カリブソの監視者 -過去1-

334巻から、新訳者さん登場である。
英語圏翻訳については、たいへん実績のある方で、SF・ファンタジー・ファンでもご存じの人も多いかと思われる……が……。ごめんなさい。『キルガードの狼』と『ダーウィンの剃刀』しか読んでないやm__m
ま、なにはさておき(ヲヒ

■9p

ハヤカワ版:
 切りたった崖の上に立つスコペインの長い髪と腰布を、風がなびかせる。あたりを眺めまわす顔は、誇りに輝いていた。
 しばらく息をとめ、唇を結んで、その光景を見つめたあと、大きな雄叫びを上げる。声は風に乗り、やってきた方向に流れていった。
 視線をトルグの平原に向ける。

原文:
Skopein stand hoch oben auf einem Felsplateau, der Wind zauste sein langes Haupthaar und das Tuch, das er sich um die Lenden Geschlungen hatte. Skopein hatte den Kopf in den Nacken gelegt, Stolz erfüllte ihn.
Eine Zietlang stand er da, mit zusammengekniffenen Lippen und angehaltenem Atem, dann entluden sich all seine Gefühle in einem wilden Schrei, den der Wind von seinem Lippen riß und davontrug, in die Richtung, aus der Skopein gekommen war.
Er senkte den Kopf und blichte hinab in die Ebene von Thorg.

試訳:
 切りたった崖の上に立つスコペインの蓬髪と腰布を風がなぶる。うなじにそらしたその顔は、誇りに満たされていた。
 しばし息をつめ、引きむすばれた唇から、万感をこめた雄叫びがはなたれた。風にさらわれた声は、やってきた方角へと運ばれていった。
 スコペインは頭を下げ、トルグの平原を見おろした。
#空~にむかってがお~。

■11p

ハヤカワ版:
 平原はまわりを高い山脈にかこまれ、雪におおわれた白い斜面がそれにつづく。

原文:
Hoch über ihm löste sich ein Schneebrett von einem überhängenden Felssturz. Die weiße Masse ballte sich zusammen und geriet auf breiter Fläche ins Rutschen.

試訳:
 スコペインの上方、ひさし状に突きだした岩棚から雪塊がこぼれ落ち、雪だるま式にふくれあがって、広い斜面で滑落がはじまった。
#雪山で大声を出すのはやめましょう、ということで……。

ハヤカワ版:
 最初に聞こえてきたのは、シーツが風にはためくような音だった。

原文:
Zunächste hörte es sich an wie das Flirren vieler Blätter im Wind,

試訳:
 最初に聞こえてきたのは、木々の葉が風にそよぐような音だった。
#「自然の声」であるから、そのまま訳せばよいと思われ。

ハヤカワ版:
 白い壁が谷に向かって移動していく。

原文:
Über ihm bewegte sich eine weße Mauer talwarts.

試訳:
 上方から、白い壁が谷をめざして突きすすんでくる。
#直訳としてはまちがっていない。ただ、スコペイン視点を排除してしまうと、緊迫感ゼロである。

■12p

ハヤカワ版:
 からだがひっくりかえり、なにかかたいものにぶつかって、感覚がもどった。

原文:
Er überschlug sich, prallte gegen etwas Hartes und wurde wieder davongespült.

試訳:
 からだがひっくりかえり、なにか固いものにぶつかったかと思うと、またそこから押し流される。
#あれよあれよというまに……という感じ。

ハヤカワ版:
 姿勢そのものは、平原に立っていたときと変わらない。

原文:
Noch immer lag er in der Haltung da, die er schon oben auf dem Plateau eigenommen hatte.

試訳:
 姿勢そのものは、崖の上で伏せたときと変わらない。
#単なる校正ミスだろう。

■13p

ハヤカワ版:
 カリブソは(中略)気力が充実している。

原文:
Callibso saß … beflügelt. Er hatte wieder zu hoffen gelernt, hachdem Resignation bereits zu seinem ständigen Begleiter geworden war.

試訳:
 カリブソは(中略)気力が充実している。すでに諦観が絶えざる道連れとなって久しいが、いままた希望をもつことを学びなおしたのだ。
#削除する必要があるとも思えないが……。

■14p

ハヤカワ版:
空間の“深さ”を操作し、時間の井戸と山脈の位置が正しく重なりあうようにする。
 一歩で空間のはざまをまたぎこえ……そこはもう山麓だった。

原文:
Er manipulierte in der Raumtiefe, bis er die richtige Faltenordnung zwischen dem Brunnen und den Bergen gefunden hatte.
Dann trat er mit einem Schritte durch zwei Raumfalten – unt stand am Fuß der Berge.

試訳:
“空間深度”を操作し、時間の井戸と山脈が空間の“折り目”同士で重なりあうよう調整する。
 “折り目”のはざまを一歩またぎこえると――そこはもう山麓だった。
#誤訳ではない。Raumtiefe、Raumfalte ともにフォルツの造語だろう。後のシリーズで Raumzeitfalte という造語が出てきたときには、“断層”と対比させる意味で“時空褶曲”と訳したが、今回については、後で“折りたたむ”という表現がくりかえされることから、最初の解説時に Falte を“折り目”とか“ひだ”と訳した方が良いように思われる、というだけ。

■15p

ハヤカワ版:
 太陽内に存在するのは、理解できなくもないが、雪のなかとはどういうことだ?

原文:
Es war nicht ausgeschlossen, daß diese hier von der Sonne ausging, aber die Wahrscheinlichkeit sprach eher fü die Stelle im Schnee.

試訳:
 太陽からという線も捨てきれないが、雪中になにかいる方が確率は高そうだ。
#「有機体起源」というのは、この場合、生物起源と同義。

■17p

ハヤカワ版:
単純な文章を構成し、それを口にする。

原文:
Er arbeitete die einfache Sprache aus und sagte:

試訳:
単純な言語を把握すると、それを使って、
#前回の登場時、生体翻訳機内蔵、みたいなことを言っている。

以下、余談:
「シーツが風にはためく音」という描写を読んだ瞬間、脳裏にぱーっと広がった情景。
ジュリー:アンドリュースが微笑むその背後の山麓には、なぜか大量の真っ白なシーツが……。
#ごめんなさい >『サウンド・オブ・ミュージック』

こ…このDUOがァァァ……

ハヤカワ版:
「どうです、重星デュオと名づけたら?」と、重星を見まもる天文学者が提案した。

原文:
“Der Vorschlag, die Sonnen Duo zu nennen, wird hoffentlich akzeptiert!” sagte ein Astronom.

試訳:
「この連星をデュオと呼ぶことを提案しますぞ!」天文学者のひとりが言った。
ちょっと気になったので、いまさらながら調べてみた。

 重星:(地球からの)見かけ上、接近して見える星
 連星:重力を相互に及ぼしあっている星

……頼んます >統括者
ちなみに、このあと重星デュオ、重星デュオと連呼しているが、原文では一部 Doppelsonnen 乃至 Zwillingesonnen と形容している箇所以外、ほとんど Duo、または Gulver-Duo である。
この話、科学的にまちがっている描写を段落ごとごっそり削除していたりするのだが……。文学的にまちがっているところも、どうかひとつorz

出典:クナイフェル『恒星三角形の呪縛』 6章以降

恒星三角形の呪縛 -1-

ずいぶん、久々。もっともまだ、時間と根性が足りないので、1章のみ。
実際問題、クナイフェルの文章、すごいもんなあ。

■138p

ハヤカワ版:
隣のスクリーンには、疎開プログラムに関する統計データが表示されている。

原文:
Der nächste Schirm brachte statistiches Zahlenmaterial, das mit der Versorgung zusammenhing.

試訳:
隣のスクリーンには、物資供給に関する統計データが表示されている。
#物資供給 Versorgung も疎開プログラム Evakuierungsprogramm も前の文章で出てくる語だが、あえて逆にする意味が不明。

■140p

ハヤカワ版:
驚くべき内容だ。だが、客観的な報告書を読めば、この遠征がただの冒険ドラマでないとわかる。

原文:
Es war eastaunlich, was damals geschehen war, obwohl die nüchterne Meldung nichts von den Abenteuern und dem Drama dieser Reise erkennen ließ.

試訳:
実際のできごとは驚くべき内容だ。だが、無味乾燥な報告書には、この遠征がいかなる冒険ドラマであったかは記載されていない。
#形容詞 nüchtern には「客観的」以外に、「しらふの」「実用一点張りの」「味気ない」等、どっちかというとネガティヴな意味合いが多い。で、書かれてないことを、思い出すのだと思われ >ブリー

■141p

ハヤカワ版:
 二隻はつねに破滅と隣りあわせにあった……つまり、理性の混沌に陥る危機にさらされるということ。それは大きな賭けであった。
 だれにも予測できない。この無謀な任務をひきうけたレルク・モプロンにも……。

原文:
Sie flogen mit ihrem eigenen Verderben – oder der Möglichkeit, ins absolute Chaos des Verstandes gestürzt zu werden – um die Wette.
Auch das konnte niemand ahnen. Nicht einmal Lerg Mopron, der dieses verwegene Unternehmen leitete.

試訳:
 二隻の飛行は、おのが破滅との――それとも、理性が絶対の混沌に陥る可能性との――競争であった。
 それもまた、だれひとりとして予想しえぬこと。この無謀な任務を率いるレルク・モプロンでさえも。
#大群到来による痴呆化が迫りつつあるという意味かと。um die Wette は「競って」という熟語。ハイフンではさまれた部分を除外して考えると、試訳のようになる。
#4/1 ちょいと追加修正

ハヤカワ版:
こめかみから耳にかけて、グレイのあざが目立ち、

原文:
An den Schläfen und vor den Ohren sah man graue Stellen.

試訳:
こめかみからもみあげにかけては灰色のものが混ざりはじめている。
#たぶん、毛髪のことだと思うのだが。何ヵ所か灰色の場所がある、わけなので。

■142p

ハヤカワ版:
銀河中枢部をうつしだすスクリーンには、蛇行する二隻の航跡が表示されている。

原文:
Er starrte auf den Schirm, der diesen Teil der Galaxis zeigte, der direkt in der sich schlängelnden Flugbahn der zwei Schiffe zu sehen war.

試訳:
スクリーンには、蛇行する二隻の軌道から視認可能な星域が表示されている。

ハヤカワ版:
「なにごとにも動じない者は……」と、レルクが眉ひとつ動かさずに、「……なにがあっても理性を失うことはない。保証する、きみならやりとげるはずだ、ウォルデン」

原文:
“Wer über gewisse Dinge den Verstand nicht verliert”, bestätigte Lerg unbewegten Gesichts, “der hat keinen zu verlieren. Ich bin sicher, Ihnen geht es nicht so, Worden!”

試訳:
「何があっても理性を失わないのは」と、レルクが眉ひとつ動かさずに、「失うべき理性を持ち合わせないやつさ。きみはそうではないと信じてるぞ、ウォルデン」
#無表情に冗談をいう船長……。

■143p

ハヤカワ版:
「どうということのない航法上の問題だ。われわれ、候補生時代には、はるかに困難な課題を克服したもの」

原文:
“Es gibt schwierigere Navigationsaufgaben, die wir schon als Kadetten gelöst haben!” schränkte der Kommandant ein.

試訳:
「候補生のころだって、もっと難しい操船をさせられただろう?」
#疑問文ではないが、この方が原文のままでシンプル。

ハヤカワ版:
二隻はエクスプローラー船として、特殊な改造をうけ、擬装も通常の直径八百メートルのスターダスト級とはまったく違う。この信頼性に定評のある球形船は、秒あたり二十五万キロメートルの亜光速で、数千の恒星のあいだを進んだ。

原文:
Die zwei umgebauten Spezialraumschiffe, deren innere Konstruktion und Aufteilung stark von der eines Achthundert-Meter-Schlachtschiffes der STARDUST-Klasse abwich, besaßen die kugelförmigen Rumpfzellen dieser bewährten Schiffskonstruktion. Sie flogen mit rund zweihundertfünfzigtausend Sekundenkilometern zwischen den Tausenden Sonnen dahin.

試訳:
二隻のエクスプローラー船は、船殻については定評のあるスターダスト級と同じものを使用しているが、特別に改造された内部の設計や区分はまったく異なるのだ。およそ秒速二十五万キロメートルで、数千の恒星のはざまを飛ぶ。
#原文でふたつのセンテンスをくっつけるのはいいけど、区切る場所、ちがう。

来月はアラスカ仮面かあ……。

カトロンの異人 -1-

必ずしも、正しい翻訳でなければ読めない、というものでもないのだが。それにしたって限度があるだろう。
翻訳のせいか編集のせいかは、もう問うつもりもないが……商品としてどうかね。

ハヤカワ版:
 寝ざめがひどく悪かった。イリュージョンをうつしだす、大きなパネルに近づく。背景には公園の植物が見え、上空では雲がたなびき……しずかな朝だ。しかし、このままおだやかにすぎるはずがない。

原文:
 Er wachte schon mit einer äußerst schlechtenn Laune auf. Langsam geng er zu der riesigen Scheibe, die eine Illusion des Nichtvorhandenseins vorspiegelte. Hinter der großen Platte sah er die Gewächse des Parks, darüber denn Himmel, an dem sich die Wolken bewegten. Ein stiller Morgen brach an, aber der Tag würde keineswegs still bleiben.

試訳:
 寝ざめは最悪だった。ゆっくりと大窓に近づく。日々これ変わらぬ幻想のような風景が目に映る。ガラスのむこうには草木の繁茂する公園があり、空では雲がたなびいている。おだやかな朝だ。だが、このままですむはずがあるまい。
#何の説明もなく「イリュージョン」とやれば、公園の情景が虚像のように思えてしまう。

Scheibe には窓ガラスの意味があるので、普通に外の風景。ただし、人口過密なレイトではそれ自体が幻想めいている。

ハヤカワ版:
かつて、身長百八十センチメートルのからだは、全身がやわらかいグリーンの苔でおおわれていたもの。いまもプライドは失っていない。

原文:
Einstmals hatte sein Körper, bedeckt mit dem waichen, moosgrünen Haarwuchs, eine Höhe von hundertachtzig Zentimetern gehabt. Damals stand er gerade da und war ein Mann voller Stolz.

試訳:
かつてはモスグリーンの体毛に覆われていた身長百八十センチメートルの肉体。まだ背筋もしゃんと伸び、誇りに満ちあふれていた。
#それがいまでは、既述のとおり背が曲がって……というか、苔! デュイント人は若い頃、苔と共生しているとかいう設定を読み落としたかと思った。マジ勘弁。

ハヤカワ版:
パネルごしに見る公園は、おのれの権力を証明するものだ……そして、年齢を。

原文:
Er blickte durch die Scheibe, die so klar wie gute Luft war. Auch dieser Park war ein Zeichen seiner Macht – und seines Alters.

試訳:
晴朗な空のように透明なガラスごしに目をやる。この公園もまたおのが権力を証明するもの――そして、老齢を。
#ここで再度「窓」であることがわかる。

昔、50話「アトラン」とか100話「超種族アコン」とかを原書と照合したことがあるが、あれは実に勉強になったと思う。最近のは、正直苦行。誰かが言わなくちゃわからないとか、そういうレベルの問題でもないと思うが……。

そら読者減るって。むやみに難解だもの。

319巻『カトロンの異人』

ハヤカワ版319巻『カトロンの異人』を読破中。著者は前半「カトロンの異人」がクナイフェル、後半「対抗策」がヴルチェク。訳者は渡辺広佐氏。

レイチャ継承をめぐる事件の最終段階、武力行使も辞さないマイチェタン率いる過激派の暴挙に、ローダンがナウパウムに隣接する(といっても1億光年以上離れている)カトロン銀河の元首を演じ、大衆をあっと言わせる前半。ある意味、ローダンのが外道な気もしないでもない……。

一方の後半は故郷銀河系が舞台。やることなすことうまくいかないアンドロ・ローダン。ナウパウムにいるオリジナル脳からのアクセス等もあって、ぶちきれる寸前。〈反それ〉のテコ入れ計画は、はたしてうまくいくのか……。

今月は正直、読むのが辛い。最初の段落からまちがってちゃ、しようがない話。「イリュージョンをうつしだすパネル」って、「何ごとも起こっていないかのような幻想(的な情景)が見えるガラス窓」じゃないか。単にイリュージョンとやって、その公園から手をふっている男とマイチェタンが会話するという、ファンタジーめいた展開をおかしいと思わないのだろうか。何の描写もないけどパネルには別のイリュージョンが投影されているんだよ、とでも言うのか。「晴れた空のように透明な窓を通して」のぞくという文章が「パネルごしに見る」になっているから、ある意味、確信犯である。誤訳云々以前に、ちゃんと原文読んでもらいたい。

フルロックの聖域 -3-

なんか……むしろ長くなっているのはなぜだろう?(笑)
いや、必ずしも誤訳でないのまで混じってしまったからなのは、明白なのだが。

■42p

ハヤカワ版:
「ここなら、ステーションを覆う腐植土層もごくわずかだ。この近くなら、どこを掘っても、すぐ金属面が顔を出すはず。

原文:
“Wir haben eine Stelle gefunden, wo die Station nicht hoch mit Humusboden bedeckt ist. Vielleicht ist es auch nur eine Art Ausläufer, den wir entdeckt haben. Immerhin sind wir jetzt sicher, daß unter uns nicht nur Nährboden existiert.”

試訳:
「ステーションを覆う腐葉土がさほど厚くない箇所を見つけ出しましたな。ある種の突端であるかもしれませんが、とにかく、いまや足下にあるのが腐葉土ばかりではないことが確実になったわけです」

どこを掘っても、って、どこに書いてあるのさ。Wo immer とか見あたらないけど。

■43p

ハヤカワ版:
「たぶん、そうでしょう」と、ガイト・コールはにやりと笑い、

原文:
“Sie haben wahrscheinlich recht”, sagte Gayt-Coor zögernd.

試訳:
「たぶん、そうでしょう」と、ためらいがちにガイト・コール。

笑ってない、ない。

ハヤカワ版:
それだけじゃない。保安システムがまだ機能していた場合、通信を傍受されてしまう」

原文:
Außerdem besteht die Gefahr, daß die Botschaft von Fremden abgehört wird.”

試訳:
加えて、通信を傍受される危険性もある」

よっぽど保安システムにしたいらしいが……。結局、そんなシステムは出てこないのに。

ハヤカワ版:
 アッカローリーは腕をおろした。
「いずれにしても、もうすぐ日没だ。

原文:
Zeno schaltete das Geräte wieder aus. Er sah sich um.
“Die Sonne ist untergegangen. Es wird bald dunkel sein.

試訳:
ゼノは装置のスイッチを切った。あたりを見まわして、
「日も落ちた。じき、暗くなるぞ。

前の文章が、「スイッチを入れようとした。」ではなく、「スイッチを入れた。」である。時制については何をかいわんや。2章で、太陽を見て、「午後遅くだ」→「もうすぐ沈む」と来て、今回が「沈んだ」と順を追っているのに。

■44p

ハヤカワ版:
「さ、はいってみよう」と、ゼノがいった。

原文:
“Worauf warten wir noch?” fragte Zeno.

試訳:
「さ、なにをもたもたしてるんだ?」と、ゼノ。

どーでもいいが、ゼノの短気なようすがあらわれた科白だと思う。

■45p

ハヤカワ版:
黒い金属プレートがあらわれた。
「水滴ですよ」と、ペトラクツ人銀河学者は、

原文:
Er hinterließ eine dunkle Spur auf dem Metall.
“Schwitzwasser!” reklärte Gayt-Coor.

試訳:
金属プレート上に、黒っぽい跡が残った。
「結露ですな」と、ガイト・コールが説明する。

#結露して、白っぽくなっていた……と見るべきか。少なくとも、水滴で金属はかくれないだろう。

ハヤカワ版:
 ガイト・コールは腐食した金属部分をさししめし、
「錆が浮いている! まともにメインテナンスしているのであれば、こうなるまで放置するはずがない。つまり、ここにはだれもいないということ」

原文:
Gayt-Coor deutete auf ein paar Metallteile.
“Es gibt Anzeichen von Oxydation! Ich kann mir nicht vorstellen, daß Wesen, die um das Fortbestehen ihrer Station besorgt sind, solche Spuren hinterlassen würden. Wahrscheinlich war schon lange kein lebendes Wesen mehr in dieser Halle.”

試訳:
 ガイト・コールが金属部分をさししめして、
「酸化の兆候があります! ステーションの存続に配慮するものがいたら、こんな形跡を残すとも思えない。おそらく、もうずっとこのホールに生命体は訪れていないのでしょう」

原文にないのに、「錆びた部分をさした。『錆びている!』」はあんまりな日本語。酸化→錆は適度な調整だと思うけど。

■46p

ハヤカワ版:
「早くステーションにはいろう」(中略)
「ステーションかどうか、まだわからない」

原文:
“Wir müssen ins Innere des Raumschiffs vordringen.” …
“Es ist nicht bewiesen, daß es sich um ein Raumschiff handelt.”

試訳:
「宇宙船のなかへ入らないと」
「まだ宇宙船と決まったわけではないぞ」

どちらも原語は「宇宙船」である。たしかにステーションでも宇宙船でもかまわないと、上で書いた気がするが……。意味不明な変換。単に語呂優先か。

■47p

ハヤカワ版:
 アッカローリーは壁に開口部を発見する。内部には皿状の金属プレートがあり、金属棒で固定されているように見えた。

原文:
Zeno fand schließlich eine zweite Öffnung. Sie ruhte auf einer Metallscheibe, die durch eine Stange mit der Schachtwand verbunden war. Die Schale erinnerte Rhodan an eine flache Badewanne.

試訳:
 やがてゼノが第二の開口部を発見した。その下のシャフトには、壁とバーで接続された合金製の円盤があった。受皿部分は、平べったいバスタブを思わせる。

第二の開口部も、おそらくは床にあるはね蓋。バーの部分がアームになっていて、皿が上下するのだろうが……固定されてはまずいだろう。ちなみにバスタブなので、後でローダンが寝そべったりする(笑)

ハヤカワ版:
「それ以前に、どうやって動かすかが問題だろうな。もし、動けばだが……」と、テラナー。

原文:
“Das ist vorläfig nicht unser Problem”, sagte Rhodan. “Zunächst einmal müssen wir den Mechanismus finden, mit dessen Hilfe wir den Lift in Bewegnung setzen können – sofern er überhaupt noch funktioniert.”

試訳:
「さしあたり、それは問題じゃない」と、ローダン。「まず最初にリフトを動かすメカニズムをみつけなくては――そもそも、まだ動くとしてだが」

誤訳ではない。少し後で、なぜか友に冷たいローダンが「それも問題じゃない」と、さらに外道っぷりを発揮するので、そろえた方がおもしろいかな、程度である。

ハヤカワ版:
なんらかの合図

原文:
durch einen bestimmten Impuls

試訳:
特定のインパルスで

誤訳……というほどではない。ローダン世界のテクニカルタームということで。

ハヤカワ版:
 ローダンは思いきって、プレートに跳び乗った。すると、意外にもゆっくり下降しはじめる。なめらかな動きだ。すぐ跳び降りることもできたし、反重力プロジェクターを作動させてもよかったが、あえてそうしない。プレートがどこに向かうか、興味があったのだ。

原文:
   Entschlossen stieg Rhodan in die Schale. Zu seiner Überraschung begann sie sofort nach unten zu gleiten. Rhodan unterdrückte seine erste Reaktion, blitzschnell aufzuspringen und sich mit dem Antigravprojektor in Sicherheit zu bringen. Er blieb liegen und wartete, wohin ihn die Schale bringen würde.

試訳:
 意を決してローダンは受け皿に乗ってみた。意外にもすぐさま下降しはじめる。跳び降りて反重力プロジェクターを動かし逃れたいという衝動を、なんとか抑えこんだ。寝そべった体勢で、どこへ運ばれていくのかを待ちかまえた。

バスタブが泡でいっぱいなら鼻歌のひとつも出そうな感じ。友の手前、かっこうつけているみたいにも思える。誤訳というほどちがうわけではない。念のため。

■48p

ハヤカワ版:
 プレートは床に降りると、いったん停止し、ふたたび上昇を開始。ローダンはあわてて床に降りたった。

原文:
   Rhodan stieg aus der Schale, die lautlos wieder nach oben glitt.

試訳:
 ローダンが受け皿を降りると、リフトは音もなく上昇を開始した。

重しがなくなったから上がる、という機械的なものと思われる。関係代名詞ではあるが、それこそふたつの文として考えるべきかと。

ハヤカワ版:
 床も鐘状ドームと同様、ガラスのような物質製だ。ドームは高さが六メートル、直径二十メートルほどである。

原文:
   Das glockenförmige Gebilde aus glasähnlichem Material war etwa sechs Meter hoch und Durchmaß zwanzig Meter.

試訳:
 鐘状ドームはガラスのような物質でできており、高さが六メートル、直径が二十メートルほど。

床の話はどこにもない。

■49p

ハヤカワ版:
「乗り物というやつ、どこでも臆病者用に設計されているのでして」

原文:
“Wohin ich auch komme: Alle Transportmittel werden nur für Schwächlinge konstruiert.”

試訳:
「どこへ行っても、乗り物というやつは虚弱な者向けに設計されているものでして」

身体が「弱い」者用なので、屈強なガイト・コールだと……ということ。

ハヤカワ版:
「ペトラクツでは例外なのか? ヤアンツトロン人やデュイント人と違って……」

原文:
“Die Petraczer sind die Ausnahme”, erklärte Zeno. “Nicht etwa die Yaanztroner oder Duynter.”

試訳:
「ペトラクツ人が規格外なのさ」と、ゼノ。「ヤアンツトロン人やデュイント人と違って」

「ゼノがからかおうとするのを、」と付記するくらいなら、揶揄している内容くらい理解してほしいもの。

■50p

ハヤカワ版:
大声で歌っているが、どんなメロディーなのか、鐘状ホールの三人には聞こえない。

原文:
Die Männer, die ihn transportierten, sangen laut. Ihre Gesänge hörten sich unmelodisch an und wurden von den drei Raumfahrern innerhalb der Glocke nicht verstanden.

試訳:
男たちは大声で歌っているが、調子はずれなうえ、鐘状ホールの三人にはさっぱり理解できなかった。

「大声で歌っている」のは聞こえている。何を歌っているのかわからないのだろう。

ハヤカワ版:
「でも、殺人を見すごすのですか?」

原文:
“Sollen wir zusehen, wie sie ihr Opfer auf diese Weise quälen?”

試訳:
「捕虜をあんな風に虐待するのを見すごすのですか?」

苦しめるのであって、殺すとは書いていない。生贄であることがわかるのは、もっと後。

ハヤカワ版:
「いずれにしても、野蛮なのはたしかだ」ペトラクツ人がローダンに味方する。

原文:
“Aber es ist offensichtlich, daß sie primitiv sind”, ergriff Gayt-Coor Rhodans Partei.

試訳:
「だが、原始的なのは明白」ガイト・コールがローダンに味方する。

直訳した方が科学者っぽい。余談だが、この直後、捕虜虐待を非難したガイトが、捕虜にした神官をいたぶるありさまときたら……(笑)

ハヤカワ版:
「本題にもどろう」と、大執政官は話題を変えた。

原文:
“Das ist auch nicht unser Problem”, lenkte Perry Rhodan ab.

試訳:
「それも、われわれが問題とすべきことではない」と、ペリー・ローダンは話題を変えた。

47pに続き、ガイト・コールに冷たいローダンである(笑)

フルロックの聖域 -2- 後編

2章後半は、思ったほど多くない。代わりに、印級のものがほとんどだったりする。

■32p

ハヤカワ版:
ステーションも、地上施設か宇宙船か、まだはっきりしない。しかし、なにかがあるとしたら、地中だろう。

原文:
Auch Einzelheiten einer Station oder eines Riesenschiffs waren nicht zu rekennen. Wenn es überhaupt etwas gab, lag es unter dem Boden.

試訳:
ステーションだか巨大宇宙船だかの詳細も依然不明。何があるにせよ、地中である。
#ステーションでも宇宙船でもどっちでもいいのだ。何かあれば。

■33p

ハヤカワ版:
着陸脚の皿状先端が、でこぼこした地表でも艇体を水平にたもつ。

原文:
Seine Landebeine mit den großen flachen Tellern paßten sich den Unebenheiten des Bodens an, so daß das Schiff genau waagrecht stand.

試訳:
先端の皿状になった着陸脚が地表の凹凸にあわせて伸縮し、艇体を水平にたもつ。
#主語は皿ではなく脚(複数形)。だいたい、平らなものをでこぼこの上に置いたら、余計ぐらつく。……とはいえ、これはローダン世界宇宙船の「テレスコープ脚」を知らないとイメージ湧かんかもなあ。

■34p

ハヤカワ版:
そのまま、丘の稜線まで浮遊しながら、

原文:
und schwebte die Anhöhe zum oberen Senkenrand hinauf.

試訳:
窪地のへりと同じ高さまで浮上して、
#艇は窪地に着陸し、縁を越えると視界が届かないので、そこまで偵察している。その前の「直近の隆起まで」を「丘の周辺だけ」としたのに引きずられた形。

■37p

ハヤカワ版:
あるいは、藪のなかに動物がいるのか……? 高度を下げてみたが、それらしきものは見あたらない。

原文:
Einmal glaubte er ganz sicher zu sein, daß unter ihm ein paar stämmig aussehende Pflanzen hin und her liefen, aber als er sich tiefer sinken ließ, konnte er sie nicht mehr sehen.

試訳:
一回など、下方でずんぐりした植物が動きまわるのを確かに見たと思ったのだが、下降してみてもそれらしきものはみつからなかった。
#「動」く植「物」で、動物ー、とか言わんでほしい。あえて「蔓がのたくる」とかにする手もあるが、後のストーリーからして、実際に「植物が走りまわっていた」のだろう。

■38p

ハヤカワ版:
アッカローリーとペトラクツ人も降りてきた。

原文:
Rhodan, Zeno und Gayt-Coor formierten sich.

試訳:
ローダン、ゼノ、ガイト・コールの順で隊伍を組んだ。
#実際には、前の段落で「ローダンと同行者二名は」着地している。なお、試訳もけっこう恣意的である。原文は要するに「フォーメーションを組んだ。」としか書いてない。

ハヤカワ版:
その程度の偽装では、探知機はだませない。《プリント》のシステムも反応しなかったはずだ。

原文:
Kein Ortungsgerät, das hatten die Anlagen der PRYHNT bewiesen, ließen sich von Äußerlichkeiten täushcen.

試訳:
外見をとりつくろっても探知機はだませない。それは《プリント》のシステムが証明していた。
#「現に《プリント》のシステムには発見されているではないか。」とかやるとくどいかな……。

■40p

ハヤカワ版:
水がないのに成長しつづける植物とは……! この一帯が、ますます不気味に思えてくる。

原文:
Die Pflanzen wurden Rhodan immer unheimlicher.

試訳:
ここの植物のことがますます不気味に思えてくる。
#だから、水はこれから探すのだ。→42pの「湿った砂」参照。

誤訳部分というのは、日本語でのつながりが変になることが多い。なんとなく、それをとりつくろおうとして泥沼にはまっているような気が、ふつふつとしてきた。ともあれ、当初はこのへんでやめるつもりでいたのだが、ローダンとフルロックの対決シーンがえらいことになっている……ようなので、最後まで照合することにした。もう少し簡潔にしたいところだが、どうなるかは、またそのとき。

2019/06/10追記:結局、仕事が忙しくなって最後までできなかったのが悔やまれる。なんか、骸骨がひとりでにローダンの方へ転がってくる誤訳とか、ひどかったなぁ……。

フルロックの聖域 -2- 前編

すでにお腹いっぱいな気もするが第2章……。

■23p

ハヤカワ版:
涙滴型の搭載艇に、

原文:
auf das eiförmige Beiboot

試訳:
卵形の搭載艇に、
#卵→涙滴は1章にもあり。

ハヤカワ版:
「なんのつもりだ!」と、どなった。

原文:
“Um Himmels Willen!” entfuhr es ihm,

試訳:
「こいつはまた!」と、口をついて出る。
#「天意にかけて!」はびっくりしたときの常套句。まあ、あとで喧嘩してるから、ここで怒るのもありかなあ。

ハヤカワ版:
なんとかバランスをとって、ハッチに到達。

原文:
Irgendwie gelang es ihm, durch das Schleuse zu kommen, ohne das Gleichgewicht zu velieren.

試訳:
どうにかバランスを崩すことなくハッチをくぐり抜けた。
#通過したので、次の文章が船内になる。

■24p

ハヤカワ版:
そこで大声が聞こえ、立ち往生した。
原文:
Zeno hörte ihn im Innern des Beiboots rumoren, dann ertönten ein paar Flüche;

試訳:
船内でがたごと物音がした後、悪態をつくのが聞こえた。
#立ち往生というか、ローダンと口論してるのでわ。

ハヤカワ版:
もう荷物を置いたらしい。

原文:
(なし)

試訳:(削除)
#確かに前後から推測がつくことだが。

ハヤカワ版:
「そうは思わないが。一匹狼タイプだからな」

原文:
“Er ist eben ein Individualist.!”

試訳:
「まあ、かれは一匹狼タイプだからな」
#実は思ってたりして(笑) eben には「だからさ」という、半ば同意の意味があるのだ。

■25p

ハヤカワ版:
「そうじゃない!」アッカローリーはきびしい口調で、「もちろん、同行するさ。いまのは気の迷いだ。忘れてくれ。

原文:
“Naturlich nicht!” versicherte der Accalaurie mit Nachdruck. “Herz und Verstand sprechen oft eine verschiedene Sprache.

試訳:
「むろん、同行するとも!」アッカローリーは強い語調でうけあった。「感情と理性はしばしば相反するもの。
#ま、これくらいの意訳は許されると思うが。

ハヤカワ版:
「突拍子もない行動は、好きではないからな。それでも、友にはちがいない。かなり変わった男だがね」

原文:
“Weil ich ihn nicht verstehe. Trotzdem glaube ich, daß er unser Freund ist, wenn auch ein ziemlich merkwürdiger Freund.”

試訳:
「かれのことが理解できないからさ。それでも、友であると信ずるのだ。まあ、かなり変わった友人だがね」
#誤訳ではない……と思う。ただ、こうしておいた方が、この話最後のローダンの科白「われわれ、理解し合っているというわけだ」(これも試訳)が生きるはず。

■26p

ハヤカワ版:
「搭載艇を使わせない気か?」と、アッカローリーがたずねた。

原文:
“Sie wollen uns doch nicht aufhalten?” fragte Zeno bestürzt.

試訳:
「止めるおつもりではないでしょうね?」と、狼狽したゼノがたずねた。
#一応、ヘルタモシュはお偉いさんなので。ローダンは自分も国家元首だからともかく。

■27p

ハヤカワ版:
「直接視認飛行でいきます」と、ガイト・コールが報告。

原文:
“Direkter Zielflug!” kündigte Gayt-Coor an.

試訳:
「まっすぐ目標へ飛びます!」と、ガイト・コールが告げる。
#リニア飛行じゃないんだから。

■28p

ハヤカワ版:
いまは時間を稼がなければならない。

原文:
Sie mußten jetzt vor allem Zeit gewinnen. Jeder übereilte Entschluß konnte alles verderben.

試訳:
いまは何より時間を稼ぐ必要がある。性急な結論はすべてをだいなしにしかねない。
#削除する必要はない。なくても通じる文章だが。

■29p

ハヤカワ版:
旧種族の惑星への着陸を禁ずる法のことは、知っているはずだぞ」

原文:
Sie kennen unser Gesetz, das uns den Kontakt mit Planeten alter Völker verbietet.”

試訳:
旧種族の惑星との接触を禁ずる法のことは、知っているはずだぞ」
#だからゾンデもまずいんじゃないかとゆー(1章)

ハヤカワ版:
「はっきりしているのは一点のみ。諸君にはわたしの援助が必要だ……そういうことだな」

原文:
“Entscheidend ist, daß Sie ohne meine Hilfe Horntol niemals erreicht hätten.”

試訳:
「決定的なのは、わたしの援助なくして諸君がホルントルにたどりつくことはなかったという事実だ」
#だから俺にもたたり責任があるんだよ……ということ。

ハヤカワ版:
脳ハンター

原文:
Gehirn des Jägers

試訳:
ハンター(の脳)
#異脳者と書いてサイナックと読ませたい(をひ

■30p

ハヤカワ版:
ヘルタモシュとのやりとりで、すっかり影が薄くなっている。

原文:
Die Auseinandersetzung zwischen den beiden Ceynachs und Heltamosch ließ den Petraczer völlig unbeeindruckt.

試訳:
サイナックふたりとヘルタモシュとの議論にもまるで動じていない。
#無関心とか泰然自若でもいいと思うが。

ハヤカワ版:
マト・プラヴトがふたたびスクリーンにあらわれ、ローダンはそちらに視線をもどした。
原文:
Als Heltamosch sich abermals meldete, wirkt er ruhiger.

試訳:
やがて再びスクリーンにあらわれたヘルタモシュは、ずっと落ちついて見えた。
#余計なものを足さずに、必要なものを残してもらいたい。

■31p

ハヤカワ版:
水源があるとか、花粉が原因の可能性も、充分にある。

原文:
Ebenso gut können es Wasseradern oder Blütenstaub sein.

試訳:
水脈や花粉が原因ということも、同程度考えうる。
#Wasserader は(地下)水脈。

ハヤカワ版:
防御バリアは展開していないから、

原文:
Es war ungeschützt

試訳:
無防備な状態で
#意味的には同様だが、大気圏突入時に、という見方もあり。

ハヤカワ版:
かといって、バリアをはれば、探知システムの注意をひきかねない。
原文:
Rhodan wußte, daß das Risiko eines tödlichen Angriffs bei einem solchen Unternehmen nicht ausgeschaltet werden konnte.

試訳:
こうした作戦の際、致命的な攻撃をうけるリスクが排除しきれないことは、ローダンには承知の上だ。
#無理矢理バリアに話をもっていこうとするから……。

ハヤカワ版:
ガイト・コールは操縦に専念している。未知の探知システムが存在するものと仮定して、できるだけ目立たずに着陸する必要がある。

原文:
Wahrend des Landemanövers ließ Gayt-Coor sich auf Keine Experimente ein. Er steuerte das eiförmige Kleinstraumschiff direkt auf die Oberflaäche des Planeten zu. Das mußte eventuellen Beobachtern den Eindruck vermitteln, daß diese Landung eine selbstverständliche Sache war.

試訳:
着陸操作のあいだ、ガイト・コールは“実験”をさしはさもうとはしなかった。小型艇をまっすぐ地表へとむける。もし観察者がいたとしたら、この着陸はしごく当然のものに思えただろう。
#自分で創作した部分に引きずられてどーするね。

■32p

ハヤカワ版:
まもなく、予定した着陸地点が視界にはいってくる。

原文:
Das Beiboot sank langsam auf den ausgewählten Landeplatz hinab.

試訳: 搭載艇はゆっくりと、予定した着陸地点へと降下する。
#視点をローダンに統一した、ということか?

……えーと、これで半分か。
前の章よりも、なんというか、“主観的な”文章が多いような気がする。訳者か編者かはわからないが、他人の作品を紹介してるって意識、ないのか、もしかして?

フルロックの聖域 -1-

ハヤカワ版:(p10)
「どうしたのだ?」

原文:
“Man sollte Ihnen verbieten, unsere Sprache zu benutzen”, sagte Heltamosch.

試訳:
「きみにはナウパロの使用を禁ずるべきかもしれんな」

「われわれの言語」はナウパロと推測。

ハヤカワ版:(p11)
「今回も無私の援助に感謝しなければ。

原文:
“Ich wundere mich, daß Sie mir noch immer in einer solchen Form helfen”, sagte er. “Was ich für Sie getan habe, ist längst ausgeglichen.

試訳:
「なおも自ら援助していただけるとは。わたしがきみのためにしたことを埋め合わせてもすでにお釣りがくる。

原文「こうした形で援助」とはヘルタモシュが旗艦でローダンたちを運ぶこと。

ハヤカワ版:(p12)
「それでも、ユーロクには感謝している。じっくり話しあう時間がなかったのが、残念でならない。この銀河で最も謎の多い種族だったが……」
「ペルトゥスもいるがね」

原文:
“Ich schätze Torytrae trotzdem”, meinte Rhodan. “Es ist schade, daß ich keine Zeit habe, um mich mehr mit den Yulocs zu beschäftigen. Sie waren das interessanteste Volk dieser Galaxis.”
“Abgesehen von den Pehrtus!” sagte Heltamosch.

試訳:「それでも、トリトレーアのことは高く評価している。ユーロクという種族について調べる時間がないのが、残念でならない。この銀河で最も興味深い種族だよ」
「ペルトゥスを除けばな!」

原文 mit den Yulocs は複数形で種族全体を表している。

ハヤカワ版:
それにとっくに滅亡した種族だからな。いや、たんに噂だけの存在かもしれんぞ」

原文:
“Wir wissen nicht, ob sie noch existieren. Sie sind nur ein Gerücht.”

試訳:
いまも存在するかはさだかでない。まだ噂だけにすぎん」

いるかもしれないから、捜すわけで。

ハヤカワ版:
「われわれのような“失踪者”が、この大宇宙で出会うこと自体、奇蹟にひとしいのだ。それ以上はとても望めないね」
「いや、ふたりの邂逅は奇蹟でもなんでもない」と、マト・プラヴト。「きみらの捜しもとめるものが、ふたりを同じ場所へと導いたのだ」

原文:
“Es war ein unglaublicher Zufall, daß zwei Verschollene sich in einer großen Galaxis gefunden haben.”
“Das war kein Zufall” widersprach Heltamosch. “Ihre Ermittlungen mußten Sie beide früher oder später gleichzeitig gemeinsam an einem Ort auftauchen lassen.”

試訳:
「暗中模索するふたりが巨大な銀河の中で邂逅したこと自体が、そもそも信じがたい偶然なのだ」
「偶然などではないさ」ヘルタモシュが反駁した。「きみらの探求は、遅かれ早かれ、ふたりを同じ時、同じ場所へと導いたにちがいない」

ヘルタモシュの反論の方がIFの世界。あと、宇宙ではなく銀河(ナウパウム)。

ハヤカワ版:(p13)
《プリント》のポジションからは、惑星表面のほぼ三分の二が観察できた。

原文:
Bisher hatte man von der PRYHNT aus allerdings höchstens zwei Drittel der Planetenoberfläche beobachten können.

試訳:
とはいえ、《プリント》のポジションからは、惑星表面のせいぜい三分の二が観察できたにすぎない。

残り三分の一に文明の痕跡があるかもしれないし、というニュアンスを前後から読みとってほしい。

ハヤカワ版:(p14)
 ヘルタモシュは返事をせず、またタブーを恐れて、思いきった行動をとる決心がつかないのだろう。
「《プリント》は着陸しない」と、ゼノが言った。マト・プラヴトの態度を見て、やはり同様に判断したらしい。
「そのとおり。《プリント》は着陸しない!」と、ガイト・コールがくりかえす。(以下略)

原文:
Rhodan warf Heltamosch einen fragenden Blick zu. Der zukünftige Regierungschef schüttelte den Kopf. Heltamoschs Scheu vor den alten Völkern seiner Galaxis war so groß, daß er sich auch diesmal zurückhalten würde.
“Die PRYHNT wird nicht landen!” stellte Zeno fest. Er hatte den stummen Austausch von Frage und Antwort zwischen Rhodan und Heltamosch beobachtet und richtig gedeutet.
“Die PRYHNT wird nicht landen!” wiederholte Gayt-Coor.

試訳:
 ローダンはヘルタモシュに目線でたずねた。将来の政府首班がかぶりを振る。ヘルタモシュの太古種族に対する畏怖の念は強すぎるから、今回も後方にとどまるのだろう。
「《プリント》は着陸しないのだな!」と、ゼノ。ローダンとヘルタモシュの間に交わされた無言の対話を正しく理解したのだ。
「《プリント》は着陸しない、と!」ガイト・コールがくりかえした。(以下略)

ローダンとヘルタモシュが目と目で通じ合うのがキモかったのだろうか(笑) あと、ゼノもガイトも《プリント》における命令権はないはずで、一考の余地があるかと。

ハヤカワ版:
「いますぐに?」と、ゼノは驚いたふりをして、「もっとホルントルに接近したほうがいい」

原文:
“Jetzt schon?” entfuhr es Zeno. “Wir können noch viel dichter an Horntol herangehen.”

試訳:
「もうか?」と、ゼノが思わず、「もっとホルントルに接近できるのに」

動詞 entfahren は「(思わず)漏れる」なので、ふりではない。

ハヤカワ版:(p16)
「きみはこの銀河でも、もっとも高い知性を有する種族の一員だ。(以下略)

原文:
“Gayt-Coor gehört zu den Intelligenzen dieser Galaxis.

試訳:
「きみはこの銀河の知性体だ。(以下略)

ローダンとゼノはサイナックなのでこの銀河の禁忌に縛られない、という考え。Intelligenz はPRSでは「知性体」でほぼまちがいない。インテリゲンチャではない。

ハヤカワ版:
「あまり伝承やタブーに振りまわされるのは、いかがなものか。それに、部下の意志も尊重したほうがいいと思うが、ヘルタモシュ」
 デュイントの政府主席はしぶしぶ了承した。

原文:
“Sie dürfen die Legenden nicht überbewerten, Heltamosch.”
Heltamosch gab seine Zustimmung nur widerstrebend und wahrscheinlich auch nur deshalb, weil er die Entscheidungsfreiheit Gayt-Coors akzeptierte.

試訳:
「伝説を過大評価すべきではないよ、ヘルタモシュ」
 ヘルタモシュはしぶしぶ了承した。おそらくは、ガイト・コールの決断を尊重したがゆえのこと。

地の文を科白にくりこむ意味が不明。

ハヤカワ版:(p19)
そういう種族なのだ。

原文:
(なし)

試訳:
(削除)

der Accalaurie なので、ゼノ単体の話である。

ハヤカワ版:(p20)
 まもなく、探知スクリーンの映像が変わり、惑星地表がうつしだされた。

原文:
Wenig später wechselten die Bilder auf den Ortungsgeräten.

試訳:
 まもなく、探知スクリーンの映像が変わった。

「天国みたい」な風景が、拡大映像に変わっただけ。

ハヤカワ版:
「砂漠だろうか……」と、ガイト・コールがつぶやく。

原文:
“Es sieht aus wie Dünen!” stellte Gayt-Coor fest.

試訳:
「砂丘ですな!」と、ガイト・コールが確認。

デューンである。Wüste ではない。

ハヤカワ版:
とにかく、自然界のありふれた風景だ。人工物ではない」

原文:
“Was immer sich unter diesem Boden befindet, ist nicht natürlichen Ursprungs.”

試訳:
この下にあるのが何であれ、自然界のものではないな」

うちの原書は3版だが。そんなにちがうかね。

ハヤカワ版:
ロジック処理をほどこせば、もうすこし鮮明な画像が得られるだろう」

原文:
“Wir müssen die versiedenen Aufnahmen mit der Logikauswertung zusammensetzen, dann bekommen wir vielleicht ein vernünftiges Bild.”

試訳:
「さまざまな映像を論理分析してつなぎあわせれば、納得のいく全体像が得られるだろう」

「ロジック処理」は、プログラム関係の用語。

ハヤカワ版:
「なんだろう?」トカゲの末裔はいくらか鮮明になった映像を見て、考えこんだ。「砂に埋もれたステーションだろうか?」

原文:
“Was kann es sein?” sinnierte Gayt-Coor. “Eine verschüttete Station?”

試訳:
「なんだろう?」と、ガイト・コールが考えこむ。「埋没したステーションですかな?」

一連の「鮮明な画像」は、最初のゼノの科白「もっと外側の形はわからないのか?」をまちがえたことに起因する。単にデカすぎて全体像が見えないだけなのだ。

ハヤカワ版:(p21)
「全体像はよくとらえているはずだ。ロジック処理しても、全体像は変わらない」

原文:
“So etwas könnte der gesamte Landstrich aussehen. Es ist eine gestellte Aufnahme, von der Logikauswertung nach den vorliegenden Bildern zusammengestellt.”

試訳:
「全体像はそう見えるはず。これは、いままでの画像を論理分析によってつなぎあわせた合成映像だ」

ロジック処理という言葉に騙された感じ。ひとつの画像をいじっているわけではない。

ハヤカワ版:
砂漠らしき一帯に、巨大なカレイのような物体が、なかば埋もれている。

原文:
Das Dünengebiet in seiner Gesamtheit erinnerte Rhodan entfernt an eine überdimensionale Flunder.

試訳:
砂丘全体は、ローダンにどことなく、超巨大なカレイを連想させた。

これも最初に「砂漠」とやった後遺症だろう。

ハヤカワ版:(p22)
ペルトゥスの手がかりをついに見つけた……!

原文:
Hatte er eine Spur der Pehrtus gefunden?

試訳:
ペルトゥスの手がかりを見つけたのだろうか?

疑問文である。どうしてそんなに断定的なのか。

ハヤカワ版:
テラナー、ペトラクツ人、アッカローリーは、なお考えこむマト・プラヴトを見つめた。やがて、ナウパウム・レイチャトの次期統治者が顔をあげる。太古の遺跡を前にして、その意味をはっきりと認識したのだろう。

原文:
Zeno, Gayt-Coor und Rhodan sahen Heltamosch an, der den Kopf gesenkt hatte. Es war zu sehen, wie es in diesem mächtigen Mann arbeitete. Angesichts dieses uraltes Gebildes mußte auch Heltamosch die Relativität seiner eigenen Bedeutung erkannt haben.

試訳:
ゼノ、ガイト・コール、そしてローダンは、うなだれたヘルタモシュを見つめた。この強大な権力を握る男の考えが、見てとれそうだ。太古の遺跡を目の当たりにして、価値観の相対性に気づいたのだろう。

マト・プラヴトである自分がちっぽけに思えた、のかもしれじ。それにしても、個人名/種族名がかたっぱしから逆になっているのはどうしたことか?

……。
というわけで、第1章の目立った箇所だけ挙げてみた。印は、中でもちょっとひどいな、というもの。これ以外にも、微妙に「違わんか、コレ?」という程度なら、まだまだある。やたらと“「~……」とつぶやいた。”になっているが、原文は“「~!」と言った。”が大半(むしろ原文は!が多すぎだが)だし、探知担当を振り返ったり、またきびしい顔になったりと、本文にない描写が相当箇所追加されているなど、個人的には「修飾過多」と判断する。

ただし、以前『消えた仮面の男』正誤表をニフティでアップした際も書いたと思うが、これは訳者を個人攻撃するものではない。くりかえし念を押しておきたい。Intelligenz=知性体というテクニカルターム(笑)が訳せないのは、単なる経験不足だし、独文和訳→訳文単独で推敲、というシステムの構造的な問題の方が根深いと思われる。五十嵐さんに過労死されても困るが、やっぱり原文との照らし合わせは要るのではなかろうか。