素朴な疑問

――ところで、グラウンツァーって何頭いたんだっけ?
発端は、素朴な疑問だった。

頬杖ついて、やる気なさそーにアトランが耳を傾けていたのが171頭めで……と、本来、読了したばかりでおぼえていてしかるべき私に、懇切丁寧に解説してくれるマガン。いつもすまないねえ(笑)
そして、アトランから発する強力なインパルスの話になった。いや、あれはきっと原文自体がImpulsなんでしょ? ……と、原書を開いて。問題は、そこじゃなかったのだ。

■238p

ハヤカワ版:
「付帯意識だ!」と、大提督は小声で、「この動物が話すのなら、レムール語にちがいない」
〈われわれの言語に堪能なのだな!〉と、グラウンツァーの意識に埋めこまれた、付帯意識がいってくる。付帯脳が話しかけるのと同じ感覚だ。〈わたしはこの動物に影響をあたえている。すでにおわかりだろうが〉

原文:
“Das ist der Extrasinn!” meinte Atlan leise. “Wenn dieses Tier zu sprechen versucht, dann wird es die lemurische Sprache sein.”
Du beherrscht diese Sprache recht gut! sagte der Extrasinn. Ich bin es, der das Tier beeinflußt! Kein Zweifel!

試訳:
「付帯脳のせいか!」と、アトランがつぶやいた。「この動物がしゃべるとしたら、レムール語のはずだな」
〈レムール語なら堪能だろう〉と、付帯脳がいってくる。〈この動物に影響をあたえているのは、わたしだ! まちがいない!〉

#付帯脳の一人称が“わたし”だったかは、ちょっと自信がない。

この文章、原文もわかりづらいが、「グラウンツァーは付帯脳の持ち主をレムール人(の末裔)と認識した」というのが、確定する事実。グラウンツァーが付帯意識を持っているというのは、この文章を読みちがえた結果生じたウソ設定である。
この後、アトランが苦労して聞取調査をおこなうわけだが、これは“付帯意識”と会話しているわけではなく、グランツァーが(意味は理解しないまま)口伝しているレムール語を記録している。訳文にある、付帯意識云々はすべて勝手な追加文である。

だから、自分の創作にひきずられるなと何度も(ry

出典:341巻「生まれざる者の恐怖」 ハンス・クナイフェル

宇宙駅のヒ・ミ・ツ

新訳者・若松宣子氏担当の341巻『生まれざる者の恐怖』が刊行された。ケストナーの『飛ぶ教室』新訳等で活躍されている方である。正直、畑ちがいなんではなかろーかと思わないでもなかったが、あとがきを拝見して、多少得心がいった。今後のご発展を期待したい。

んで、いきなりだが。

■9p

ハヤカワ版:
(前略)大全周スクリーンには巨大構造物がうつしだされている。
 奇妙な構造物だ。基本的には、巨大でぶあつい円盤三基で構成されており、その三基がクローバーの葉のように配置されていた。中心には軸のような構造物があり、その両端は先にいくほど細くなる。残念ながら、映像はあまり鮮明ではない。ここは銀河間の空虚空間で、いちばん近い恒星でも数十万光年はなれているから。とはいえ、まだ宇宙駅の輪郭がはっきりわかる程度の光はあるが。細部がほとんど見えないのは、全体が恒星の数千倍の輝きを発する、光のオーラにつつまれているためだ。

原文:
(…) , und sein Blick blieb auf dem vorderen Sektor der großen Panoramagalarie haften.
Ein merkwürdiges Gebilde war dort zu sehen. Es bestand aus drei dicken, kreisförmigen Scheiben, die in der Art von Kleeblattsegmenten um ein gemeinsames Zentrum herum angerodnet waren. Das Zentrum selbst bildete eine Spindel, eine Art Turm mit beiderseits sich verjungenden Enden. Das Bild war nicht sonderlich klar. Hier draußen im Leerraum zwischen den Galaxien, Hunderttausende von Lichtjahren von der nächsten lichtspendenden Sonne entfernt, gab es gerade noch soviel Helligkeit, daß die Umrisse der Raumstation als Schatten erschienen wären. Einzelheiten des Gebildes waren nur deswegen auszumachen, weil die Station sich in eine Aura aus künstlichem Licht gehüllt hatte, die von Tausenden greller Sonnenlampen erzeugt wurde.

試訳:
(前略)男の視線が、大全周ギャラリーの前方画面で停止する。
 奇妙な構造物がそこにうつしだされていた。ぶあつい円盤三基が、さながらクローバーの葉のように配置されている。中心部分は紡錘状、両端が先細りになったタワーである。映像は、あまり鮮明なものではなかった。ここは銀河間の虚空で、光をもたらすもっとも近い恒星でも数十万光年のかなたにあり、ステーションの輪郭が影のようにわかる程度の明るさしかないのだ。細部がわかるのは、ステーションが幾千もの太陽ランプがうみだす人工の光のオーラにつつまれているからにすぎない。

#最近、Leerraum を「空虚空間」というあやしい四文字熟語(笑)で訳すのがハヤリのようだが、虚数空間でもあるまいに、伝統的な「虚空」でよいと思われ。また、巨大、巨大と連発しているが、ステーションの「巨大さが実感できる」のは12pで接近してからで、この時点ではそういう描写はない。

■10p

ハヤカワ版:
 司令スタンドの中央にあるコンソールには、長身痩躯の男がすわっていた。しかし、はいってきた中年男に気づくと、立ちあがり手招きする。年齢はさだかでない。豊かな白ブロンドの長髪と赤い目は、アルビノに特有のものだ。

原文:
Der Mann hinter der Chefkonsole, die sich auf einem Podium in der Mitte des Kommandostands erhob, hatte den Eintretenden bemerkt und winkte ihn zu sich. Er war ein hochgewachsener Mensch unbestimmbaren Alters, mit wallenden, weißen Haaren und den rötlichen Augen eines Albinos.

試訳:
 司令スタンド中央、一段高い場所にある指揮コンソールの男が、入ってきた人物に気づいて手招きした。長身痩躯で年齢はさだめがたく、豊かなプラチナブロンドの髪と赤い目はアルビノ特有のもの。

#erhob は指揮コンソールを修飾する文節の動詞である。
#「銀髪灼眼」と訳せというヒトもいるのだが……(笑)

■14p

ハヤカワ版:
ステーションにはいったら第一転送機をお使いください」

原文:
Bitte bedienen Sie sich des ersten Transmitters nach Betreten der Station.”

試訳:
ステーションに入ってすぐの転送機をお使いください」

#進入後最初の転送機、と読んだ方がすんなり理解できる。大文字じゃないし。

ハヤカワ版:
 フィールド・ブリッジはシャフトにつながっていた。このシャフトは中央軸に対して並行に配置され、円盤をクローバー型につなぐセグメントにつづいている……日常感覚でいうと、たんに“垂直に配置”と考えればいいが、ここには重力がないため、こうした表現が必要になるのだ。
 セグメント内もやはり無重力で、一定方向に反重力フィールドが設定されていた。それにそって進んでいくと、やがて卵型の空間に到着。壁ぎわには、アーチ型の転送フィールドが見える。
 一行はなおも浮遊したまま前進したが、やがて重力を感じて“床”に降り、正方形のひろいホールにはいった。ホテルのロビーを彷彿させる、エキゾティックなホールだ。(中略)
 転送アーチをくぐると、迎えたのはマークスではなく、作業コンビネーションを身につけた、テラナーの集団であった。

原文:
Die Feldbrücke mündete in einem der Schächte, die das kreisförmige Kleeblattsegment paralle zur Mittelachse – “senkrecht” also im alltäglichen, in der Schwerelosigkeit des Alls jedoch inkorrekten Ausdrucksweise – durchzogen. Auch hier war die Gravitation ausgenullt. Die Ankömmlinge treiben durch den Schacht dahin, bis sie eine eiförmige Ausweitung erreichen und an der Wand der Weitung das schimmernde, torbogenförmige Energiefeld einer Transmitterstation erblickten.
Sie schwebten hindurch, einer nach dem andern. Das erste, was sie spürten, war das plötzliche Wiedereinsetzen der Schwerkraft. Sie landeten in einer weiten, rechteckigen Halle, die an das Foyer eines exotischen Hotels erinnerte. (…)
Atlan und seine Begleiter wurden erwartete – allerdings nicht von dem maahkschen Grek-1, sondern von einer Horde aufgeregter Terraner in Arbeitsmonturen.

試訳:
 フィールド・ブリッジは、円盤セグメントを中央軸と並行――日常感覚からいえば“垂直”だが、無重力状態の宇宙においては、それは正しい表現ではない――につらぬくシャフトの一本に接続されていた。その内部もやはり無重力。シャフトにそって進むと、やがて卵型に広がる空間に到着した。壁に転送機のアーチ状エネルギー・フィールドがきらめいている。
 一行は順繰りにこれをくぐった。最初に感じたのは、いきなり復活した重力。かれらが“着陸”したのは、エキゾティックなホテルのロビーを彷彿させる、正方形の大広間であった。(中略)
 アトラン一行の出迎えもそこにいた――ただし、マークスのグレク=1ではなく、作業服を着た、熱狂的なテラナーの一団が。

#だから、最初の転送機をお使いくださいっていったのに(爆)
#ドイツ語の垂直 senkrecht は、重力にひっぱられて落ちる方向、である。したがって、無重力だとそーゆー方向自体が存在しない。
#この場合、シャフトは「縦穴」であって、クローバー状セグメントをつなぐ役目はしていない。つないでいるのは中心の紡錘タワーである。というか、この章冒頭から、クローバー・セグメントと書いてあるのに、なんで別のもののように訳す(編集する)のか。
#概略図を描いてくれたヒトがいらっしゃるので。添付してみたり。

Bahnhof
駅とシャフトの位置関係

■39p

ハヤカワ版:
「そいつは、おまえが想像力のないブリキ細工だからだ!」アクボシュトの怒りはおさまらない。「ケムテンツの虎、首席大使の有能な助手、自信過剰で反抗的なジェリファー・フムドランだ!」
「ミスタ・フムドランはお休みですが、サー」と、ロボットが伝える。
「わたしの許可なく欠勤したのか? ばかな!」
「いえ、きのう、首席大使ご自身が、きょうは休んでいいと許可なさいました、サー」
 大使がうなる。堪忍袋の緒が切れたらしい。
「もういい」と、低い声で、「では、伝えろ。いますぐやつを緊急召集する!

原文:
“Das liegt daran, daß du ein phantasieloses Blechgeshöpf bist!” tobte Bulmer Agbosht. “Der Tiger von Chemtenz, das ist mein glorioser Assistent, der Erste Botschaftsrat, dieser Ausbund an Einbildung und Insuborditaniton, Jellifer Humdran!”
“Mister Humdran hat heute dienstfrei, Sir”, erinnerte der Roboter.
“Er hat dienstfrei, wenn ich sage, daß er dienstfrei hat!” schrei Agbosht, das Gesicht vor lauter Anstrengung, den Wütenden zu mimen, tiefrot gefärbt.
“Sie haben ihm gestern erlaubt, den heutigen Tag dienstfrei zu nehmen, Sir”, mahnte der Roboter.
Bulmer Agboshts Zorn verpuffte wie die Luft aus einemBallon, in den jemand eine Nagel gesteckt hat.
“Na schön!, knurrte er. “Dann sag ihm, daß ich ihn brauch!

試訳:
「そいつはおまえが想像力のかけらもないブリキ箱だからだ!」アクボシュトは荒れくるった。「ケムテンツの虎ときたら、わがご立派な助手殿にして最先任大使館員、妄想と不服従の見本市、ジェリファー・フムドランにきまっとる!」
「ミスタ・フムドランは本日、休暇を取得されています、サー」
「やつが休暇をとっていいのは、わたしがいいと言ったときだけだ!」怒れる男を熱演するあまり、そう叫ぶアクボシュトの顔はどす黒く染まりつつあった。
「昨日、休暇取得を許可なさったのは閣下ご自身ですが、サー」と、ロボットが指摘する。
 ブルメル・アクボシュトの怒りは、針でつつかれた風船から空気が漏れるようにしぼみこんだ。
「もういい」と、不平たらたらに、「では、やつに伝えろ、おまえが必要だとな!

#glorios は「輝ける、栄えある(主に皮肉で)」ということなので。しかし、先任将校のネタが役に立つときがホントにくるとは思わなんだ……。
#verpuffen には「弾ける」の意味があるので、元の訳の方が正しい可能性もあるが、「先細りになる、力をなくす」ととって、あえてこうしてみた。
#余談だが、この「虎」、虎の威を借る、ではなくて、単なる「自称・女たらし」の悪名。むしろ「ほらふき男爵」に近い。あんな仲が悪いフリをしてるのに、その権力をカサにきたら、ただのイヤなやつである。

ぶっちゃけ、今回は全文照合はしていない。「ここ、変じゃない?」という質問があった箇所+その前後を見た程度である。しかし、これだけでも花丸はあげられない。
#転送アーチをくぐったタイミングが変なのは、正直訳者の責任ではないと思うが……。

以下、余談:翻訳統括・五十嵐氏のブログで、I=SP7の表記が不統一という話が書かれている。たぶん、次巻のあとがきで訂正されるのだろうが、その際、「クナイフェルの原文がそうなっている」ことには、ちゃんと触れておいた方がいいだろう。

超空間をこじあけて 尋問編

試訳中、「均衡回路」Ausgleichsschaltung は、「イコライザー」としている。
当初、ON/OFFの切り替わるイメージから「バランス・スイッチ」としていたが、要するにインパルス強度を安定させる機能だと結論した。ちなみに、電気関係では「平衡回路」が一般的のようだ。
#Ausgleiichsschaltung の機能に関しては、モデムや電子回路に置きかえたアドバイスをマガンからいただいた。調べなおした結果、訳語をイコライザーに訂正した。多謝。100%そのまま活かしたわけではないが、(12)の訳は、やっぱりこうだと思うのだ。

(1)

原文:
“Sehr wissend sehen sie aber nicht aus.” Kiran Bay deutete zu den Gefangenen hinüber. “Wer sind sie?”

wissend は「知っている」状態。名詞形 Wissende は「事情通」と訳したり、カピン・サイクルでは「智者」の称号であったりする。
ここをちゃんと訳さないから、次のグッキーのセリフとの接続がおかしくなって、文章の順番を入れ替えたりしている。本末転倒。

(2)

原文:
Doch wie befürchtet, konnte er mit ihren technichen Angaben nichts anfangen. Er mußte die Laren dazu bringen, daß sie über den Translator ihr Wissen preisgaben.

知らない言葉は訳しようがない……のは、この場合、トランスレーターではなくてグッキーのボキャブラリーの問題である。あと、科学者たちが使う翻訳機に、科学用語が登録されてなかったら意味ないし。

(3)

原文:
aber wenn ihr offen zu uns wäret, wurde es uns leichter fallen, euch am Leben zu lassen.”

「正直にゲロするなら、生かしといてやろうって気になるかもしんない」である。この尋問、グッキーはわりと鬼畜なのである。後の超重族のエピソードも、ある意味プレッシャーになっていると思われるし。

(4)

原文:
Aber warum, wenn ihr es gewußt habt?”

イコライザーの存在を知っているなら、見落とすはずがない、とバーリル=トルンは言いたいと思われ。そしてつっこまれたグッキーは、

(5)

原文:
“Nein, nicht ich sage es euch, sondern ihr werdet es uns sagen, damit wir euren guten Willen erkennen.

「いや~、いま尋問されてるのはどっちだっけ?」と、シラを切るどころか回答を拒否している。助かりたかったら、よけいなことは訊くな、ということだ。き、鬼畜。
……あ、グッキーは元々ケダモノだっけ(笑)

(6)

原文:
In der Hand hielt er einen leichten Impulsstrahler, dessen Lauf verborgen war.

Lauf には銃身の意味もある。これを「走り」と読んだのだろうか。

(7)

原文:
und fast hätte mich einer dieser Giganten umgebracht.

「あの巨人たちのひとり」が、「わたし」を「殺しかけた」のである。憶測だが、239pでばったばったと倒れていた超重族のうち、ひとりが活殺自在の術(死んだふり)を駆使したのではないか。追いかけてきたの、ひとりだけだし。

(8)

原文:
Die Laren aber, das wußte Guchy nun, waren die einzigen Geschöpfe, die sie vor dem sicheren Tod retten konnten.

ラール人を殺しちゃったら、超重族だって助からないのに、とグッキーとしては教えてやりたい気持ちでいっぱいに……ならなかったみたいだけど。少なくとも、この文章には超重族の動機は描写されていない。

(9)

原文:
Es fiel ihm nicht leicht, aber er sah keine andere Möglichkeit, als schnell und hart zu handeln.

やりたくはなかったんだけれど、である。他をソフトに訳すくらいなら、ここんとこはちゃんとグッキーの主張を聞いてあげなくては。

(10)

原文:
Wenn Gucky für eine Sekunde ratlos war, so sah man ihm das nicht an.

実際に途方にくれたのかもしれないが。まわりの人間(man)には、そうは見えなかったのである。

(11)

原文:
Hoffentlich ist es nicht zu spät.”
“Vielleicht nicht”, gab der Lare zurück. “Das Versuchsobjekt ist schließlich mit Überlicht-Antrieb ausgerüstet.”

Vielleicht nicht (zu spät). と読むべきだろう。疑問形でもないし、試験機体(テンダー)にカルプが搭載されているという描写とのつながりを考えると、ここは肯定的な意味になるはず。

(12)

原文:
Ich kann mir nur vorstellen, daß sein Einschalten die Impulsmodulation innerhalb des Abstrahlfelds derart anreichert, daß die sogenannte Ausgleichsschaltung eintritt.

sein は前述の「カルプ」であり、Abstrahlfeld は転送機の「送り出しフィールド」。この文章を訳せないと、この話全体の説明がおしゃかである。まあ、マガンの指摘を受けるまでナニだったので、あまりエラそうなことは言えないが……。

(13)

原文:
“Und wenn wir aus der Kreisbahn geraten?”

カルプ=超光速エンジンを起動することで、推力が発生し、現在の周回軌道をはずれたら、あるいは太陽に転落してしまうかもしれない。マリノワ少佐はそう言いたいのだと思われ。そして、ベイ博士がその誤解を、次のセリフで解くわけである。

(14)

原文:
der Schlauch

確かにチューブの意味もあるが、この場合、「大酒飲み」ととった方が、文脈はすっきりする。

(15)

原文:
Du vielleicht?

あんたノーマルじゃないしぃ? という含意があるとみた方が、笑える。

(16)

原文:
und sah sich vergeblich nach einem Sitzplatz um. Die Sessel hatten sich ebenfalls nicht vergrößert.

vergeblich は「虚しく」で、ある行為が成功しなかった場合の副詞。
……拡大されてないと、ロルヴィクの巨体はおさまりきれないのだ。カウチ(長椅子)ひとつ占領しちゃうくらいだから。実は1章のアレは伏線だったのだ!(爆)

(17)

原文:
“Der Mensch denkt aber auch nur ans Essen!”

einとderの法則からして(笑)、der Mensch=ロルヴィクである。

(18)

原文:
Nara wollte gerade etwas sagen, als etwas eintrat, mit dem niemand gerechnet hatte.

ここで、「何かが起こった」のである。「起こるだろう」ではない。
「なんか起きたっ」「時間反動だっ」「うわーみんなバラバラに~っ」……ときて、次章へつづく。だから、時制はちゃんと訳せと。

えーと。メタメタである。
なにが困るって、今回の担当、翻訳統括者なんである。訳文を原文見ないで編集したら……という、いつもの憶測は適用不可である。
飯のタネは、もーちょい真摯に取扱い希望、なのだ。

超空間をこじあけて -5-

337巻も購入済みだが、とりあえず、こっちを済ませておきたい。前にちょっと書いた「尋問編」である。
335巻239pからはじまるラール人尋問あたりがすごいことになっているので、ちょいと長丁場だが、お付き合い願いたい。はじめに、ざっと流す。239p終盤から、246pの章末まで。

試訳:
「さして事情に精通しているようには見えないのですが」と、キラン・ベイが捕虜を指ししめして、「彼ら、何者でしょう?」(1)
「思考を読んでわかったんだけどさ、あのふたりは科学者だよ。名前はバーリル=トルンにヴェイー=トアク。ぼくがとっちめるべきかなあ……」
「いますぐにでも!」キラン・ベイが大声で、「わたしも同席します。あなたではわからない概念が出てくるかもしれませんから、グッキー」
 これはキラン・ベイの誇張ではない。実験コマンドの首席科学者として、まちがいなくグッキーよりもこうした分野の経験を積んでいるのだ。
 ラール人は無表情だが、これはわざとかもしれない。とにかくふたりがなにを考え、感じているかはその顔からは読みとれない。思考が手に取るようにわかるグッキーにとってはどうということもなかった。だが、恐れていたとおり、専門用語はさっぱり理解できない。ラール人自らに、トランスレーターを介して知識を開陳させなければなるまい。(2)
「よく聞いてよ、バーリルにヴェイー、自分の生命がまだ大切だったらね。そちらの実験は失敗したし、こっちのもそうだ。そのせいで、一蓮托生窮地に陥ってるってわけ。なにが起きたか、それはなぜかを教えてよ。そしたら、あんたたちの身柄を保証してあげるし、ぼくらといっしょに脱出できる」
 答えはない。グッキーはテレパシーで“インパルス変調フィールド”とでもいうべき概念をとらえた。なんのことやらわからないし、そもそもいまの問題とはまったく関係ない可能性もあった。だが、重要かもしれない。
「話してくんないと、あんたたちをここまで連れてきたでぶが、自分なりの方法を試すことになるんだけど。あんまり気持ちいいもんじゃないよ。だから、理性的になってよ、おふたりさん」ふたたび思考をとらえたグッキーは、意味のわからない概念を忘れてしまう前に投入することにした。「こっちもね、転送実験でミスを犯したことはわかってるんだ。イコライザーとインパルス変調フィールド、だっけ? ほら、ぼくらが情報通なことはわかっただろ? でも、あんたたちが正直に話してくれれば、こっちとしても助けやすいんだけどなあ(3)
 このブラフは効いた。はじめてラール人の顔に驚愕らしきものが浮かんだのだ。バーリル=トルンが、
「さよう。諸君が見落としたのはイコライザー。知っていながら、なぜそんなことに?(4)
いんや、いま善意を証明するために話すのは、こっちじゃなくて、そっち。(5)ひょっとして、ぼくの考え、まだわかってくれてない? ここから脱出したあと、ぼかァローダンにこう報告したいんだ。捕虜にしたラール人科学者二名は実に協力的でぼくらを助けてくれたよ、って。あんたたちの側にとっても、多大な貢献とみなされるんじゃない?」
 しばしの思案の後、バーリル=トルンが口を開いた。
「テラナーとの共同作業は、ずっとわれわれの望むところだった。だが、きみはテラナーではないな」
 グッキーはため息をついた。
「いいかげん聞きあきたセリフだね。もちろんぼかァ、テラナーじゃないけど、その一員なんだ。外見で判断しちゃダメだよ、バーリル! それで、転送機の誘導コンタクトがどうしたって?」にんまりと笑って、「ぼくが事情通だってことの、最後の証明さ。さ、いいかげん技術的問題についてしゃべっちゃってよ。ぼくが報告書でふたりのことをポジティヴに書けるようにさ。それに、あんまりためらってると、ぼくら全員おだぶつだよ」
 キラン・ベイ博士は、グッキーがテレパシーによってラール人から引き出した概念に気づいていたが、まだ確固たる手がかりをつかんではいなかった。失敗した転送実験にまつわる事実関係のいくばくかを予感してはいたものの、あまりに漠然としすぎている。
 バーリル=トルンが説明しかけたとき、司令室のドアが開いて若い科学者がとびこんできた。格納庫で超重族に対処していた男だ。手には銃身のほとんどない軽インパルス銃をにぎりしめている。(6)
 居ならぶ人々の驚愕した顔に気づくと、銃をおろして、
「エネルギーが尽きてしまって、あやうく巨人どものひとりに殺されるところでした。(7)間一髪で逃げだしたのですが、やつ、きっと追いかけてくるにちがいありません……」
「どうして替えの銃を持ってもどらないの?」と、ナラが鋭くたずねた。
「そんな時間なかったんです、艦長! いまにもここにやってくるはずで……」
 グッキーはすでに、急速に司令室に接近しつつある超重族の思考をとらえていた。自分をこんな状況に追い込んだラール人二名を殺すつもりだ。しかし、いまのグッキーにはわかっていたが、このふたりこそ、かれらを確実な死から救い出せる唯一の存在でもあるのだ。(8)
 超重族が司令室にあらわれるより早く、テレキネシスでつかみかかった。迅速かつ断固たる行動以外、手段がみつからなかったがゆえの、苦渋の決断である。(9)
 通路で、何か重たいものが床に落ちる音がした。だれかが咳きこみ、くぐもった叫び声がして――静寂が訪れた。
 ナラと若い科学者がドアへと走り、外をのぞき込む。戻ってきたふたりは顔面蒼白になっていた。
「超重族が……」科学者はつかえがちに、「あれは、わたしを追ってきたやつです。通路に倒れて――死んでいる……」
 ナラがグッキーに目で問いかける。ネズミ=ビーバーはうなずいた。
「きっと心臓発作だよ」と、つぶやくように言っただけ。
 無言のまま、ナラは制御卓のシートに戻った。
 キラン・ベイがラール人たちに向きなおって、
「それで、なにがまちがいだったんだ?」
 今回、バーリル=トルンを妨げるものはいなかった。
「諸君は転送機コンタクト間におけるインパルス変調フィールド内のイコライザーを見落とした――それがすべてだ」グッキーに視線をむけて、「満足かね?」
 もしこの瞬間、グッキーが途方にくれたとしても、それは表にはあらわれなかった。(10)おおまかな同意をしめすキラン・ベイの視線をうけて、
「うん、充分だ。あんがと、バーリル=トルン。これから、ミスを修正してみる。手遅れでなきゃいいんだけど」
「おそらく大丈夫だろう」と、ラール人。「試験機体は超光速エンジンを搭載しているわけだし」(11)
 最後の指摘に、キラン・ベイの顔が目に見えて明るくなった。口に出せずにいた質問の回答を得たとでもいうように。ネズミ=ビーバーの腕をとると、ナラ・マリノワたちのもとへもどる。
「問題は解決した、と思う。捕虜はどこかのキャビンに軟禁した方がいいかもしれない。それでもまだ、われわれが五里霧中にいることを知られるわけにはいかないから」
 いまやテンダーのサイズは通常の五倍だった。司令室も広大な部屋と化していたが、制御機器は拡大されていなかった。なんとも説明のつかない現象だ。
 ラール人二名を巨大化したキャビンに収容した後、ナラが首席科学者にたずねた。
「超光速エンジンといっていたけど、カルプ・コンヴァーターのことかしら?」
「ほぼ確実に。おそらく、カルプを起動することで送り出しフィールド内のインパルス変調が促され、いわゆるイコライザーが機能しはじめるんだ。(12)これまでは、五次元エネルギー場の交点が正確に計算されていれば、送り出し効果は自動的に生ずるとされてきた。その点を、フィオラ博士とツルボシェヴスキー教授は見落としたにちがいない。ふたりの指示は矛盾してるし、混乱してる。まだ修正が可能か否かはさておいて、われわれ、やってみるしかない」
「言いたいことはわかったわ」と、ナラがやや不安げに、「危険ファクターはどのくらい?」
「非常に大きい。だが、いまの絶望的状況ではさして意味がない。やってみるべきだ。問題は、コンヴァーターがまだ機能するかだが」
「テンダーが周回軌道をはずれてしまわない?」(13)
「カルプは空転させるんだ、ナラ。推力を生みだす必要はなくて、余剰五次元エネルギーを送り出しフィールドにまわすんだよ」
「どうして? あの大食らい(14)にはすでに超空間からじゅうぶんなエネルギーが送り込まれているはずよ。それに比べれば、カルプが生成するエネルギーなんて微々たるものじゃない?」
 キラン・ベイは肩をすくめた。
「わからないんだ! すべてが一見非論理的で、ノーマルな悟性では理解できそうにない。ある推論は別のと矛盾するし、ひとつの主張は前のとまるでちがって聞こえる。だから、わたしに説明を求めないでくれ、ナラ。わたしには無理だ」
「ぼくもだ」と、グッキーが白状して、ダライモク・ロルヴィクにバトンタッチした。「あんたなら、いけるんじゃない?」(15)
「わたしはノーマルであるからして、無理」巨漢はそういうと、周囲を見まわした。座る場所をさがしたのだが、あいにく椅子は拡大されていなかった。(16)「いいかげん、何か食えるものをもらえんかね」
「あの御仁、考えることといったら食べることばかり!」(17)ヘルタ・ドレンと小声で言葉をかわしていたイルミナが断言した。「わたしは空腹なんて感じないわ!」
 ナラが何かを言いかけたとき、だれも予期していないことが起こった。(18)
 ソルと白色矮星の強い重力場が超空間から流れこむ膨大なエネルギーと結びつき、依然有効なアンティテンポラル干満フィールドとの関係上“時間反動”とでもいうしかない効果が生じたのだ。
 それは人それぞれに異なる作用をおよぼし、四人のミュータントと十五名のテンダー要員は、数百万分の一秒のうちに散り散りとなった……。

テラのカウントダウン -15-

今回は、ちょっとつまんない数のお話。
アポル・デトロイヤー少尉はシガ人で、100人の特別コマンドを率いている。総勢100名である。ここ重要。

■252p

ハヤカワ版:
 部隊は四人ひと組で、同数のプラズマ容器を携行することにした。デトロイヤーが先頭に立ち、地下深くに通じるパイプを降りはじめる。

原文:
Daran mußte Detroyer denken, als er mit einer Gruppe von vier Mann und ebenso vielen Plasmabehältern einen senkrecht in die Teife führenden Belüftungsschaft hinunterschwebte.

試訳:
 それぞれがプラズマ容器を携えた部下四名のグループといっしょに地下深くへ通じる空調シャフトを降下しながら、デトロイヤーはそのことを思いかえさずにはいられなかった。

#前の段落のワリンジャーによる解説は、実は過去完了形。「ワリンジャー教授は~と説明したものである。」くらいが適当かと。レクチャーが終わって作戦はすでにはじまっている。

■254p

ハヤカワ版:
 四名ひと組で二十グループにわかれた部隊は、こうしたセクションをたどって、問題のプラズマ容器に到達することになっていた。かなりの遠まわりになるが、この際しかたない。

原文:
So kam es, daß sich Detroyers Einsatzgruppe, in zwanzig Gruppen unterteilt, auf Umwegen zu dem Zentralplasma durchschlagen müßte, das Nathens Bio-Gehirn darstellte.

試訳:
 したがって、二十のグループにわかれたデトロイヤーの部隊は、ネーサンの生体脳である中央プラズマまでかなりの迂回路をたどらなければならないということ。

#前の段落も、「エネルギー供給を絶たれたセクションを優先的に利用することになっている。病んだプラズマがコントロールしている場所はなるべく避けたい。」である。
#ところで、「四人ひと組」という原語はないわけだが、デトロイヤーたちは何名で行動していただろう?

■255p

ハヤカワ版:
 部隊はさらにパイプ網を進み、ようやく目標に到達した。先頭は三グループ、十二名からなる。

原文:
Detroyer legte Kilometer um Kilometer im Röhrensystem zurück – dann war er endlich am Ziel. Drei Einsatzgruppen von zusammen fünfzehn Mann waren schon vor ihm eingetroffen.

試訳:
 デトロイヤーは通風管内を一キロまた一キロとこなし――ようやく目標に到達した。すでに三グループ、総勢十五名が先着していた。

#最初にまちがえた数字にこだわって、「15人」と明記されているのに3名どこかへやってしまったわけだ。
#余談だが、次の段落は、先着した3グループがすでに仕事にとりかかっていた様子を描写している。これも過去完了形の文章。

冒頭で「100人の特別コマンド」と描写されている。100人を20で割れば、1グループあたり5名のはず。4×20=80で、20名の消息が不明なのを、伏線とでも解釈したのだろうか。少なくとも「3グループ15名」と出てきたあたりで、過去をふりかえってみれば答えはわかりそうなものである。
……お願いだから、数と格と時制くらいは、ちゃんと訳しておくんなまし。

以下、余録。

■260p

ハヤカワ版:
全太陽系人類がローダンの計画に賛成するまで、もう長くはかからないだろう。実際、過激派政党の反政府プロパガンダはすっかり下火になっていた。

原文:
Noch waren lange nicht alle mit seine Fluchtplänen einverstanden; ja, die Opposition forcierte ihre Hetzkampagne gegen ihn mehr als je zuvor.

試訳:
皆がかれの逃走計画に賛同してくれたなどとは、まだとうてい言えない。実際、野党の反政府キャンペーンの勢いはかつてないほどだ。

#次の段落、原文は aber ではじまる。反対は根強いけれど……である。接続詞まで読めないとは、思いたくないのだが?

時間ダイヴァー -1-

なんとゆーか、5秒で6万3000隻って、秒あたり1万2600隻? まあ、ソル=コボルト間は2000万キロ超とはいえ、かなーり無茶な作戦な気がするのだが……(笑)
ま、それはさておき。例によって以下はすべて試訳。

■9p

 地球が、全人類が、いまほど克明に隷属化の脅威にさらされたことは、かつてなかった。
〈どんな脅威も、多大な犠牲をはらい、文字通り最後の瞬間にではあっても、はらいのけてきたではないか。いつもその場にいたはずだろう!〉と、付帯脳が釘をさす。
 肩をすくめる。いまいましいほど多くのものが、われわれにかかっていた。わたしはプランの詳細を知る、ごく少数のひとりなのだ。

#いつだって、ぎりぎりなんだから。つーか、第三勢力の時代から、一歩まちがえば人類皆どれーな事態はよくあること。変に省略するから、肩をすくめる理由がぼやける。

■10p

 ひとりの将校が歩みよってくる。ふりかえると、痛いほどの憂慮を浮かべた顔と向かいあった。きっとわたしも、こんな表情をしていることだろう。

#顔をゆがめた、って。いや、ゆがんでるのかもしれないけどさ。

「うむ、すまんな。わかっている。コンタクトは保っているか?」
「は! 接続は良好であります。さしあたり太陽系が時間のどこにいるかはわかりませんが、シグナルがくれば確実に受信できます」
「ありがとう、マヘル!」といって、前に向きなおる。まもなく開始される、途方もない作戦に思いをはせて。

#ATGで未来にいれば、太陽系とコンタクトはとれない。あくまで、通信リレーの状況をたずねている。また、誤訳ではないが、zeitlich wo ……時間的にどのあたり、というちょっと捻った表現をストレートに“いつ”とやるのは、寂しい気がする。
あと、相変わらず、時制読めてないのか……?

■11p

二三週間、いや、もっと前か。ローダンを含めたメンバーで、われわれ、大計画をまとめあげたのだ。

#原語はRhodan und wir 。ローダンとわれわれ、である。まさか、「ローダンと朕」と読んだわけでもあるまい?

■12p

 作戦を指揮するのは、遠征指揮官からスライドした、わたし自身だ。自分のからだがこわばっていることに気づく。なにが起きるかわからない。強いて思考を本題へとひきもどした。テラナーの恒星転送機ツイン=ソルには、またしても試練が待ち受けていた。

#太古の遠征隊って、なんにゃ? 最後の文は、直訳すると「ツイン=ソルと呼ばれる、テラナーの恒星転送機は、再度テストされることになる。」……真価を試される、とか、そういうニュアンスだと思われ。確かに原文は sollte erproben だが、これを「テストすべきである」と読んだら、前の文章とつながるまい。

■13p

 ローダンはこれらの艦艇を太陽系で必要としている。乗員中の代替のきかないスペシャリストや、貴重な特殊機器も。どれも“大計画”と呼ばれる大胆不敵な試みの一部なのだ。このプランを用いて、われわれはラール人とヒュプトンから逃れてみせる。小さな衛星なら動かせるトラクター艦、高度な航行能力を持つラボや発電所、その建造に帝国が幾世紀を費やしたあらゆるタイプの大型艦。これら至宝ともいうべき貴重な特殊艦隊を、われわれは必要としているのだ。
 ……太陽系で!

#まだ、太陽系から逃げる説明ではない。逃げるために、太陽系にかき集める説明をしているのだ。「~必要としている。」は、前の段落にもあって、確かにクドい気はするのだが、それを省略することで文意が変わってしまうのはいかがなものか。

■15p

 ローダンはインペリウム=アルファで艦隊の到着を待っている。ジャンプのためには、わずか数秒間のインターヴァルしかない。全作戦が、連結された複数の大ポジトロニクスによってチェックされ、運行される。すべて決定するのは計算脳だ。最初の時間コンタクトの瞬間も、ジャンプ・インターヴァルの継続時間も。わたしのスペース=ジェットが最後尾で恒星三角の接点を通過し、同時にソル近傍に出現した際に発するシグナルを受けて、ATGフィールドが振り子運動を再開することになっている。

#アトランのジェットが完了シグナルを発する話は、あとで重要。これがちゃんと訳せてないのは、別にクナイフェルの原文のせいではない。

■16p

艦長たちはいずれも、自分のすべきことを正確に心得ている。加速し、それから制動をかけ、陣形をたもちつつ所定の位置へと移動すればいい。
 もし……すべてがうまくいけば。

#クナイフェルらしいというか。加速して(転送機をくぐって)ブレーキをかけて(太陽系に場所をかえて)陣形を組みなおす――と読むべきだろう。
で、原文は mußten sich schieben なので、「移動せねばならない」はずだが、うまくいかなかったら宇宙戦が追加で待っているので、敢えて「~すればいい」としてみた。

■17p

 大スクリーンを見つめる。陣形を組んだ宇宙船が星々のはざまの空間を遊弋している。

#まだ、送り出しポイントへ向かっちゃダメでしょ。シグナル来てないんだから。

「注意! こちらアトラン。たったいまシグナルが届いた。受信態勢をとれ!」

#このあと、時間シグナル到着によって修正されたタイムテーブルが送信されて、各艦の生体ポジトロニクスが受信する。(18p)……こっちもまちがえてるな(苦笑)

■20p

 インターヴァル継続時間をしめすブザーがとだえた。わたしを含め、全員が、疑念もあらわに顔を見かわす。それから、ローダンは作戦終了を告げるわたしのジェットからのシグナルを待つだろう、と考える。わたしはかぶりをふると、前方をさししめした。

#たぶん、原文が Impuls と Interval をまちがえている。「5秒すぎちゃったよ、どうしよう?」「ペリーはわたしが着くまで待ってくれるさ!」……楽観的~♪
最後の文章、「わたしは思考ざつねんをふりはらうと、前進を指示した。」くらいでもいいかなあ。

■21p

 非物質化・再物質化の苦痛にそなえて身をかたくする。わたしはシグナル・ボタンに指をあてがった。周囲は暗赤色に輝いている。そして、ひきつるような痛み。たちどころに、周囲の光が黄白色に変わった。意識をうしなう直前、スイッチを押しこんだ。
 われわれ、ほんとうに目的地に着いたのか?

#なんでそこまでいじるかな。ま、転送が終わってから失神ってのも変な話なのだが。
……とゆーか、なんでそこだけマニュアルなんだ? >アトラン
原文は、気力がわいたら追加するかも。

……その前に、「超空間をこじあけて -尋問編-」がなあ(爆)

超空間をこじあけて 待機編

■147p

原文:
Irgendwo in Imperium-Alpha warteten Perry Rhodan und Reginald Bull auf den entscheidenden Moment, sich ebenfalls zu der Raumstation transmittieren zu lassen. Die Wissenschaftler, die den ersten Versuch mit Kobold unternehmen sollten, waren bereits dort.

#決定的瞬間に地球に逃げかえる予定……ではない。

■148p

原文:
“Was halten Sie von Paradies VII, Irmina?” fragte Balton Wyt gerade und streichelte zärtlich über den Arm der hübschen Mutantin. “Ich meine, ein Urlaub täte uns allen gut. Wenn wir das alles hier hinter uns haben, könnten wir doch mal darüber reden.”

#いっしょに休暇をすごす仲でありながらつれないそぶり……なわけではない。イルミナの名誉のために、そこんとこ、よろしく。

原文:
“Sicher, so gesehen haben Sie recht, Balton. Aber, um ehrlich zu sein, ich kann jetzt nicht an Urlaub denken. Außerdem könnten uns die Laren eine Strich durch die Rechnung machen – immer vorausgesetzt, ich würde auf Ihren Vorschlag eingehen. Galuben Sie nur nicht, man wurde sich nicht auch von der anderen Seite aus für mich interessieren.”

#einen Strich durch die Rechnung machen は、だれかの計画を不可能にする、という熟語。
#訳文だと、なんだかイルミナ、なにも考えてないみたい……。とゆーか、バルトンとラール人を天秤にかけてどうする(笑)

■149p

原文:
“Wer sind die Unverschämten, Irmina? Es sollte doch jeder endlich begriffen haben, daß nur ich es bin, der Sie verehrt und liebt. Na schön, dann schlage ich Ihnen ebenfalls einen solchen Vertrag auf Zeit vor. Willigen Sie ein?”

#jeder……みんなが、わかってくれなくっちゃ、である。そうしたら、邪魔な求婚者なんか出てこないのにと、バルトンは言いたいと思われ。

原文:
“Halt den Mund!” rief Balton Wyt und wölbte seine gewaltige Brust ein Stück weiter vor. “Das war alles vor Irminas Zeit.” Er schüttelte drohend die Faust.

#同時に何人もプレイボーイしてるわけでないといいたいらしい。一応、バルトンの名誉のために。
#マガン訳:ぜんぶイルミナ紀元前のできごとじゃないか。

原文:
Wenn ich noch rechnen und zählen kann, dann ist sie mit der Plattform jetzt nur noch vierzig Millionen Kilometer von ihr entfernt.”
Der Hinweise hatte gesessen.

#指摘に一理もなにも、数字がちがっている。「太陽から」von ihr の距離を述べているのだが、訳文だと地球からの距離のようだ。

以下は、試訳以降の文章から:

■150p

試訳:
 スクリーンが明るくなり、ペリー・ローダンの顔があらわれた。
「そろそろよかろう、準備にかかろう」
 ロルヴィクが目をさまし、
「大執政官、いつから詩をひねるように?」と、ねぼけまなこをこすりながらたずねた。

#原語は”Es ist soweit, macht euch bereit.”。 期せずして韻を踏んでいる。ま、これは無視する方がふつうか。

■151p

試訳:
「コボルトが発生させる五次元エネルギー単位だが、きみの見解では、転送効果を保証するに足るのだな?」
「自信があります。それどころか、実際のエネルギー量は予期していたより高いという計算結果が出ています。あるいはコボルトの質量、思っていた以上に大きいのかもしれません。最終結果はまだ出ておりませんが」
「だが、エネルギーは充分だと?」
「まちがいなく!」

#コボルトのエネルギーで転送機を動かすのだ。影響しないと困るぞ。

■152p

試訳:
フィオラ博士はローダンと並んでブリーに歩みより、

#いままで博士はローダンと会話していたはず。

なんというか……読みにくいわけである。つじつまあってないんだから。
他に『雷神基地』でも、フリィルが雌であるとか(ボクっ娘?)、カルトプはテラへの協力を断った結果たびかさなる尋問にさらされたとか、困った話はいくらでも出てくる。
こんなやっつけ仕事してたら、読者はどんどん減っていくぞ~。

超空間をこじあけて -1-

とりあえず、146pからの一幕について、以下に試訳をあげる。

 インペリウム=アルファでは地球に残っているミュータントたちが出動命令を待っていた。テレキネスのバルトン・ウィトは、毎度のごとくイルミナ・コチストワに言いよっている。華奢なキルギスタン女性は、精神の力で細胞核を操作するメタバイオ変換能力者である。
 粘液質の超心理リフレクター、ダライモク・ロルヴィクは、しばらく会話に耳をかたむけていたが、やがてあきれたように目を閉じ、太鼓腹のうえで腕を組むと、狸寝入りを決めこんだ。身の丈二メートル以上、おまけに人並みはずれた肥満体なので、カウチひとつを占領してしまう。
 三つ目のスツールにはネズミ=ビーバーのグッキーがいて、バルトン・ウィトとイルミナの観察でヒマつぶしをしていた。
 目前にせまる任務については、心配などしていない。この部屋から、転送機を用いれば時間のロスなく宇宙ステーション“オブザーヴァーI”にたどりつける。このステーションは数日来、三千三百万キロメートルの距離をおいて太陽を周回しており、つねにコボルトから“目を離さない”でいた。
 インペリウム=アルファにはペリー・ローダンとレジナルド・ブルも待機しており、決定的瞬間には転送機で宇宙ステーションへ赴く予定だ。コボルトで最初の実験をおこなう科学者たちは先発している。
 オブザーヴァーIはもともと実験コマンドに所属していた直径八百メートルの球形艦。改造されて、規格外なまでに高出力の核反応炉や実験施設などを搭載している。
 太陽から二光分足らずとあって、むしろ水星軌道の方が近いのだが、それでも白色矮星までわずか四十光秒――適切なポジションを保っている。太陽、コボルト、オブザーヴァーI……三つの天体は見えざる力にむすばれるように、一直線の位置関係にある――ある意味、そのとおりなのだが。
「パラダイスVIIなんかどうだい、イルミナ?」と、バルトン・ウィトが美しいミュータントの腕をそっと撫でつつ、「いっしょに休暇をすごすのにってことだよ。この作戦が一段落ついたら相談しないか?」
 イルミナ・コチストワはきびしい視線をむけて、
「あなた、ほかに考えることはないの?」
 テレキネスはきっぱりとかぶりをふり、
「いや、ぜんぜん。見方を変えれば、いま計画を練るってのは、論理的でもあるんだ。もう少ししたら、そんな時間はなくなるだろ?」
 グッキーが押し殺したくすくす笑い。すこぶる楽しんでいるらしい。ロルヴィクがいびきをかきはじめても、バルトンは気にしない。もう何時間もこの部屋で待機しているのだ。モニタースクリーンも暗いまま。
「たしかに、そうかもしれないわね、バルトン。でも、正直言って、いま休暇のことなんて考えられないの。それに、いつラール人に計画をだいなしにされるかわからないし――あなたのお誘いを受けたと仮定した場合だけどね。だいたい、ほかにもわたしに関心をもってくれる人がいるとは思わないの?」
 バルトン・ウィトは深く息を吸いこんだ。
「ほかにも? まさか、プロポーズしたやつがいるのか?」
「何人もね」イルミナは平然とうなずいてみせた。
 バルトン・ウィトは再び大きく息を吸いこんで、
「そのあつかましい連中はどこのどいつだ、イルミナ? きみを真に崇拝し、愛しているのはわたしだけだと、皆いいかげんに理解すべきだ。まあいい、ならばわたしもいま、おなじ申し出をしようじゃないか。受けてくれるね?」
「あら、ちょっといきなりすぎない?」彼女はにべもない。
「いつもいきなりなんだ」と、グッキーが口をはさみ、茶目っ気たっぷりにニヤリと笑う。「ほかの女性にお熱なときもそうだった。たとえば、あわれなコーネリア・スター――宇宙港に近いハイパー通信センターに勤務してるんだけど――彼女がコンタクトレンズを調整する間もないうちに、目の前のテーブルには婚姻届。それに、ベリナ・デゴルのときも……! かわいそうに、まだお子様なのに、すっかり失望……」
「黙っててくれ!」バルトン・ウィトはそうどなると、巨大な胸郭をいっそうふくらませて、「ぜんぶイルミナに出会う前の話じゃないか」と、こぶしをふりまわした。「だいたい、なんで口をつっこむんだ、ちび助? あんたにゃ関係ないだろう! そんな暇があったら、あんたのナラが太陽に落っこちないか心配してやりな。わたしの計算が正しければ、彼女いまごろ、太陽から四千万キロメートルぽっちのとこにいるはずだぞ」
 その計算は正しかった。

雷神基地

引用の域を超えてしまいそうなので、今回原文はなし。
んで、“いくつか”例を挙げるにとどめる。

■9p

 ローダンと、その科学・政治・防衛スタッフは、これで一安を得たものと信じた。アンティテンポラル干満フィールドも数分後固定ではなく、時間モデュレーター投入の結果、未来界を“遊泳”していた。当面はラール人と協力者たちをふりきれたと思われたのだ。
 超重族エイモントプの天才を考慮に入れるものはいなかった。パリクツァ艦隊で第二ヴェシルの地位にあるこの環境適応人は、水星にある主干満転換装置破壊の命をうけ、太陽系に侵入していた。
 エイモントプは、“コボルト”物質化後に生じた予想外の事態に、じつに適切に対応した。銀河系すべての種族に畏敬される太陽系秘密情報局は失策を犯し、大執政官ローダンは未曾有の窮地に陥った……
『人類の年代記』345巻IX章から抜粋

#虚をつかれた、というのが原文の真意かと。
#抜粋の法則はWikiでもわからなかった。原語は Band 345/IX なので、3450年代の巻の9章、つまり3459年の章と、読んで読めないこともない。

■15p

「どちらへ向かうおつもりです?」
「第八惑星だ、アーセン。海王星だよ」
「どうやってそこまで? テラナーのことです。現在の混乱も、じきに収束するでしょう」
「心配するな。構造震動が味方してくれる。適当な機会が訪れるまで耐え、超光速に移行して、ローダンの部下どもがなにが起きたか理解するより早く潜伏する」

#海王星星域までいく方法を訊いているのだ。

■31p

 艦長とカルトプは向かいあって座った。エイモントプの肩にはフィリル。ふたりのあいだを分厚いガラスが分かつ。副官の横の壁は赤と黄色の発光板で埋めつくされている。いま点灯しているのは、すべて赤。
 ヴェシルが自分の命令と当時の状況を説明。壁のマイクロフォンが情報を拾ってポジトロニクスに伝達する。すでにあらゆるデータが詰めこまれているので、艦長の陳述は形式にすぎない。
「実際問題」と、エイモントプは討議の核心について、「ソル星系の状況は発想の転換を強いるものであった。命令を遂行することは、なんら結果をもたらさぬ自殺行為にいたっただろう」
「異議を申し立てます」と、カルトプ。
「われわれは、テラナーが第二の恒星を持ちこんだのを発見した。その理由はまだ解明できていない。とはいえ、この事実は異常かつ重要であり、そこから生ずる義務はただふたつ。第一、ローダンのもくろみを可及的すみやかに探りだすこと。第二、そのうえでソル星系を脱出し、銀河系第一ヘトランに報告すること。ここでなにがおこなわれているかを、レティクロンは知っておくべきだから」
「太陽系から離脱する手段がないではありませんか」と、カルトプがするどく指摘。「アンティテンポラル干満フィールドに包まれており、したがってあなたもこの星系に閉じこめられている」
「干満ロックが存在するはずという科学者たちの報告は、そちらも承知しているだろう。傍受した通信内容からも、その存在は明らかだ。テラナーたちは、まもなく特別作戦から帰還する予定のグッキーめが通過する、航程通路とやらを口にしていた。予定表の第一段階をクリアしたら、その時間ロックを抜けて太陽系を脱出すればよろしい」
 赤い発光板の大半が消灯する。かわりに次々と黄色灯が輝きだす。カルトプは青ざめた。
「副官の行動については、氏族法に基づき、叛乱とみなした。衆目の前での議論を強いる試みは、艦内の士気を脅かした。わたしの言うべきことは、以上だ」
 エイモントプは副官を見やって、
「さ、きみの番だ」
「第二ヴェシルのお言葉にはむかって、なんの意味がありましょう」
「もっと早く、それを頭にたたき込んでおくべきだったな」
 カルトプの横の壁は、いまや黄一色だった。
 副官はそれをちらりと一瞥しただけ。
「ポジ陪審は被告に、作戦を脅かした罪により死刑を宣告します」天井にかくされたスピーカーから、やわらかな女性の声が響いた。「被告は惑星地表への追放処分となります」
「だ、そうだ、カルトプ」
「補足事項として」と、ポジトロニクスの合成音声はつづけて、「パリクツァ艦隊第二ヴェシルの了承があれば、被告にはチャンスが与えられます」
「聞かせてくれ」と、エイモントプ。
「太陽系第一惑星への偵察船を派遣する必要がありますが、当該エリアの軍事的状況に鑑みて、コマンドの生還率はきわめて低いものとみなされます。また、これを率いることにより、カルトプは本来の命令の一部なりとも果たす可能性を得られます」
「ポジトロニクスが皮肉を言えるとは知らなんだ」エイモントプは立ちあがって、「よかろう。白色矮星に肉薄するコマンドをカルトプに指揮させる。われわれが早急に必要とする情報を手にいれてこい」
「ありがとうございます」と、副官。「ご信頼いただける証をお目にかけましょう」
「詳細な判決理由はご入用ですか?」ポジトロニクスがたずねる。
「いや、けっこうだ!」
「では省略します。カルトプも了解したと思われますし」
「ああ、している」

#Posijur は Positronische Jury ……「ポジトロン陪審員」と読むべきだろう。無数のランプ(発光板)が票決。有罪(黄色)の数が増えていくのが、原文を見るとわかる。
#セリフを誰が言っているかがめちゃくちゃ。カルトプを「わたしの将校」と言ってるんだから、そのセリフはエイモントプ。最後のセリフも、ich=カルトプ。
#ま、この裁判、出来レースみたいで、異議アリを聞いてもらえないよーだが。

■80P

「拙速は禁止だ、諸君。自分は安全だとも思うな。テラナーも闘うことを知っているのだと、われわれ、またしても肌で感じたばかりなのだから。なにが起きるか予測がつかない。ゆえに、白色矮星に慎重に接近するのではなく、断固として、全力で打って出るのだ。あの星をつかむ諸君の勇猛さに、われわれの成功はかかっている」

#これだと科学者への訓辞つーより決死隊を送り出すみたいだけど。

■82p

「わたしはちょっとくつろいでいただけだ。退屈というわけじゃない」先に進もうとしていたローダンは、ネズミ=ビーバーへと向きなおって、「きみ、駐車禁止をくらわなかったのか?」
「ああ、グライダーがね」
「わたしの言いたいことはわかるだろう。管理局で聞かされたぞ、しばらくきみが顔を見せなければありがたい、と」
「ちょっと恐竜を逆立ちさせたくらいだよ? やりすぎだなんて言わないでしょ、ペリー?」
「とんでもないぞ、ちび。四百トンもある生物にそんなアクロバットを無理強いしたら、それだけで……」
「万事無事だったってば。そりゃ恐竜はちょっぴり咳きこんだかもしれないけど、そのあとはぴんしゃんしてたんだから」
「管理局では、もう少しちがった話を耳にしたがね」
「ペリーってば!」
 無邪気な瞳で見あげてみせたが、それにひっかかるほどグッキーのことを知らないローダンではなかった。長々と論議する気もなかったので、「ちょっとでも苦情が出たら消えてもらうぞ、グッキー。いいな?」
「わかってたんだよ、あなたのとこなら退屈しないってさ、ペリー」

#駐車禁止 Parkverbot は、流れからすると「出入禁止」くらいの意味か。
#現在完了形なので、逆立ちさせたのは過去の実話。
#ここはたぶん、笑うところなのだ。

以上ぜんぶ試訳。ま、なんだ。「その翻訳ソフトはニセモノだ。食べられないよ」(食べるな
他にも、段落まるごと意味がちがうとか、多すぎる。あるいは日本語化してからいじりすぎなのか。こうもちがうと超訳ともいえまい。
翻訳ソフトを使用しているというのは噂だが、もし事実だとしたら教育が足りてない。事実でなかったら……

カリブソの監視者 -現在1-

■22p

ハヤカワ版:
標識星ガンマ
原文:
Eckstern Gamma

試訳:
頂点星ガンマ
#恒星三角形(Sonnendreiecke)を構成する頂点(Ecke, 角)のひとつ。500話で出てきたハイペロン=ガル南のような標識星とは、意味合いがまるでちがう。

ハヤカワ版:
 メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアの親友だった。とはいえ、有名な“カピンの断片”を目撃したことはなかったし、したくもなかったが。

原文:
Mentro Kosum war einer der weniger Männer, die sich Alaska Saedelaere gegenüber so unbefangen verhielten, als existierten weder das Cappin-Fragment noch die Plastikmaske im Gesicht des Transmittergeschädigten.

試訳:
 メントロ・コスムは転送障害者アラスカ・シェーデレーアに対して、顔のカピン片もプラスティック・マスクもなきもののようにふるまう、ごく少数の人間のひとりである。
#次文の「それでも、」も原文は sogar であり、「それどころか、」となる。

ハヤカワ版:
 今回は礼儀正しくノックをしてからドアを開け、

原文:
Auch diesmal war Anklopfen und Öffnen eins,

試訳:
 今回も、ノックとドアを開けるのはほとんど同時だった。
#礼儀正しいどころか、なんのこだわりもない(unbefangen)わけで。

■24p

ハヤカワ版:
カピンの断片のせいで、完全に変化してしまったんだ。

原文:
Der cappinsche Organklumpen kann Sie weitgehend verändert haben.

試訳:
カピン片のせいで著しく変化してしまったとも考えられる。
#人間じゃないの、決定事項なのか?(笑)

ハヤカワ版:
「わたしと飛ぶのはいやだと?」

原文:
“Wollen Sie mir die Lust am Mitfliegen nehmen?”

試訳:
「わたしに同行する気をなくさせようとでも?」
#「行くのはやめたとでも言わせたいのか?」くらいでもいいかと。

■25p

ハヤカワ版:
「旦那はいつも、スタート直前に乗ってくるんですよ。とさかをぴんと立てて。そういうことですぜ、親方」

原文:
“Der Meister kommt immer erst kurz vor dem Start an Bord. Haube auf und ab. So geht das, Korpsführer.”

試訳:
「巨匠たるもの、いつだってスタート直前に乗りこんで、フードをちょいとかぶる。それでいいんですよ、隊長殿」
#なにかの引用だったりするのだろうか、訳文意味不明。Haube はおそらくサート・フード(SERT-Haube)で、ロイドはミュータント部隊(Mutantenkorps)の隊長である。

ハヤカワ版:
 顔をしかめた。どうやら、自分は歳をとらないらしい。

原文:
Ein Mann, der sein entstelltes Gesicht hinter einer Plastikmaske verbergen mußte, alterte nicht.

試訳:
 その醜貌をプラスティック・マスクにかくした男は、歳をとらないもの。
#抽象表現だが、マスクに隠れて年齢不詳になる、くらいの意味か。

ハヤカワ版:
実際、いまや問題は、自分は人類なのか、それともカピンか……そこに収斂するように思えた。

原文:
Allerdings erhob sich die Frage, ob Alaska ein Mensch oder ein Cappin war.

試訳:
とすると今度は、自分が人間なのか、それともカピンかという問題が生ずる。
#カピンなら歳をとらないわけではない。

■26p

ハヤカワ版:
 自分が人間だとは思っているが、他人が正常だと考えても無意味だった。むしろ、自分が異常なのだと考えるケースのほうが多い……

原文:
Alaska sah sich selbst als Mensch – aber er hatte begonnen, von den snderen als den Normalen zu denken und zu sprechen, was nicht mehr und nicht weniger bedeutete, daß er sich selbst als Abnormalen ansah.

試訳:
 自分が人間だとは思っているが、だんだんと他者を“正常な人間”と考え、またそう呼ぶようになりつつあった。それはアラスカが自身を“異常者”とみなしたことに他ならない。
#原文を分解する場所、まちがえたと思われ。

■27p

ハヤカワ版:
それに、これほど壮大な実験を完遂できれば、科学技術は大きく進歩する。できることはすべてやってみるつもりだった……

原文:
Rhodan war sich darüber im klaren, daß von der Planung bis zur Durchführung eines solchen Experiments wissenschaftliche und technische Großleistungen zu vollbringen waren, aber er wollte nichts unversucht lassen.

試訳:
これほどの実験の立案から完遂までには、科学的かつ技術的にも大仕事をなしとげねばならない。だが、できる手はすべて打っておきたかった。
#waren zu vollbringen を、可能とみるか、必然とみるかだが、接続詞が aber なので、負担がかかる「~ねばならない」とすべき。

■28p

ハヤカワ版:
非常時には、わたしが指揮をとることもある」

原文:
Im Alarmfall kann ich sogar dem Kommandanten Befehle geben.”

試訳:
それどころか、非常時には艦長に命令を下すこともある」
#と、その艦長に対して言っているわけで。

■29p

ハヤカワ版:
「くれぐれも連絡を絶やさないでください」と、ローダンが念を押した。

原文:
“Die Übereinstimmung darf nicht verlorengehen”, warnte Rhodan.

試訳:
「くれぐれも申し合わせのとおりに」と、ローダンが念を押した。
#シンクロ、と訳すべきだろうか。具体的には、ローダン側がATGフィールドを解除し、同時にアトラン側で10隻の部隊が分離・陽動をおこなう。つづく文章もごっちゃになっている。

ハヤカワ版:
「一瞬ですむはずだ!」と、アルコン人が応じる。

原文:
“Es wird auf die Sekunde klappen!”, versprach Atlan.

試訳:
「一秒たりと遅れはせんとも!」と、アトランが約束する。
#klappen は「うまくやる」。auf die Sekunde は「一秒にいたるまで」。

■31p

ハヤカワ版:
「コスムが疑念を持っています。正確な理由はわかりませんが、カピンの断片の影響が強まるのを恐れているのでしょう。シェーデレーアのほうは耐えています」

原文:
“Kosum hat ihn unter Druck gesetzt. Ich weiß nicht, ob se richtig war, aber Alaska hat es ertragen. Kosum scheint zu befürchten, daß Saedelaere immer stärker unter den Einfluß des Cappin-Fragment gerät.”

試訳:
「コスムが圧力をかけていました。その正否は判断できませんが、アラスカは甘受したようです。コスムの懸念は、カピン片の影響が強まりつつあるというもので」
#これも、原文の分解位置がちがう。編修時に入れ替わった?

ハヤカワ版:
アトランは真顔になり、

原文:
Atlan verzog unwillig das Gesicht.

試訳:
アトランは思わず顔をしかめて、
#しかめ面が真剣な表情か否かはさておいて。

ハヤカワ版:
作戦指揮官

原文:
Stellvertretender Einsatzleiter

試訳:
指揮官代行
#アトランはちゃんと司令室にいるぞ。

ハヤカワ版:
テレカムで

原文:
an einen Interkomanschluß

試訳:
インターカム端末で
#これも編修ミスか。

ハヤカワ版:
「ちょうどいいタイミングでした」と、にこやかに、「スタートのようすを見ておくつもりでしたから」、

原文:
“Ich wäre sowiso in die Zentrale gekommen”, sagte Alaska. “Schließlich will ich den Start in allen Phasen auf den Bildschirmen miterleben.”

試訳:
「いずれ司令室には来るつもりでした。スタートのようすをスクリーンで見ておきたかったので」
#「にこやかに」は明らかに余計。あまりに内向的、と評した前文とも矛盾する。「呼ばれなくても司令室にくるのに…ブツブツ…」くらいのが流れ的にはマッチするはず。

■32p

ハヤカワ版:
「わたしが着用していないかどうか、それが心配なのだな?」

原文:
“Vielleicht hätte ich ihn nicht mitnehmen sollen.”

試訳:
「あれを持ってくるべきではなかったのか」
#あれ=殲滅スーツ。たぶん、着てなくても不気味。

■33p

ハヤカワ版:
飛翔生物の末裔

原文:
Flugwesen

試訳:
飛翔生物
#末裔かもしらんが、まだ、飛ぶはずである。

ハヤカワ版:
どの種族もその気まぐれに迎合したもの。

原文:
Sie beugten sich seiner rücksichtlosen Herrschaft,

試訳:
どの種族もその傍若無人な支配に屈した。
#あえて言えば、誤訳ではない。ないけど……orz

■34p

ハヤカワ版:
 ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。これまでも、たびたびラール人の表情を読もうとしたが、うまくいっていない。レティクロンとしては、この計画をいつでも実行にうつす用意がある。しかし、一方で責任を回避したいのもたしかだ。この種の殺戮には、七種族のヘトスの承認を得たほうがいい。

原文:
Dem Gesicht Hoghmar-Feerns war nicht anzusehen, was er von diesem Vorschlag heilt. Leticron hatte schon ein paamal solche Angriffe verlangt, doch bisher waren die Laren und die Hyptons nicht darauf eingegangen. Leticron hätte nicht gezögert, seinen schrecklichen Plan in die Tat umzusetzen, doch er wagte nicht, die Verantwortung dafür allein zu übernehmen. Gerade für solche Planetenmorde brauchte er die offizielle Zustimmung des Hetos der Sieben.

試訳:
 ホフマル=フェエルンの表情からは、これをどう評価したかはわからない。すでに何度かこの種の攻撃を要請したが、いまのところラール人とヒュプトンの了承は得られないでいた。レティクロンとしてはこの恐怖のプランを実行にうつすことに何のためらいもなかったが、責任を一身に負うことは避けたい。惑星殲滅ともなれば、七種族のヘトスの公的承認が必要である。
#うまくいっていないのは、表情を読むことではない。

■37p

ハヤカワ版:
立ちあがり、

原文:
Atlan richtete sich im Sitz auf.

試訳:
 姿勢を正すと、
#立ったらあぶないのでは。余裕ぶってみせていた(36p参照)のが、臨戦態勢に入った、ということ。

ハヤカワ版:
 攻撃はまだないものの、敵の十数隻はすでに《カリオストロ》を射程にとらえているはずだ。このままでは、最初のリニア航程にはいる前に、撃墜されてしまうだろう。

原文:
Es war noch kein Schuß gefallen, aber mindestens ein Dutzend gegnerischer Schiffe hatte Aussichten, die CAGLIOSTRO zu erreichen und zu vernichten, bevor sie auch nur sie erste Etappe ihres Fluges hinter sich gebracht hatte.

試訳:
 攻撃こそまだないものの、最低一ダースの敵艦が、《カリオストロ》がまだ飛行の第一段階すらこなさないうちに、捕捉殲滅しようと接近しつつあった。
#「~ともくろんでいた」わけだが、それだと緊迫感がないので。