時間超越 -3- part2

うう……ぜんぜん進まん……。
どんどん細かいとこを切り捨ててるわけだが、それでも3章、3分割で終わるかどーか。
まあ、休みのときにガーーーッと入力すればいいんだが……それで休みツブすのもどーだかなぁ。

■159p

ハヤカワ版:
通常空間側の出入口も崩壊したようである。
原文:
Auch der Eingang zu ihnen war vom Zusammenbruch bedroht gewesen.

試訳:
(接続部への)入口も崩壊寸前である。

ここでいう「接続部」というのが次元トンネルであることはおわかりだろう。カリブソの超自我は現在ルーテにいて、そこで「(トンネルへの)入口」というのだから、通常空間側ではなく、次元バルーン側である。

ハヤカワ版:
 この奇妙な現象は、空間のあいだの空間にエネルギーの混沌が生じたために起きた。
原文:
Dieser unerklärliche Vorgang hatte bewirkt, daß es im Raum zwischen den Räumen zu einem energetischen Chaos gekommen war.

試訳:
 この原因不明の崩壊が、空間のはざまの空間にエネルギーの混沌をもたらした。

逐語訳すると、「この説明のつかない現象はもたらした、空間のはざまの空間でエネルギーの混沌にいたることを」。原因と結果が逆である。

■160p

ハヤカワ版:
いままで、もっと大きなミスがあったときも、あきらめたことはない。
原文:
Jetzt aufzugeben, wäre ein großer Fehler gewesen.

試訳:
いまあきらめることは、大いなる過ちであるはずだ。

ギャンブルで大ハマりしているときの人間の心理のようなものか(笑) 幸いカリブソの場合、ジャックポットをひいたようだが……。ちなみにこの文章は、過去完了ではなく接続法II式。

ハヤカワ版:
全滅した形跡がない以上、ほかに説明がつかなかった。
原文:
Eine andere Erklärung gab es nicht, wenn man nicht die Vernichtung der Fremden im Verlauf der Katastrophe zu akzeptieren bereit war.

試訳:
ほかに説明はつかない。カタストロフの渦中でテラナーが壊滅したことをうけいれるなら別だが。

後半を直訳すると、「もしカタストロフの過程で異人たちが壊滅したことをうけいれる用意がなければ」――うけいれれば、「ほかに説明はつく」のである。

■161p

ハヤカワ版:
 実際には、そうなった場合はこの時間の井戸を破壊するつもりである。それを人形に伝えないことに、うしろめたさを感じた。自分自身がこの人形を創造したのだから。
原文:
Er verriet nicht, daß er für diesen Fall die Vernichtung des Zeitbrunnens auf Derogwanien geplant hatte. Manchmal hatte er ein schlechtes Gewissen, wenn er die vielen von ihm geschaffenen Puppen sah.

試訳:
 その場合はデログヴァニエンの時間の井戸を破壊する計画であることは話さない。自分が創造した大量の人形を見ると、ときおり、良心のうずきをおぼえるのだ。

schlechtes Gewissen は翻訳が難しい。なにせ、ドイツ語圏の掲示板で、「schlechtes Gewissen ってどんな意味?」というスレッドをみつけてしまったくらい(笑) うしろめたさ、やましさ、良心の呵責、罪悪感……気がめいる、不安になる(このへん、英訳から孫引き)とかいうケースもあるようだ。カリブソが大群の建造、生命の播種等にかかわっていることを考えると、生命ならざる生命をつくってしまった罪悪感ととるのが一番いいかもしれない。ただ、そうすると次の文章とのつながりがいまいち……うーん。ヤな気持ちになる、ってわけにもいかんしなぁ。

ハヤカワ版:
 だが、すべてを失ってこの惑星を去るよりは、数段いい。
原文:
Es war besser, wenn sie keine Gelegenheit bekommen, Derogwanien zu verlassen.

試訳:
人形たちには、デログヴァニエンを離れる機会のないほうがよろしい。

あまり人目に触れさせたくないのか、あとで出てくるような暴走をおそれたのか。惑星を去らない方がいいのは sie =人形たちである。

ハヤカワ版:
次に意識ある夢にはいったときが、見失ったシュプールを再発見する、唯一のチャンスになるはずだから。
原文:
denn je eher er den nächsten bewußten Traum einleiten konnte, desto größer war seine Chance, die verlorene Spur wiederzufinden.

試訳:
次に意識ある夢にはいるのが早いほど、見失ったシュプールを再発見するチャンスが大きくなるのだから。

je(比較級), desto(比較級)で、「~なほど…」。要するに、時間がたてばたつほど、足跡は消えていくものなのだ。ましては現場はどしゃぶりみたいだし(笑)
あえて「夢にはいるのが遅れるほど、手がかりを再発見するチャンスが小さくなる」と逆に訳した方が、緊迫感は出るかもしれない。……ハヤカワ版はその段階すっとばして遠くまでいっちゃったぽい。これは、まあ、わたしの考える「超訳」の範疇ではあるが。

ハヤカワ版:
 アラスカ・シェーデレーアは男女乗員の唖然とした表情を観察していた。人々はこの事態を、《ソル》の安全を脅かすものとは考えていないようだ……あるいは、考えたくないのか。全員、闇のスペシャリストは信頼できる同盟者だと考えている。だから、その知識や技能は、かならず人類に役だつものと思っているのだろう。
 それで、こうした状況にもかかわらず、人々は冷静に行動しているのだ。
 だが、アラスカにいわせると、現実から目をそむけているとしか思えない。
原文:
Die Betroffenheit in den Gesichtern der Männer und Frauen ringsum machte Alaska klar, wie wenig man mit einer Aktion der Spezialisten der Nacht gerechnet hatte, die sich auch bei einer wohlwollenden Betrachtung nur als Angriff auf die Sicherheit des Schiffes interpretieren ließ. Man hatte sich bereits darauf eingestellt, daß die Dimensionauten zuverlässige Verbündete waren, die ihr Wissenn und Können ausschließlich in den Dienst der Menschen stellten.
Dabei es nur logisch, daß eine solche Gruppe auch eigene Interessen verfolgte, ungeachtet der von den Menschen als feststehend angenommenen Gegebenhaiten.
Wie blind wir doch waren! dachte Alaska.

試訳:
 周囲の男女の唖然とした表情を見れば、どう贔屓目に見ても船の安全に対する攻撃としか思えない闇のスペシャリストの行動を、予想だにしていなかったことが、アラスカにもわかる。人々はすでに、次元航法士たちを信頼に足る同盟者、その知識と技能は最終的に人類のためになるものだと考えていたのだ。
 とはいえ、論理的に考えれば、そうしたグループとて独自の利益を追求し、人類がゆるがぬものとうけとめる事実を顧慮しないことは充分ありえた。
 われわれ、なんと盲目だったことか! アラスカは思った。

wohlwollend は「好意的」。einstellen auf で「~的な立場に立つ、~を標準とする」。ただし、現在完了形なので、過去そうしてきた、という表現。艦内に無断でブラックホール作られて、「ああ、あれ、オレたちのためにしてくれてるんだ」とか考えるやつがいたらどうかしてるっしょ。
次の段落は「そいつらだって人類の固定観念無視して利益追求すると考える方が論理的」。
盲目……はコードにひっかかるのかな。まあ、それ以前に、目をそむけてる場所がちがってるけどね、ハヤカワ版だと。

■162p

ハヤカワ版:
「このような質量が船内にあること自体が、非常に危険です!」
原文:
“Es wäre viel zu riskant, mit einer solchen Masse an Bord etwas zu unternehmen.”

試訳:
「こんな質量を載せたまま何かをしようとすること自体が、あまりに危険です」

なにやっても危険なのはわかるが。

ハヤカワ版:
「超光速飛行を試みてはいけない!」
原文:
“Es ist überhaupt kein Überlichtflug möglich”,

試訳:
「そもそも超光速飛行ができません」

いちいち言ってる内容が微妙に異なるのは、なんでかね?

ハヤカワ版:
「もう遅すぎる」と、チーフが応じる。「貯蔵室にこもった時点で、オルウに説明をもとめるべきだった。そうすれば、ブラックホールを排除できたかもしれないが……」
原文:
“Vielleicht später”, entgegnete Rhodan. “Sobald wir den Lagerraum abgesperrt haben, werde ich mit Olw zu verhandeln versuchen. Ich werde ihn um Erklärung bitten und ihn auffordern, das Black Hole zu entfernen.”

試訳:
「それはまた後だ」と、ローダンが応じる。「倉庫を封鎖ししだい、わたしがオルウを交渉を試みる。説明をもとめ、ブラックホールの除去を要請しよう」

ミュータントは、ひょっとして交渉が決裂したら、あ・と・で(はあと)
あいかわらず、時制を読む気がないね……。もはや脳内翻訳だのぅ。

ハヤカワ版:
 マスクの男はかぶりを振った。もし貯蔵室を封鎖しても、状況はほとんど変わらなかっただろう。チーフもそれはわかっているはずだ。心理学的計測手段は《ソル》乗員が信じているほど精密ではない。
原文:
Alaska bezweifelte, daß Absperrung des Lagerraums überhaupt möglich war. Wahrscheinlich glaubte auch Rhodan nicht an den Erfolg einer solchen Aktion. Die Maßnahmen wurden aus psychologischen Gründen ergriffen. Die Besatzung der SOL sollte glauben, daß man in der Zentrale Herr der Situation war.

試訳:
 倉庫の封鎖が可能か否か、アラスカは懐疑的だ。おそらくはローダンもそうした作戦で成果があがるとは思っていまい。対策は心理学的見地からとられたもの。《ソル》乗員に、司令室の人々が事態をコントロールしていると信じさせるためなのだ。(改行)

とりあえず、対策をうったふりで(以下、次の項へ)

ハヤカワ版:
 そこで、ローダンは時間を節約した。
 闇のスペシャリストがなにを意図しているのか、そのまま見守ったのである。
原文:
Rhodan arbeitete offensihtlich auf Zeitgewinn.
Zunächst einmal mußten die Verantwortlichen herausfinden, was die Spezialisten der Nacht vorhatten.

試訳:
 ローダンは明らかに時間稼ぎをしている。
 司令室の幹部たちも、まずは闇のスペシャリストがなにを意図しているのかを探りだす必要があった。

意図を探りだす必要がある→時間がかかる→対策をうったふり→信じた乗員たちはひと安心。
訳文だと、あまりに無責任……つーか、計測手段って、なにー?

■163p

ハヤカワ版:
封鎖処置のためだろうか? アラスカにはそうは思えなかったが。
原文:
Alaska war überzeugt davon, daß sie die Absperrungsmaßnahmen registriert hatten, aber das schien ihnen nichts auszumachen,

試訳:
かれらが封鎖処置を認識したのをアラスカは確信していたが、それもどうでもいいことらしかった。

んー。誤訳、じゃないよね。ややはしょりすぎな気もするが。

■165p

ハヤカワ版:
 もちろん、かれらを行かせるのも、制止するのもかんたんである。
原文:
Es wäre natürlich einfach gewesen, gegen die zwölf Zgmahkonen vorzugehen und sie auszuschalten.

試訳:
 もちろん、ツグマーコン人十二名を攻撃し、排除するというのは単純明快だ。

動詞 vorgehen に gehen(行く)が入っているからといって、「行かせる」と訳すのはあまりにお粗末。vorgehen gegen … で「~に立ち向かう、攻撃する」。ausschalten「スイッチを切る」は、以前このブログで書いたとおり、「抹殺する、始末する」の意。

あとは、実際に対策が講じられ、「始末」することが不可能と判明するのはもうちょい後のことなので、末尾は訳文のまま、「攻撃して排除するのはかんたんである。」の方が素直かもしれない。そっちのが、次の文章ともつながりがいいしなあ。

■166p

ハヤカワ版:
 カリブソはまた“意識ある夢”にはいる前に、ある程度の準備をととのえた。経験から、超自我が空間のあいだの空間に到達した瞬間に、混沌とした状況を思いだして、反射的に逃げもどる可能性があると知っている。それを防ぐには、充分に休養をとって、精神力の回復をはからなければならない。
 しかし、一方でシュプールを見逃さないためには、急ぐ必要があった。そこで、ある程度のリスクをおかすことにしたのである。かならずしも、超自我が肉体に逃げもどるとはかぎらないから。
原文:
Bevor er seinen nächsten bewußten Traum antrat, bereitete Callibso sein Über-Ich auf die chaotischen Verhältnisse im Raum zwischen den Räumen vor. Er wußte aus Erfahrung, daß das Über-Ich sich daran erinnern würde. Auf diese Weise wollte er eine erneute spontane Flucht ausschließen. Wenn er überhaupt noch Hiweise finden wollte, mußte er sich beeilen. Deshalb wartete er nichts bis zur völligen Wiederherstellung seiner psychischen Kräfte, sondern entschloß sich, ein gewisses Risiko einzugehen. Er konnte sich zwar keine Situation vorstellen, in der das Über-Ich nicht in den physischen Körper zurückkehrte, aber völlig auszuschließen war diese Möglichkeit nicht.

試訳:
 カリブソはつぎに意識ある夢にはいる前に、超自我を空間のはざまの空間の混沌とした状況に対して準備することにした。経験から、超自我がそれを思いだすことはわかっていた。この方法で、再度の突発的逃走をふせごうというのだ。もし手がかりをみつけたければ、急がねばならない。そこで、精神力の全快まで待たず、一定のリスクをおかすことにした。超自我が肉体に帰還しない状況は想像できないが、その可能性がまったくないわけでもなかった。

ハヤカワ版は一見スジが通っているが、原文とはだいぶちがっている。段落を2つに分けたのは、まあ、いい。原文も、そこで内容的には分かれているといっていいだろう。
そのわりに、原文の意味が、訳文に反映していないのはなぜなんだろうね……?

ハヤカワ版:
恒星は地平線に近づき、
原文:
Im Licht der noch tiefstehenden Sonne

試訳:
まだのぼりきらぬ恒星の光に

noch tiefstehend で、「まだ低い位置にある」かな。なので、訳文だと「夕方」だが、「朝まだき」なんじゃないかと思われ。うーん、もっとも夕方の太陽をこうやって表現する前例があると降参だけど。

■167p

ハヤカワ版:
あまりにゆっくりとした変化なので、ワリンジャーの訓練された目でも、最初はそれとわからなかったようだが。
原文:
Der Prozeß wickelte sich langsam ab, aber Waringers gschulten Augen war der Beginn nicht entgangen.

試訳:
プロセスはゆっくりと進行するが、ワリンジャーの訓練された目はそのきざしを見逃さなかったのだ。

接続詞が aber なんで、前後の文章の内容は相反するはず……。

ハヤカワ版:
 ローダンも同じことを考えていたらしい。
原文:
Rhodan war sich darüber im klaren, daß er nicht länger abwarten konnte.

試訳:
 ローダンにも、長くは待てないことはわかっていた。

ぜんぜん、おなじことじゃないし。
darüber…daß が、「daß以下について」である。ふつーの関係代名詞なんだが。

ハヤカワ版:
 アラスカ・シェーデレーアが見守るうち、
原文:
(なし)

試訳:
(なし)

確かに、アラスカ視点の話だとは、前回書いた。しかし、原文にある場所、ザックザク削っておいて、ないとこに挿入するセンスが理解できんわー。

力尽きたので、今回はここまで。
次回は、ミュータントがらみが大変なことに……orz

時間超越 -3- part1

あいかわらず、「時間超越」のつづきである。
3章は量が膨大なので(ダブルミーニング)、何回かに分けて掲載する。正直、そろそろどーでもよくなってきつつあったのだが、4章でまた涙の出そうな誤訳を発見してしまったので、つづけざるを得ない。

■152p

ハヤカワ版:
 アラスカ・シェーデレーアは司令室にはいり、そのシーンを目に焼きつけた。いつも無意識に、別離のときにそなえているのである。
原文:
Als Alaska Saedelaere die Zentrale betrat, bot sich seinen Augen eine Szene, die ihn unwiillkürlich an Abschied denken ließ.

試訳:
 アラスカ・シェーデレーアが司令室にはいると、どこか訣別を連想させる場面が展開されていた。

どんな場面かというと、ローダン、ドブラク、ワリンジャーが、闇スペと向かいあう形で議論しているのである。
botは過去形で、bieten sich で「現われる」。場面が目にあらわれる、ので、目に映った、くらいが正当な訳文だろうか。思わず別離ということを考えてしまう場面、である。いつも、とか、そなえている、という原語はない。

ハヤカワ版:
ヴォイロクロンがそうしたように。
原文:
wie Voillocron uns geraten hat.

試訳:
ヴォイロクロンが助言したように。

-1-でのレスで書いたように、前の巻をまだ読んでないので……ヴォイロクロンがナニをどーしたのかはわからないが。この geraten、「(~な状態に)なる、陥る、」の動詞じゃなくて、uns がついている関係上、raten「助言する」の過去分詞だと思うのだが。

■153p

ハヤカワ版:
もちろん、スペシャリストは輸送手段を持たないから、ローダンが搭載艇を供出するのだろう。
原文:
Er konnte sich nicht vorstellen, daß sie sich zu diesem Zweck von Rhodan ein Beiboot zur Verfügung stellen lassen würden.

試訳:
スペシャリストがその目的のため、ローダンに搭載艇を供出させるとは、とうてい思えなかった。

原文の Er はアラスカのこと。vorstellen sich で「想像する」。たぶん、シェーデレーアには、オルウがローダンに、「お願い! 搭載艇を1隻、おくれでないかい?」と頼むところが想像できなかったのだろう。以前はともかく、この巻の闇スペを見ているかぎり、わたしにもできない。でも、強制徴発ならやりかねん(笑)

ハヤカワ版:
「わかった。われわれには話せない事情もあるのだろう」
原文:
“Ich kann verstehen, daß Sie Ruhe brauchen”,

試訳:
「諸君が静穏を必要とすることは理解した」

言わない事情を知りたいことはまちがいないだろうが、とりあえずローダンは我慢したようす(笑) ただし、この文章の下の句は、「できるかぎりのことはしてやんよ」であり、事情も言わないやつ相手に、はりきって全力をつくすわけもあるまい。

ハヤカワ版:
「われわれは“共有財産”である道を通って、“共有目標”にたどりついたわけだ。いま、その瞬間がやってきた。今後、われわれは“べつ”の道を進む!」
原文:
“Wir haben keine Wünsche”, erklärte er. “Eine Zeitlang sind wir eine gemeinsamen Weg gegangen und haben gemeinsame Ziele verfolgt. Nun ist der Zeitpunkt gekommen, daß wir uns wieder voneinander trennen.”

試訳:
「要望などない。われわれ、しばしの間、道を共にし、おなじ目標を追いかけてきた。だが、いま再び、それぞれの道に分かれる瞬間が訪れたのだ!」

いや……これ別に、難しい語も言いまわしも、何にもないよね? 「同じ道」を歩き、「同じ目標」を追う――の、現在完了形。なんだい、その“共有財産”である道、って……。
こーゆーの見ると、五十嵐さんのセンスを疑う……というか、もう信じてないんだが。

ハヤカワ版:
それに、含蓄に満ちた言葉だ。
原文:
Es erschien unvorstellbar, daß er seine Meinung ändern könnte.

試訳:
意見を変えることがあろうとは想像もつかない。

unvorstellbar は上述の「想像する」の系列で、否定の前置詞と、可能をあらわす語尾がついたもの。なので、「想像できない」。Meinung 「意見」でだいたいOK。含蓄、というとらえ方は、寡聞にして知らない。この文章、要するにオルウの発言はファイナルアンサーらしいと(おそらくアラスカが)感じたのである。

ハヤカワ版:
 だが、ローダンはまだ明白な態度を表明していない。
原文:
Rhodan schien diese unmißverständliche Haltung nicht wahrhaben zu wollen,

試訳:
 この明々白々な態度を、ローダンは理解したくないのだろう、

いなくなられちゃ、困るわけで。下の句も、「かれはオルウを翻意させるべくさらなる試みをはじめた」とつながる。なるほど、見えない聞こえない私は知りたくない~は、この頃からローダンの必殺技だったわけだ(→『エスタルトゥへの道』(ヲヒ)

■154p

ハヤカワ版:
 オルウはこの話を終えようとしているようだ……と、アラスカは思った。ほかのスペシャリストは、話を冷静に聞いている。
原文:
Olw hielt das Thema offenbar für abgeschlossen, denn er gab keine Antwort mehr. Alaska hatte den Eindruck, daß sich die zwölf Spezialisten schweigend miteinander verständigten.
Wenige Augenblicke später marschierten sie gemeinsam aus der Zentrale.

試訳:
 オルウは明らかにこのテーマを終わったものととらえているらしく、答えもしない。アラスカは、十二名のスペシャリストが、黙ったまま互いに了解しあっているような印象を抱いた。
 まもなく、彼らはぞろぞろと司令室から出ていこうとした。

だから、訳した後でパズルすんなってば。アラスカは思った、は、前の文じゃなくて後ろの文の要素じゃないか。変なことするから、後ろの文の内容まで変になるんだ。
なおかつ、文章ひとつ(段落ひとつ)、理由もなくさっくり削っている。これさあ……181pで3章きれいに収めるためとか言わないよね? この文章がないせいで、次の段落、悲惨なことになってるのに。
なお、直訳すると、「数瞬足らずの後、かれらはそろって司令室から(出ていく方向に)行軍をはじめた」くらいか。実際、オルウ以外は出ていったわけだ。

ハヤカワ版:
「それで……どこに行こうというのだ?」と、チーフがたずねる。「われわれのもとを去るだけの理由があるとは、とても思えないのだが。たのむ。いままでどおり協力してもらいたい」
原文:
“Wohin gehen Sie?” rief Rhoda betroffen. “Wenn Sie uns schon verlassen müssen, wollen wir Ihnen zumindest unsere Dienste anbieten.”

試訳:
「どこへ行く?」驚いたローダンが叫んだ。「どうしてもわれわれのもとを去らねばならないというのなら、せめて協力くらいはさせてもらえまいか」

何の合意にも達しないうちに闇スペがさっさとおさらばしはじめたので、ローダンとしても焦って呼び止めたのだ。最終的な目標とはまた別の話。あと、第三勢力も昔話なんだし、誰もチーフって呼ばないよ?
Dienst は奉仕とか勤務とか、要するに「お仕事」。それを anbieten「提供し」たいと、ローダンはそう言っている。で、それに対するオルウの反応が――

ハヤカワ版:
 オルウはあらためて周囲を眺めまわし、
原文:
Olw drehte sich noch einmal um.

試訳:
 オルウはいま一度ふりかえって、

オルウもまた、仲間たちと同様、司令室から出ていくところだった。残れ残れの合唱ではなく、手伝ってくれる気があるなら……と、向きなおったのである。訳文では、上述のとおり動きだした一文を削ってしまっているので、なぜかオルウがきょろきょろしている。

ハヤカワ版:
かたじけない」
原文:
“Das wußte ich.”

試訳:
それはわかっていた」

自由にしていいよ、と言われて御礼返すほど、殊勝じゃないのだ、この巻の闇スペはwww むしろ、「ああ、当然だな」くらいでもいいくらい(笑) このあとの文章も、原文は「オルウは踵をかえして、通廊をいく仲間たちの後を追った」なんだが……もういいや。しずかに、とか創作乙だし。

ハヤカワ版:
「さて、これからどうなるか、意見があるかな?」
原文:
“Hat jemand eine Ahnung, was das bedeutet?”

試訳:
「どういう意味だか、わかるものはいるかな?」

まあ、この場合の das は、闇スペのふるまい全体を指していると思われるので、誤訳というほどのものでもない……のだが。意見、という言葉に、みずからふりまわされているヒトがいらっしゃるので。

ハヤカワ版:
「ここを去るといっている。その意志を尊重すべきだ」
原文:
“Sie verlassen uns”,

試訳:
「かれらはここを去るでしょう」

淡々と予測を述べるだけでは意見にならないらしい。原文にない主張を述べるドブラク(笑)
つづくロイドの「でも、どうして?(Aber wie?)」も、whyじゃなくてhowだろうから、「でも、どうやって?」の方が前後のつながりはスムースだ。

ハヤカワ版:
 ローダンはインターカムで、スペシャリストのスタートを援助するよう、命令を伝えはじめた。
原文:
Rhodan beugte sich über den Interkom und gab der Besatzung den Befehl, ihn über den Weg der Spazialisten der Nacht zu unterrichten. Gleichzeitig ordnete er an, daß man diese Wesen nicht belästigen sollte.

試訳:
 ローダンがインターカムへと身をかがめ、乗員たちに命令を伝える。闇のスペシャリストの通った経路を報告せよ、また同時に、その邪魔をしてはならない……。

スタートって……どの単語を読みちがえたのかさえわからん。
「闇スペの道をかれ(=ローダン)に報告するよう命令。同時に、闇スペをわずらわせないよう指示」。インターカムのマイクの感度がアレなのか、マイクに口を近づける動作は、他でも出てくる。

■155p

ハヤカワ版:
 技術責任者は、
「一ヵ所に集まっています。これといった反応はありません」
原文:
Der Techniker schien ratlos.
“Schwer zu sagen”, gab er zurück. “Sie haben einen Kreis gebildet und stehen da. Sie bewegen sich nicht und reden nicht.”

試訳:
 エンジニアは途方にくれたように、
「なんと言ったらいいのか……。円陣を組んで立っているだけです。動きもしゃべりもしません」

この時点で、すでに円陣が確認されている。わざわざ隠す必要もないのに、なぜ削る?

ハヤカワ版:
 ( アラスカは首をかしげた。)ダッカル次元風船をも動かす生物十二名が、貯蔵室でなにをこそこそしているのだろうか?
原文:
( Alaska Saedelaere fragte sich,) was die zwölf Wesen aus dem Dakkardimballon bewogen haben mochte, sich in den Lagerraum zurückzuziehen.

試訳:
 (アラスカは首をかしげた。)ダッカル次元バルーンからきた十二名のスペシャリストをして、倉庫へこもらせた理由は何だろう。

そんな大層なことは書いていない。過去、Mann aus Meekorah(メーコラーから来た男)とかrlmdi.の出版物でも使用したことがあるが、かれ(ないし彼女、彼ら)がどこから来たか、出身地はどこか、というだけのこと。あと、bewogen は、動詞 bewegen の過去分詞。「(気持ちを)動かす」「~な気にさせる」だから、直訳は「倉庫にこもる気にさせたものは何か」となる。

■156p

ハヤカワ版:
 そこで、人々は古参の乗員に話を聞いた。細胞活性装置保持者や非テラナーのほかにも、メールストロームに転送される前の地球を知っている乗員は数多い……。
原文:
Die alten Menschen an Bord, die seither immer abseits gestanden hatten, rückten zunehmend in den Mittlepunkt des Interesses, denn sie waren die einzigen außer einer Handvoll Extraterrestrier und Zellaktivatorenträger, die die Versetzung der Erde in den Mahlstrom noch miterlebt hatten.

試訳:
 これまでずっと蚊帳の外に立たされてきた老人たちが、みるみるうちに興味の中心となった。なんといっても、一握りの非テラナーや細胞活性装置所持者をのぞけば、彼らこそメールストロームへの地球転送を実際に体験してきた人々なのだ。

「わしの若い頃には、レプソですってんてんになってな……」「おじいちゃん、その話はもう耳タコだよ……」だったのが、いきなり車座の中心にひっぱりだされて、聞かせて聞かせてコールなのだろう。おじいちゃん、はりきりすぎて話がいろいろ大きくなりそうな気がしないでもないのだが……(笑)
#「わしは迫るラール人と超重族をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」(をひ

ハヤカワ版:
 貯蔵室からの映像が、スクリーンにうつしだされた。
(中略)
 なにかめずらしいものが見られると、期待しているのだろう。
原文:
Alaskas Gedanken wurden unterbrochen, als auf einem der Bildschirme die ersten Aufnahmen aus dem Lagerraum sichtbar wurden.
(…)
Alaska, der damit gerechnet hatte, irgend etwas Ungewöhnliches zu erblicken, sah sich getäuscht.

試訳:
 アラスカの思考は、倉庫からの最初の映像がスクリーンにうつしだされたことで中断された。
(中略)
 なにか尋常ならざるものを予期していたアラスカはがっかりした。

今回、全般的にいえることだが……主語をはぶきすぎなのだ。この話は、アラスカ・シェーデレーアの物語である。なのに、アラスカ、という言葉を削りまくって、抽象的な第三者ないしは集団が主体のような文章ばかりになっている。上記のふたつも、それを除けば、さほど大きなまちがいはない(後者の「失望した、期待を裏切られた」という結果が抜けてはいるが)。アラスカ視点という大前提がどっかいっちゃうって、どうよ?

■157p

ハヤカワ版:
「それはどうか」と、トロトが、「この奇妙な行動のあとに、なにかはじまるのかもしれない」
原文:
“Es muß mehr sein”, vermutete Tolot. “Es steckt mehr hinter diesem geheimnisvollen Gebaren, als wir jetzt erkennen können.”

試訳:
「それ以上だろう」と、トロトが推測をのべる。「この謎めいた行動の背後に、いまわれわれにわかる以上の何かがかくされているはず」

hinter は「~の後ろに」であって、「~したあとに」でない。だいたい、時間的に後にしてきちゃったら、未来じゃなくて過去だろう(笑)

ハヤカワ版:
当然だろう。動かない十二名を黙って見ていても、退屈なだけだ。
原文:
Alaska konnte das verstehen. Zwölf Wesen zu beobachten, die weiter nichts taten als starr und stumm dazustehen, war auf die Dauer langweilig.

試訳:
アラスカには理解できた。黙ったまま動かない十二名を観察しても、退屈なだけだ。

アラスカ視点の消失と、訳文のパズル。誤訳とはいえないが、よくある事例のサンプルとして。直訳は、「動かず黙って立っている以外なにもしない十二名を観察することは、結局は退屈だ」。

ハヤカワ版:
 そのようすを見て、アラスカもなにか起きるような予感がしてきた。
原文:
Alaska sah in dieser Haltung eine Bestätigung seiner eigenen Ahnungen.

試訳:
 そのようすを見て、アラスカは自分の予感を確信した。

156pのアラスカ視点の話で、アラスカは何かを予感していたことがわかる。そこのアラスカ視点が消えてしまっているので、訳者的には、ここではじめて予感したみたいな訳文になるのだが。
直訳は、「その(ドブラクの)ふるまいに、アラスカは自分の予感の承認を見た」。ああ、アイツもあのちょーしなら、オレの予感まちがってないや、である。

ハヤカワ版:
 数秒後、姿勢制御がはじまったが、こんどは加速圧が中和されて、なにも感じない。
原文:
Das Schiff hatte eine Stellungswechsel sufgeführt. Die unverhoffte, durch nichts neutralisierte Beschleunigung war durch fremde Einflüsse entstanden.

試訳:
 《ソル》は位置変更をおこなっていた。予期せぬ、中和なしの加速は、未知の影響で生じたものだった。

これは、先ほどの落下・悪寒の原因の話であって、対処ではない。
ごく基本的な話になるが、ローダンにおいて、ト書き……というか地の文は、原則、過去形である。それが過去完了形になるのは、作中の時点より「さらに過去」のことを語っているから。上記の文章はふたつともそれに該当する。
あと、位置変更 Stellungswechsel であってコース変更 Kurswechsel ではないところからして、「慣性飛行をつづけていた《ソル》」は誤りで、「浮遊していた《ソル》」になるはず。原語は antrieblos schwebte なので、エンジンかけずにプカプカ浮かんでた、である。

■158p

ハヤカワ版:
一瞬で、
原文:
(なし)

試訳:
(なし)

数秒足らず、という描写は157pであるが、加速して動いているのだから、一瞬てこたないだろう。

ハヤカワ版:
「《ソル》は異質な力の影響下にあります!」
原文:
“Die SOL steht unter dem Einfluß einer fremden Masse!”

試訳:
「《ソル》は未知質量の影響下にあります!」

こらもー、単純に力 Macht と質量 Masse のよーみーちーがーえーw のはず、なんだけど――

ハヤカワ版:
“物体を構成する力は、小型のブラックホールと似た性質を有する”
原文:
“In ihrer Beschaffenheit ähnelt diese Masse einem winzigen Black Hole.”

試訳:
“その性質において、この物体は小型のブラックホールに類似している”

こっちにも、原文にない“力”とか入ってるとこみると、確信犯だな、こりゃ……。
もしくは、以前からよくあるように、自分の誤訳にひきずられたか。だから、後ろをふりかえれと言うのに。

…………。
3分の1くらいはいったかなあ……これでも小さいとこはだいぶ無視してるんだけど。そーしないと、3章後半は、ほとんど指摘する必要のないページもあれば、まるまる真っ赤なページもあるんだものorz

時間超越 未来

フォルツ著の746話”Der Zeitlose”は、あまたの記念号と並んでローダン・オールタイムベストに選出されるほど、本国ドイツでは人気のある作品である。まあ、実際に読んでみると、闇スペの唐突な退場等、つっこみたくなる箇所がないではないが……。
ともあれ、仕事の休憩時間中に、3章をざっとチェックしてみたら、1/3くらい真っ赤になった。3章、30ページあるんだぞ? やっとられんわ。
と、いうわけで、モチベ維持のため、いきなり終章である。いま、いくつか知らない動詞を辞書で確認して、さくっと訳した。お手元のハヤカワ版と対比してほしい。

試訳:
 冷たい風が、アルティプラノを吹きすぎていく。
 痩せこけた錆色の犬が、人影のないティワナクの通りをとぼとぼと歩いていた。ときおり脚をとめては頭をもたげ、においを嗅ぐ。近くに人間がいないという信じがたい事実を、くりかえし再確認するかのように。
 しばらく前から、食糧の調達がむずかしくなっていた。
 大半は鍵のかかった家屋におしいり、備蓄をあさることは、犬にしてみれば容易ではない。
 いずれは近場の町へ移動して食糧をさがさねばなるまい。狩りをするには体躯が小さすぎ、アルティプラノ高原には、そもそも獲物となる小動物がほとんどいなかった。
 猛りくるう風にのって、ふいに、ほとんど忘れかけていた物音が聞こえた。昔ながらの本能がめざめる。わき腹をふるわせつつ、立ち止まると周囲をうかがった。
 犬が聞いたのは、不規則な足音だった。
 注意深く耳が動く。
 横道のひとつに、ひょろりと背の高い人影があらわれた。
 犬はしっぽをふりはじめた。
 見知らぬ男は、メインストリートをきょろきょろと見回している。まるで、ここがどこかわからないようだ。頭からつまさきまで、すっかり埃まみれである。
 人間と暮らした記憶があふれかえり、犬はしっぽをふりつつ、じゃれついていった。
 奇妙な構図だ。見捨てられたティワナクの通りに、ただ男がひとりと、犬が一匹。
 風が強まった。
 まきあげられた埃が、男と犬を褐色につつむ。
 ふたつの姿は、砂塵にまぎれかき消えた。
 なにもかもが、どこか非現実的に見え、どんな鋭い観察者でも、しかとは断言できなかろう。はたしてそこに、男と犬がいたかさえ……

原文:
  Kalter Wind streicht über den Altiplano.
  Ein abgemagerter rostfarbener Hund schleicht durch die verlassenen Straßen von Tiahuanaco. Ab und zu hält er inne und hebt witternd den Kopf, als müsse er sich immer wieder von der unglaublichen Tatsache überzeugen, daß keine Menschen in der Nähe sind.
  Seit einiger Zeit hat der Hund Schwierigkeiten, Nahrung zu finden.
  Es ist nicht einfach für ihn, in die großenteils verschlossenen Häuser einzudringen und die Vorräte ihrer Bewohner zu plündern.
  Früher oder später wird der Hund versuchen müssen, die nächste Stadt zu erreichen und dort nach Nahrung zu suchen. Fü die Jagd ist er zu klein, außerdem gibt es hier oben auf dem Altiplano nicht viel Jagdbäres.
  Über das Brausen des Windes hört der Hund plötzlich ein Geräusch, das er bereits fast vergessen hatte. Alte Instinkte erwachen in dem Tier. Mit zitternden Flanken bleibt es stehen und sieht sich um.
  Der Hund hört unregelmäßige Schritte.
  Seine Ohren bewegen sich aufmerksam.
  Auf einer Seitenstraße kommt eine hagere hochaufgeschossene Gestalt.
  Der Hund beginnt mit dem Schwanz zu wedeln.
  Der Fremde sieht die Hauptstraße hinauf und hinunter, als müsse er sich erst einmal orientieren. Er ist über und über mit Staub bedeckt.
  Erinnerungen überwaltigen den Hund. Er wedelt mit dem Schwanz und windet sich hin und her.
  Es ist ein seltsame Bild: Ein Mann und ein Hund allein auf dieser verlassenen Straße von Tiahuanaco.
  Der Wind wird heftiger.
  Er wirbelt Staub auf und hüt Mann und Hund in dunelbraune Wolken.
  Die beiden Gestalten scheinen sich darin aufzulösen.
  Alles sieht ein bißchen unwirklich aus, und kein noch so scharfer Beobachter hätte mit Sicherheit behaupten können, überhaupt einen Mann und einen Hund gesehen zu haben…

例によって、gdgdである。単語の見まちがい、関係の取りちがえ。シェーデレーアの出現ポイントの想像ちがい(別の場所に、石像と時間の井戸があるのだ)はやむなしとしても、ホント、どうしてこうなったの世界である。
あと余談だが、アラスカの背格好の描写によく使われる hager は、ローダンなどの schlank とは、実は別物。ローダンをいう長身痩躯が、スマートっぽい印象に対して、たぶんアラスカは、ガリガリのっぽさんなのである(笑)
なので、(文脈から当然とはいえ)横道にあらわれた人影は、hagerという形容から、読者はアラスカであるとわかったりするのだった。
4/14追記 訳語をティアワナコ→ティワナクに変更。原文々頭の段下げを修正。

時間超越 -2-

「時間超越」第2章ということで、ようやく、問題の人形使いカリブソの再登場である。今後、ほぼちょうど200話(100巻)にわたって、(時々)彼岸への秘密の案内人となる。そして、毎度まきこまれるローダンとシェーデレーア(笑)
ああ、わずか3ページと油断していると、えらい目に遭う……よ?(汗)

■149p

ハヤカワ版:
 いつでも、この“意識ある夢”のなかで、出口に近いところにいたかったから。
原文:
Jedesmal, wenn er sich zu einem der bewußten Träume niederließ, wählte er diesen Platz, denn er wollte nahe am Ausgang seiner gewohnten Umgebung sein, wenn er einen Hinweis erhielt.

試訳:
 “意識ある夢”をおこなう際、いつもこの場所を選ぶのは、手がかりが得られたとき、すぐにでもこの狎れた環境から逃げだせる出口に近くありたいからだ。

少々うがった見方なのは認めよう。意訳……というか超訳のたぐい。
ただ、「すぐ時間の井戸経由で“帰還”できるように」と読むのは、それほどまちがっていないと思うのだ。
あと、“意識ある夢”は、直訳に近いけど、わかりやすくていいと思う。以前、“覚醒夢”とやったけど、字面からしてアレだったもの。

ハヤカワ版:
 これまで、三つの意識ある夢を通りぬけて、そのたびに驚くべき経験をかさねてきたもの……アッカローリーのゼノとして、あるいはペトラクツ人ガイト=コールとして。その過程で、何度かシュプールを見つけたと思ったが、結果的に望みはかなわなかった。だが、第三の夢ではじめて希望をとりもどしたのである。
原文:
Bisher hatte Callibso drei bewußte Träume hinter sich gebracht und dabei eine erstaunliche Erfahrung gemacht. Als er vor langer Zeit mit dem Accalaurie Zeno und dem Petraczer Gayt-Coor zusammengetroffen war, hatte er geglaubt, eine Spur gefunden zu haben. Diese Hoffnung hatte sich später zerschlagen, aber in den drei ersten bewußten Träumen war sie aufgefrischt worden.

試訳:
 これまで三つの意識ある夢をこなし、驚くべき体験をした。ずっと以前、アッカローリーのゼノやペトラクツ人ガイト=コールと出会った際、シュプールを見つけたと思ったもの。じきに潰えさったその希望が、三つの夢のなかで息をふきかえしたのだ。

……地の文で「~したもの」ってやるの、あまり好きじゃないんだが(笑) あれ、ローダンの決めゼリフだよね。それはさておき。
この章の一番の“誤訳”は、意識ある夢のなかで、カリブソの超自我が“誰かを演じている”という設定である。Als が人名の直前についているなら、まだわからないでもないのだが……これ、明らかにwhenだから。
超自我とかなんとか、オカルトっぽい用語が登場したけれど……これって、要するに幽体離脱だよね? >おキヌちゃん(古

■150p

ハヤカワ版:
 もっと早くここにくるべきだったと後悔したが、意識ある夢にはいったあとは、回復のため、長い休憩時間が必要だった。夢のなかの役割を演じるには、その対象を完全に遮断しなければならないから。
原文:
Callibso bedauerte, daß er nach jedem bewußten Traum eine längere Erholungsphase eilegen mußte, so daß es ihm schwerfiel, die Träume jeweils an der Stelle fortzusetzen, wo er sie unterbrechen mußte.

試訳:
 残念なのは、意識ある夢をおこなうたびに、より長い回復期間をおかねばならないため、前回やむをえず中断した場所から夢を再開するのが困難であること。

とはいえ、今回はうまくダッカル次元バルーンに実体化できているようだが。
とにかく、上述のとおり、“演じる”設定ができてしまったため、役割とか対象とか、原文にない表現をもってきて、よけいワケワカメな状態になっている。

ハヤカワ版:
実際、第二の夢では、超自我がパニックにかられ、あわててその肉体から逃げだしたもの。
原文:
Im zweiten Traum hatte das Über-Ich sogar panikartig reagiert und sich sofort in den Körper zurückgezogen.

試訳:
第二の夢では超自我がパニックにかられて、あわてて肉体に逃げもどった。

これまた、演劇設定のおかげで、肉体が、まるで憑依先のものであるかのようだ。
取り憑いてない、取り憑いてないよ~。だいたい、その場合、in den Körper って定冠詞で流さないでしょう(訳文どおりなら aus dem Körperかな?)。einとderの法則……とはまた違うけどwww
※追記:vom Körperっぽい……

ハヤカワ版:
カリブソもナウパウムで遭遇した個体には、そのことを告げなかった。その男は当時、生きのこり、おのれの“永遠の同盟”に復帰することに没頭していたから。
 いま、ここで見つけたテラナーは、自分が同族から乖離しつつあり、殲滅スーツとの関係を絶たないと、種族にうけいれられないと思っている。
原文:
Callibso selbst wußte nichts über diese Rolle zu sagen, zu lange hatte er fern von seinem Volk und damit von aller Information leben müssen. Das Problem, das ihn jetzt vor allem beschäftigte, war das der Rückkehr zu dem Verbund der Zeitlosen. Er befürchtete, daß er sich schon so weit von seinem Artgenossen entfernt hatte, daß sie ihn auch dann nicht akzeptieren würden, wenn er den Anzug der Vernichtung zurückbrachte.

試訳:
 それがいかなる役割であるかはカリブソも知らない。あまりに長く、同胞から、したがって情報からも、遠ざかって生きてきたのだ。現在かれが没頭している問題は、“時知らざる者の同盟”への帰還である。とはいえ、同胞たちから乖離しすぎた自分が、殲滅スーツをとりもどしたとて、うけいれてもらえるかどうか。カリブソの懸念するところだ。

さて、一番興味のあった Zeitlose であるが……訳すの避けたかw ある意味、賢明である。“時間超越者”とかやってたら頭かかえたよ、わたしゃ。前回の登場時に語った“永遠の同盟”Bund der Ewigen も、意味としては同じだしの。
カリブソはローダン自身とは遭遇してないし、あんまり語るべきこともなかったのだろう。もうひたすら自分のことばかりである。段落変えてアラスカの話題になっているのも、訳文だけ。ああ、この段落に役割(Rolle)とかあるから、あんな発想になっちゃったのかな。

■151p

ハヤカワ版:
 カリブソは背をもたれ、くつろいだ。
原文:
Er legte sich auf den Rücken und entspannte sich.

試訳:
 カリブソはあおむけに寝そべり、緊張をといた。

「背中の上に横たわる」のだから、上むいて寝たんだよ。背もたれにしては、対象が書いてないしね。

ハヤカワ版:
 やがて、
原文:
Kaum, daß er eingeschlafen war,

試訳:
 寝入るやいなや、

いや、まあ、別にいいんだけどね、このくらいは……。

ハヤカワ版:
 いつものことだが、分離したあとも物理的な肉体を“感じる”ことができた。
原文:
Jedesmal, nachdem die Trennung vollzogen war, empfand Callibso den physischen Körper als fremdartig. Das Über-Ich allein bot ihm die Möglichkeit einer völligen Identifizierung.

試訳:
 いつものことだが、分離が終わると、肉体を見知らぬもののように感ずる。ただ超自我だけが、自分が誰であるかを証だてる手段だ。

……めんどくさいとこ、全部はしょったよーに見えるのは、気のせいだろうか。

うう、3章長いし、両サイド入り乱れてるなあ。め、めんどくさそ(ry

時間超越 -1-

ハヤカワ版373巻の後半、ウィリアム・フォルツ著「時間超越」 五十嵐訳へのツッコミである。
前回、「必ずやる」と豪語したものの、正直、やめときゃよかったと反省することしきり。
――だって、ものスゴいんだもん。

■135p

ハヤカワ版:
最初からおのれの顔を持っていれば、神と向かいあい、あるいは対峙することもできるのに。
原文:
“Erst dann, wenn wir selber ein Gesicht haben, werden uns die Götter Auge in Auge gegenüberstehen.”

試訳:
「おのが顔を得てはじめて、われらは神々と正面から対峙することがかなうのだ」

元々の文章は、TILL WE HAVE FACES からで、”How can the gods meet us face to face till we have faces?” であると思われる。これだと、「われらが顔を得るまで、どうして神々が正面きって会ってくれようぞ?」みたいな感じがするなあ。ただし、上記作品は刊行が1956年なので、引用元がちがう可能性もあるし、原典読んでないから、会話の前後関係とかもわからない。
邦訳は存在する――『愛はあまりにも若く-プシュケーとその姉』(みすず書房・中村妙子訳)――ので、そこから引っぱったのかも。未確認だからなんともいえないけど、訳文が普段と全然ちがってるしねぇ。

■137-8p

ハヤカワ版:
男はアラスカ・シェーデレーアという名前だった。
/ アラスカ・シェーデレーアはそういう男だった。
/ 男はアラスカ・シェーデレーア……
原文:
Dieser Mann ist Alaska Saedelaere.

試訳:
 その男はアラスカ・シェーデレーア。

281巻「虚無への追放」のときにも思ったが、フォルツの原文活かそうという気がまるっきりみられないのがなんとも。あのときは、原文が右寄せ・左寄せ駆使して跳躍感を出そうとしてたんだっけ。ま、あれは天沼訳か。今回はおなじ文章のリピートを無視したうえ、まるまる削った箇所もある(後述)。

■137p

ハヤカワ版:
男は惑星ペルワルから通商ステーションのボントンに向かったもの。
原文:
geht er in den Transmitter der Handelsstation Bonton, um nach Peruwall zu gelangen.

試訳:
かれは通商ステーション・ボントンで惑星ペルワル行き転送機に乗り込んだ。

直後の原文でも、四時間の遅延をへてペルワルに到着、と書いてあるのに。書いてあるのに。
Um zu 不定詞がわからないはずもない。まさに、なんでこうなった。
……見たいようにしか、見ないからだと、愚考するしだいじゃけどね~。

■138p

ハヤカワ版:
スーツの“運搬者”を
原文:
seinen Träger

試訳:
スーツの装着者を

“運搬者”という言いかたは、後半になってアラスカが考える内容であって、この時点ではまだその表現は適切ではない。ちなみに原語もちがってるから。

ハヤカワ版:
ペリー・ローダンはマスクの男をふくむ、細胞活性装置保持者三名を呼んだ。
原文:
überreicht Perry Rhodan dem Mann mit der Maske einen von drei Reservezellaktivatoren, und erhebt ihn damit in den Kreis der relativ Unsterblichen.
Dieser Mann ist Alaska Saedelaere.

試訳:
ペリー・ローダンはマスクの男に、三基ある予備の細胞活性装置のうち一基をわたすことで、相対的不死者のサークルに招きいれた。
 その男はアラスカ・シェーデレーア。

いやもう、何をか言わんや。原文を、ちゃんと読んでいないからそうなるのだ。呼んだの? それからどしたの? いまはアラスカの話をしていたよーな気がするんだけど……。
最後の一文は、上述の削除された分。

ハヤカワ版:
おのれが救いのない展開におちいるほど、人々から乖離して、一匹狼になると自覚している。
原文:
Er spürt, daß er sich immer weiter von den anderen Menschen entfernt, daß er unrettbar einer Entwicklung verfällt, die ihn zum Einzelgänger stempelt.

試訳:
(改行)
 かれは自分が他人と乖離していくことを、一匹狼の烙印をしょいこむ流れに救いがたいほど陥っていることを自覚している。

原文を訳して、さらにバラして組みなおしてる……よね?
しかも、なんか意味がちがってきてる……よね?
自覚している……わきゃないか。

ハヤカワ版:
ヒュプトンの銀河につづく次元トンネルに入った。
原文:
bewegte sich auf den Dimensionstunnel zur Hyptongalaxis zu.

試訳:
ヒュプトンの銀河につづく次元トンネルへとむかう。

まだ、入っていないのだ。ここがまちがえたままなので、後で位置関係がおかしなことになる。確か、ツイン=ソルがらみの話でも、似たようなこと書いた記憶があるぞ。

ハヤカワ版:
正常な活動は不可能だ。
原文:
den Flug unter normalen Umständen unmöglich gemacht hätten.

試訳:
通常なら航行は不可能であったろう。

揺れにローリングに加えて、通常なら航行を不可能としたであろう、一連の不可解なエネルギー現象が生ずる。「しかし《ソル》には、闇のスペシャリストがいる!」「飛べる、飛べるぞ!」とつづくわけである(誇張アリ)。ちなみに、「トンネル内の」移動とは、原文には書いてない。

■139p

ハヤカワ版:
 膨張するトンネル内には、吸い込まれた恒星や惑星、破片が大量に存在する。
原文:
Aus den aufgeblähten Dimensionstunneln rasten Sonnen, Planeten und Trümmer heraus.

試訳:
 膨張した次元トンネルから、恒星や惑星やその破片が噴出する。

上述のとおり、いま《ソル》がどこにいるのか、正しく理解していないから、正しい翻訳ができない。だから前後関係がおかしくなって、読者は「?」となる。今回のはまだ、うまくごまかせているクチである。やれやれ。

ハヤカワ版:
 数分前には、ツグマーコン艦の残骸も目撃した。おそらく、ダッカル・ゾーンから脱出しようとしたゼロ守護者たちのものだろう。最近の体験からして、ほぼまちがいないはずだ。
原文:
Vor wenigen Minuten hatte Perry Rhodan das Ende des zgmahkonischen Schiffes miterlebt, mit dem die Nullbewahrer die Flucht aus der Dakkarzone riskiert hatten. Der Terraner stand noch immer unter dem Eindruck des Erleben.

試訳:
 ダッカル・ゾーンからの脱出を敢行したゼロ守護者座乗のツグマーコン艦の最期をペリー・ローダンが目撃したのは、ほんの数分前のこと。いまもなおテラナーはその体験をふりはらえずにいた。

もう、こう言うしかないだろう――嘘書くな。いくら版がちがっても、そこまで内容が異なるわけがない。五十嵐さん、原文ちゃんと読んでるか? 残骸ってなんの話?

■140p

ハヤカワ版:
この問題を説明するのは、容易ではないから。それに、かれらはビロードの目と次元トンネルの崩壊に、夢中になっている。
原文:
denn er bezweifelte, daß sie sich mit diesem Problem auseinandersetzen würden. Für sie war die ganze Sache mit dem Zusammenbruch des Samtauges und des Dimensionstunnelns erledigt.

試訳:
かれらがこの問題に対処するか疑わしかったから。闇のスペシャリストたちにとっては、ビロードの目と次元トンネルの崩壊をもって、万事解決したのだ。

なんか、ローダンは闇スペのことをそうとう莫迦だと思っているようで……。あ、それともローダン自身が口ベタ――なわきゃねーってば(笑)
まぁ多分、erledigt と beschäftigt を読みまちがえたんだろうけど……前後関係も怪しいな。

ハヤカワ版:
 ふたたび、全周スクリーンに意識を集中する。トンネルの開口部が見えてきたのだ。ビロードの目と同じような、ハイパーエネルギー性の穴の輪郭である。
原文:
Auf dem Panoramabildschirm glaubte Rhodan jetzt die öffnung eines Tunnels zu erkennen, aber es konnte sich genauso gut um ein hyperenergetisches Aufrißloch im Samtauge handeln.

試訳:
 ローダンは一瞬、全周スクリーン上にトンネルの開口部を見たと思ったが、あるいはビロードの目内部のハイパーエネルギー性の裂け目であったかもしれない。

es konnte ~ なので、「~でもありうる」だ。この場合は、「(トンネル開口部であるのと)同じくらい、裂け目でもありうる」。スクリーンに映るものをちゃんと理解できない、とさんざん連呼したのは、ここにつながる……かは知らない(笑)

ハヤカワ版:
「ヒュプトン銀河側のトンネルも崩壊するのかな?」
原文:
“Was geschieht, wenn der Tunnel zur Hyptongalaxis ebenfalls zusammenbricht?”

試訳:
「ヒュプトン銀河へ通じるトンネルまで崩壊したら、どうするの?」

トンネル内部前提なので、まるで出口のことのように訳しているが、そうではない。対する回答も、「崩壊はするさ! ただし、われわれが通過した後でな」くらいに訳せば問題なし。

■141p

ハヤカワ版:
「たしかなの?」と、念を押す。
「われわれがついているからな!」
原文:
“Was macht dich so sicher?” fragte er den Spezialisten der Nacht.
“Meine Freunde und ich halten diese Verbindung offen!”

試訳:
「なんだって、そんなに自信満々なのさ?」
「わたしと仲間たちが、接続を維持するからだ!」

まぁ、あえて指摘するほどでもない。それでもニュアンスはだいぶ異なる。

ハヤカワ版:
オルウのグループは、《ソル》が銀河系に帰還したあとも、公会議の駐留部隊との戦いを、援助してくれるにちがいない。
原文:
Schon aus diese Grund hoffte er, daß Olws Gruppe den Flug der SOL in die Milchstraße mitmachen und den Terranern gegen die dort stationierten Einheiten des Konzils beistehen würde.

試訳:
それゆえ、ローダンとしては、オルウのグループが銀河系まで《ソル》に同行し、公会議の駐留部隊との戦いを援助してくれることを期待したい。

これもニュアンスの問題だが。訳文だと、銀河系まで同道することは既定事実みたいだ。

ハヤカワ版:
吸い込まれた恒星の
原文:
einer ausgestoßenen Sonne

試訳:
とびだしてきた恒星の

以下、すべて同様。何度もくりかえすが、《ソル》はまだトンネルに突入していない。トンネルから、ビロードの目内部へと障害物が吐き出されてくるのだ。

■142p

ハヤカワ版:
通常、ブラックホールにのみこまれた恒星は、最終段階凝集体に到達する。しかし、その前にビロードの目が崩壊すれば、反作用エネルギーの影響で、次元トンネルの出口付近を放浪することになるだろう。
原文:
Normalerweise wäre die Sonne direkt zum Ausgangspunkt der Endstufenballung geschluedert worden, aber das zusammenbrechende Samtauge verhinderte diese Entwicklung. Von gegensätzlichen Energien beeinflußt, bewegte sich die gerade aus einem Dimensionstunnel gekommene Sonne scheinbar ziellos vor dem Eingang der sogenannten Rute.

試訳:
通常であれば、次元トンネルからあらわれた恒星はまっすぐ最終段階凝集体の出口へと射出されるはずであるが、崩壊しつつあるビロードの目に阻害され、相反するエネルギーのあおりで、いわゆる《鞭》の根元を前にあてどなくさまよっている。

正直、そのへんのハヤカワ版(と、原書もか)読みこんでないから、訳者陣が、ダッカル次元バルーン、ビロードの目、ルーテ、最終段階凝集体を、どんな関連・位置関係で理解しているかわからんのだけど。それ以前に、例によって時制が読めてないよーだ。

ハヤカワ版:
 ともあれ、いま船とブルーの恒星のあいだには、不可視のエネルギー結合があった。
原文:
Zwischen dem Schiff und der blauen Sonne bildete sich jetzt eine Achse aus unsichtbaren Energien.

試訳:
 艦とブルーの恒星のあいだには、現在、不可視のエネルギーからなる“軸”が存在した。

要するに、そこを中心に「ふりまわされ」かねない重心……なのだと思うが。
ああ、147pじゃ「軸」って訳してるなあ。ってか、そこの描写読むと、軸じゃなくて、スポークみたいな(笑)よくわからないエネルギーの枷だったりするのか……。

ハヤカワ版:
これまで《ソル》を救ってきた異人たちが、次の段階ではカタストロフィの原因になるかもしれない。
原文:
Wenn die Wesen, die das Schiff bisher gerettet hatten, sich nicht mehr über die nächsten Schritte im klaren waren, drohte der SOL eine Katastrophe.

試訳:
これまで《ソル》を救ってきた異人たちに、次のステップがわからないとなれば、待つのは破滅ばかりだ。

少々意訳。責任転嫁は感心しないなぁ(笑)

■143p

ハヤカワ版:
「われわれの目標はヒュプトン銀河だ。
原文:
“Unser Ziel ist der Tunnel zur Hyptongalaxis.

試訳:
「われわれの目標はヒュプトン銀河への次元トンネルだ。

……そろそろ、気づこうよ。ってか、後ろはふりかえらない主義なんかい?
松谷さんじゃあるまいし、初見ってこたぁないだろう。

ハヤカワ版:
 異人たちに《ソル》の運命をゆだねていいのだろうか……?
原文:
Keines der fremden Wesen, die jetzt die Verantwortung für das Schiff hatten, reagierte.

試訳:
 現在《ソル》に責任をもつ異人たちは、ひとりとして反応しなかった。

ローダンを哀れとおぼしめしたのか?(爆) もう、ゆだねちゃってるからwww

ハヤカワ版:
トンネルをぬけるチャンス
原文:
eine Chance, den rettenden Tunnel zu erreichen.

試訳:
救いのトンネルにたどりつけるチャンス

くどいかな、トンネルネタ。でも、これ以外にも何回も出てるのに、ねぇ。
もう意図的に、トンネルに入ったことにしてしらみつぶしに修正かけたとしか。なんでやねん。

ハヤカワ版:
「いまはかれらにまかせましょう」と、声をかける。
原文:
“Du darfst jetzt nichts tun, was die Schwierigkeiten noch vergrößert!” warnte der Wissenschaftler.

試訳:
「難題をいっそう大きくするようなまねはなさいませんように」と、クギをさした。

……娘婿も案外、冷たかったようだwww その前の原文も、「苦悩を察した」ではなくて、「胸中を読んだ」である。

■144p

ハヤカワ版:
 ローダンはこの混沌のなかで、船のコースを変更するのがどれほど困難か、充分に認識していた。しかも、《ソル》はいま、恒星の強力な重力につかまっているのだ。
原文:
Rhodan besaß genügend Erfahrung, um auch in dem hereibrechenden Chaos einen Kurswechsel des Schiffes registrieren zu können. Die SOL bewegte sich jetzt auf die Sonne zu und gab der unbeheuren Gravitationsströmung nach.

試訳:
 ローダンはわきおこる混沌のただなかでも、船のコース変更を察知できるだけの経験を積んでいる。《ソル》はいま、恒星へとむかい、怪物的な重力流につかまった。

sich auf etw. zubewegen(分離動詞)で、何かへ方向をさだめるのは、138pの次元トンネルがらみでも取りあげた表現。うちの独和にはなぜか載っていないが、オンライン辞書等だとすぐ検索にひっかっかる。
要するに、オルウの指示にしたがって、ドブラクは何も言わずに《ソル》を転進させたのである。

ハヤカワ版:
このままでは恒星に墜落するぞ!」
原文:
Wir stürzen in die Sonne!”

試訳:
恒星に墜落するぞ!」

というわけで、「このままでは」なくて、「転進した」から墜落しそうなわけだ。
想定した状況と訳文が合わなかったら、想定に誤りがあると考えようよ……。

ハヤカワ版:
《ソル》生まれよりも、テラ生まれの乗員のほうが、より不安をつのらせているようだ。いずれにしても、危険な兆候である。自分にもしプレコグニション能力があれば、もっと早く危険の匂いを察知できたのだろうが。
原文:
Seltsamerweise war diese Unruhe bei jenen, die an Bord des Schiffes geboren waren, stärker als bei den Erdgeborenen. Rhodan sah darin ein Indiz für die wachsende Gefahr. Die SOL-Goborenen besaßen, zumindest was “ihr” Schiff betraf, die unbewußte Fähigkeit der schwachen Präkognition; früher hätte man vielleicht gesagt, daß sie die Gefahr witterten.

試訳:
奇妙なもので、地球生まれよりも艦内で生まれたものたちのほうが、より不安をつのらせている。ローダンは危険の兆候と見た。《ソル》世代は、“かれらの”船に関するかぎりにおいて、無意識の、微弱な予知能力をもっている。古い言いまわしを使えば、かれらは危険に鼻がきくのだ。

これも想定の問題である。都合が悪いから、後半ばっさり削ったのかい? そのくらいなら、ソラナーが主語だとわかりそうなものだが。

ハヤカワ版:
乗員はそれに対して無力であるという事実を、うけいれることができないのだ。論理的に考えれば、三次元生物には手出しできない事象だとわかるのだが。
原文:
Kein logisch denkender Mensch an Bord konnte das akzeptieren, doch das war im Grunde genommen bedeutungslos, denn die Logik eines dreidimensionalen Wesens war zwangsläufig eine andere als die eines überdimensionalen.

試訳:
論理的に考えれば、乗員の誰にとってもうけいれがたいことだが、根本的に無意味でもある。三次元生物の論理は、高次元生物のそれとは必然的に異なるのだから。

この場合、乗員たちがうけいれがたいのは、「目標からそれていくこと」。んで、後半部分は、「論理的に考えても無駄無駄、だってここは三次元生物の出る幕じゃないんだもの」である。

■145p

ハヤカワ版:
 巨船にかかる負荷を考えると、まだ乗員は無防備にひとしい。
原文:
Die Belastungen, denen das Schiff in diesen Minuten ausgesetzt war, konnten nicht mehr gemessen werden. Viellieicht, dachte Rhodan mit einem Anflug von Sarkasmus, war das auch ganz gut so,

試訳:
 この瞬間、艦にかかる負荷は、もはや計測もできない。あるいはそれで良かったのかもな、とローダンはやや皮肉に考えた。

データがあったら狂っちゃうヒトもいそうだしねー、というお話。無防備って、それどっから出てきた単語なんじゃろ。

ハヤカワ版:
しかも、こうしているあいだにも、ビロードの目と次元トンネルは膨張をつづけているのである。
原文:
Rhodan wußte, daß sie sich irgendwo zwischen dem Samtauge und den letzten, noch immer aufgeblähten Dimensionstunneln befanden.

試訳:
ローダンにいえるのは、ビロードの目と、なおも膨張している最後の次元トンネルとのはざまのどこか、ということだ。

現在のポジションの話のつづきである。まあ、まるでわかっていない、と言ってるのと同じではあるのだが。あと、ビロードの目が膨張するの?

ハヤカワ版:
恒星の“旅行”が成功すれば、《ソル》にもチャンスがある……要するに、そういうことなのだろう。
「《ソル》はかならず自由をとりもどすでしょう。わたしはそう確信しています」と、ワリンジャーがいった。
原文:
Immerhin war die rasende Fahrt der Sonne gebremst, ihr winziger künstlicher Begleiter bekam auf diese Weise eine Chance.
“Ich glaube, daß wir wieder von ihr loskommen können”, sagte Wariger.

試訳:
ともかく、恒星の猛進に衰えがみえ、そのちっぽけな人工の随伴者にもチャンスが訪れた。
「どうやら、離脱できそうですね」と、ワリンジャー。

正確には、突進にブレーキがかかった、である。なぜかは、知らない。
不安定な挙動でも、速度が落ちれば、周回軌道から(比較的)安全に離脱できる――要するに、そういうことなのだろう(笑)

ハヤカワ版:
どうやってヒュプトンの銀河を探知しているのか
原文:
auf welche Weise diese Wesen mit dem Tunnel zur Hyptongalaxis in Verbindung standen,

試訳:
どうやってヒュプトン銀河に通じるトンネルとコンタクトをたもっているのか

後半も、正確にそこへ向かっている、じゃなくて、明らかにいまこの瞬間にも維持している、である。トンネルがつぶれないことから、それとわかるわけだ。

■146p

ハヤカワ版:
 ドブラクはふたたび加速命令を発したようだ。これが最良のタイミングなのだろう。ケロスカーがそういう面でミスをするとは思えないから。
原文:
Rhodan fragte sich, wann Dobrak den Befehl zur erneuten Beschleunigung geben würde. Zweifellos wartete er auf den günstigsten Augenblick. Rhodan litt unter der Vorstellung, daß der Kelosker den richtigen Zeitpunkt verpassen könnte.

試訳:
 ドブラクはいつ、再度の加速命令を発するだろう。最良の瞬間を待ちうけていることはまちがいない。もしケロスカーがタイミングを逸したら……そう想像すると、ローダンはぞっとした。

トンネルじゃないけど、まだ、再加速してないぞ。
最後の文章は、正確には「……という想像に苦しんだ」。日本語にすると、想像しがたい、みたいで意味がちがって見えるなあ(笑)

ハヤカワ版:
インターカムからは、乗員の批判的な意見も聞こえてきた。各セクションの責任者に、ペリーをわずらわせる意図はないのだが、一般乗員はインターカムを使って、自由に情報を交換している。
原文:
über Interkom erlebte die gesamte Besatzung der SOL diese kritische Phase mit. Niemand unter den Verantwortlichen, am allerwenigsten Perry Rhodan selbst, kam auf den Gedanken, die Besatzung durch Abschalten des Interkoms von den Ereignissen abzuschließen. Das, was jetzt geschah, ging alle an.

試訳:
 インターカムを通じて、《ソル》の全乗員がこの危険な段階をともに体験している。責任者たちの誰ひとりとして、また誰よりもペリー・ローダンその人が、乗員たちにインターカムを切れと命ずることなど考えもしなかった。すべてがリアルタイムで伝わっていた。

ペリー・ローダンを筆頭に責任者たちの誰ひとりとして、くらいでいいかなあ。
直訳すると「インターカムを切ることで乗員たちを事件から遮断しようという考えにいたらなかった」。
あと、リアルタイムは完全に意訳。

ハヤカワ版:
 乗員の多くは船内に家庭を持ち、こどもから老人までが“暮らして”いた。
原文:
Die SOL war mehr als jedes andere Schiff eine Heimat für viele ihrer Besatzungsmitglieder. An Bord lebten Kleinstkinder und Greise.

試訳:
 《ソル》は、ほかのどんな船よりも、乗員の多くにとって“故郷”であった。幼児から老人までが艦内で暮らしている。

強調するポイントがちがうだろう。Heimatを「家」と訳さにゃならん理由があるのか? 最後のほうでも、新たな故郷、とやらずに「新しい家」とやってるから、カリプソがなんだかホームレスみたいだぞ?

ハヤカワ版:
 ローダンはこの種の発言の心理的側面について考えた。おそらく、ツグマーコン人に特有な心理ファクターによるものなのだろう。かれらの権力願望は病的なまでに強い。だからこそ、こういう言葉を口にすることで、ポジティヴな効果が得られるのだ。
原文:
Rhodan dachte flüchtig an die psychologischen Folgen, die diese Entwicklung für die Zgmahkonen haben mußte, die sich plötzlich in der Rolle von Eingeschlossenen wiederfinden würden. Wahrscheinlich ging von diesem Ereignis eine heilsame Wirkung aus. Die Zgmahkonen würden sich wieder auf ihre positiven Werte besinnen und begreifen, daß ihr ungeheuerlicher Machtanspruch krankhaft gewesen war.

試訳:
 ローダンは刹那、幽閉されたという展開がツグマーコン人にもたらす心理学的帰結について考えた。おそらく、この事件は治癒作用を発揮するだろう。かれらはポジティヴな価値観にたちかえり、怪物的な権力志向は病であったと理解するだろう。

いやまあ……ローダンの考えも超甘ちゃんというか超きれい事というか、正直アリエネーだが。
ここまで内容がちがうと、いっそ想像力に乾杯だのぅ。

ハヤカワ版:
「では、恒星がトンネル開口部に接近したところで、離脱を試みる」
原文:
“Sobald wir auf der dem Tunnel zugewandten Seite der Sonne ankommen, machen wir einen Ausbruchversuch”,

試訳:
「艦の恒星周回軌道がトンネル側に入りしだい、離脱を試みる」

遠心力も利用したいところ……なのかな。

■147p

ハヤカワ版:
 船の速度を考えると、いくらドブラクでも、そのポジションに達した瞬間に報告はできない。
 しかし、セネカとセタンマルクトは計算を終えており、
原文:
Bei der hohen Geschwindigkeit des Schiffes dauerte es nur wenige Augenblicke, dann hatte es die von Dobrak als günstign bezeichnete Positon erreicht.
SENECA und das Shetanmargt hatten bereits entsprechende Befehle erhalten.

試訳:
 艦は高速だったため、ドブラクが最適としたポジションに到達するまで、わずか数瞬しかかからなかった。
 セネカとセタンマルクトはあらかじめ即応した命令を与えられており、

うん……まぁ、わかりやすい言いまわしにしようと努力したことは認める。フォルツの文章は、訳すときなんとなくブツ切れな感じしやすいしね。
原文と内容はぜんぜんちがうけど、誤訳と言い切るのもちょっとなぁ、ってやつだ。

ハヤカワ版:
 状況は容易にイメージできる。巨船とブルーの恒星は、見えない軸を中心にして相互にめぐっており、その距離はしだいに開きはじめているはずだ。
原文:
Rhodan konnte sich beinahe bildlich vorstellen, wie die unsichtbare Achse zwischen dem Schiff und der blauen Sonne allählich länger wurde. Sie hielt das Schff jedoch nach wie vor fest.

試訳:
 ローダンには容易にイメージできた。巨船とブルーの恒星のはざまの見えない軸がしだいに伸びていくのが。しかし、それは依然、船をがっしりととらえていた。

原文の allählich は文脈から見て allmählich の誤植。
最後の文章をちゃんと訳しておかないから、次の段落がぜんぜん逆の意味になってしまっている。

ハヤカワ版:
 だが、次の瞬間、第二の恒星が出現した! この天体はヒュプトン銀河側のトンネルから吸いこまれ、《ソル》の“横”を通過していく。その重力圏の影響を強くうけるようになれば、船はずたずたになり、分解してしまうだろう。
原文:
In diesem Augenblick kam der Zufall dem bedrohten Schiff in Gestalt einer zweiten Sonne zu Hilfe. Dieser Himmelkörper brach aus dem noch offenen Tunnel zur Hyptongalaxis hervor und raste an der SOL vorbei. Die dabei wirksam werdenden Kräfte reichten aus, um das Schiff von seiner energetischen Verbindung loszureißen un zu befreien.

試訳:

 その瞬間、偶然が第二の恒星の姿をとって救いの手をさしのべた。この天体はなおも健在のヒュプトン銀河に通ずるトンネルから吐き出され、《ソル》近傍を通過した。その際に働いた力は、船を第一の恒星との結びつきからもぎとり、解放するに充分だった。

試訳は、少々意訳である。第二の恒星がはたす役割が真逆なのは明確。
そして、ここがまちがっているので、さらに次の会話もおかしくなっているのだ。負のスパイラルである。

ハヤカワ版:
「ドブラクはこの恒星がいまどうなっているか、正確にわかっていますよ。信じられないほど正確に」
「そうだな」ペリーは曖昧に応じた。
(中略)
 ワリンジャーにしても、不満の色はかくせない。
「で、どういう状況なのだ?」と、結局ケロスカーにたずねる。
「順調だ」計算者はそれしかいわない。
原文:
“Dobrak kann unmöglich gewußt haben, daß diese Sonne gerade jetzt auftauchen würde”, sagte er.
“Nein”, bestätigte Rhodan gegen seine persönliche Überzeugung.
(…)
Waringer war nicht zufrieden.
Wußten Sie es?” bedrängte er Dobrak.
“Ich glaubte daran”, erwiderte der Kelosker schlicht.

試訳:
「ドブラクに、わかっていたはずはありません。ちょうどいま、この恒星があらわれるなんてことが」
「そうだな」内心、逆を確信していながら、ローダンはうなずいた。
(中略)
 ワリンジャーは満足しなかった。
「知っていたのか、きみは?」と、ドブラクにせっついた。
「信じていた」が、そっけないこたえだった。

148pまで食いこんでしまったが、こーゆー会話なのである。奇跡のように第二の恒星があらわれたことが前提にないと、会話自体が成り立たない。なので、なんだかよくわからない内容になってしまっている。

■148p

ハヤカワ版:
サート・フードを装着しているので、表情はわからない。
原文:
Er ließ die SERT-Haube herabgleiten und befestigte sie über seinem Kopf.

試訳:
かれはサート・フードを引きおろして装着、固定した。

ハヤカワ版:
 すべてがうまくいけば、このテラ宙航士がこの巨船を、ふたたび完全に掌握できるようになるだろう。
原文:
Bald, so drückte er durch diese Handlungsweise aus, würden sie sich in einer Umgebung wiederfinden, wo ein terranischer Raumfahrer sein Schiff noch auf seine Weise steuern konnte.

試訳:
 じきだ――と、その動作は語っていた――もうすぐ、テラ宙航士の流儀で宇宙艦を飛ばせる環境へもどるのだ!

びっくりマークを勝手につけるのは、あまり好きくないのだが。こういうとこくらいよろしかろ。しかし、普段口数の多いコスムの珍しくも無言の主張は、訳者には届かなかったようだ。残念。

…………。
ぜーはーぜーはー。ここまででやっと1章である。
元々は、Zeitloseをなんと訳しているか確認するためにペラペラめくりはじめたのだが……。正直、ここまでの大仕事になるとは、本気で予想外だよっ!! 『太陽系帝国の守護者』あたりから何年たってると思ってるんだ……。
この調子だと、267pまでたどりつくのはいつになることやらorz

犬とはマズいだろ……w

ハヤカワ版373巻『時間超越ときまこしこし』が刊行された。なんか、いろいろヒドイな。

■P267

ハヤカワ版:
 人と犬は一体となって……

アッーwww
詳細は後日、必ずやるとして、

 風が強まった。
 それが砂ぼこりをまきあげて、男と犬を暗褐色につつみこんだ。
 ふたつの姿は、砂塵のなかにかき消えた。
 なにもかもが、どこか非現実的に見え、たとえ鋭い観察者がいたとしても、男と犬がそこにいたと、しかと断言はできないのだった……

――みたいな原文なんだけどー。ちょっとちょっとーwww
川原泉の『架空の森』ばりに叙情豊かなエンディングなはずなのに、あれ?

「こーゆーの、BLってゆーのよ」(犬 der Hund=男性名詞)
「獣○っていうのよ、ウサギちゃん」(犬≠人間)

ダッカル次元の鞭?( ̄∀ ̄)/~~~ピシピシ

Die Rute / 【仮訳】〈鞭〉

ダッカル次元バルーンにある、星座というか星団というか。現在、ハヤカワ版では“扇”と訳されているもの。
その原語はRuteといい、同義語は Peitsche……“鞭”のことである。過去接してきた先読み情報におけるそれと、訳語がぜんぜん一致してないので違和感ありまくりだったのだが。少し、調べてみた。

鞭、というと、ふつー連想するのは、以下のようなものだろう。

鞭1
《鞭》

ただし、鞭といっても、Rute の場合、打楽器であることが通例のようだ。

《Wikipedia「むち(楽器)」からの引用》

一般には、2枚の細長い木板の一端を蝶番で留め、それを閉じることによって鋭い音を発する。これをwhipとも呼ぶ。また、この構造のため、ドイツ語ではHolzklapperとも呼ぶ。
なお、日本語に「むち」と訳される楽器には、ドイツ語でRuteと呼ばれる楽器もある。これについてはルーテ参照のこと。

上記「むち(楽器)」は、こーんな感じ。

《むち(楽器)》

間のジャバラがないけれど、なんとなく扇に見えなくもない。たぶん、このへんのイメージから、“扇”という訳語が出てきた――んじゃないかな?(憶測)
ただ、扇という語からだと、しごく平面的なイメージがある。初登場の号である「ダッカル・ゾーンにて」の原書を参照してみないと確実なことはいえないが、そんな扇状地みたいなものとは、少々考えづらい。

ところで、上記引用には、Ruteについては「ルーテ」の項が立っていると書かれている。ちょっとそちらを見てみよう。

ルーテとは、柔らかい鞭の形をした楽器(打楽器)のことである。日本語に「むち」と訳されることが多いが、むちには別の楽器もあるので注意を要する。
(中略)
柔らかい1本の棒、もしくは細い棒や細い枝を束ねたものを、2個用意して打ち合わせる。または、1個で大太鼓のヘッド(皮)やリム(枠)を叩いて音を出す。

……別のモンなのかよっ(笑) なんともまぎらわしい話である。
で、Googleの画像検索でさがしてみた。正直、上記Wikiの「柔らかい鞭」という表現から、こんなものを想像していたのだけどw

鞭2
《一見柔らかそうな鞭》

実際には、なんだか茶筅か竹箒みたいな代物が出てきたり。
これを2つ互いにぶつけ合ったり、太鼓をたたいたりして、鞭のような効果音を出す、らしい。

ルー手
《ルーテ》

さて、ここで今度はPerrypediaのダッカル次元バルーンから引用してみよう。一応、仮訳である。

転移によって、恒星と惑星は全長およそ0.21光年の宙域にふりまかれ、ルーテに似ていなくもない星座を構築する。星の密度が最も凝集しているのは、〈ビロードの目〉の直近で、ルーテの握りに類似している。

上掲のルーテの写真でいうと、左上にブラックホールがあり、吐き出された星々が放射状に配置されていく……と考えるとわかりやすいかもしれない。個人的には、茶筅よりも「ドラゴン花火」と言ってしまった方が理解できる(爆)のだけれど。ドイツにドラゴン花火はないのかのぅ。

そんで結論としては、(ルーテ)でよかったんじゃーないのかなーと。思うんだけど……ハヤカワつーかローダンってこんなラノベやファンタジーめいた用法は避けてるっぽいしなー。

■Perrypedia: Dakkardimballon (Ruteの検索転送先)
■Wikipedia: むち(楽器)
■Wikipedia: ルーテ

アルコン人は大統領!?

Prätendent / 【試訳】“継承者”、嗣執政官

アフィリー・サイクル、銀河系編の各話を読みつつ、ずっと気になっていること――。
それが、新アインシュタイン帝国における、アルコン人アトランの役職だったりする。

大行政官、という訳語がどこからきたのか。それ自体が、手元に原書のない現状だと確認できないのだが。推測されるのは、Regierungschef からきたという説。でも、これ、役職名じゃなくて、政府首班の意味だで?
ともあれ、NEIの元首は Prätendent と呼ばれるわけだが、辞書をひくと、「1. 要求者、請求者 2. 王位継承要求者」とある。第×位王位継承者とか、そのへん。または、継承権を有し且つ王位に就くことを要求している者、と書くとこんがらがってくるけれど(笑) ヴァターシこそは正当な王位継承者~みたいなノリと考えるといいのかも。

そこで、アトランの場合に当てはめてみると:
最初考えたのが、銀河系の解放(自由)を要求する者。しかし、描写を拾っていくと、「NEIが太陽系帝国の正当な後継国家である」ことを強く主張する政体であるので、「(テラを)継承する者」と読むのが正しいと思われる。そのあたりの文意を反映させると、上記のような試訳になる。

この原語、日本ファンダムでは長らく President と誤解されていた。わたしも大統領だと思ってたし。まぁ、まちがってたら正せばよいわけで。Yes, we can!(爆)

9/24 追記:
英語のpretenderは、確かにあんまりいい意味なさそう。「王位請求者(不当な)」ってついちゃうし、身元詐称者だしね(笑) でも個人的にはクリッシー・ハインド姐御の堂々たるイメージがあるので、まいっかと。
また、邦訳の出始めの頃、先読みの先達が、Großadministrator を「大行政官」と訳してたこともありましたなァ。

アニューム主義者、だったか……

Anjumisten / アニューミスト

前項でも取り上げている、「赤い宇宙の帝国」シリーズ。読むのにけっこう骨が折れるのは、用語がいちいち特殊だから。惑星コペルニクスのややネジのぶっとんだ科学者たちが大挙して異宇宙に移住し、拡張した帝国、という設定なので、一般的なことばと、ちょっとちがった言い回しをするのである。
「患者、という用語は使いません。パートナーと言います」 初対面のふとっちょ医者(男性)に「あなたのような方をパートナーにできて私は幸せです!」と宣言されて絶句したローダンは、そんな解説をうけることになるわけだ(笑)

さて、それと同列なわけではないが、従来「アンジュミスト」と訳してきた、赤い宇宙の帝国のレジスタンス組織であるが、これ、創設者 Claes Anjum にちなんだ命名であるそうな。
で、この Anjum 氏の姓名は、どちらもオランダ語系で、クラース・アニューム、と読むのがどうやら正しそう。
今後、当ごやてん内の記事では「アニューミスト」と記載することにしたので、前後で相違することになるがご了解いただきたい。
#って言うほど書いてないけどね(汗)

消えた特殊能力

最近のハヤカワ訳は、訳者(ないし編者)の主観がバリバリで、原文の意味が伝わっていないことが多い。前回の“付帯意識”はその典型だが、小さなところでは、以下のようなものもある。

■256p

ハヤカワ版:
 もちろん、膨大なデータはポジトロニクスで精査し、くりかえしチェックして、はじめて意味のある情報になる。だが、セルンボーグとコンシェクスには、自信があるようであった。ふたりはなんといっても、恒星転送機の専門家だ。関連するデータは知りつくしている。

原文:
Natürlich wußten sie alle, daß diese Flut von Daten zuerst geordnet, dann mit den Rechenmaschinen überpruft und mehrmals gecheckt werden mußte. Dann erst konnte man, falls nicht noch ein Kode entschlüsselt werden mußte, exakte Daten herausziehen. Immerhin wußten die Transmitterfachleute, welche Art von Daten und Fakten sie besaßen.

試訳:
 むろん、膨大なデータを整理し、計算機構による精査と幾重ものチェックがなされねばならないことは、誰もが承知している。あるいはさらに暗号を解読する必要があるかもしれないが、とにかく、そうしてはじめて、正確な情報を引き出すことが可能となるのだ。ではあるが、転送技術の専門家たちは、いかなる種類のデータや事実を入手したのかは理解していた。

#専門家なので、生データからでも、多少の解説はできるわけだ。ハヤカワ訳だと、このあとのセリフが、まるで別のソースからひっぱってきたようにも読めてしまう。つーか、自信満々なんてどこにも書いてないぞ……。

■257p

ハヤカワ版:
いずれにしても、今回の努力はかならず報われます。
 ひとつだけ、断言できますが、異種族はこの知識を得られません。

原文:
Jedenfalls haben sich, so denke ich, alle Strapazen gelohnt.
Noch niemals hat jemand in so kürzer Zeit ein solch großes Wissen erhalten.

試訳:
いずれにしろ、今回の苦労は報われたと思いますね。
 かくも短時間でこれほど大量の知識を得たことは前例がありません。

#なにを断言しているというのか。もはや誤訳ですらない。

■258p

ハヤカワ版:
 I=SP7は母艦《インペラトールVII》に向かっている。まもなく、安全に帰還できるだろう。今回の冒険はむだではなかった。とはいえ、トクトンを救うすべはない。滅亡に向けて、最終幕がはじまったのだから。
 グラウンツァーはその特殊能力を失い、レムール人の影響力は最終的に消えた。のこったのは、沼だけだ。沼は永遠の時間を味方に、文明の最後の残滓をのみこんでいくにちがいない。滅亡したレムール人のシュプールをすべて……。

原文:
Die Space-Jet I-SP7 raste durch das All, die Welt der Düsternis und Dunkelheit hinter sich lassend, auf die Koordinaten der IMPERATOR zu. In wenigen Stunden würden sie dort eintreffen und sich einschleusen lassen. Das Abenteuer lag hinter ihnen, und sie alle spürten die Erschölpfung. Sie wußten, saß der letzte Akt des Sterbens hinter ihnen begann. Die Graunzer waren nutzlos geworden, die Lemurer waren vernichtet worden, und der Sumpf, mit der Beharrlichkeit der ewigen Naturgesetze, würde sich auch der letzten Trümmer bemächtigen, einer der letzten Fußstapfen von der Spur der ausgestorbenen Ahnen.

試訳:
 スペース=ジェットI=SP7は、薄明と暗黒の惑星をあとに、《インペラトール》の座標へむかって宇宙を疾駆していた。到着し、収容されるまで数時間とかかるまい。冒険は終わりを告げ、疲労がのしかかってくる。かれらの背後で、滅びの最終幕がはじまったとわかっていた。グラウンツァーはその役目をうしない、胎児たちは倒された。そして沼は、永久なる自然法則の頑迷さをもって、最後の廃墟をも呑みこんでしまうのだろう。滅び去った祖先の、最後の足跡のひとつを……。

#今回の一件がむだではなかった(報われた)というのは、上記コンシェクスのセリフであり、最後の段落には書かれていない。
#原文では“レムール人”だが、“滅ぼされた”という表現から、胎児たちのことと思われる。

ま、わたしの試訳にも、多分に主観は入るのだが……。
流れが悪くなるからはしょろうとか、アトランを大提督と言い換えるとか、そうした処理を否定するものではない。長い段落を途中で改行するのも、ラノベ全盛の昨今、読みやすくするためにはいたしかたないとも思う。
しかし、訳者(編者)の主観で、原文と意味がちがってしまっては、それはもう翻訳ではなかろう。

出典:341巻「生まれざる者の恐怖」 ハンス・クナイフェル