If:1400話「エスタルトゥ」

来週にはハヤカワ版が700巻『エスタルトゥ』の刊行を迎える。1399話「エスタルトゥ」/1400話「夜の神々」が収録され、広告でも1399話でのタルカン・サイクルの終結が謳われている。のだが。

ローダン・シリーズ現役最古参の作家アルント・エルマー。四半世紀にわたり読者とのコンタクト・ページ(LKS)の担当、通称“LKSおじさん”も務めた彼が、2503話のLKSで語った回想には、ちょっと驚くべきネタもある。
1982年にホイゼンスタムのフォルツ宅を訪れた際に、「フォルツは1500話でローダンを完結させることを考えていた」という。1000話で将来の人類の進化を書きあげ、究極の謎の2つまでが道標にすぎないことを1200話で示唆したうえで、モラル・コードの修復が最後の謎〈法〉の回答をもたらすとしたら、もうそこから先はないと思っていたのかも。

ともあれ、同じ回想で、エルマーは1400話前後について、こう述べている。

本来1399話ではヘクサメロンの部分的謎解きがもたらされる予定だった。ペリー・ローダンの解読したあるカセットの中で、炎の侯爵アフ=メテムが催眠暗示的手法でヘクサメロンの歴史を物語る。ローダンはすべてを“間近で”体験する。彼自身が炎の侯爵なのだ。彼自らエスタルトゥを狩りたて、苦境のただなかで超知性体は自身を分散させ、意識片としてベングエルとジュアタフに分かつことでおのれを救う。最後にローダンはハンガイ第四クォーターとともに標準宇宙へ転移し、13ヵ月が過ぎ去っていることを確認する。
1400話ではエスタルトゥの再生と、その力の集合体である十二銀河への帰還が前面に押し出されるが、1401話以降の展開も用意される。ハンガイからのハウリの銀河系侵攻のゴングが鳴らされる。
だが、実際はそうならなかった。

ヘクサメロンの歴史とは、後に草案作家マールが惑星小説358巻『七日目の主』で描き出した、超知性体アイセルの力の集合体(後のエシュラア・マグハアス)の銀河クラスの支配者から選抜された“七強者”の勃興と失意の、そして混沌の勢力の傀儡としてのヘクサメロン発展の物語だろう。この本ではヘプタメルの従者バンダルの視点だったが、アフ=メテム(アルフール)はただひとりアイセルの管轄外の銀河から選出され、ヘプタメルの腹心となった存在なので、まただいぶ違った観点ではあっただろうが。
そして、文中の“ローダンが解読したあるカセット”とは、おそらく同じくマールが惑星小説309巻『アムリンガルの宝玉』で触れたデータ・キューブ、ないしはカンターロ・サイクルで登場する〈ミモトの宝玉〉と同種の、“アムリンガルの年表のアブストラクト・メモリ”であり、そこからアムリンガルの所在、ひいては〈それ〉の歴史についての手がかりが得られたと思われる。
ハウリの銀河系侵攻に関しては、カンターロ・サイクルでも“百年戦争”として話題に上るが、現実により脅威だったのは〈ブリッツァー〉なので、歴史の闇に沈んだといえる。まあ、指揮官(アス=レテル)がパニック起こして逐電しちゃってるからね……w

アス=レテル(アコス)は、元々はハンガイ銀河の支配者で、ハウリを補助種族にしていた。ヘプタメル(シリクジム)とは敵対関係にあったためか、二十の領地最大の銀河ハンガイの支配権はアフ=メテムに奪われてしまうが、時間終点計画のメーコラー・サイドは彼が担っていた……はずだ。

ストーリー予告「ヘクサメロンの王国」では、ローダンが沸騰するプロト物質の中心で“新生”する展開が告げられていたので、テラナーはなんらかの要因で再び死に瀕したタルカンを訪れる必要が生じる。実は、上記惑星小説358巻の終盤で、ウリアン/ボラムに続く“ハイパー物質シーソー”が登場する。インフレすぎるがwww
あるいは対ステーションのいらないこれを撃破するため……にしても、単身では向かわないような。ほんと、どーなったんだろ。

上記回想は、編年体でシリーズの歴史をまとめた“Perry Rhodan – Die Chronik: Biografie der größten Science Fiction-Serie der Welt”のvol.3にも収録されている。kindle版がAmazonJpでも購入できるので参考までに。

カンターロ・サイクル予告/銀河系に還る

明日10月18日にハヤカワ版699巻『炎の嵐』が発売になる。タルカン・サイクル、宴もたけなわ。アフ=メテムとの決戦である。
さて、そのタルカン・サイクルは次巻前半、1399話「エスタルトゥ」で完結……と相なるのだが。過去記事等でも書いたとおり、不評のため、急遽打ち切り。前巻前半、1395話「戦闘部隊ラグナロク」は原稿アップ後に書き直したというから、かなり切羽詰まってからの内容変更である。新サイクルの宣伝なども、当然まるでやってこなかった。いやLKSとか、付録レポート内で掲載した草案作成関連記事で“匂わせ”程度はしていたが、それは当然、路線変更前の中身であった。

そして、1399話の読者とのコンタクト・ページをまるまる使って、言い訳と予告をぶちあげたわけ(笑)
「〈それ〉サイクルと言ったな、あれは嘘だ」
「誕生史とかも、やらないよーん」
みたいな弁解後に、ほぼ見開き使った予告記事「1400話からの新サイクル」が、以下となる。サイクル名も未発表(たしか、半年後くらいのLKSで読者の質問に回答したはず)なので、この記事のサブタイトルをとって、仮称・銀河系に還るサイクルだった。かっこいいので、サイクルジンのタイトルにも使用したw
ぶっちゃけ、1418話あたりまでのあらすじ同様なので、いやだ!わたしは知りたくない!という方はまたの機会に。

銀河系に還る / Zurück in die Milchstraße

ついに起こらざるをえないことが起きた。皆が怖れ、そうはならぬよう願っていたことが。
ハンガイ銀河のタルカンから通常宇宙への転送をはじめとする多くのドリフェルへの干渉は、もはやそのようなことが起こらないよう、コスモヌクレオチドを発作的に“店じまい”させるにいたった。自己防衛、ひいては宇宙モラル・コード防衛のための対処といえよう。
高次の秩序勢力、すなわち〈それ〉やエスタルトゥを含む超知性体やコスモクラートは、モラル・コードのマスターを自認し、そのうちに宿る力を思うがまま、自在にあやつれると信じた。第三の究極の謎の回答を知らぬというのに。だが、大自然、あるいは自然じねんの宇宙秩序とでもいうべきものは、自身と宇宙構造を維持・再生するために逆襲した。
そしてそれこそ、〈システム〉がローダンと仲間たちの前に示し、おそるべき現実となった回答なのだ。ドリフェルの作用範囲たる〈5000万光年の天球〉全域に影響を及ぼす、恐怖の宇宙的大破局にいたった。
タルカン艦隊の14隻は、説明しがたい宇宙的力に捕らわれ、停滞フィールドのなか凍りついて見知った世界からもぎとられ――そして、停滞フィールドから解放されたとき、まったくことなる環境にいた。
ペリー・ローダン、アトラン、レジナルド・ブル、その他タルカンへ突入した艦艇の乗員たちは、悪夢のなかにいる自分を見出すのだ。
彼らは自問する。ここはそも自分たちの宇宙なのか。しかし、どれほど幻想的で、異質で、説明がつかずとも、明確で誤解しようのない回答が存在した。
そう、ここは彼らの、通常宇宙なのだ!
そして驚くべきことに、彼らは本来の生存圏にいた。〈それ〉の力の集合体、局部銀河群の銀河。銀河系、ピンホイール(ハヤカワ版:三角座銀河)、アンドロメダ――そして、ハンガイ銀河。
――ただ、そこはもはや、彼らの知る局部銀河群ではなかった。そして、〈それ〉の生存のきざしはない。失踪したか、あるいは滅びたか。
――高次秩序勢力はなおも力ある存在なのか、それとも自らの解きはなった力に押し流されてしまったのかという疑問も生じる。
――宇宙は、少なくとも局部銀河群は、完全にタガがはずれてしまっていた。
――破局の影響をまぬがれたものは、どこにも存在しなかった。
局部銀河群ではカオスが解きはなたれたのだ。銀河系や隣接するマゼラン星雲を含むあらゆる銀河で、暴走するハウリによって開幕したおそろしい戦乱が吹き荒れ、次のような状態にいたった。
――グラド、マークス、ピンホイール・カルタン人をはじめとする多くの種族が孤立状態に引きこもった。
――そして、ハンガイの文明はストレンジネス・ショックの長期作用抜きでも退行し、原始状態に帰った。
――カンサハリイヤは数十万の小国家群に分裂した。
ローダンと友人たちはゼロからはじめなければならない。彼らのものでありながら、自分が異邦人のなかの異邦人であると気づかざるを得ない世界で。一歩ずつ、手探りで彼らは銀河系へと進む。秘密のヴェールを一枚ずつ解き明かし、ついに思い知るのだ。ここに彼らの居場所はないのだと。

彼らはおのれの宇宙のなかの異物。
銀河系は彼らを望まない。
なぜなら銀河系は閉ざされた、堅牢に封鎖された、昏い、謎に満ちた場所になっていた。
立入禁止! 封鎖エリア!
ペリー・ローダンの名は忘れ去られ――
ただ、ポスビらわずかな者たちに語り継がれる伝説でしかなかった。

ローダンと友人たちは、艱難辛苦のなか手探りで前進せざるを得ない。彼らの目標、銀河系の秘密の解明にむかって。モザイクをピースごとにかき集め、しだいに事態の全体像をつかんでいく。だが組み合わされたモザイクは歪んでおり、ひとつ回答を得るごとにさらなる質問が投げかけられるのだ。
希望の最初の手がかりは〈四腕の予言者〉のシュプール。道筋は二百の太陽の星へといたる。だが、そこはポスビのいない世界だった。
銀河系への帰途は、マークスの宇宙駅、二百の太陽の星――ポスビのいない――、そしてポルレイターの援助の望めるM-3へと続く。
しかし彼らは人類やギャラクティカーとの関わりを拒むのだった。ただ、漠然とした手がかり、アムリンガルと密接な関係があるらしい、〈過去の支柱〉という示唆だけが与えられる。
続く、〈サトラングの隠者〉との出会い。彼は古き友だが、その素性が知れたのは、すべてが手遅れになってからのこと。
ローダンら故郷を追われた者たちの道はマゼラン星雲のグラドのもとへ。だが、グラドはローダンが彼らの故郷銀河をクロノフォシルとして活性化したことへの感謝など知らぬかの対応。事態の背景など知らぬと主張する。だが、何かを隠したいのは明らかだった。
たとえば、勢力をのばしつつある、まだ若き宇宙航行種族ベカスとのコンタクト。そしてその庇護者――宇宙の遠い領域からドリフェルの破局によって誘き寄せられ、不透明なゲームを演じる強大な未知者たち。
そのつながりで、新たな名前が浮かびあがる。畏怖をもって囁かれ、多くの推測と興奮を呼びさます名称:〈カンターロ〉
このサイボーグたちは何者か?
いかなる目的を追っているのか?
その存在の秘密とは?
そして、なにより:その優れたハイテクをどう使うつもりなのか?
ローダンは〈ブラックホールの支配者たち〉(*)の存在を知る。星の遺骸の信じがたい力をあやつる術を知り、人類には果たせずにいた「アインシュタイン=ローゼン橋」を実現した者たち。だが、これらすべての知見でも足りない。それでは銀河系への、テラへの扉を開けないのだから。
ローダンはやがて〈過去の支柱〉へと挑み、そこで彼を死んだと思っていたものと遭遇し、旧交を温める。だが、彼の渇望する答えは、〈過去の支柱〉を通過することでのみ得られる――スキュラとカリュブディスのはざまを抜ける危険なオデッセイだ。
ペリー・ローダンと友人たちがその企てに成功し、銀河系に還ることを成し遂げたとき初めて、燃えるような疑問への回答が望めるのだ:

地球はまだ存在するのか?
人類は?
銀河系の他の種族はどうなった?
〈それ〉に何が起こり、なぜ超知性体はその庇護の手を力の集合体に――人類に――差し伸べないのか?
謎に満ちた銀河系の支配者たちとは何者?
いかにしてテラナーと兄弟種族の銀河を強固に封鎖し、誰もたどりつけず――出られないようにしたのだ?

無論、同様の疑問はまだまだある。たとえば、エスタルトゥ十二銀河に残った者はどうなった/どうしているのか――イホ・トロトはM-87でいかなる運命をたどったのか――砕けた《ナルガ・サント》の残り4/5はどこにあるのか――どれほど苦痛に満ちた試練をゲシルが耐えねばならなかったか……等々。
だが、それらはここにふさわしくない。占者はすでに多くを語りすぎており、ペリー・ローダンたちの未来を読み取ったタロットをしまい込んだのだ。

*)〈ブラックホールの支配者たち〉の名称は、おそらく〈回廊の主人たち〉に差し替えられたと思われる。

カンターロ・サイクル簡易レキシコン

昨日に引き続き、カンターロ・サイクルの情報。内容紹介の際、主な用語はこう訳したよ、という。一部若干手直ししてるけど。
当然ながら、ネタバレになる部分もあるので、避けたい向きはブラウザバックで。

A

  • Absoluter Stillstand …… 〈絶対停止〉状態アブソリュート・スティルスタンド。シールドされていないハイパー機器をブロックする。
  • Abstill …… アブスティル → Absoluter Stillstand
  • Abstraktspeicher …… アブストラクト・メモリ。アムリンガルの年表の〈概要記憶装置〉。
  • Advok …… ベンゴシアドヴォク。とあるフランス革命時代の弁護士(Advokat)の名を偽名にしていた人物。
  • Amagorta ……  〈アマゴルタ〉。アマレナが隠遁したとされる場所。銀河系中枢部のブラックホール。
  • Amarena …… アマレナ。ヴィペルターとエスククエル人が合流した種族の自称。「民族」の意。
  • Amimotuo …… 〈アミモテュオ〉。アムリンガルの年表のアブストラクト・メモリ。一抱えくらいのデータ・クリスタル。
  • Amringhar …… アムリンガル。謎多き〈年表〉の所在地。
  • Anoree …… アノレー。ネイスクール銀河の「星の暗黒回廊の管理種族」。
  • Archäonten …… 〈始祖〉。アノレーらによるアマレナの尊称。
  • Assu-Letel …… アス=レテル。ヘクサメロンの〈清浄の領主〉。

B

  • Báalol-700 …… バアロル=700。1149年の「700周年」に向けて製造中のアンティ・クローン。
  • Bekassu …… ベカス族。マゼラン星雲で勃興したコウモリ型種族。大破局から救った「神々」を尊崇する。
  • Bionten …… バイオント。遺伝子実験の結果「廃棄処分」とされたクローンたち。
  • Bliss …… ブリス。荒廃した地球でローダンの出会う少女。浮浪児集団のボス。
  • Blitzer ……  雷撃者ブリッツァー。ドリフェル・ショックからまもなく銀河系にあらわれた、神出鬼没、“雷撃”ブリッツシュラークと呼ばれるハイパーエネルギーの一撃で惑星を壊滅させる、謎の襲撃者。英語のブリッツァーはストリーキングらしいw
  • Buch Log …… ブック・ログ。惑星ブガクリスの山人に伝わる《バジス》の航宙日誌。

C

  • Cantaro …… 〈カンターロ〉。ハウリとの百年戦争に揺れる局部銀河群にあらわれ、動乱を鎮めたとされるドロイド種族。
  • Chronopuls-Wall …… 〈クロノパルス・ウォール〉。銀河系に接近する生命も機械も狂わせる謎の障壁。
  • CILADA …… 〈シラダ〉。新銀河暦9世紀頃に存在した抵抗運動組織。名称はポルトガル語で、「罠」。

D

  • Deftra-Feld …… デフトラ・フィールド。デフレクターとフィクティヴ転送機の融合した、ある星系を隔離するバリア。
  • DORIFER-Schock …… 〈ドリフェル・ショック〉。新銀河暦448年前後の事件の総称。
  • Drakisten …… ドレイキスト。ドレイク機構のメンバーの通称。
  • Dreizackschiff …… 〈三叉船〉。ブルー・ナックの操る、ポセイドンの三叉戟を思わせる形状の宇宙船。
  • Droid …… ドロイド。アンドロイドというか、今回は「サイボーグ」の言い換えと理解すればいい。
  • Druithora …… ドルイトラ。M-87銀河の中枢部イディオムによる名称。
  • Dschufar ama Sunnuh …… ジュファル・アマ・スンヌー。イホ・トロトの同行者となる、ハンガイ由来の謎の人物。

E

  • ELYSIAN …… 《エリュシアン》。タフン所属のメド・シップ。正篇・外伝と数奇な数百年を送る。
  • Eremit von Satrang …… サトラングの隠者。銀河障壁の外、惑星サトラングから「銀河系の新たな支配者たち」との闘争を呼びかける、その正体は……。
  • Eskuquel …… エスククエル人。飛行都市で宇宙を放浪するヴァウペルティアの末裔。 → Amarena
  • Ewigkeitsschiff …… 永遠の船。さまざまな惑星からベカスを徴用するロボット船、ベカスにとっては神の船をこう呼ぶ。

F

  • Freihändler …… 自由商人。銀河障壁外の抵抗運動組織。「自由を商うもの」か「自由にふるまうもの」かは不明。
  • Friedenssprecher …… 平和スポークスマン。アノレーが設置した、カンターロへの呼びかけ自動放送局。
  • Funkwall …… 通信障壁。銀河系内外のハイパー無線交信をシャットアウトする。

G

  • Gastropoide …… 腹足類ガストロポイド。ナックのようなナメクジ型種族の総称。
  • Geisterschiff …… 幽霊船ゴーストシップ。サトラングで初めて遭遇する、ぼんやりしたエコーしか探知できない“生命盗人”の船。
  • General …… 将軍。カンターロの階級で、戦略家の下、一般兵の上。
  • Genfabrik …… 遺伝子ファブリ。銀河系各地につくられたクローン工場。
  • Genmüll …… 遺伝子廃棄物。 → Bionten
  • Gevonia …… ジェヴォニア。かつてリバルド・コレッロの拠点だった惑星。過去編(新銀河暦9世紀)にて登場。
  • Giga …… 〈ギガ〉。シミュセンスのネットワークを遡り、さらにタイタンから生還したとされる伝説の人物。
  • Goliath-700 …… ゴリアテ=700。1149年の「700周年」に向けて製造中のシガ人クローン。
  • Gurrads …… グラド。マゼランの獅子人間。

H

  • Herren der Straßen …… 〈回廊の主人たち〉。カンターロを支配するとされる。歴史のはざまに点在する様々な名前から、その実態は杳として知れない。
  • Humanidrom ……  〈ヒューマニドローム〉。新銀河暦800年に建造が発表された、惑星ロクフォルトをめぐる巨大な宇宙ステーション。当初は「銀河諸種族の博物館」になるとされた。 → Werkstatt der Sucher
  • Hundertsonnenwelt …… 二百の太陽の星。ポスビが予言者とともに去った後、委託されたグラドが管理している。
  • Hyguphoten …… ヒグフォト。「ヒポキサンシン=グアニン=燐化ボシル転移種」の略で、エルトルス人を元にした強化クローン。

I

  • Imperium von Karapon …… カラポン帝国。ハンガイ=カルタン人の分派カラポン人の星間帝国。
  • Invitro …… インヴィトロ。クローンの別称。
  • Invivo …… インヴィヴォ。胎生、すなわち旧来の生殖により生まれた生命。

J

  • Juwel von Mimoto …… 〈ミモトの宝玉〉。〈暗黒のキューブ〉と合わせて星の暗黒回廊の星図をなすとされる。

K

  • Karaponiden …… カラポン人。ハンガイ=カルタン人の分派。
  • Klirr-Klang-Gott …… クリル=クラン神。シミュセンスを体現する神として伝承される存在。
  • Konstrukteure des Zentrums …… 中枢部の設計者。M-87銀河のカースト制度の頂点。
  • Kontrollfunknetz …… 制御通信網。生のインパルス、死のインパルスを媒介する。

L

  • Lafsater-Koro-Soth …… ラフサテル=コロ=ソス。ポルレイターのスポークスマン。
  • Lokale Gruppe …… 局部銀河群。最近は、また局銀河群呼びになってきた感も。

M

  • Machraban …… マハラバン。アノレーがアマレナを尊崇する呼び名。「旧主」の意。
  • MERZ …… MERZメルツタイプの艦船、と使用する。多目的用途(MEhRZweck)、の略。
  • Monos …… 〈モノス〉。〈回廊の主人たち〉の存在を知って焦るローダンに挑戦状をたたきつけてきた敵。添付された細胞片のDNA分析の結果、“母”が消息不明のゲシルと判明。由来は「主人たち」(複数)と対蹠的な「ワタシはキミの敵」(単数)からのコードネーム。
  • Multitasker …… マルチタスカー。ドリームハンターらが使用する、シミュセンスに埋没しないための機器。

N

  • Neyscam …… ネイスカム。ネイスクールの公用語。
  • Neyscuur …… ネイスクール。銀河系から5000万光年かなたのNGC7331銀河。アノレーの故郷。

O

  • ODIN …… 《オーディン》。新銀河暦490年に就航した、MERZタイプの巡洋戦艦オーディン級一番艦。長らくデイトンの旗艦、後ローダンの乗艦に。
  • Organisation Drake …… ドレイク機構。自由商人の分派で、名称は海賊フランシス・ドレイクから。
  • Ortonator …… オルトネーター。カンターロの心臓に遺伝子操作でつくられた第5の心室。実は自爆装置……。

P

  • Pedrass Foch …… ペドラス・フォッシュ。ドレイキストのひとり。
  • Perle Moto …… 〈モトの真珠〉。カラポン皇帝が求める謎の宝物。名称がアレとかコレと類似しているが、元の所持者は実は……。

R

  • Raum-Zeit-Falte …… 時空褶曲しゅうきょく。空間をたわめてマイクロ宇宙を作り出す技術。
  • Romulus …… 〈ロムルス〉。正体不明の〈ヴィダー〉リーダー。

S

  • Sashoy-Imperium …… サショイ帝国。ハンガイ=カルタン人の分派。
  • Schwarze Sternenstraßen …… 〈星の暗黒回廊〉。太古〈回廊の主人たち〉が建造したブラックホールを介した転送網。
  • Schwarzer Kubus …… 〈暗黒のキューブ〉。〈ミモトの宝玉〉と合わせて星の暗黒回廊の星図をなすとされる。
  • Simusense …… 〈シミュセンス〉。疑似体感ネットワークとか当時はいろいろ苦慮したが、要はアクセスした者はヴァーチャル世界〈ドリーム・テラ〉にダイヴ! ただしマルチタスカーをつけていないと、夢に没入して目がさめず、本体はロボットに自動介護される状態に。
  • Stratege …… 戦略家。カンターロの階級(最上位)。
  • Supremkommando …… 最高司令部。多くの将軍、戦略家からなるカンターロの出世の頂点。

T

  • Tarkan-Verband …… タルカン部隊。タルカン艦隊(Tarkan-Flotte)とも。Verbandは軍事用語では部隊、集団。
  • Todesimpuls …… 死のインパルス。オルトネーターがこれを受信すると大爆発。
  • Traumhelfer …… ドリームヘルパー。マルチタスカーを持ち、「夢見る権利は平等」とハンターと抗争中。
  • Traumjäger …… ドリームハンター。マルチタスカーを持ち、高品質な夢を求めて人間狩り。2000年を生きた某テラナーの夢は、そりゃあ上質で……(笑)

V

  • Vierarmiger Prophet …… 〈四腕の予言者〉。ローダンの死の噂を否定し、ポスビを扇動して旅立ったその人とは……?
  • Viperter …… ヴィペルター。ヴァウペルティアの末裔(惑星定住組)。エスクエル人と合流し、新たな種族アマレナとして宇宙へと旅立つ。
  • Virenwall …… 〈ウィルス・ウォール〉。コンピュータ・ウィルスが艦船を行動不能に。あとは撃沈するだけの簡単なお仕事。

W

  • Wahnsinnsbarriere …… 発狂バリア。 → Chronopuls-Wall
  • Werkstatt der Sucher …… 〈探求者の工房〉。現在、ナックの巣窟となったヒューマニドロームのこと。
  • WIDDER …… 〈ヴィダー〉。「雄羊」「破壊鎚」の意味を持つ抵抗運動組織。

Z

  • Zeittafeln von Amringhar …… 〈アムリンガルの年表〉。エラートらが探索を命じられた謎だらけの代物。
ダールショルさん(□虚)

なんというかね……このサイクル、かなりおもしろいのよ。695年後の変わり果てた未来。ツテをたどって銀河系へ帰る苦難の道のり。倒れる味方。絶望のなか、思いもよらぬ再会もあったり。
一方、敵の側でも、アイデンティティを喪失してorzるやつもいれば、ピンチをチャンスに変えて出世街道をばく進するやつもいる。そして、えてしてそーゆー時に落とし穴が待っているものでw
でも、それも翻訳がちゃんとしてればの話なんだよなあ。いろいろ不安だなあ。

カンターロ・サイクル各話タイトル+仮訳

ハヤカワ版がちょっとアレなので、サイクルジン『銀河系に還る』のとき作ったものに、若干手を加えたものをアップしておく。将来的に、タイトルリストのページができたら削除するつもりだが、予定は未定。

  1. Kurt Mahr / Götter der Nacht / 夜の神々
  2. Arndt Ellmer / Der Herr der Trümmer / 残骸の主
  3. H. G. Ewers / Die Drachenwelt / 竜の惑星
  4. Marianne Sydow / Die fliegenden Menschen / 天翔ける山人
  5. K. H. Scheer / Diebe aus der Zukunft / 未来からの盗賊
  6. H. G. Ewers / Die Erben der Posbis / ポスビの継承者
  7. Robert Feldhoff / Barriere im Nichts / 虚空の障壁
  8. Clark Darlton / Der Eremit von Satrang / サトラングの隠者
  9. Ernst Vlcek / Ein Tropfen Ewigkeit / 永遠のひとしずく
  10. Arndt Ellmer / Sucher in M3 / M-3捜索隊
  11. Kurt Mahr / Der Droide / ドロイド
  12. Peter Griese / Eiswelt Issam-Yu / 氷惑星イッサム・ユー
  13. Marianne Sydow / Der Pirat von Magellan / マゼランの宙賊
  14. H. G. Francis / Enklave Chronopuls-Wall / クロノパルス・ウォールの飛び地
  15. K. H. Scheer / Der letzte Aufbruch / 最後の出撃
  16. Robert Feldhoff / Die Spur des Propheten / 予言者のシュプール
  17. Arndt Ellmer / Das Gebot der Götter / 神々のおきて
  18. Clark Darlton / Flug in Richtung Ewigkeit / 永遠へむけて飛べ
  19. Kurt Mahr / Die Höhle des Giganten / 巨人の洞窟
  20. H. G. Ewers / Der Tod eines Cynos / あるサイノの死
  21. H. G. Ewers / Sternentore / 星の門スター・ゲート
  22. Ernst Vlcek / Zeitzeugen / 時の証人
  23. Ernst Vlcek / Die Tage der Cantaro / カンターロの日々
  24. K. H. Scheer / Wer ist Advok? / ベンゴシアドヴォクとは誰か?
  25. Kurt Mahr / Revolte auf Phönix / フェニックスの反乱
  26. H. G. Francis / Eine Falle für die Cantaro / カンターロへの罠
  27. Peter Griese / Daarshol, der Cantaro / カンターロのダールショル
  28. Marianne Sydow / Die Reise nach Ardustaar / アルドゥスタールへの旅路
  29. Robert Feldhoff / Wächter der BASIS / 《バジス》の監視者
  30. Arndt Ellmer / Hamillers Herz / ハミラーの心臓
  31. Arndt Ellmer / Hamillers Puzzle / ハミラーのパズル
  32. H. G. Francis / Das Humanidrom / ヒューマニドローム
  33. H. G. Francis / Fluchtziel Gevonia / 逃亡の終点ジェヴォニア
  34. Kurt Mahr / Blockadebrecher / 障壁破りブロケイド・ブレイカーズ
  35. H. G. Ewers / Station der Rätsel / 謎のステーション
  36. Clark Darlton / Im Halo der Galaxis / 銀河系のハローにて
  37. Robert Feldhoff / Die Bionten von Kyon / キョンのバイオントたち
  38. Marianne Sydow / Der Weg nach Bentu-Karapau / ベンツ=カラパウへの道
  39. Ernst Vlcek / Kinder der Retorte / 試験管レトルトの子ら
  40. K. H. Scheer / Agenten weinen nicht / 工作員は泣かない
  41. Ernst Vlcek / Deckname Romulus / 暗号名ロムルス
  42. Arndt Ellmer / Schwarze Sternenstraßen / 星の暗黒回廊
  43. Kurt Mahr / Die grauen Eminenzen / 灰色の枢機卿たち
  44. Arnst Ellmer / Die Flucht der BARBAROSSA / 《バルバロッサ》の逃亡
  45. Kurt Mahr / Legende und Wahrheit / 伝説と真実
  46. K. H. Scheer / Gensklaven für Uulema / ウウレマの遺伝奴隷
  47. Peter Griese / Robotersporen / ロボット胞子
  48. H. G. Ewers / Sturmwelt am Scheideweg / 岐路に立つ嵐の惑星
  49. Marianne Sydow / Der Kaiser von Karapon / カラポンの皇帝
  50. Marianne Sydow / Die Perle Moto / モトの真珠
  51. H. G. Francis / Die Herren der Straßen / 回廊の主人たち
  52. Robert Feldhoff / Die Siragusa-Formeln / シラグサ方程式
  53. Ernst Vlcek / Entscheidung am Ereignishorizont / 事象の地平の決戦
  54. Kurt Mahr / Der unbekannte Feind / 未知の敵
  55. Peter Griese / Psychoterror / 心理テロ
  56. H. G. Ewers / Kundschafter für Halut / ハルト偵察
  57. K. H. Scheer / Fremde in der Nacht / 夜の異邦人ストレンジャー
  58. Robert Feldhoff / Bomben für Topsid / トプシドに爆弾を
  59. H. G. Francis / Die Spur der Haluter / ハルト人の足跡
  60. Marianne Sydow / Der Dieb von Sira-VII / シラVIIの強盗
  61. Arndt Ellmer / Ellerts Botschaft / エラートのメッセージ
  62. Peter Griese / Der Friedenssprecher / 平和スポークスマン
  63. Robert Feldhoff / Operation Brutwelt / オペレーション培養惑星
  64. Ernst Vlcek / Geburt eines Cantaro / カンターロの誕生
  65. Kurt Mahr / Das Phantom von Phönix / フェニックスの幻影ファントム
  66. K. H. Scheer / Schach dem Klon / クローンに王手チェックメイト
  67. H. G. Ewers / Kontrakt mit Unbekannt / 未知との契約
  68. H. G. Francis / Historie der Verschollenen / 失踪者たちの歴史
  69. Marianne Sydow / Zentralplasma in Not / 中央大プラズマの危機
  70. Peter Griese / Impulse des Todes / 死のインパルス
  71. Arndt Ellmer / Der Arzt von Angermaddon / アンゲルマドンの医師
  72. Robert Feldhoff / Museum der Archäonten / 始祖の博物館
  73. Ernst Vlcek / Loge der Unsterblichen / 不死者たちの桟敷
  74. K. H. Scheer / Jagt den Terraner! / テラナーを狩れ!
  75. Kurt Mahr / Das Supremkommando / 最高司令部
  76. Clark Darlton / Auf Gesils Spuren / ゲシルの足跡をたどる
  77. Peter Griese / Drei gegen Karapon / カラポンに立ち向かう三人
  78. H. G. Ewers / Die Piratin / 女宙賊
  79. Marianne Sydow / Planet der Sammler / 蒐集家の惑星
  80. H. G. Francis / Prophet des Todes / 死の予言者
  81. Arndt Ellmer / Die Verbannten von Maahkora / マーコラの流刑囚
  82. Robert Feldhoff / Keine Chance für Raumfort Choktash / 宇宙要塞コクタシュ万事休す
  83. Kurt Mahr / Der Alleingang des Außenseiters / アウトサイダーの単独行
  84. Ernst Vlcek / In den Ruinen von Lockvorth / ロクフォルトの廃墟で
  85. Marianne Sydow / Der Tod eines Nakken / あるナックの死
  86. Peter Griese / Werkstatt der Sucher / 探求者の工房
  87. H. G. Ewers / Mission auf Akkartil / アッカーティルに待つ使命
  88. H. G. Francis / Rebellion in der Gen-Fabrik / 遺伝子ファブリの反乱
  89. K. H. Scheer / Söhne der Hölle / 地獄の息子たち
  90. Arndt Ellmer / Offensive der Widder / ヴィダーの攻勢
  91. Ernst Vlcek / Endstation Sol / 終着駅ソル
  92. Robert Feldhoff / Transit nach Terra / テラへの転移
  93. Robert Feldhoff / Das dunkle Netz / 暗黒の網
  94. Kurt Mahr / Das Gefängnis der Kosmokratin / 女コスモクラートの牢獄
  95. Peter Griese / Jagd auf Gesil / ゲシル狩り
  96. Arndt Ellmer / Die Generalprobe / 総演習
  97. Marianne Sydow / Die Paratrans-Mission / パラトランス作戦
  98. H. G. Ewers / Unternehmen Exitus / エグジタス計画
  99. K. H. Scheer / Rhodans Tod / ローダンの死
  100. Ernst Vlcek / Das Mondgehirn erwacht / 月面脳めざめる

障壁破りは「障壁突破隊」でもいいが、章タイトルとしてちょっと弱かったので。
レトルトは「蒸留管」だが、試験管ベビー的意味合いなので。
「工作員は泣かない」初登場のヤルト・フルゲンはちょい役のようだが、諜報関係の専門家としてアトランのアルコン復興活動に協力する等長らく活躍。後々、新USOの旗艦に名が冠される。
星の暗黒回廊は、ブラックホールを結ぶので、別に暗黒星街道でもいいんだけど。
〈回廊の主人たち〉は、いろいろ検討した結果、“主人”の訳がいちばん伏線に活かしやすいと判断した。
夜のストレンジャーは作中でフランク・シナトラの曲の話が出てくる。
抵抗運動組織ヴィダー(WIDDER)は「雄羊、おひつじ座アリエス」のことだが、「破壊鎚」の意味もある。当時はそれだけ調べるのにもひと苦労だった。
1498話はローダンが敵ラスボスとともに大爆発の中に消えて幕。

コミック『リトル・ペリー 1. 放浪惑星の秘密』

8月29日、ローダンのジュブナイル・コミック『リトル・ペリー 1. 放浪惑星の秘密(Der kleine Perry 1: Das Geheimnis des Wanderplaneten)が発売された。

ハードカヴァー 総天然色オールカラー本文92頁
ストーリー:オーラフ・ブリル
作画:ミハエル・フォークト
対象:8歳から

シナリオ担当のオーラフ・ブリル(Olaf Bril)は1967年生まれ、フリーの作家兼編集者。70年代からのローダン・ファンで、1000話記念のヴェルトコンにも参加し、多くのファンジンやLKSへの投稿も。
2007年からアリゲーター・ファーム社(ローダン・コミック『ペリー』の版元のひとつ)で原作を務め、作画担当のフォークトと知り合う。2人で組んで業界紙phantastisch!等に掲載されたコミック『奇妙な一日』シリーズは複数の出版社から集成版も出ている。
近年は編集者・作家としてローダンに協力。多くのミニシリーズやNEOにも執筆している。

奇妙な一日(Ein seltsamer Tag):
『奇妙な一日/ロボット寓話』(Atlantis社)、『奇妙な一日/宇宙間鉄道その他のロボット寓話』(Panini社)等。ロボット労働者ノーバディを主人公に、だいたい2頁1話構成とのこと。写真は前者の表4だが、エシュバッハが「phantastisch!を買ったら一番最初に読むとこだよ!」と献辞を寄せている。

作画担当ミハエル・フォークト(Michael Vogt)は1966年ベルリン生まれのイラストレーター。Bastei社から出ていたホラー・コミック『ゴースト・ストーリーズ』や、風刺雑誌“世界一理性的な雑誌MAD”などを手がけていたが、有名所としてはSFシリーズ〈宇宙パルチザン、マルク・ブランディス〉のイラストやコミカライズ、ジュブナイル・サッカー小説〈サッカー鮫〉のイラスト、上記ブリルとの共作〈奇妙な一日〉シリーズ等。
アリゲーター・ファーム版『ペリー』の作画も一部担当している。

マルク・ブランディス(Mark Brandis):
1970年から1987年にかけて全31巻が刊行されたジュブナイルSFシリーズ。キャッチフレーズが“信ずるもののために生きて死ね”で、パルチザンと銘打たれたように、地球を東方共和国と二分する欧米阿連合に出現した独裁者の野望に、中立の〈金星=地球・宇宙航法協会(VEGA)〉のテストパイロット、“呪われたプロシア人”ことマルク・ブランディスが立ちむかう。
2008年からWurdak社よりコレクター・エディションとしてペーパーバック版が出たほか、2012年からコミカライズ版がPanini社から、前日譚である〈宇宙候補生マルク・ブランディス〉のオーディオドラマ版が制作されるなど、息の長いシリーズである。

サッカー鮫(Fußball-Haie):
ストリート・サッカーを題材にしたジュブナイル・スポーツ小説。S.Fischer社から全10巻が刊行されている。シリーズ名は、おそらくチーム名。サッカーの才能に自信のある少年ペドロが、自分のサッカー・チームを立ち上げ、仲間を集め、監督をみつけ、ライバルとサッカー・コートや大会出場権をめぐって小競り合いをくりかえしつつ、成功をつかむ(?)まで――スポンサーのついた最終巻タイトルが『友情か勝利か?』なので、サクセスを投げ出している可能性も――を描く。

「ホントにここで降りるのかい、坊や。戻ってくるのは5時間あとだよ」「 だいじょうぶ、バターブレッドあるし。乗せてくれてありがとう」

ペット(?)のグッキーを連れてネヴァダ・フィールドに月ロケットの打ち上げを見に来たペリー少年。ママの設計したスターダスト号を遠くに眺めながら、「ああ、ボクもスターダストで宇宙へいってみたいなあ」
次の瞬間、グッキーに手をとられた少年は、ポン、という音とともに見知らぬ場所へ。
そこはカウントダウンの進む、レジナルド・ブル大尉、ラス・ツバイ大尉(おお、フリップ……)、コンピューターの専門家、女性科学者ハミルトン博士と船医エリック・マノリ博士の乗り組んだスターダスト。このへんポリコレのためくさい。
打ち上げからまもなく発見されたペリー(とグッキー)。緑のエネルギー・ビームを浴びたスターダストが月に不時着し、地球との通信途絶や、未知の球形宇宙船の発見等もあり、当初スパイと思われ軟禁されるが、またグッキーがテレポート。

「ああ、ボクもスターダストで宇宙へいってみたいなあ……え、なに?」

月の裏側に難破した球形船《アエトロン》にとびこんだ1人と1匹は、アルコン人の少女トーラとクレストおじさん(アップになると目尻にシワが……)に遭遇。ブルの誤解もとけ、不時着の原因となった未知のエネルギー力場を発する放浪惑星ワンダラーの秘密を探るため協力することとなる。

クレストの説明によると、1000年前アルコン星系にあらわれた放浪惑星〈永遠の若さの星〉の守護者ガーディアンは、当時の水晶王子率いるコマンドを一蹴し、すぐ武力に訴えるものはワンダラーの秘密を得るに値しないと姿を消したという。歳月のすえに平和を愛する種族となったアルコン人の高等議会は、ワンダラーを再発見すべく、非武装の研究船として《アエトロン》を派遣。シュプールをたどり太陽系へいたったのだが、スターダストと同じく緑のエネルギー場によって月面への不時着を余儀なくされた。

(上から) ワンダラーのガーディアン、〈出題者〉、火星大迷宮の門番、ヒュジオトロンの管理人

なお、本来の乗員はクレストただ1人で、トーラはいつのまにか潜り込んでいたらしい。「どっかで聞いたような話だな……」とつぶやくブル(笑)

突如《アエトロン》に侵入してきた〈出題者〉の言葉をうけ、ペリーらは“資格”を賭けた謎解きに挑むことに。月から火星の大迷宮、そして準惑星ケレスへと冒険はつづき、ついに7つの謎を解いた一行は生理学的装置ヒュジオトロンの管理者からその使用を認められる。一種の“アップデート”で、異星の大気や水に含まれる毒素への耐性を得るペリーとトーラ。
一方、クレストやブルらは副作用で少年少女に……さすが永遠の“若さ”の星(笑)

ヤング・ローダンの冒険とするにあたり、ペリーがおそらくローティーンの少年となった他、アルコン人が頽廃デカダンに陥ったという描写がなかったり、スターダストに新型エンジン〈リブロトロン〉が搭載されていたりする。

■リブロトロン駆動(Librotron-Triebwerk):
ローダン正篇におけるリブロトロン駆動は、カルプやワリング・コンヴァーターの発展形。2700話台に使用されているホークV型補正コンヴァーターで三層構造の補正フィールドを展開し、内側二層のフィールドで牽引力を発生。亜光速・超光速航行時の推進にも使用するというもの。なお、“ホーク”も元々の開発者名に由来する。
本コミック中での機能は、昔ハヤカワ版巻末のローダン百科で訳出された「フィールド・エンジン」に近いようだ。

もっとも、一番の改変はペリー少年のママ、メアリさんだろう。正篇では看護師だったメアリさん、本コミックでは“スターダストの設計者”という肩書き。(準惑星ケレスにいる)ペリー少年から電話がかかってきたときも、お庭で小型ロケットみたいな代物をトンテンカンテンやっており、その風体は科学者というより市井のあやしい発明家である。
「あら、ペリー。いまどこにいるの? グッキーもいっしょ?」
「ボクらスターダストに乗ってるんだ。月に、火星に、ケレス……。ねえママ、新しい友だちとちょっと銀河へいってきていい?」
「ふーん、わかったわ」(まったく、男の子の想像力ときたら……)
まるで動じないのがステキだママw

ともあれ、ママ・メアリのアドバイスを受けて、スターダストを上極にドッキングした《アエトロン》。地球人テラナーとアルコン人が手を携えて、ワンダラーの超知性体のもととなった種族の母星〈浮浪者トラムプ〉の手がかりをもとめて、銀河系の星の海へといま旅立つ。
「イルトも忘れないで?」
「イルトもいっしょ!」

……そして、冒険はつづく。
第2巻、ヴェガ星系を舞台とした『2. 四十二世界の国』は2024年発売予定とのこと。

■Carlsen社公式:Der kleine Perry

空白の1000年

1000年ジャンプした400話「たそがれの人類」

ハヤカワ版ではもうじき“暗黒の700年”と呼ばれる時間ジャンプが到来するのだが、それはさておいて。
ローダン正篇のサイクルのはざまで、一番長期の時間ジャンプがおこなわれたのが、399話/400話で、実に1000年――正確には993年――もの期間が過ぎ去った。

以下に、この空白期の主立った事件を列記してみた(当然、かなり主観的に取捨選択されている)。

2437年 スレンドル・カルスアル将軍を盟主に400の星系が太陽系帝国から分離。
2440年 アルノ・カルプ、実験中の事故で死亡。(※異説あり)
2460年 旗艦《クレストVI》からパラトロン・バリアの実装開始。
2467年 惑星モスタンを中心に14の星系が第一次カルスアル同盟を結成。(→2498年)
2477年 新アルコン人シフンダスI世、アルコン皇帝に即位。(→2548年)
2498年 スレンドル・カルスアル暗殺される。
2548年 アトラン暗殺を試み失敗したシフンダスI世が退位。以後、水晶帝国建国まで空位時代がつづく。
2648年 大西洋に新アトランティス(次元エレベーター・プトール)浮上。
2651年 エルトルスの実権を握ったスレンドル・カルスアル・ジュニアが太陽系帝国から自立、第二次カルスアル同盟を建国。
2801年 精神憑依体による銀河規模の“悪の十字軍”が自称「アコンの工作員」リモアンにより撃退される。
28xx年 この頃、中央銀河ユニオンが成立。中央惑星はルディン。
2821年 テケナーとケノン、〈苦境にある人々のための独立援助機構(UHB)〉を創設。
2841年 エルトルスで革命。ヴィゲラント、シルター、フラスカティの三頭支配者が実権を握る。
2842年 最後の島の王〈グレー(コムデン・パルタン)〉との戦い。
2895年 惑星ノスモ、太陽系帝国からの独立を宣言。ダブリファ帝国の創始。
2907年 第一次ジェネシス危機。
2909年 第二次ジェネシス危機。主力ミュータントを含む多くの死者。活性装置が反テラ勢力の手に渡る。
2930年 大執政官、直接選挙制に。ただし投票権を持つのはソル系居住者のみとされた。
2931年 惑星プロフォスのパニター動乱でモリー・アブロとスーザン・ワリンジャーが射殺される。
3102年 超戦士トリリス=オクトと太古文明イロヒムにからむ一連の事件。

2437年は399話のドラン撃退直後のエピソードだが、分離っつーか、本国に見捨てられた植民地が流しのドランに対する互助協定結んだよーな感じか。
2648年からのプトール出現、消失にはじまる事件はATLAN300話からの〈アトランティスの王〉サイクル、2800年代の各事件は同じくATLANの〈人類の委託をうけて〉サイクル後半50話からの題材である。

『レジナルド・ブル』書籍版

アルコンIIIのブルー人による破壊以降、分裂した新アルコン人の国家を(かなり強引な手段で)まとめあげた皇帝シフンダスI世の話は、アトラン暗殺未遂事件として惑星小説でとりあげられた。
3100年代の話は、アトランのペーパーバック・シリーズ〈ルディン〉〈マラシン〉等の題材で、時代背景としてカルスアル同盟の由来もこちらで言及されたもの。
2931年のパニター動乱については、正篇400話の内容だと、パニターが人だか場所だかすらわからなかったのだが、以前書いたとおり『コスモスクロニクル レジナルド・ブル』で多少の流れが書かれており、プロフォスから植民した惑星パニトに拠点を置く、ホンドロ時代までルーツが遡れる秘密結社〈黒の星〉が扇動した、らしい。プロフォスの民衆は、まさか元首母娘を殺っちまうとまでは思わなかったようで、そのへんの罪悪感からテラ側にとどまる形になったようだ。
カルプ教授の没年に関する異論とは、400話の記述(「建設作業の開始からまもなく」)では500年計画のスタート時点ではまだ存命であるように見えるから。SOL3号に掲載されたライナー・カストルの短編「訣別」では、2440年の事故で半透明な非物質的存在と化したカルプをワリンジャーが数百年かけて救出し、最終的な没年が2900年代前半であるとしたが、これは必ずしも正典扱いされているわけではないようだ。

その他年表をつらつら眺めていると、知らない人名やら地名がいっぱい並んでいる。どれも、惑星小説、短篇、後のヘフトで追加された情報である。
いやほんと、掘ればまだまだいろいろ出てくるねえ、ローダンって……。

ガローン人の服……という名のスーツ

1998年に作成されたトレゴン宣伝用ポスター

1800話から始まるトルカンダー・サイクルは、同時に400話からなるラージサイクル〈トレゴン〉の幕開けでもあった。サイクル最終の1875話「プランタグーの平和」で、攻撃衝動を封印した〈竜穴〉の暴走によるプランタグー銀河の種族大虐殺を間一髪防いだローダンは、新たなトレゴンの第二使徒カイフ・チリアタから感謝の印として青い〈ガローン・スーツ〉を贈られる。
原語はGalornenanzugで“ガローン人の服”だが、テラナーがいったんソル系へ戻った際に着てきたSERUNを雛形に造られた、ローダンの固体周波数を登録された専用宇宙服。そもそもガローン人は大仏体型なので入らないのだが(笑)

きらめくダークブルーの未知の素材で、左肩口に渦状銀河のマーク、右胸にブッダっぽいガローン人の徽章付き。
このブッダ、固有名ムーは、実は半生命を有するロボットで、

「ムー、アクティヴ・モード!」

というローダンの命令一下、独立行動が可能という代物。
服自体も、かつてポルレイター遺産の管理・製造を担っていたバオリン=ヌダから〈ヘリオートスの堡塁〉の建造を一任されるほどのエンジニア種族であるガローン人、よくわからないけど高性能なんである。当初、「ありがたいけど、なんか触るとピリピリする……怖っ」と、もらうだけもらってしまい込んでいたローダンだが、無限架橋を渡ってたどりついたノンッゴの故郷トイラー星系を混沌のちまたに突き落とした〈カオスメイカー〉グージレズに単身立ちむかうため着用してからは着たきり雀(笑)

初着用の1885話「天輪のはざまで」

テラで暴れまわるサイクロプス、実は〈死滅スーツ〉を着た〈物質のしもべ〉ラミヒュンその人の前に立ちはだかって、TLDの防衛部隊のように死なずにすんだのも、ガローン・スーツ――と、もちろん活性装置――あってこそ。以降、青い専用スーツを着た姿は「トレゴンの第六使徒」の象徴となった。1998年にはレナト・カサロ画のポスターにもなった。

……のだが。ラージサイクル終了直後、2200話からの星海サイクル序盤で超空間インピーダンスの急上昇のため、機能不全に陥りお蔵入りとなった。かっこよかったのに、残念なことである。

2200話が出たのが2003年の10月。
なので、この話題のもとになった公式ツイートの、立看板をセンターにしたマーケティングチームの撮影時点(2004年)では、実はガローン・スーツはすでに正篇を退場しているのだった(爆)

でも、しょうがないよね、かっこいいんだものw

島の王の復活

島の王サイクルは、おそらく現在でもシリーズ中一番の人気を誇るだろう。
その最大の敵役であったファクターIことミロナ・テティンも、くりかえし惑星小説や短編の題材に取りあげられている。アトランが殺したのは実はデュプロ説、死んだのはオリジナルだがいまでもデュプロ原盤が存在する説……。西暦2801年に銀河系の危機を救った自称アコンの工作員リモアンは、マイクロ状況転送機内蔵のスーツを身にまとい、拳銃サイズの武器で核火災をひきおこしたというが、その名は「ミロナ」のアナグラムかもしれない(惑星小説331巻)等々。

一方で、他のファクターの場合も、死んだはずが生きていたというパターンは、実はめちゃくちゃ多い(笑)
嚆矢となるのは、1973年に刊行されたATLANヘフトに登場した敵〈グレー〉の正体が、ミロナさんに叛逆して処刑されたファクターのひとり、コムデン・パルタンだったという例。近年では、カオターク・サイクル序盤から登場しているソインテ・アビルが、やはり処刑されたはずの旧ファクターVIIである。
d-informationのネタ出しに外伝をパラパラやると、おい、アラス伝説の医師MOって島の王かよwwwなんてケースもあったり。ふと思い立って、今回ちょっと簡単にまとめてみた。

初期 終期 名前 備考 死亡時期 関連話
I (*1) アガイア・テティン ルーム星系でハイパークリスタル〈創造の息吹〉を発見。 紀元前18000年頃死亡 惑星小説288巻
(*1) I ミロナ・テティン 母の死後、ひそかに権力を継ぐ 西暦2406年死亡  
II II トリナル・モラト   西暦2406年死亡  
III III プロフト・メイヘト マルティドン脱出後、銀河系へ。 西暦2909年死亡 記念号7巻
IV (*2) ゼノ・コルチン 装置破壊による肉体死亡後、精神はPEWメタルの彫像に宿る。 新銀河暦1552年死亡 2999話
V V ネヴィス・ラタン   西暦2404年死亡  
VI (*2) アセト=ラドル モビーの創造者。その内部で殲滅インパルスを遮蔽。銀河系でアラスに偽装して生活。 消息不明 外伝〈アラス毒〉
VII (*2) ソインテ・アビル 死を偽装した宇宙船の爆発が殲滅インパルスを遮蔽。カシオペア座矮小銀河へ避難。 《光力》を奪いコンドル銀河へ先行 3058話
VIII VI トゼル=バン   西暦2404年、過去界で死亡  
IX (*2) バリム=ナントル 殲滅インパルスで装置破壊。 紀元前7600年頃死亡  
X IV ミラス=エトリン   西暦2405年死亡  
XI (*2) コリン=ウンス 殲滅インパルスで装置破壊。 紀元前7600年頃死亡  
XII VII レグナル=オルトン   西暦2404年死亡  
XIII (*2) コムデン=パルタン 活性装置を他者へ移植、深層睡眠に。怪物〈グレー〉に変容。デュプロ疑惑有。 西暦2842年死亡 ATLAN99話
番外 セラロン・メロタ 活性装置の設計者。エルミゴア、ミロナ・テティンの父。 消息不明 惑星小説288巻
トラヴェルサン12話
番外 エルミゴア ミロナ・テティンの腹違いの姉。 西暦3460年死亡 683話
番外 ネルモ・デリム パラレル・ワンダラーで活性装置14基を受領。 異時間線で非正規扱い 1573話

*1) 紀元前18000年頃、活性装置をマルチデュプリケーターで複製しようとしたミロナの試みでアガイアの装置が爆発。責任転嫁されたセラロン・メロタは銀河系に逃亡する。
*2) 紀元前7600年頃、ファクターIの正体を怪しんだ〈6者会議〉の動きがアセト=ラドルの裏切りで発覚。活性装置を破壊する殲滅インパルスで処刑された。

処刑したはずが、生きてる方が多いじゃなーい。ミロナったらお茶目さん(笑)
というか、遺体が確認されてない以上、あとの2人もいつ復活するかわかったもんじゃないなこれ……。

そもそも、島の王の成り立ちと活性装置の由来については、諸説ある(例えば〈反それ〉が与えた、とか)中、1987年に惑星小説288巻『不死を鍛つ者』(テリド)が刊行され、特殊なハイパークリスタルを発見したレムール人による自力開発、とされた。
一方、1991年の1573話「時間展望」で、テフローダーのネルモ・デリムが14基の活性装置を〈それ〉の使者エラートに与えられ、適切な携行者を選ぶよう命じられる(場面を、ローダンらが目撃する)。最新が常に正なりなローダン・シリーズなので、混乱した〈それ〉がうっかり渡しちゃったということで設定が置き換えられた、と思ったのだが。
1998年刊行のATLANトラヴェルサンで、惑星トラヴェルサンにあった時間ステーションを、セラロン・メロタがアトランの前に使用していた云々で、また元に戻った(か、そもそも違う時間線の話と考えられていた)みたい。時間遡行して、恒星転送機をより早期に“発見”してカラホル(アンドロメダ)移民を進めたり、なんやかやしている。この時代はレヴィアン・パロンが時間遡行してレムール人の〈箱船〉を建造(外伝〈レムリア〉)したり、時間転送機大活躍である。そりゃ時間警察も攻めてくるわ(汗)

さらに、このセラロン・メロタだが、その後の消息がはっきりしない一方で、1万年前の〈銀河の謎〉設置にあたり、フェロルに格子型転送機を持ち込んだ人物であるとか、変な設定が盛られている。死して〈それ〉に吸収されたのか、それとも、いまでもどこかで怪しい活動していたり……(オイ

The rise and fall of Siqim Malkar

――あなた様にお仕えできて、わたくしは幸せです。
《惑星アホアナの元農夫、バンダル》

収縮しつつある宇宙。
決定された滅亡。約束された再生。
秩序と混沌の天秤は、与え、そして奪う――。
シェラ・ナール銀河の王、シリクジム。
彼に与えられた新たな名は、〈七日目の主〉を意味する――
SIQIM MALKAR

プロローグ 農夫バンダル  Bandar, der Bauer

 耕地グライダーのキャノピーから、バンダルはアホアナの大地を見渡した。
 北に向かえば、地平まで平らかな褐色の農地――その中にバンダルの土地もある――が続いている。南に目を転じれば、緑なす丘と、彼方にそびえる雪に覆われた高山が視界を埋める。
 バンダルは、世界を愛していた。
 本来なら、耕地グライダーで畝を切る作業は全自動でまかなえる。ふたりの妻と5人の子をもつバンダルは、農夫の中でも比較的裕福な部類に属する。みずから作業を逐一おこなう必要などないのだが……。
 太陽が中天高くかかった正午のひとときを、こうして過ごすのが、バンダルは好きなのだ。陽炎にゆらぐ大地を、牧神とニンフたちが駈けぬけていく――そんな気がした。
 だが、今日、バンダルの幻想を中断したのは、牧神などではなかった。
 銀色に輝く紡錘状の物体。グライダー前方の地表に浮かび、長軸にそって高速で回転している。
「――作業をやめて、降りよ!」
 アホアナの反対側にすら届きそうな、大音声が轟いた。どこから来るのか、確かなことはわからないが、あの紡錘以外考えられない。

 自由を愛するバンダルは、普段ならば、命令口調の相手を笑い飛ばし、仕事をつづけただろう。頑固な農夫なのだ。しかし、声の響きの何かが、そうさせなかった。かれはグライダーを着地させ、ハッチから外に出た。
 紡錘の回転がゆるやかになり、やがて停止した。それにともなって、光輝も静まった。
 そして、ひとりのアホアノが、姿をあらわした。
 パルバン帝国に住まう種族の中でも、アホアノは短躯で知られている。だが、その男はバンダルよりも、さらに頭ひとつ小さかった。侏儒と言っていいだろう。
 それでも、バンダルは畏怖に凍りついた。目が――銀河のはざまの虚空のように漆黒で冷たい双眸が、かれをとらえて放さなかった。

「わが名を知っているか?」侏儒が訊ねた。
 今回は、普通の音量だった。しっかりとした、よく響く声だ。
「いえ」
「よろしい。おまえはそれを知ることになるが、口にせぬよう気をつけるのだ」
「わたくしに何をお望みですか、閣下?」敬意をこめて、バンダルは訊いた。
「わたしは助言者と代行者を必要としている。そこでおまえを選んだのだ」
 バンダルは混乱した。
「わたくしに何を助言しろとおっしゃるのです、閣下? それに、何をわたくしにおまかせになると?」
「助言するのは、銀河戦略に関する諮問に対して」侏儒が答えた。「まかせるのは、わたしの立案した事項の実現だ」
「わた……わたくしは、銀河戦略についてなど、皆目存じません、閣下」バンダルは訥々と語った。「将軍どころか、兵士ですらないので……」
「おまえには悟性がある」と、侏儒がバンダルの言葉をさえぎって、「知るべきことは教えられる。グライダーはそのままでいい、いますぐにわたしとともに来るがいい」
 畏怖ももののかわ、バンダルの魂のなかで強情さが目をさました。
「閣下、わたくしには、ふたりの妻と5人のこどもがおります。何もかも放り出して、お供することは、かないません」
「おまえの妻子の面倒はみる」侏儒がいった。「城から連絡を入れて、十中八九、二度と会うことはないと説明してやれ」
「城……か…ら……」バンダルはどもった。
 そこで、突然、すべてが理解できた。バンダルは大地に身を投げ出し、両手をひろげて、ひれふした。動揺のあまり、聞き取れないほどの早口で、
尊き大公殿下オベ・アナンボタサル!」これは支配者に対する最上級の尊称である。「大公殿下をそれとわからぬなど、わたくしは不忠者です。何卒、御慈悲の光をくだされたまわんことを。数ならぬ身をつくしてお仕え申し上げます……」

 ……わたしの名はバンダル。かつては、シェラ・ナール銀河の惑星アホアナの一隅で、農夫としての生活を送っていた。
 だが、その日を境に、すべてが変わった。
 帝国最高の科学者たちが、ヒュプノ学習によって、わたしに政略・戦略・戦術・兵站その他さまざまな知識を植えつけた。知るべきことは教えられる――大公殿下の御言葉どおり、わたしは助言者として生まれ変わったのだ。
 そして、わたしは理解した。
 父君の逝去によってパルバン帝国の玉座を継いだばかりの大公ボタサル殿下は、シェラ・ナール銀河統一のため、新たな戦略を必要とされていた。それを立案する際の助言者として、わたしは選ばれた。タイトロニクスのネットワークが、帝国全臣民のなかから、適合者としてわたしを選び出したのだ。
 そして、尊き大公殿下オベ・アナンボタサルは、自らアホアナの一農夫のもとを訪れ、選択の正否を確認し、わたしを助言者に任じた。わたしはその期待にこたえるべく、すべてを捧げることを決意した。

 わが終生仕える御方は、シェラ・ナール銀河、パルパン帝国の大公ボタサル殿下。いみなをシリクジムと申し上げる。
 だが、後の――メーコラーの――人々は、わがあるじを、また別の名で記憶することとなろう。
 七日目の主シキム・マルカー――〈主ヘプタメル〉、と。


――君は戦いには勝利した。だが、心から欲するものは、わが掌中にある。
《ハンガイの支配者、アコス》 


シェラ・ナール南部星域の決戦。
時を同じくしてハンガイから襲来したハウリ艦隊との対決。
ロブダルとなったシリクジムの野望は尽きることがない。

だが、超知性体アイセルの力の集合体を襲った、
凶暴な〈ペンタル軍団〉の脅威に対峙したとき、
はじめての蹉跌がシリクジムに訪れる。


――あなたが望んだままの未来をその手にできるよう、願っておりますよ。
《瞑想教育プログラム、ポリトロス》 


帝国の統治をバンダルに一任し、惑星デリヤバールに隠遁するシリクジム。
だが、運命はかれに休息を許さなかった。
宇宙にひとつの噂が流れていた。
〈七強者〉の寿命が尽きようとしている。
そして、〈白き裂け目〉の彼岸の上位存在が、
天命を継ぐ新たな7人を選び出そうとしている、と――
だが、候補は8人いた。


――忘れるな。その力、誰にもらったかを……
《カオターク、クズポミュル》


愛を捨て、権を選択したシリクジム。
だが、宇宙の滅亡は、すでに決定されていた。
沈黙する〈白き裂け目〉の彼岸の上位存在。
あるいは憤慨し、あるいは絶望する強者たち。
たばかられたと考える彼らの前に、新たな力が顕現する。
無から出現した暗黒の柱は、人の姿へと変じ、
7人に新たな宇宙への再生を約束するが――!?


――わたくしは、殿下を糾弾するために参りました。
《過去の亡霊、エリンダル》


運命は〈七日目の主〉に、いかなる結末を用意しているのか。
そして、かれに忠実につきしたがってきた、
小さきアホアノ、バンダルには――?


おまえもか?
おまえも、わたしを裏切るのか?


新宇宙歴19343年、おとめ座銀河団で発見された、1隻の宇宙艇《ネリマク》。
乗員のいない船内におさめられていた、膨大な記録とは……。
本編に登場しなかったヘクサメロンの内幕を描いた惑星小説358巻のご紹介です。
Private Cosmos 2x (?)
The rise and fall of Siqim Malker
刊行未定!(をい


……という刊行物を準備していました、という〈無限架橋〉に掲載した予告記事。本文もけっこう書いたのよ(汗)
タルカン・サイクルの前日譚にして後日譚。ローダン正篇では回想シーン(戦闘中)のみの出演に終わったヘプタメルと、彼をとりまく人物たちの物語。
なお、練馬区ネリマクは、シリクジムが配偶者に望んで得られなかった、マルハイン銀河女王の名前。
NTRにざまあとか、どれだけなろう小説の悪役を先取りしていたのか…… >シリクジム

アプルーゼの時もそうだったけど、「この宇宙には超知性体は存在しない!」「宇宙のこちら側はすべて死の波動に侵蝕されている!」とかいって、わりと小さな宙域に限定されてるんだよね。まあ、壮大なスケール感は重要かもしれんけど。アイセルさんはどーなったのかにゃあ(棒読み

新ATLANヘフトの概略

ローダンの姉妹シリーズATLANは1969年に正篇と同じヘフト形式の月イチ(正確には4週ごとに1話)刊行でスタート。1年後に隔週刊、1978年には週刊と刊行ペースを上げるが、1988年、850話をもって終了した。
その後、1998年にロベルト・フェルトホフ草案の独立した〈トラヴェルサン・サイクル〉全12話が週刊で刊行され好評を博したのを契機に、2003年にケンタウリ・サイクル全12話が、さらに2004年のオブシディアン・サイクルからは「新ATLANヘフト」として通し番号が振られるようになり、2006年の炎塵サイクルで完結するまで全60話が刊行された。
現在Perrypediaでは各12話の7つのサイクルを「ATLANミニシリーズ」に分類しているが、個人的にはひっくるめて「新ATLANヘフト」と呼んでいる。

現在の正篇、3200話からのフラグメント・サイクルでは、「850年前にアトランがグルエルフィン銀河を訪れた」ことが語られるが、それを含め、正篇に影響を及ぼす設定等もあるので、おおまかなストーリーの流れを概括してみた。

1 トラヴェルサン / Traversan

新銀河暦1290年、惑星トラヴェルサンで島の王の遺産が発見され、急報をうけて駆けつけたアトランが島の王と誤認されたため、時間ステーションの秘密プログラム〈星の露〉が発動。アトランは紀元前5772年に移送されてしまう。現地領主の娘タマレナとねんごろになったアトランは、トラヴェルサンの人々とともに悪逆非道の星区総督の陰謀に立ち向かう。
正篇1900話台で、ギャラクティカム議場を「ちとヤボ用で」と中座してトラヴェルサンへ向かうシーンがある。次に登場するまでに1万年が経過しているとは誰も思うまい(笑)
草案:ロベルト・フェルトホフ

2 ケンタウリ / Centauri

正確にはオメガ・ケンタウリ(球状星団ケンタウルス座ω)。
新銀河暦1225年、アトランは建国まもないアルコン水晶帝国において、レムール人の遺産をめぐる陰謀にまきこまれる。ケンタウルス座ω星団に眠る恒星転送機と意識転送技術を先んじて見出したツォルトラル家当主クレスト=ターロ、そしてコスモクラートのロボット、サムカーもからんで錯綜した事態のいきつく先は――。
この頃は、まだ別れた恋人でもある女帝シータさんが健在なので、アトランも帝国内で比較的自由に行動できた。この事件で発見されたω星団中心部の恒星転送機〈カラグ恒星十二面体〉は、後の正篇、ハイパーインピーダンス上昇により超光速航行技術の衰退した状況で、銀河間移動のための恒星転送機網再稼働の中心的役割を担い、長らく活躍する。
草案:ウーヴェ・アントン

3 オブシディアン / Obsidian

カラグ恒星転送機の事故で、未知の空間〈オブシディアン・ギャップ〉へはじきとばされたアトラン。それは5億年以上昔に、あまたの宇宙に於いて活動した原初の〈大群〉リトラクドゥールムのバックアップ・システムの座。そして、ヴァルガン人女性キサラの協力もあり、アルコン人はω星団が混沌勢力の攻撃で銀河系に擱座したリトラクドゥールムの一部であったことを知る。そして、100万年前銀河系に残留したサイノスのひとり、旧知の山師カリオストロことサルダエンガルが、銀河系を犠牲にリトラクドゥールムの再起動をもくろんでいることを。
ヴァルガン人はATLANシリーズにおけるサイノスやクエリオン人的位置づけの種族で、七強者の城で出てきたマイクロ宇宙との往来を可能とするドルグン転換器を開発した種族の末裔。若き日のアトランはその叛徒の女王、〈黄金の女神〉イシュタルと出会い、一子カパトをもうけている。

4 大法官 / Die Lordrichter

カラグ恒星転送機の制御惑星カラグ鋼鉄界に出現したカピンから、〈ガルブの大法官〉と〈秩序の剣〉について警告をうけたアトラン。キサラとともに、銀河系のサウスサイドに遺されたヴァルガン人の施設で、その尖兵が活動していることをつかむ。〈プシの泉〉ムルロースの破壊には成功したが、すでに回収されたエネルギーは〈ダークスター〉と呼ばれるプロジェクトのため、1600万光年かなたのドゥインゲロー銀河へ移送されていた。
ガルブヨル――ガルベッシュを連想させる――は現在グルエルフィンに侵攻し、カピンに血みどろの内戦をひきおこしているという。

5 ダークスター / Der Dunkelstern

マイクロ宇宙からの暗黒物質に侵された恒星〈ダークスター〉。不死性を求める大法官の〈突破計画〉を阻止するべくドゥインゲロー銀河に進撃したアトランとキサラは、現地のヴァルガン人やカピンの協力を得て、ダークスターの破壊に成功する。

6 イントラワールド / Intrawelt

ドゥインゲロー銀河に構築された直径30万キロの人工空洞惑星イントラワールド。ガルブヨルの叛乱勢力コンタークラフトによれば、そこに隠された〈炎塵〉があれば戦局を好転させうるらしいが、空洞惑星には「物質の泉の彼岸に到達した」者しか立ち入れないという。アトランはキサラを残し、単身イントラワールドへ進入する。
先んじて空洞世界に来訪していた、かつてカオタークの協力者であった〈ソウルイーター〉ペオヌとの競争を制し、アルコン人は謎に満ちた〈炎塵〉を確保する。
ペオヌはカオターク・クズポミュルが蠱毒のように養成したソウルイーターであり、《トレーガー(母艦)》と呼ばれる特殊艦で活動する特殊部隊〈チャンピオン〉の一員だった。チャンピオンは2000話以降の正篇にも2名ほど登場する。また、ヘクサメロンの主ヘプタメルに力を与えたのもクズポミュルである(ただしこの設定は惑星小説のみで正篇には出てこない)。
草案:ミハエル・マルクス・ターナー

7 炎塵 / Flammenstaub

炎塵は服用者に現実改変能力を与える。だがそれは諸刃の剣であり、使いこなせなければ死をもたらすもの。自分にその力は余るとアトランは銀河系への戦略的撤退をはかるが、ガンヤスのペドパイラー船はグルエルフィン銀河を目的地に選んでしまう。
ガンヤス人とタケル人の会戦にまきこまれたアルコン人は、介入したジュクラ人に救出される。ジュクラ氏族を糾合する会合はガルブの親衛隊ザコールとタケル人によって粉砕されるが、会場を脱出したアトランらは山脈に隠された〈家臣〉を発見、脱出した先の自由貿易区の中心ボイシュ・ステーションで瀕死の言葉を伝える者インタプリタから〈永遠のガンヨ〉オヴァロンの意識片を受け入れる。
ガルブヨルはガルベッシュと同じくトロダル――勇猛に戦いぬいた戦士のみがたどりつける死後の世界――を信奉するヴァンカナル銀河の戦士種族集団。14名の大法官と最高大法官、そして頂点に立つ〈秩序の剣ガルボグテラ〉に率いられる。だが、当代の〈秩序の剣〉エミオンは、実は異なる蓋然性平面からの来訪者で、苦痛でしかないこの宇宙での生を終わらせる手段を求めていた。
海星船《フム》での最終決戦でエミオンが異なる存在平面へ放逐された後、新たに〈秩序の剣〉に就任した大法官、タケル人サリラはオヴァロンの意識片を受け入れ、ガルブヨルのヴァンカナル銀河への撤退を開始した。

……本編ではなく、Perrypedia収録のあらすじをざっと眺めただけだが、それだけでも〈永遠のガンヨ〉あたりに誤解のあったことが判明した。
正篇3200話で付帯脳が「前に来たのは800年以上前のこと」とつっこみを入れるのが、最後の炎塵サイクルの事件(新銀河暦1225年)である。ただし、これだけ見ても、正篇1277話で成立したグルエルフィン同盟がどうなったかはっきりしない。インタプリタ(と書くと、某コンパイラを思い出してしまうなw)が出てくるので、15年前に内戦が勃発するまでは基本構造は似通っていたものと想像される。
正篇でパンヤス人のトップが〈永遠のガンヤ〉(ガンヨの女性形)なのは、オヴァロン崇拝が廃れたのか、シラリアの後継たるガンヨが下克上したのかも不明。このへんはおいおい明らかになると思われるが、どうかなあ。

■Perrypedia:ATLAN-Miniserien