵の隠者
150. Stalker / ストーカー
151. Sternenfieber / 星々への熱狂
152. Die Raum-Zeit-Ingenieure / 時空エンジニア

銀本(Silberbände)は、ペリー・ローダン・ヘフトを合本化・再編集したもので、3月・5月・9月・11月の年4回刊行。19巻までをフォルツ、80巻までをホフマン、以降をフーベルト・ヘーンゼルが再編集を担当している。
1巻あたりの分量はヘフト版6話程度。必ずしも1話すべてが1巻に収録されるわけでもなく、収録話数はかなり変動する。また、再編集の際にエピソードの取捨選択がなされ、金星のジャングルとか、グレイビーストの流刑囚とか、プロフォスの叛逆とかがカットされているのは、過去の記事でも言及したとおり。

ヘーンゼルは、クロノフォシル・サイクルについては比較的“時系列順”へと再編集している感じ。
現在最新巻の148巻『ドリーマーの力』は、前巻『サイコフロスト』の末尾、1234話「海賊放送局アケロン」のエピソードを受けた〈警告者〉探索編からヘフト版サイクル中盤のクライマックス、クロノフォシル・テラをめぐる攻防を描くが、これが1241~1246の全6話収録である。

149巻がおそらくサイバーランド編5話+α、150巻が1251~1257の〈最後の会戦〉編、151巻がエデンII編、152巻がヴァゲンダ編から1250話「時空エンジニア」(編集次第では1269~1272話のフロストルービン帰還編も)だと思われる。1235話「エデンの電光」は149巻か151巻か。
1250話は、当時も、なんか深淵編だけやけに時間進んでない?という話はあった。影の感化力……ハヤカワ版だとグレイ作用だっけ?の侵蝕が限界まで進んでから、ストーカー(当時よりだいぶ、悪い意味が拡散したけど、訳語どうすんのかなあw)登場からのエレンデュラ編、エデンII編で、だいじょうぶかと思ってたら、フロストルービン帰還でローダン側の話が追いついたので、苦笑した記憶がある。再編集で、そのあたりが均される感じだ。

ただ、このへん、実はもうすぐハヤカワ版にも登場する変なヒト(笑)が、深淵の地とエデンII、両方に顔を出すので、ヘーンゼル大変そうだなあと……。
クロノフォシル・サイクルはもう30年以上前、エーヴェルス先生が大暴れしていた頃である(爆)

■公式News:DIE PERRY RHODAN-HARDCOVER IM JAHR 2020

“ストーリー”暫定公開

またまたサルベージの話で申し訳ない。

「PRSとは」のコーナー、「ストーリー」の項を暫定公開した。
トップページには、過去rlmdi.で発行したストーリー集やサイトで公開した要約の主立ったものを並べてある……が、並べてあるだけで、全部公開するわけではない。ホントは、マガンが発行したPrivateCosmosの一覧表とか、FCペリーワールド/ミレニアム・ソルが発行した完訳本一覧とかつくりたいと思ってはいるのだが。ここってわたしの個人サイトだし、どーなんだろ、とかね。

それはさておいて、今回公開したのは、旧〈無限架橋〉で「サイクル紹介」コーナーとして用意していたものを若干手直しした。休止時点が原本なので、最新サイクルあたりは空欄のままである。
そして、要約『無限架橋』の序盤。こちらはまだ修正途中で、かつて公開していたものの三分の一程度だろうか。別途rlmdi.の本用に書いていたものとか、適宜調整して部分公開する……かもしれない(笑)

いまどき、Perrypediaと翻訳アプリとか駆使すれば、この程度の内容は個人でも十分知りうる状況にあるかとも思う。けど、せっかくだしね(ナニが

近況:2019/10/08

近況並びにサイトのアップデートのお話など。

積ん読の崩しかたがめちゃくちゃなので、いまごろようやくフォードの『雪降る夏空にきみと眠る』を読んでいる。冬眠してえ……と思ったことのある人は少なくないと思うが、実際に冬季休眠期間がある文明ってこーゆーふーになるのかねぇ。でも、雰囲気が合うのか楽しませてもらっている。
同時に買った『三体』はとっくに読了している。こちらはさえない中年の科学者である(はずの)主人公が予想外に主人公していてひきこまれた。ゲーム〈三体〉があーでこーで……と語ってしまい、「そーいやセンセ、三国志とか古代中国モノお好きでしたねえ」とマガンに苦笑された。いや、世界史全般、広く浅く好きよ?(笑)
クリング『クオリティランド』は、ドイツSFを扱うサイトとしては取りあげねばと思っているのだが、なんというか。おもしろいっちゃおもしろいのだけど、これがダブルクラウンといわれると、うーんとなってしまうのだった。うまくまとまらないが、そのうち記事として上げるつもり。
その他話題のSFとしては、ハーネス『パラドックスメン』と伴名練『なめらかな世界と、その敵』を購入している。前者は、ワイドスクリーンバロックの本家にふさわしく、息をもつかせず、あれよあれよという間に話が進んでいく。ただ、予定調和的というか、記憶喪失の主人公は基本、状況に流されているだけのような気がしないでもない(笑) そして後者は、SNS等眺めると絶賛の嵐なのだが、個人的に合わなくて中途で断念してしまった。わくわく感が足りないのよ、そういう作品じゃないとは思うんだけど。

さて、サイトのアップデートについてだが。
ブログではなく、固定ページの方でサルベージを開始した。メニューの「PRSとは」からどうぞ。

とはいえ、まだ実質的に、サイクル一覧と基礎アルコン語講座の増補改訂版しか復活していないのだが。まだWordpressを十全に使いこなせていないので、作家一覧とかはpdfファイルにするしかないかな……。
ま、あまり期待しないでほしい。
rlmdi.がサイトを閉じてしまったので、ホントは『エスタルトゥへの道』三部作もこちらで復活させたいところだが、もうすぐハヤカワ版が届いちゃうしねえ。あと中絶している『無限架橋』……。
マガンみたくきっちり作り込むのは向いてないので、過去の蓄積といっても、実はそうたいしたものではなかったり。でもまあ、あと何年できるのかわからないけど、こんなサイトのひとつくらいあってもいいんじゃないかと思っている。いましばし、お付き合いいただければ僥倖である。

ペリー・ローダンNEO/覚書

2年ほど前に、いやほど資料をかきあつめてマガンに要約を書いてもらった(笑)のだが、その掲載されたrlmdi.のサイトは諸般の事情から閉鎖されてしまった。いたしかたないので(をひ)、こちらでもほぼ同等のものをでっちあげてみる。

ローダンNEOとは

ローダンNEO(Perry Rhodan NEO)とは、2011年9月30日にスタートしたリブート・シリーズである。 サブタイトルは「新たにはじまる未来(Die Zukunft beginnt von vorn.)」。

旧ヘフト版がまさにベルリンの壁が建設された、東西冷戦まっただなかの1961年に10年後を想定してスタートしたのに対し、NEOは四半世紀後の近未来(2036年)を描く。食糧不足・資源の枯渇、経済活動の停滞、テロリズム、拡散する核の恐怖……先の見えない、暗い世相は現在を生きるわれわれを投影しているといえよう。
この新たな世界を背景に、地球外文明と遭遇した宇宙飛行士ペリー・ローダンは、明日なき人類にどんなヴィジョンを示すのか。広大な宇宙で、いかなる冒険をくりひろげるのか。

旧ヘフト版の50周年企画としてはじまったNEOは、好評を得て8年が経過した現在も継続し、この5月には200巻を超えた。

ローダンNEOの出版形態

判型はポケットヘフト(Taschenheft)と呼ばれる平綴じの新書サイズ。 隔週刊で、 草案作家が組み立てたプロットに従い、各作家が執筆する体制は変わらない。
1冊あたりの分量は広告等含めて160ページとヘフト版のほぼ倍。Wikipediaによると、第97巻から100ページに減少しているとあるが、手元にある第3期のKindle版だと、少ないときで1割程度の目減りに見える(2400/2600くらい)し、160巻とか200巻の記念号はほぼ第1巻と同程度の量。これ、97巻で確認しないとわからないかも?
同時に電子ブック版や、若干(1ヵ月程度)遅れて旧ローダンのシルバー・エディションに相当するオーディオブック版(データ形式mp3で、CD版/ダウンロード版がある)も販売されている。

2014年からは、ポケットヘフト4巻+書き下ろし短編1本のハードカヴァー合本形式の「プラチナ・エディション」が順次刊行されたが、こちらは2018年に18巻『戦争惑星強襲』をもって終了している。
ローダン本編の合本(銀本)の場合、スタートが1978年と、すでに本編が800話を超えていたのに比べて、「買い直し」にはタイミングが早すぎたのかもしれないし、当時に比べて電子ブックの普及に伴い、書籍版の必要性自体が低下していることも考えられる。あと、あちらはフォルツ・ホフマン・ヘーンゼルによる「再編集版」だしなあ……。
おまけの書き下ろし短編については、NEO-StoriesとしてKindle版に別途収録されている。

2014年初頭から perry-rhodan-neo.netという独自ドメインのサイトが公開されていたが、2017年9月の公式サイト再編にあたり消滅している。まあ、あれ、新刊の告知と公式サイトからNEO関連のニュースを引き写していただけの、ホントに広告だったしね……。

なお、Wikipediaを見るかぎり、現状で翻訳が出版されているのは日本だけのようだ。

ローダンNEOのエポックシーズン

ローダンNEOには大きな区分けとして、期(Epoche)と部(Staffel)が存在する。

シュタッフェルは、最近のTVドラマ・シリーズでいう“シーズン”に対応する言葉なのは、おそらく多くのかたがすでにご存じとおり。
ただ、複数シュタッフェルをまとめたエポックと併せると、シーズンだといまいち据わりが悪いので、個人的には上記「期・部」と書くようにしている。

一応のストーリーのまとまりであるシュタッフェルに対し、エポックは当初、担当した草案作家によって区分けされていた。シリーズ黎明期の草案を担当したフランク・ボルシュの時代(100巻まで)を第1期、ミハエル・ブーフホルツとリュディガー・シェーファーが草案チームとなった101巻以降を第2期と区別したのがはじまりである。
ブーフホルツ死去により、ライナー・ショルムを草案チームに迎えた151巻から199巻までが第3期。
この5月に刊行された200巻からを第4期とし、同時に第2期、第3期にはサブタイトルが考案されたが、第1期が空白のままなあたり、かなり便宜的なものである。

巻数 年代
第1期   1 ヴィジョン・テラニア   1-  8 2036
2 ヴェガ遠征   9- 16 2036
3 銀河の謎  17- 24 2036
4 アルコン進出  25- 36 2037
5 大帝国  37- 48 2037
6 アルコン  49- 60 2037
7 エペトラン  61- 72 2037
8 保護領・地球  73- 84 2037
9 戦場・地球  85-100 2037/38
第2期 リドゥーリ 10 メタンズ 101-110 2049
11 ポスビ 111-120 2049
12 アルコンの最期 121-130 2049
13 太陽の支配者 131-140 2051
14 メテオラ 141-150 2051. 2054/55
第3期 宇宙チェス 15 第二の島 151-160 2055
16 ミロナ 161-170 2055
17 ブルー人 171-180 2055
18 同盟 181-190 2058
19 けだもの 191-199 2058
第4期   20 太陽系連邦 200-209 2088

「大帝国」から「エペトラン」、「保護領・地球」と「戦場・地球」、「第二の島」と「ミロナ」、「同盟」と「けだもの」は、それぞれ部こそ分けられているが、ストーリーは継続したものである。

ローダンNEOの作家チーム

NEOの参加作家はすでに30名を超える。第1部、第2部で執筆したメンバーの多くはヘフト版のレギュラー作家であり、ある程度NEOが軌道に乗ると本業に戻り、特に第2期以降の執筆はほぼない。また、ある程度人気のある作家はヘフト版へ移行してしまうため、人数のわりに定着率はそれほど高くない。

  作家名 初出 担当数 備考
1 フランク・ボルシュ Frank Borsch 1 9 初代草案作家
2 クリスチャン・モンティロン Christian Montillon 2 11  
3 レオ・ルーカス Leo Lukas 3 3  
4 ヴィム・ファンデマーン Wim Vandemaan 4 3  
5 ミハエル・マルクス・ターナー Michael Marcus Thurner 5 4  
6 アルント・エルマー Arndt Ellmer 7 1  
7 フーベルト・ヘーンゼル Hubert Haensel 8 1  
8 マーク・A・ヘーレン Marc A. Herren 12 3  
9 ヘルマン・リッター Hermann Ritter 13 4  
10 ベルント・ペルプリース Bernd Perplies 15 3  
11 ミシェル・シュテルン Michelle Stern 18 14  
12 アレクサンダー・フイスケス Alexander Huiskes 21 7  
13 クリスチャン・フンベルク Christian Humberg 28 2  
14 ゲリー・ハイナリィ Gerry Haynaly 34 2  
15 オリヴァー・フレーリヒ Oliver Fröhlich 40 5  
16 オリヴァー・プラシュカ Oliver Plaschka 42 15  
17 リュディガー・シェーファー Rüdiger Schäfer 44 27 現草案作家
18 フェレナ・テムゼン Verena Themsen 46 1  
19 ロベルト・コーヴス Robert Corvus 58 5  
20 デニス・マティアク Dennis Mathiak 63 2  
21 アンドレア・ボットリンガー Andrea Bottlinger 65 1  
22 ウーヴェ・フェール Uwe Voehl 68 1  
23 ライナー・ショルム Rainer Schorm 70 27 現草案作家
24 フランク・ベーメルト Frank Böhmert 76 1  
25 ミハエル・H・ブーフホルツ Michael H. Buchholz 89 9 第2期草案作家
26 カイ・ヒルト Kai Hirdt 92 23  
27 スーザン・シュヴァーツ Susan Schwartz 105 13  
28 マデライン・プルイック Madeleine Puljic 134 6  
29 アルノ・エントラー Arno Endler 137 7  
30 ルーベン・ヴィッケンホイザー Ruben Wickenhäuser 173 4  
31 ルーシー・ガス Lucy Guth 201 1  

少々見づらいが、太字が200巻あたりでも一応現役と思われる作家である。

ローダンNEOのストーリー

以下にNEOのストーリーの大略を記すが、上述のとおり、大半はペリペディアや公式フォーラムのスポイラー(ネタばれ)掲示板の記事、読者のブログ等にあげられた感想等からでっちあげたものである。そのへんをご了解のうえでどうぞ。

第1期 (テラ黎明とVS大帝国)

第1部 ヴィジョン・テラニア / Vision Terrania

月面基地連絡途絶の原因解明という極秘ミッションを携えて発進した《スターダスト》のペリー・ローダンは、月に不時着したアルコン人の宇宙船とコンタクト。滅びの縁にある人類を救うため、指導的立場にあるアルコン人クレストの白血病の治療を申し出て、彼らの協力を仰いだ。
アルコン船の技術力を背景に、ゴビ砂漠に理想郷テラニアを建設。あらゆる回線で、地球の現状に心を痛める人々に呼びかける。そして、アルコン人クレストを誘拐した米国土安全保障省(ホームランド・セキュリティ)のクリフォード・モンタニー率いるミュータント部隊の妨害をはねのけ、テラニアに集う“核戦争の恐怖のない未来”をめざす人々とともに、テラ連邦(Terranische Union))の樹立を宣言する。

Terranische Union は国連的な意味合いで「テラ連合」と訳すべきだと思うのだが、第4期の拡大版を「太陽系連邦」とした兼ね合いで、今回はこの訳語とした。

第2部 ヴェガ遠征 / Expedition Wega

諸国のすべてがテラ連邦に参加したわけではない。米国はまだ暗躍をやめない。
金星で発見された1万年前のアルコン搭載艇《トソマIX》――《グッド・ホープ》と改称――の試験飛行でヴェガ星系を訪れたローダンは、現地のフェロン人と侵略者トプシダーの紛争にまきこまれる。
一方テラでは、金星基地にいたロボット・リコの行動を発端にして、アゾレス諸島近くの海底に1万年前のドーム施設や、沈没したアルコン戦艦《トソマ》が発見される。
また、ファンタン人の紡錘船があらわれ、人・物を問わず、物珍しいもの(ファンタン語でベスン)を強奪しはじめる。テラ連邦は《トソマ》をサルベージしてこれに対抗する。
ヴェガのローダンは、トプシダーと講和条約締結にこぎつける。

第3部 銀河の謎 / Das galaktische Rätsel

ヴェガで得られた情報によれば、1万年前のラルサフIII(現在のテラ)でアルコン植民地を統治した“司令官”は、伝説の〈永遠の生命の星〉とかかわりがあった。クレストはさらなる手がかりを求め、独断でアゾレス諸島海底ドームの転送機をくぐり、消息を絶ってしまう。
シュプールをたどり、ヴェガ星系へむかったローダンは惑星ゴルで転送機を発見。時間を超えた一行は1万年前のフェロルで初代トルトの統一戦争にまきこまれ、さらにはラルサフIIIのアルコン植民地がメタン生命体マークスの攻撃により滅亡するさまを体験する。
最終的に〈永遠の生命の星〉ワンダラー――惑星切断機で両断された半球状の惑星――に招かれたローダンは、精神集合体〈それ〉から老化を防ぐ細胞活性装置を授けられるが、これをクレストに譲る。

第4部 アルコン進出 / Vorstoß nach Arkon

ローダンは《トソマ》でアルコンに向かう。途上、修理のため、ベータ・アルビレオ星系の惑星スノウマンをめぐる、銀河商人メハンドールの女族長ベリンカルが営む宇宙ステーションに立ち寄る。だが、そこにアルコン帝国の〈摂政の手〉セルグ・ダ・テフロンの派遣した、ナート人ノヴァール率いる第247境界警邏艦隊があらわれ、叛逆者クレストとトーラの引き渡しを要求する。両名を逃がしたローダンはナート人の捕虜となる。
一方、転送機の事故で惑星トプシドに漂着したエリック・マノリは、独裁者に対する反乱計画にまきこまれ、〈永遠の生命の星〉につながるという転送機からあらわれたアルコン人アトラン・ダ・ゴノツァルと出会う。細胞活性装置を得て、1万年を生きのびたラルサフIII植民地の“司令官”その人である。現在、彼はトプシドの改革勢力を指揮しているという……。
叛逆者逮捕の任をしくじったノヴァールの部隊は、タトリラ星系を占拠したトプシダーを排除せよと命じられる。絶望的な兵力差のうえに、トプシド側には増援まで到着する。指揮するのは独裁者の特命をうけたアルコン人アトラン。これとコンタクトを取ったローダンは、ノヴァールを説得してテラへと亡命させ、〈摂政の手〉セルグから新造戦艦《ヴィースト・アーク》をだまし取る。
その頃、太陽系では火星への入植が開始され、それに伴い、5万年前の第一期人類リドゥーリと〈同盟〉の戦いの痕跡がみつかっていた。

第5部 大帝国 / Das Große Imperium

アルコン人アトランは、アメリカの宇宙開発計画にもシェルルド・ゴナードソンの偽名でかかわっており、実は不時着した《アエトロン》の写真も彼がまぎれこませたものだった。そして当時、ローダン個人を狙ったものと、ノヴァ・ロケットのサボタージュという、ふたつの陰謀があったことを物語る。中国の工作を疑ったアトランはリコを派遣したが、背後関係を探りあてることはできなかった。
一方、クレストはテラが〈摂政の手〉セルグと、ひいては15年前の皇帝オルカスト22世失踪以来大帝国の実権をにぎった〈摂政〉その人の怒りを買ったであろうことを憂慮。アルコン本星の〈エペトラン・アーカイヴ〉にソル星系の座標が記録されていることを教える。ローダンとアトランは、友誼を結んだベリンカルやノヴァールの協力を得て、アルコン潜入を計画する。
未知のウィルスにより超能力者たちの脳に異変が起きる。アラン・D・マーカントは保安のため超能力者を隔離し、一般人との溝が深まる。モンクことジョシュア・モンカーダはアンティ能力で暴走する超能力者を抑えるが、この〈ジェネシス危機〉の間、タコ・カクタをはじめ多くの超能力者が死亡し、能力を失い、あるいは能力に変化をきたす。

第6部 アルコン / Arkon

大帝国の中枢、アルコン星系の〈三惑星〉ティガ・ラントンにいたったローダンらはエペトラン・アーカイブ探索を開始。アトランは現政権の転覆を狙って摂政の素性を探る。
アルコン側でも、ゴノツァル家の現当主は、オルカスト22世の寵臣だったシスラペン種族のデヌリオンの行方を探り、身柄こそ保護できなかったものの、摂政が〈永遠の生命の星〉へ連れていくと皇帝を騙して謀殺した事実をつかむ。また、皇帝三代にわたって仕えた元〈愛妾〉クルティザンヌイヒン・ダ・アクランはセルグのもとへ〈愛妾〉シータを送り込む。
一方、ワンダラーの〈それ〉に私怨を抱く〈人形使い〉カリブソは、精神集合体が目をかけるローダンを抹殺せんとはかり、その能力で生命をふきこんだ〈人形〉をテラナーの周囲にさしむける。惑星デログヴァニアの〈時間の井戸〉で時空を超え、ローダンの過去に干渉して歴史改変をもくろんだひとつが、アトランの知るスターダスト事件である。過去のローダンを護るため、〈それ〉はソルゴル人カルフェシュを派遣し、ローダンの叔父カールに化身したカルフェシュは少年時代のローダンを守護し、〈瞬間切替スイッチ〉の異名のもととなった不時着事件の際もテラナーを救ったという。
またテラでは、隔離された超能力者たちが年老いた未来のローダン――“ローダノス”――を召喚していた。

第7部 エペトラン / Epetran

ローダンは〈アーカイヴの番人〉の協力をとりつけ、多数のアルコン人の脳にデータを分散して保管するエペトラン・アーカイヴの詳細を知る。テラの座標を宿した12名中11名のデータを抹消する。
アトランは摂政が名乗る元艦隊将校ヘラク・ダ・マスガルの素性が怪しいことをつかむ。彼はその名を名乗る別人である、と。皇帝謀殺の真相とあわせて、艦隊司令官ペルティア・テル・ガレンに蜂起をうながす。
だが、計画実行の前日、青い転子状船が摂政を迎えにあらわれる。これに密航したローダンは、ティガ・ラントンと直行する軌道をもった“第四のアルコン”たる惑星〈天上界〉へといたる。過去6000年、歴代皇帝の御代に一度だけそのバリアが解かれる半球惑星……それは摂政が至上の位につき、アルコンを完全に掌握することを意味した。ローダンは半球惑星がつくられた際にとらわれたイルト族と、〈天上界〉の管理者との和解の仲立ちをした後、アルコン星系から脱出する。
自由を求めるイルト族の起こした騒ぎを、宿敵たる〈同盟〉アライアンスの攻撃と誤解した摂政は、〈天上界〉の管理者に自らの素性――〈島の王〉レグナル・オルトン――を明かすが理解を得られない。ともあれ、皇帝マスガル1世として登極した彼は、アルコンIへ凱旋する。

第8部 保護領・地球 / Protektorat Erde

新皇帝誕生の前に、ナート人やアルコン艦隊の蜂起は失敗に終わるが、アトランは踏みとどまる。まだ、切札が残っている、と。タトリラ星系での事件のおり、〈摂政の手〉セルグをなだめるために譲渡した細胞活性装置――怪しんだセルグは、これを一時部下につけさせた後、ようやく我が物としていた――が、マスガル1世の触れた瞬間に起爆し、皇帝とセルグ両名は爆死する。いあわせた〈愛妾〉シータは、初代皇帝から受け継がれ、帝位の象徴たる銃〈皇帝の正義〉を手中におさめ、女帝エムトン5世を名乗った。
アルコン艦隊に追われるローダンは、ブルの救援を得て、ようやく逃亡に成功。だが、帰り着いた地球は、エムトン5世の派遣した第312境界警邏艦隊に先んじておさえられ、〈保護領ラルサフ〉となっていた。地球の銀河ポジションが漏れていたのだ。テラナーやナート人の抵抗を排除するため、テラニアはスターダスト・タワーを残し灰燼と帰していた。
保護領ラルサフ統治府内部では、極力穏当な治政を望む文民管理官サトラクと、《アエトロン》破壊への報復を欲する艦隊司令ヘツケルの間に軋轢があり、一貫した行動がとれない。その間に、各地で起こったテラナーのゲリラ戦は、しだいにローダンが指導する抵抗運動〈フリー・アース〉へと収斂していく。ジェネシス危機のため排斥されていた超能力者たちも、人類としてこの側に立った。
一方で、ローダンはカリブソのあやつり人形と化した少年時代の仇敵ティン・カンと対決する。

第9部 戦場・地球 / Kampfzone Erde

カイパーベルトに隠れ住む〈スターチャイルド〉との接触から、第一期人類リドゥーリの存在が知られる。5万年前に栄えたリドゥーリは非ヒューマノイド種族の〈同盟〉と争い、生物兵器〈けだもの〉の猛威の前に故郷星系を去ったという。シュプールをたどりレジナルド・ブルは太陽直近をめぐる極秘惑星ヴァルカンを発見。リドゥーリの工廠を管理するハルト人ファンカン・タイクとコンタクトする。
究極のベスンたる“不死”を求めて、ファンタン人セト=ヤンダルが地球を訪れる。その際、エムトン5世が地球のポジションを知るため彼に譲り渡した〈皇帝の正義〉がクレストの手にわたる。
ローダンは惑星デログヴァニアを訪れ、カリブソと対峙する。人形遣いは、〈それ〉への私怨はそれとして、リドゥーリの退去後放置されてきた地球が、宇宙飛行の再開と同時に再び〈同盟〉の標的となる未来を予見して、これを防ごうとしたと語る。ローダンらの去った後、デログヴァニアは〈同盟〉によって破壊される。
テラではヘツケルの暴走を防ぐため、サトラクが執政官アダムスと同盟関係を結ぶ。逆上したヘツケルが、帰還したローダンを捕らえ、テラにアルコン爆弾を使用せんとしたところで、騎兵隊よろしくブルがヴァルカンでかき集めたリドゥーリ艦艇による“テラ艦隊”が駆けつけ、間一髪ことをおさめる。アルコン艦隊はソル星系から撤収する。
重傷を負ったローダンはヴァルカンの医療ステーションで回復中、やはり死の床にあるローダノスの記憶を共有する。実は彼は未来から呼ばれたのではなかった。〈天上界〉でとられたコピーの情報が、なぜか〈同盟〉の手にわたり、ヒューマノイドの研究のため、歴代皇帝やローダンのクローンがつくられていたのだ。やはり〈同盟〉に囚われ、ローダノスを逃がしてくれたハルト人イホ・トロトの存在をローダンは知る。

第2期 リドゥーリ / Die Liduuri

第10部 メタンズ / Die Methans

西暦2049年。ローダンとトーラの間には、すでに第1子トマス・レジナルド・ローダンが生まれている。
木星の大赤斑から大破したマークスの船があらわれる。残骸から赤毛で赤銅色の肌、菫色の瞳のヒューマノイドが救出されるが、当人には〈アウロールオーロラ〉テュイレ・シタレーという名前以外の記憶がない。
ローダンはマークスの傍系のメタン生命体と接触する。メタンズは1万年前にアルコン人と戦って敗れた経緯からこれを敵視する。だが、テラナーは別の種族とみなされて深刻な対立には至らない。ローダンはメタンズのステーションで〈同盟〉由来の生体兵器〈けだもの〉マスメル・トロンクが覚醒するのに出くわしてしまう。
エリック・ライデンはリドゥーリの遺産を研究してきた。木星大赤斑の転送機は5万年前にリドゥーリが星系から逃れるのに用いた施設である。そして人類は今に生き残るリドゥーリとまみえる。5万年前、リドゥーリは故郷である星系ソルを捨てた。逃げた先の〈白の惑星環〉に固有の元素には老化を防ぐ効果があって、ここには当時のままのリドゥーリが大統領アヴァンドリナ・ディ・カルデラーのもとで暮らす。ただし老化防止の効果は当地を離れると62時間で失せるから別に装置で老化を防ぐ一部の者たちしか白の惑星環を出られない。既知の細胞活性装置はリドゥーリが開発したものという。
この宇宙には大きくヒューマノイド種族と非ヒューマノイド種族の〈同盟〉とのあいだの〈闘争リンゲン〉があり、5万年前の戦いも1万年前の戦いもこの枠組みの中にあるらしい。

第11部 ポスビ / Die Posbis

銀河系外の虚空に本拠を構えるロボット文明が銀河系に迫り、生命を根絶やしにしようとする。このロボットは単なる機械ではなくポジトロニクス回路に知性あるプラズマを組み合わせてあって意志をもつ。人類はこれを称してポジトロン生体ロボット(略してポスビ)という。
5万年前のソル星系第5惑星ティアムルはリドゥーリの一大研究施設だった。〈同盟〉の兵器と目された〈タアル塵〉への対抗策をはじめ、様々なテーマが研究されていた。スラン・ディ・ハラティンの見出した新元素はその名をとってハラティウムと呼ばれ、構造可変量子結晶金属ハラトンが生み出された。十三人評議会議長のアヴァインドラを母にもつドライン・ディ・カルデラーはハラティウムを加えた生体プラズマとポジトロニクスの神経結合を研究し、バクマーツ(後にいうポスビ)を開発した。ドラインの妻はアガイア、両名の娘ふたりはアヴァンドリナとアナテマといった。バクマーツの第一世代はタアル塵にやられて100体が停止を余儀なくされた。しばらくしてこの100体は何者かに再起動させられ、諸惑星に配備された重力兵器が暴走する。これをきっかけにリドゥーリは故郷を捨てて逃げることになった。
この時、バクマーツたちも恒星転送機で逃げ出し、銀河系外の虚空に至った。虚空の一星系で生体プラズマの培養を可能にする生物を見つけた。これにより造った生体プラズマの巨大な塊をアニクまたは中央エンティティという。バクマーツはここから生体プラズマをとって同族を生産し、また定期的に自分の中の生体プラズマを新鮮なものと入れ替える。彼らはリドゥーリが故郷にもどれるように銀河系の「本物でない生命体」を駆逐しようとしている。だがバクマーツの中にはアニクに拠らない個体群もあった。第一世代の一機アアシュラが率いる一派はリドゥーリの恩に仇でむくいようとしている。
ローダンはアアシュラを倒し、アニクと相互理解に至って銀河系への侵攻を止める。くわえてトランスフォーム砲と恒星転送機のデータを入手する。

第12部 アルコンの最期 / Arkons Ende

かつてトーラに求婚したアルコン貴族アガイオル・トトンは、闇の通商組織カント=イルルの首魁であるのみならず〈同盟〉に与するアルコン地下組織アロル・タントルの領袖であり、これを背後で操るのはトトンの母すなわちアンドルミダ銀河の惑星タマアニウにいるアナテマ・ディ・カルデラーである。
地下組織アロル・タントルはメタン生命体マークスと謀ってアルコン本星破壊計画を実行に移す。アルコン艦隊の指揮系統に割りこみ艦艇の7割をアルコンから700光年離れたスナルフォト星系に派遣して、マークスの新兵器の餌食にする。アトランは増援を送るが戦況は変わらない。一方でマークス艦隊の主力は星系アルコンに侵攻し、惑星ナートを襲い、〈天上界〉を襲い、惑星アルコンIの水晶宮を破壊する。アルコンにいたテラナー超能力者イシー・マツはアルコンの伝説の十二英雄の名をもつロボットたちを起動装置とする古い防衛機構を動かす。惑星イプラサの3つの衛星にそれぞれ5本一組の巨大な砲塔が4組あらわれて星系内のマークス艦隊を駆逐する。
ローダンがアルコン星系に駆けつけたときにはすべてが終わった後である。さらに、〈皇帝の正義〉を保持するクレストが、エムトン5世を退位に追い込み、皇帝ツォルトラル13世として即位する。実はクレストは以前瀕死のところをポスビに救われた際に埋めこまれた体内インプラントを介して、ローダンとテラを憎むアアシュラの意志に取り憑かれている。
ローダンはアガイオル・テトンと対決し、これを倒すが、クレストとの和解はならない。元エムトン5世ことシータのテラへの亡命を受け入れ、とりあえずの休戦条約を結んだのみである。
ローダンとトーラの間に、第2子ナタリーが誕生する。

第13部 太陽の支配者 / Meister der Sonne

西暦2051年、恒星ソルに亀裂が走る。太陽系にあらわれた非ヒューマノイドのシタラク種族は、ソルの亀裂〈カズマ〉を修復しにきた、人類は自分たちの指揮下に入れと宣告。テラ連邦は慎重に構えるがロシアが反発して攻撃をしかけ、戦端が開かれる。強力なバリアを有するシタラク艦隊はテラ艦隊を破り、テラは荒廃する。シタラクが連れてきた〈けだもの〉マスメル・トロンクが地上に降りる。かつてクレストの白血病を治療した医師ハガードは仲間を守るため〈けだもの〉相手に特攻して果てる。シタラクはカズマから漏れ出すハラティウムすなわちタアルを吸塵し、これに起因するとおぼしき疫病〈コルティコ症候群〉が人類を見舞う。そこにアルコン艦隊2万隻があらわれて皇帝ツォルトラル13世の名のもとに人類に無条件降伏を要求する。人類が頼みにするリドゥーリは折からの白の惑星環の異変で多数の個体を失い生き残ったのはわずかに1000名。リドゥーリの大統領アヴァンドリナ・ディ・カルデラーの方がむしろ人類に支援を乞う状況である。
テュイレが記憶の一部を取り戻す。かつて彼は〈それ〉に細胞活性装置をさずけられ、ロボットのリコが〈アンドロス〉の配下として改造されたのを正すため、時空を超えた追跡劇を演じた。また〈アンドロス〉と手を組むと目される〈ミロナ・テティン〉ことアナテマ・ディ・カルデラーのことを思い出す。〈アンドロス〉とは〈それ〉と対立するアンドルミダの何者かであるという。そして、テュイレの最終的使命は「亀裂を閉じること」だったはず……。
8万年前、地球はメムと呼ばれ、第一期人類はメメターと称していた。メムが巡る恒星ソルトには、実は当時から亀裂が存在し、漏れ出す成分があった。ドライン・ディ・カルデラーを中心に、その――後に言うハラティウム――の研究が進むが、そのうちに異変が生じる。メメターの中にハラティウム依存症をしめす者や、超能力をあらわす者が出て、やがて大半が欲求をなくして生ける屍と化し、ついには精神化して集合し〈それ〉を形成するに至った。リドゥーリすなわち「耐性のある者」だけが肉体をもって残った。惑星メムもリドゥールと呼ばれるようになる。
〈それ〉から分離したメメター2名が人類を助ける。シタラクはバリアを無力化されてローダンの最後通牒に従い撤退、コルティコ症候群も収束する。リドゥーリは科学者エリック・ライデンらに老化を阻止する細胞シャワーの使用を認める。
クレストはトーラと子供を人質にローダンに迫るが、もとアンティ能力者モンクに射殺される。いまわの際にアアシュラの呪縛を脱したクレストの言をうけ、帝位に復帰したエムトン5世に率いられてアルコン艦隊は撤収する。
また、事件の際にトム・ローダンと行動をともにした火星人の孤児ファロクは、後にローダン家の養子にむかえられる。

第14部 〈メテオラ〉 / METEORA

ローダンとテュイレは〈それ〉により、それぞれ別の惑星に転送され、〈メテオラ〉を探して恒星ソルにもたらすようにとの使命をさずかり、射手座矮小楕円銀河をめざす。その途上、リドゥーリの遺跡でローダンは細胞活性装置を発見する。一方、アトランもまた転送されるが、こちらはアンドロスの徴用したテティサー船《ヤタナ》で、〈メテオラ〉探索を阻止せよと命じられる。テティサーはポスビと敵対している。またテティサーにもポスビにも与しないスコルゴン(アルコン語で「覆い隠されたもの」の意)なる種族もいるという。
再建中のテラに、月からメメターの箱船《アヴェダナ=ナウ》が到来。荒廃した惑星テラを癒すため全人類は3ヵ月以内に退去せよと迫る。
ローダンとテュイレは合流し、獅子人間グラドの巡礼に同行して聖地アムバファルのブラックホールの中に〈メテオラ〉を発見する。当地で再会したハルノは自分のことをかつて〈メテオラ〉から別れたその理性であると語り、“母”のもとに還る。この際に〈メテオラ〉が8500万年前の恒星ソルで誕生したことが判明する。〈メテオラ〉とはすなわち知性を有するハラティウムの巨大な塊 。外界をのぞき見ようとしたことでカズマが生じ、怖ろしくなったハラトン知性体はソルから逃げ出したという。
ハルノを吸収した〈メテオラ〉が恒星ソルに戻り、カズマを閉じようとする。ローダンはメメターとの交渉を図るが、〈メテオラ〉の帰還がソルに変調をもたらし、テラナーに悪影響をおよぼしつつあることがわかる。アトランがあらわれて〈メテオラ〉を攻撃するが、重力爆弾を用いたテュイレの最後通牒の前に撤退する。しかしソルと〈メテオラ〉はすでに不可分で、メメターは110億の人類を箱船《アヴェダナ=ナウ》で〈楽園〉ヴィマナへと連れ去る。

第3期 宇宙チェス / Das kosmische Schachspiel

第15部 第二の島 / Die zweite Insel

主として火星に残った人類の協力を仰いで、ローダンはヴァルカン工廠で数年をかけ長距離遷移グライダー機関(LTG)を搭載した遠距離宇宙船《マゼラン》を建造。メメターに連れ去られた人々の運命を解き明かすため、リドゥーリの言語にいう「第二の島アンドルミダ」すなわちアンドロメダ銀河に飛行する。
長距離遷移の副作用で乗員たちの多くが錯乱する事件が発生。大破したLTG機関修復の資材を調達しつつ、テラナーはこの島宇宙の現状を知っていく。12人の〈島の王〉が、リドゥーリの末裔たるテティサーを補助種族として呵責なき支配体制を築き上げた〈アンドルミディア〉。パドラーやモドゥル人バール・ルン、恒星転送機でこの島宇宙に迷い込んだメハンドールたちとの邂逅を経て、やがてコンタクトした島の王の頂点ファクターI、ミロナ・テティンことアナテマ・ディ・カルデラー、そして現在はその側近にして恋人であるアルコン人アトラン。彼らはいま、〈アンドロス〉の指導のもと、異宇宙からの侵略者に対する戦争の準備を整えている最中だった。
〈アンドロス〉は、〈それ〉がソルのカズマの影響下で生まれたように、カズマをもつ恒星ハリトの惑星で誕生した。ある意味、姉妹ともいえる2体の超知性体だが、〈宇宙チェス〉においては対立する指し手である。〈それ〉がカズマと、ソル=ハリト間に広がる〈大断裂〉グレート・ラプチャーを閉じようとするのに対し、〈アンドロス〉はその危険性からむしろ両者を安定させようとしているという。
惑星マルティドンでの会談は破壊工作のため中断。混乱のなかテュイレは行方不明となり、緊急脱出した《マゼラン》は追われる身となる。

第16部 ミロナ / Mirona

アトランがひそかに送信したデータから、ローダンはミロナ・テティンの過去と、精神集合体〈それ〉と〈アンドロス〉の間で続く〈宇宙チェス〉についての背景を知る。故郷を追われ、疫病で人口を減じて諦観に憑かれたリドゥーリに飽き足らず、植民がおこなわれていたアンドルミダに活路をもとめたアナテマ・ディ・カルデラーは、〈アンドロス〉の支援をうけ、紆余曲折はあったものの、島の王によるアンドルミディア体制を築き上げた。いつか故地を奪還するために天にも等しい高位へとのぼる――“ミ・ロナ・テト・イン ” という新たな名は、その誓いだった。
また、そのためならば、それぞれの形で我が子アガイオルの死に関与している ローダンやアトランとも、恨みを呑み込み手を結ぶしたたかさを持った女傑の半生はテラナーを圧倒する。一方でアガイオルの父であるファクターII、トリナル・モラトは執拗にローダンを追い詰めるが、自らの放った暗殺者の手にかかって果てる。
逃走の途上、ローダンは〈大断裂〉の向こうからの侵略者とされる〈クレア〉と接触。その際にテラナーが伝えた“友情”の概念が互いの誤解を解く礎石となる。クレアたちの側も、こちらの宇宙から侵攻を受けたと認識しており、互いの宇宙間で交換された物質が相手の宇宙においては災害を招いている事実が判明したことで致命的な交戦は回避される。また、〈アンドロス〉の情報に虚偽が混在していたことを憂慮したミロナ・テティンが銀河系との抗争を一時棚上げすることを提案。《マゼラン》は恒星転送機で帰還する。
島の王の委託でクレア宇宙クレアヴァース――この宇宙とは時間の流れが異なる――の調査にあたっていたハルト人イホ・トロトが《マゼラン》に同行する。かつて〈同盟〉に囚われていた際にローダノスと面識があったため、テラナーには好意的である。他方、〈ファクター・ゼロ〉となったアトランと、重傷で動けないジョン・マーシャルは大使としてアンドロメダに残留する。
一方、衛星ルナでは、2044年にポスビ船の墜落してできたクレーターに未知物質が集積し、〈ネーサン〉を名乗る意識体が誕生していた。

第17部 ブルー人 / Die Blues

転送機の誤作動か、予定された銀河系中枢部ではなくイーストサイドに物質化した《マゼラン》は、この星域で抗争をくりかえすブルー人(アザラク)に侵入者として追われることになる。その途上、クレアヴァースからの渡来物質クレールが異常に集中した巨大惑星モロクの衛星イムポスで、110億のテラナーを乗せて姿を消したメメターの箱船《アヴェダナ=ナウ》が難破しているのを発見する。調査の際、イムポス地下にメメターの施設が存在することが発覚。かつてメメターは、クレールの集積から生まれたスーパーヘテロダイン存在(スープラヘト)をイムポスを始めとする42の衛星システムで封印したという。だが、箱船の墜落の際、地下施設の一部が破損したためシステムが停止。スープラヘトは覚醒しつつあった。
《マゼラン》の船医ジュリアン・ティフラーによってアザラクたちの不治の業病〈黄色の病〉の治療法が発見されたため、彼らの協力も得て、墜落地点からの箱船の再離床は成功。ローダンと、時空を超える冒険を経て合流したテュイレは、活性装置のエネルギーを用いてメメターの施設を再起動し、スープラヘトを再封印する。
箱船に同乗していたメメターたちによって、〈メテオラ〉との再融合から安定した恒星ソルの放射線は再調整され、テラの再入植が開始された。

第18部 〈同盟〉 / Die Allianz

西暦2058年、ルナにローリン――アトランの語った“スコルゴン”――が侵入した事件から〈同盟〉との戦いが近いことを想定したローダンは、かつてトロトが囚われていた〈同盟〉の要塞惑星トラン=ガルへ潜入。怒れるトロトは要塞をがれきの山と変えるが、すでにアルコン歴代皇帝のクローンを使った実験は失敗とみなされ、そこを管理していた種族ごと廃棄される寸前だった。
ソル系では太陽の活動が激化し、惑星ヴァルカンが破壊される。ネーサンは人類とのコンタクトを拒絶し、テラ連邦首脳部には破壊すべきとの意見もあったが、ただ2人、トムとファロクの少年たちだけがネーサン内部への立ち入りを許される。人類との協力関係が築けるか否か、月面知性体はさまざまな仮想世界を経めぐる試練を少年たちに課す。
ローリンの拠点に潜入したローダン、テュイレらは捕らえられ、尋問を受けるが、逆にローリン、自称するところのナイール種族がクレアヴァースの出身であること、この宇宙のバルジ構造をなすクレアヴァースが縮小しつづけており、200万年後には滅亡を運命づけられていることを知る。わずか12残された銀河中最大のメルカータには、恒星1200億個分の質量を持つ巨大ブラックホールがあり、死にゆく宇宙を脱出するためクレアは次元の裂け目を開こうとしていた。かつてナイールは運命論的な立場からこれを冒涜とみなしクレアと戦端を開いたが、結果として現在あるようなカズマと〈大断裂〉を生み出してしまったという。
ソル系に〈同盟〉の派遣したマークス艦隊が襲来。だが、トムとファロクの最終試練に連動してネーサンから射出されたシュヴァルツシルト榴散弾がこれを撃退する。
ローダン、トロトらは〈同盟〉拠点に潜入し、謎の〈隠者〉にも助けられて、転移ネクサスをクレアヴァースへの入口に変成する巨大装置シンクロファークを大破させる。しかし〈けだもの〉の艦隊がソル系に侵攻。現在テラには、ネーサンがあるルナにひとつ、カイパーベルトの準惑星セドナにひとつ、2つの転移ネクサスが存在した。カズマとセドナの転移ネクサスから強力なエネルギーが流入し、次元トンネルを形成。セドナ近傍に深紅の球体――〈アンドロス〉が顕現しようとする。
ローダンはアンドロメダからの急使が届けたシンボフレックスパートナーを装着して、宿敵ともいえる〈けだもの〉マスメル・トロンクと対決する。あやういところで共生体の発したパニック・インパルスは、ネーサンによって増幅され、トロンクのみならず、セドナ近辺の〈けだもの〉艦隊も無力化する。
突然あらわれたナイールの艦隊が〈アンドロス〉に対し砲火を開く。顕現しかけた深紅の球体は消滅し、〈けだもの〉の艦隊も撤退。テラナーはシンクロファークを完全に破壊する。

第19部 けだもの / Die Bestien

〈それ〉の主張によれば、2体の超知性体はアインシュタイン宇宙とクレアヴァース双方の影響をうけて誕生し、同時にどちらの宇宙も故郷たりえない、一種の病気をかかえている。〈それ〉にとっては不快感程度のものだが、〈アンドロス〉にとっては地獄の苦痛であるらしい。それゆえ、〈大断裂〉を安定化させるのではなく、「破壊する」――銀河系もアンドロメダも無事にはすまない――ことで生じる渾沌のなかでなら、その痛苦を感じずにすむ、と考えているのだという。
ソル系にポスビの船団があらわれる。かつてポスビの間に蔓延した“疫病”を駆逐したプログラムのプロトタイプを搭載したバクマーツ・モナデが、現在ネーサンのスポークスマンとしてルナに滞在していることから“巡礼”に訪れたのだという。
一方、ローダンの発信したおぼえのない救難信号に応じたとして、アトランとミロナ・テティンがソル系に来訪。発信源をたどると、火星のリドゥーリ遺跡にいたる。最後のリドゥーリであるアヴァンドリナ・ディ・カルデラーが妹を呼んだのだ。死にゆくリドゥーリは細胞活性装置をトーラに譲渡し、ローダンに〈宇宙チェス〉を決する秘策を託す。太古メメターが築いた銀河系とアンドロメダを結ぶ恒星転送機の〈星の回廊〉は、実は〈大断裂〉をふさぐために建設されたもの。ただし、それを起動する資格をもつ〈時の担い手〉は、ほぼ確実に生還できないという。
ローダンが島の王たちの協力を得て必要な恒星転送機の再起動をめざす一方、ソル系ではネーサンが開発した兵器によって〈アンドロス〉の再顕現を阻止する作業がつづく。また、テラにあらわれた〈それ〉の化身は、トーラらにテュイレ・シタレーの真の素性を語る。最後のトリマン人テュイレ・マギラが、死して〈大断裂〉を超えた一ナイールの精神を宿した存在。〈同盟〉によってその故郷は破壊され、旅路で得たアルコン人の友デムキン・ダ・アウローラも失われた。いまの彼は〈アウロール〉テュイレ・シタレー……彼もまた、〈時の担い手〉である。
《マゼラン》で恒星転送機を抜けてアンドロメダ銀河ハリト星系へいたったローダンとテュイレ。〈大断裂〉のこちらにローダンが、クレアヴァース側にテュイレが陣取る。〈アンドロス〉が完成させたシンクロファークは、しかし宇宙の裂け目から新たなスープラヘトを呼び出すことはなかった。代わりにあらわれたのはクレアの箱船――崩れたバランスは〈アンドロス〉をクレアヴァースへひきずりこむ。ほぼ同時に起動された〈星の回廊〉の作用で〈大断裂〉は閉じられ、〈アンドロス〉は死にゆく宇宙と命運をともにする。ただし、テュイレに帰還の道はなく、ローダンもあやういところを、駆けつけたアトランによって救出される。クレアの脱出ハビタットは宇宙のいずこかへ去っていった。
〈大断裂〉が封鎖されたため、やがて多くのハラトン・テクノロジーが機能を喪失していく。

第4期

第20部 太陽系連邦 / Die Solare Union

西暦2088年。〈アンドロス〉との闘いから30年を経て、複数の星系に入植地を築いたテラナーは〈太陽系連邦〉を創設している。また、連邦に属さず、中国ブロックが建設した植民星系もあるが、最近連絡が途絶しているという。
植民惑星オリンプのあるカストル星系に、オプロン人メルコシュがあらわれる。ソルから2万光年離れたアハイクス星系の生まれという“ガラスの男”は、〈オムニ・コンパレータ〉の命をうけ、平和的コンタクトのために訪れたという。
一方、〈第三課〉のエージェントとなったトムとファロクは、数年前、汚職の発覚とともに逃亡した、もと植民惑星プロフォス代表イラティオ・ホンドロを追跡する。ホンドロは現在、複数の星系にわたる、ハイパー・クリスタルに関わる陰謀を企んでいるらしかった。ふたりに協力するジェシカ・テケナーは、ホンドロの謎の能力でそのあやつり人形となった弟ロナルドの足跡をたどっていた……。

◆◆◆

……以上が、およそ200巻のストーリーの概略である。はしょったり、読み落としたり、読み違えたりした部分もあるだろうが、そのへんはご勘弁を。

その他

ローダンNEO雑感

似たような名前の似たような、似たような名前の全然ちがう、名前がちがうけどどこかで見たような、そしてまったく新規の設定・登場人物が入り乱れて、個人的には混乱することはなはだしい。レムール/リドゥーリの設定とか、ブルー人の現地名が異なるとか、そこまで変えるなら、まったく新規の設定でいけばいいじゃない、というと、「そしたら“ローダン”じゃなくなるし(by マガン)」……あー、まあ、そうかもねえ(笑)
ただ、例えばトンベ・グムナがNEOでは破壊工作者で、アトランに捕縛される前に自殺してしまうとか、そんなひどい扱いされるくらいなら出さなくていいよ、とわたしなんか思うのだが如何。

また、NEOのペリー・ローダンは、旧ヘフト版のオリジナル・ローダンに比して、そのヒューマニストの側面がかなり強調されているように見受けられる。例えば、ヴェガ星系に侵攻したトプシダーを、彼は“撃退”しない。和を結ぶ――のはけっこうだが、フェロン人もトプシダーもよく了承したものだと思う。
さらに一例として、〈アンドロス〉のソル系襲来に際して、無力化した〈けだもの〉マスメル・トロンクを、彼は“抹殺”しない。温情が通じる相手ならそれもいいが、結果、後で対決したイホ・トロトはあやうく死ぬところであった。優柔不断とまではいわないが、ヒューマニズムも時と場所を選んでほしいものだ。
……その分、NEOのアトランは外道度何割か増しな気もする(笑)

以前書いた、ヘフト版が数十年かけたところを一気に進もうとして、なんかチープな感じになっているような……という感覚は、いまも変わらない。個人的に旧ローダンはスペースオペラなんだけど(このへん、多々異論はありそうだが)。スペオペというとそれこそチープ感ただようものだが、NEOはスペオペではない。けど、なんだかチープ。ただ、NEOはNEOなりの設定を積み重ねて、独自の宇宙を作り出していることはまちがいない。

でもさあ、8年ってーとヘフト版だと作中1500年が経過し、そろそろ大群サイクルの背中が見えてくるくらいの期間で、いまだ人類の統一国家さえ果たしえないのは……ある意味リアルっちゃリアルなんだけど。人類統合は夢か。理想をしめすのもつらいねえ >ローダンNEO

ローダンNEOこぼれ話

旗艦の伝統

第2期からローダンの旗艦(プロテクターの御用艦)になる直径1000メートルのウルトラ戦艦だが、ヴァルカンで発見後改装され、就航した時点では《クレスト》と命名される。ヘフト版伝統の旗艦名だけど、まだ当人生きてるんだが……と思っていたら。アアシュラの意識にあやつられる形でクーデターを起こし、アルコン皇帝になったあげく、テラに侵攻。そのせいか、13部になった時点で《レスリー・パウンダー》に改名された(笑) パウンダーじいさん、まだ生きててもおかしくないけど……。
で、第20部開始ちょい前に就役した新御用艦の名前は《クレストII》。どうやら、汚名挽回は果たせたらしい。

フュージョン(笑)

NEOオリジナル・キャラの代表格、シド・ゴンザレスとスー・ミラフィオーレ。
テレポーターだったシドはジェネシス危機で能力がテレキネシスに変更。そして、第10部での作戦中に重傷を負って死亡する……が、第13部終盤で、やはりミュータントのホセ・モンカーダに憑依する形で復活(笑)
NEOには多重人間コンセプトという概念はないが、存在としてはこれに近い。この憑依先がスーちゃんに変わり、アンドロメダでの作戦中に完全に融合、“スド”という新しい人格になる。バール・ルン曰く、“メンタル・アマルガム”。なんてトランスジェンダー。
メタバイオ組替能力者として、オリジナルにおけるイルミナ・ポジのスーちゃん、後にスドは、NEOでは医者であるジュリアン・ティフラーの助手としてポジションを確保。《マゼラン》ではメド・ステーション、太陽系に帰ればミマスが常駐場所である。

同盟の大立て者

第13部でいきなり登場し、いろいろやらかしたすえにソル系を去っていった種族シタラク。
実は〈同盟〉でもかなり重要な種族で、マークスや〈けだもの〉も彼らが開発したものだという。〈それ〉曰く、〈アンドロス〉の最も重要な補助種族、らしい。
そのわりに、やけにあっさり敗退したようだし、第19部には、〈けだもの〉マスメル・トロンクと対決して重傷を負ったイホ・トロトを助けるシタラクなんかも登場する。
↓の記事のとおりではあるが、NEOの登場人物の旗色を判別するのは実にむずかしい……。

闘争リンゲン〉と〈宇宙チェス〉

ふたつは同一のものだが、内実はまるで別のものでもある。
第1期で草案作家ボルシュが考案した〈闘争〉は、上述のとおり、ヒューマノイド種族と、〈同盟〉に結集した非ヒューマノイド種族とのあいだに連綿とつづく抗争だ。実際、〈摂政〉こと島の王レグナル=オルトンは、アルコンを〈同盟〉との闘いを決するための大兵器廠にせんとしていた。ただ、当時から〈同盟〉のために働くヒューマノイド種族〈黄金人〉とか出てくるあたりはご愛敬。
第2期になると、〈それ〉と〈アンドロス〉の抗争は〈闘争〉の流れのなかにあるとされる。ただし、島の王は当然〈アンドロス〉の指導のもとで発展しているわけで……〈同盟〉の惑星を脱出したトロトが島の王のもとで働いているとか、矛盾も多い。
それが第3期終盤になると、「〈闘争〉とか言ったな。あれはウソだw」状態。〈それ〉と〈アンドロス〉の間の〈宇宙チェス〉が主軸で、〈闘争〉という概念は〈アンドロス〉による欺瞞らしい。
草案が変われば当然設定も変わるものだが……まあ、いろいろと過去をふりきるために苦慮したと考えたい。

卵が先か〈けだもの〉が先か

ヘフト版においてはM-87で製造された〈けだもの〉の一派がレムール人の対抗兵器によって温和化したのがハルト人だが、NEOにおいてはハルト人の細胞から合成された生物兵器が〈けだもの〉だという。
ただし、この“兵器”、すこぶるつきで暴走しやすいため失敗作とみなされていたそうだが……どの時点で製造され、どんな形で保存されており、最後にわらわら出てきたのかは、ちょっと読み取れなかった。
〈アンドロス〉編でトロトを助けてくれる謎の〈隠者〉も、正体は、原因不明ながらアヴァンドリナさんに個人的に仕えている〈けだもの〉トロ・コンだったし……えーと、失敗作?w
あと、リドゥーリを故郷から追い出したのも、ひょっとしたらこいつらじゃなかったかもしれないしなあ(下記参照)。

諸般の事情により

リドゥーリがソル系を捨てた原因も、諸説ある。
第1期:〈けだもの〉の猛威の前に。
第2期:自身の重力兵器の暴走のため。
第3期:タアル・ウィルスによる死病を避けて。
……どれも確かに致命的かもだがw 161巻『ファクターI』においては、「タアル・ウィルスに対する対抗薬を開発することにも失敗し/マークスというけだものに惑星ティアムルをも破壊され」という表現が見られるので、もろもろの問題が同時多発的にリドゥーリを追い詰めた――と、日記には書いておこう(笑)

■Perrypedia:Perry Rhodan NEO
■Wikipedia:Perry Rhodan NEO

本日のお買い物

今朝、仕事が明けた帰途たちよった秋葉原で数冊の本を購入。

1冊は、ネット界隈でも話題になっている中国SF『三体』。U隣堂は品切れだったが、3省堂にはまだ在庫があった。
訳も大森さんだし、原書と英訳版を参照しつつみたいだし、クオリティは心配していない。問題は、わたしの腐った脳ミソで理解できる話かどうか……。

で、『三体』は2017年のラスヴィッツ国外部門受賞作なわけだが。

今年の同賞同部門受賞作品、Early Riserの邦訳が、実は先月末に出版されていたことを先般知った。
『雪降る夏空にきみと眠る』(上・下)……あら、なんだか素敵な邦題に。
こちらは3省堂で無事捕獲。いやー、近場の本屋だと、竹書房文庫ほとんど置いてなくって(笑)

竹書房は、ゼラズニィの『虚ろなる十月の夜に』みたいに、たまーに変なの(褒め言葉)があるからチェックしなきゃと思いつつ、思い切り見落としていた。
#あれ、今見たら、『虚ろな~』の訳者、森瀬さんか。

ラスヴィッツ賞の記事を、邦題に変更した。

そして、創元の『銀河核へ』も出てるのを横目で見つつ、もう1冊買ってきたのが……『聖女の魔力は万能です』コミック版3巻。えー、いいじゃん好きなんだもん(笑)

彗星の息子ミュトール

この世界には、もはや神々はいない。光の大神クウィルも、闇の主神ゲンラルも。
人々は、喜び、悲しみ、怒り、祝い……そして、呪うときに神の御名を唱えるが、それを聞き届けるものは、すでに存在しなかった。かれらは遠い昔に、この天地から去っていった。ただ、あまたの伝説と、光と闇の戦いだけを残して。

天秤は、光に闇に、かしぐかに見えても微妙な均衡をたもちつづける。そうして、時がその果てにたどりつき、双方が力尽きるまで、人も、魔も、互いと世界の生命力をけずりつつ、ひたすらに闘いつづける。それがここ、神に見捨てられた世界ヴァンゴル。

だが、伝説はわずかに灯る希望の光を告げる。世界が破滅に瀕したとき、彗星の姿で再臨するという〈光の使徒〉と、その祝福をうけた〈彗星の子ら〉の誕生を――。

ミュトールとは

ということで、今回のお題はVPMが80年代に出版した、ドイツじゃあ二番目のファンタジー・ヘフト・シリーズ〈ミュトール(Mythor)〉について少々。

同じくVPMから刊行されたドイツ初のファンタジー・ヘフト・シリーズ〈ドラゴン〉が55話で終了した後を受けて、1980年から85年にかけて週刊(後に隔週刊)で刊行された。作家の多くはローダン・シリーズと共通しており、執筆こそしなかったが初期草案はウィリアム・フォルツの手になる。
ヴルチェクが草案を離れたのは、フォルツの急死でローダン・シリーズの草案作家に就任したためと思われる。後をうけたギーザは〈悪夢の書〉をめぐる物語に決着をつけて200話から〈ヴァンゴルの騎士〉なる新展開を予定していたらしいが、当時はまだファンタジーを受け入れる土壌が熟成されておらず売上げは微妙だったようで、担当編集の事故死もあって、シリーズは192話で打ち切りとなった。
すでに執筆を終えていた193話は、作家陣のひとりが編者であるファンタジー・アンソロジーに掲載された後、現在ではKindle版に収録されている。

■草案作家:

  • ウィリアム・フォルツ(1~20)
  • エルンスト・ヴルチェク(21~181)
  • ホルスト・ホフマン&ハンス・クナイフェル(182・183)
  • ヴェルナー・クルト・ギーザ(184~199)

その世界

ミュトールの舞台は、剣と魔法の世界である。
当初物語られるゴルガン(Gorgan)は、周囲を壁に囲まれた世界。主たる居住者は人間であり、タイニア、ケールなど複数国家が並立。ところどころに〈恒点〉と呼ばれる、〈光の使徒〉の遺産が眠る地を7つ抱えている。いつか〈彗星の息子〉があらわれたとき、それら武具を携えて世を救うと言い伝えられる。

世界を囲む壁――〈影地帯〉は魔物の巣窟であり、つねに人間世界への侵攻をくわだてている。〈恒点〉のひとつである〈永遠の都〉ログガードはその防波堤として、強者たちの集うところとなっている。

物語が進むと、主人公ミュトールは思わぬ形でこの壁を突破し、世界の南半分ヴァンガ(Vanga)へと漂着する。こちらは人間世界ではあるが、アマゾネスと魔女たちが威勢を振るう女性上位の国だった。人々の崇拝は〈彗星の娘〉フローニャに向けられている。
実質的統治者は12名の〈魔の母〉で、それぞれが南極の〈魔女星〉から放射状に区切られた領地を治める。

やがてミュトールはこの世界ヴァンゴル(Vangor)が球体であり、なぜ現在の形となったのかを知り、この神に見捨てられた世界を待つ、光と闇の闘いのすえ荒れ果てた地となる未来を見せられる。それを防ぐためにも、光と闇の大戦〈アルメッドン〉に勝利しなければならないのだが……。

物語(サイクル)

ミュトールの物語は、大きく4つのサイクルに分けられる:

1 ゴルガン 1~51話

巨大な魔獣ヤールの背中に築かれた放浪都市で育てられた孤児ミュトール。
タイニアの王女ニアラとの出会いを発端に、自らが伝説の〈彗星の息子〉であると知らされた彼は、〈恒点〉をめぐり〈光の使徒の武具〉を集める冒険の旅に出る。
魔司祭たちにあやつられ闇の尖兵となりタイニアに侵攻した大国ケールの軍団長コエル・オマーンや、蛮族の若者ノトル、ニケリアの石男サダガル、“南から来た魔術師”ヴァンガード、同じく〈彗星の息子〉を称するルクソンなど、多くの人々と出会い、友としたミュトールは、ついにすべての武具を手にし、〈永遠の都〉ログガードにたどりつく。
悪魔アウブリウームとの決戦に勝利したミュトールは、逃げる悪魔ケルゾーンの船に乗り込んだまま、世界を囲む〈影地帯〉に突入する。船は転覆し、ミュトールは生き延びるためにすべての武具を脱ぎ去り流されていく……。

2 ヴァンガ 52~99話

ミュトールは〈影地帯〉のかなた、世界の南半分たるヴァンガに漂着する。そこはアマゾネスと魔女が支配する女たちの国だった。
〈彗星の娘〉フローニャを頂点に、12人の〈魔の母〉たちが統治するこの地で、ミュトールは自らと対になる存在に会うべく、世界の南極〈魔女星〉をめざす。だが、フローニャは、ミュトールとも因縁のある悪魔デデスに憑依され、昏睡状態にあった。結果生じた〈魔の母〉のあいだの権力争いにミュトールは巻き込まれていく。
ゴルガンではミュトールの友人たちがそれぞれの道を切り開いていく。ノトルは蛮族を結集し、魔司祭の支配するケールに進軍。おのが素性を知ったルクソンは大国シャラーダッドの正統王子として玉座奪還に挑む。
そして、最強のアマゾネス、ブーラとの決闘に勝利し、〈魔の母〉ゼームの野望をくじいたミュトールは、残る〈魔の母〉の評議会の勧告に従い、魔法の器〈ヘルメグゼ〉にフローニャとともに封印され、〈影地帯〉にうち捨てられる……。

3 影地帯 100話~139話

〈ヘルメグゼ〉の封印から、ブーラの助けで解き放たれたミュトールとフローニャは、かつて〈光の使徒〉によって人間界から駆逐された魔の生き物たちの世界から、わずかばかりの仲間たちとともに、脱出の道を探る。
女性上位のヴァンガで、ただひとり名の残る男――〈かの男〉ケーリルの伝承によれば、その最期は〈飛行都市カルルメン〉で〈影地帯〉に没したという。かすかな希望を頼りに、〈影地帯〉の底にまで及んだ道のはてで《カルルメン》を解放したミュトールは、はじめて〈アルメッドン〉の名を知る。
光と闇の大戦〈アルメッドン〉の名は、ゴルガンで戦うミュトールの友人たちの耳にも届いていた。突如西方から侵攻してきたザケト帝国は、予言に従い、光の軍勢を統一すると叫ぶ。〈光の使徒〉の再臨は近い!
〈闇の王〉ダルコンを打倒し、ゴルガンへと脱出したミュトール。彼を旗印に人々が集う。だが、闇の軍勢も新たな〈闇の軍団長〉ザタンのもとへ集結し、ゴルガン各地に〈悪魔の門〉が開き、機先を制した。そのとき、ようやく、空に輝く彗星があらわれて――。
早すぎた〈アルメッドン〉が闇の勝利に終わるのを防ぐため、〈光の使徒〉は世界に混沌を招来する。大地が裂け、火が、水が、嵐が荒れ狂うなか、ミュトールはその声を聞いた。
彗星の息子よ、新たな時代の黎明に、より強き光を導くものとなれ……。

4 悪夢の書 140~192(199)話

変わり果てた世界ヴァンゴルで、記憶を失いめざめたミュトール。〈影地帯〉の名残をなす〈恐怖のゾーン〉を支配する〈渾沌の主人〉カラウンを倒し、ドラゴンランドではザタンの侵攻を撃退する過程で、ようやく記憶をとりもどした彼は、〈悪夢の書〉なる新たな謎に直面する。そのかけらだけで、〈モロク〉や〈悪夢の商人〉など、おそるべき災いを招くもの。
ゾーン帝国の地で、失われた〈光の使徒の武具〉の手がかりをつかんだミュトールだが、その前には新たな敵対勢力が次々とたちはだかる。ザタン率いる闇の軍団。〈戦士ゴルガン〉を信奉する勢力。そして、ザタンと同様、〈悪夢の書〉の断章を欲する〈三恐怖〉トリルム。
第一の書ラオナクムはトリルムに奪われ、第二の書ラダマクラはザタンの手にわたる。しかも、ラダマクラの番人は〈戦士ゴルガン〉その人であったのだ。かつて、光の神々によって創造された超人。だが、同じ超人たる〈魔女ヴァンガ〉と仲違いして闇の伸張を招いた罰として、半ば封印され、守護者の任を負わされていたのだ。いま、彼はおのが名を冠された世界に帰還した――。
ヴァンガでも〈魔女ヴァンガ〉が復活していた。フローニャ――現在は〈魔の母〉ゾーニャ――の産み落とした、ミュトールとの娘〈光の子〉に、第三の書オクノスタ守護の任を譲り渡して。ゴルガンもヴァンガも、アルメッドンなどどうでもよかった。遺恨のある超人同士、決着をつけることしか考えていない。
第四の書イリディストラの眠るケールの地で、ミュトール、トリルム、そしてヴァンガへの対抗手段を求めるゴルガンの三つ巴の闘いがくりひろげられるが、超戦士の持つ〈光の使徒の法珠〉ドラゴマエと、悪夢の書が封印された闇の環状列石ストン=ニル=ルメン、トリルムの手中にしたイリディストラが共鳴し、互いに互いを破壊し、魔力の破片の流星雨〈星落とし〉にいたる。アルメッドンの災禍から復興しきれぬヴァンゴルは、また大いなる痛手を負ったのだ……。

残るは最大の魔力を秘めた第五の書パノメスシオ。だが、唯一とりもどした〈光の使徒の武具〉、〈正義の兜〉に宿る歴代所有者の記憶がミュトールに警告する。パノメスシオは、数千年もの昔、すでに何者かによって奪取されている、と――。

ここで、〈彗星の息子〉ミュトールの物語はとぎれている。

ミュトールこぼれ話

〈恒点〉

  • キュトールの滝
  • 〈光の城〉
  • アルタールの雲界
  • 魔法の谷
  • 生命の樹
  • ティローンの巨像
  • 〈光の柱〉

〈恒点〉は7ヵ所あるが、実はすべてに〈光の使徒の武具〉があるわけではない。
最初の滝には、他の所在地等を教えてくれる、お告げの仙女様しかいないw
魔法の谷には、〈光の使徒の三幻獣〉である灰色狼、雪鷹、一角獣が暮らしてる。
弓と箙はセットで置いてある。当然か。
これらの〈恒点〉を「正しい順序で」めぐることが、世界を知ることに通じる、らしい。
なお、雲界にある〈正義の兜〉だが、これについては、“歴代所有者”の記憶が宿っている、とされるので、一時期、あるいは複数回にわたって持ち出されているはずである。

〈光の使徒の武具〉:

  • 硝子の剣アルトン
  • 正義の兜
  • 星の弓
  • 月の箙
  • 太陽の盾
  • 法珠ドラゴマエ

ミュトールはその5つまでを集めることに成功するが、ログガードの〈光の柱〉が〈彗星の息子〉に与えるという「不死」だけは得ることができなかった。ログガードの賢人たちは多くの候補者を用意したが、ミュトール到着の直前、別の男が〈彗星の息子〉に認定され、5つの武具もすべて彼に与えられたのだ。しかし、〈光の柱〉に入って〈法珠〉ドラゴマエを持ち帰った彼は、見る見るうちに老いさらばえ、重くて身につけていられない、と武具をミュトールに返却して倒れた。〈光の柱〉はそのまま消滅した。

悪夢の騎士団:

わりとシリーズ初期から登場する、秩序を護るために戦う組織。
ケールの魔司祭たちに疑念を抱いたコエル・オマーンは、紆余曲折あって騎士団に身を投じることになるが、本来、この組織が黒魔法を集めて封印するためのものだったことはすでに伝承から失われていたようだ。それら黒魔法のかたまりが〈悪夢の書〉である。

コエル・オマーン:

シリーズ序盤から登場する、ケールの騎士。タイニア侵攻軍を率いる軍団長のひとりでありながら、母国を支配する魔司祭たちに疑念を抱き、ミュトールと友誼を結ぶ。アルメッドンの際には、自らが一介の戦士にすぎないと自覚しているミュトールによって、知勇兼備する彼こそが〈光の軍団長〉にふさわしいと推挙されるほどの男である。
だが、変貌したアルメッドン後の世界においては、〈戦士ゴルガン〉信奉者の領袖としてミュトールと対立する立場。〈光の軍団長〉の証として預けられた〈法珠〉ドラゴマエを所持する。

■Wikipedia:Mythor
■MYRA:Mythor-Serie (Mythorの世界観を下敷きにしたTRPGのページ)
■Zauberspiegel:Mythor – Die zweite deutsche Fantasy-Serie

さらば仮面のブログ/転居ご挨拶

……というタイトルでココログ側に移管申請の記事を投稿したのが6月8日の19:00のこと。
あれよあれよという間に、もう手続き完了だよ! ぜんぜん準備間に合ってないよ!www

というわけで、諸々調整中である。
大宇宙より広いこころで、生暖かく見守っていただきたいm(__)m

6/21追記:どうにか過去15年分の記事をひととおり確認した。転居完了である。
 あとは古い記事の一部に、ハヤカワ版ないし原文を追加する予定。

*** 以下、告知記事の再録 ***

2003年12月にスタートしたniftyのblogサービス。当時公開していたサイト〈無限架橋〉のニュース(備忘録)扱いで翌年7月から利用をはじめた。
その後、「最近、翻訳ひどいんだよ~」「誤訳.comとかやって公開したいくらい」「……あれ。ドメイン、取れるね」「取っちゃえ。えいっ」――という経緯で(笑)、2005年3月からツッコミブログ「誤訳天国」を並行して開始。まあ勢いだけだったので、ふたつ同時には持て余し、後に統合してしまったわけだが。

義務感だけではモチベが維持できないので、アーカイヴを見ていただけば一目瞭然、1年以上更新のない時期がボチボチ存在する。
「跡地」にしたのはいつ頃だろうか。まあだいたい、つけたい文句はつけ終わったので、そのまま土管や電信柱が放置された空き地になってもいいや、くらいのつもりだった。
わざわざ移転する必要もないのだけど……たまたま配属先が変わって、前よりは多少時間の余裕ができたのと、あとはこの3月の大規模リニューアル以降のアレコレとか、思うところもあったので。

移管のスケジュールはいまのとこ未定。
復活したエクスポート機能でログをDLして、移行先のサーバーにかませて、再現できないレイアウトの修正とか、いらないタグの削除とか、リンク切れの確認とか、ちまちまいじっているところである。
ひょっとして、公開間に合わないやもしれぬので、ココログ本来のURLを以下に記しておく。まあ、まだniftyやめるわけじゃないしね……。

■URL: http://psytoh.txt-nifty.com/goyaku/ (削除済み)

以下余談:タイトルは、ご想像通りハヤカワ版近刊から。ローダン読んでない編集さんがつけるとこーなるのかね……。アラスカ、この時点でもう仮面つけてないし、わりとあっさり再登場するんだけど(笑)

不死なる者ども

Die Unsterblichen ……という詩がある。ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)によるものだが、調べた限り、邦訳の出ている詩集には収録されていない模様。
突然ナニを言い出すのかとお思いだろうが、これもサルベージの一環なわけで(笑)

近々ハヤカワ版が到達するクロノフォシル・サイクル、1250話「時空エンジニア」(ツィークラー)冒頭に引用されている。で、原書を漁ってようやくみつけたわけだが……あれ、抜粋じゃねコレ、という。使用されているのは、後段の一部(中抜け)。
入手・試訳したのはいつ頃だったか……丸善が改装のため丸の内オアゾへ移転して、洋書売場ドイツ語コーナーがまだ広かったはずだから、2005~6年あたりかなあ。まあ、それなりに探したりしたシロモノなので、せっかくだから以下に全文を。

ちなみに現在は、ネットで検索かければわりと簡単に原文がヒットする。たぶん著作権のからみもありそうだけど、進歩ってある意味残酷ね……。

原文:
Immer wieder aus der Erde Tälern
Dampft zu uns empor des Lebens Drang:
Wilde Not, berauschter Überschwang,
Blutiger Rauch von tausend Henkersmählern,
Krampf der Lust, Begierde ohne Ende,
Mörderhände, Wuchererhände, Beterhände.
Angst- und lustgepeitschter Menschenschwarm
Dunstet schw¨l und faulig, roh und warm,
Atmet Seligkeit und wilde Brünste,
Frißt sich selbst und speit sich wieder aus,
Brütet Kriege aus und holde Künste,
Schmückt mit Wahn das brennende Freudenhaus,
Schlingt und zehrt und hurt sich durch die grellen
Jahrmarktsfreuden seiner Kinderwelt,
Hebt für jeden neu sich aus den Wellen,
Wie sie jedem einst zu Kot zerfällt.

Wir dagegen haben uns gefunden
In des Äthers sterndurchglänztem Eis,
Kennen keine Tage, keine Stunden,
Sind nicht Mann noch Weib, nicht jung noch Greis.
Eure Sünden sind und eure Ängste,
Euer Mord und eure geilen Wonnen
Schauspiel uns gleich wie die kreisenden Sonnen,
Jeder einzige Tag ist uns der längste.
Still zu eurem zuckenden Leben nickend,
Still in die sich drehenden Sterne blickend,
Atmen wir des Weltraums Winter ein,
Sind befreundet mit dem Himmelsdrachen;
Kühl und wandellos ist unser ewiges Sein,
Kühl und sternhell unser ewiges Lachen.

試訳:
大地の渓谷より数多度
噴きあげるは生命の衝動:
荒ぶる苦悩、酔いしれる充溢
千もの刑吏の饗宴の血塗られし臭い
愉悦の発作、飽くことなき貪欲
殺人者の手、高利貸しの手、祈祷師の手
畏れと愉悦に鞭打たれし人の群れは
刺激的な腐臭を、生硬なぬくもりを放ち
祝福と猛き情火を呼吸し
己がその身を喰らい吐き
戦乱と愛しき芸術とを孵し
燃える娼家を狂気をもって味わい
嚥下し、咀嚼し、幼き日の
年の市のまばゆき歓びに弾みつつ
日々新たに波間より起き上がりたり
ありし日に土くれへと崩れ去りしごとく

しかるに我らは
星にきらめくエーテルの氷中にありて
日も知らず、時も知らず
男女の別なく、老若の差なく
汝らが罪も畏れも
汝らが殺戮も、汝らが無上の悦びも
我らにとりては巡る恒星に等しき観劇
日々これ何ら変わるところなし
静謐の中、汝らがせわしき生に頷きつ
静謐の中、巡る星々に目をこらしつ
我ら宇宙の冬を呼吸し
天の龍と戯れる
涼やかに不変なる我らが悠久の存在
涼やかに明星たる我らが久遠の哄笑