異宇宙舞台の宗教対決

前記事「ヘクサメロンの王国」の続きのような話である。

以前Twitterで「GOIはユダヤ教でいう“異教徒”」とつぶやいたことがある。PIGもユダヤ教由来ではないかと思っている話は先ほどツイートした。
また、最近のブログでは、ヴ・アウペルティアのことを“エレメントの主”と書くが、マガンとの電話で「“十戒”をもたらすものだから、キリスト教の神様でしょ?」と話していたのがその理由だが、ごめん、ユダヤ教の神様だね。

なんで突然こんな話をはじめたかというと、タルカン・サイクルの敵が同じユダヤ教の神様がモチーフだからである。1350話に出てくる「ヘクサメロンの書」の歌(あの訳だと完全に散文だけど)にいう〈支配者ヘプタメル〉は、“6日かけて世界を滅ぼす(そして新生させる)”〈七日目の主(Der Herr des Siebten Tages)〉だ。
ドイツ語Herr(支配者)は讃うべき主を意味する。支配者でも間違いではない(むしろ主だとわかりづらい)が、今回は〈主ヘプタメル〉でいかせてもらおう。

エシュラア・マグハアス(二十の地)を統べるとされる組織ヘクサメロン。
その頂点に立つ主ヘプタメル(現地語ではシキム・マルカー)は〈七の日の主(Herr Siebentag)〉とも表現されている(ハヤカワ版は“七番目の日”としているが)が、正確には惑星小説358巻のタイトルの通り〈七日目の主〉である。ヘクサメロンの書の歌を信ずるならば、宇宙(タルカン)のすべてをその身に含有し、七の日に新生した宇宙にただひとり顕在することになる。

で、最初にわざわざユダヤ教、と述べた理由だが、対する側がキリスト教モチーフなんである。
タルカン宇宙を放浪する旅路でローダンは、ハンガイ脱出計画を進行する22種族連合(22はユダヤ教・キリスト教の聖なる数)と遭遇するが、エスタルトゥの消息は知れない。むしろ“主ヘプタメルの勝利の証”を見せつけられる。エスタルトゥはタルカンにも、もういない……。
一方で、テラナーはいみじくも自分が“ヨルダン(Jordan)”と略した存在により〈聖別されし者〉となる。すなわち、ヨルダン川のほとりで聖ヨハネの洗礼を受けたナザレのイエスのごとく――。

1372話「タルカン行き十二の宇宙船」は、ローダン救出のため〈それ〉の援助を得たアトラン率いる12隻の小艦隊が異宇宙へ到達するまでを描くストーリーだが、この数字は十二使徒とみてまちがいない。
そして「ヘクサメロンの王国(これも神の王国のもじりか)」の最後、沸騰するプロト物質の中へ落ちたローダンが新生するくだりは、明らかにキリスト復活がモチーフになっている。これマジやるの? どーすんの? と思ったものだが。

ただ、前回の記事や『カオターク・ミーティング』でも書かれたように、物語はヴルチェクが予言したようには進まなかった。なにせ主ヘプタメル登場まで尺が保たなかった(走召木亥火暴)
ので、“復活”するのもローダンではない。見てみたかったような、こわいような、そんな実現しなかった宗教対決であった。

ヘクサメロンの王国

昔々、の話ではある。
私が時々話のタネに挙げる本のひとつ、シリーズ25周年記念『ワークショップ・ファイル(Werkstattband)』が発売されたのは1986年。1万部限定のペーパーバック〔写真左〕と増補改訂ハードカヴァー版〔同右〕がある。

そして後者に追加収録された記事のひとつが、1986年ザールブリュッケンで開催されたヴェルトコンでの草案コンビ、ヴルチェクとマークによる今後の展開についてのトークの書き起こし、〈ヘクサメロンの王国(Herrschaft des Hexameron)〉だ。
ヴェルトコン開催が9月なので1306話が出たばかり。イベントの模様がLKSに掲載されたのが1315話~19話。この時点で、コンに参加するほどアクティヴなファンには周知の内容だった。公式サイトもフォーラムもまだない(1996年開設)。de.rec.sf.perry-rhodanあたりがどうだったかは、残念ながら知識がない。現存するログでは1993年までしか遡れなかった。

チーム作家、元メンバー、遺族、編集者、断面図解作家らが回想録・こぼれ話・エピソードを寄せた1冊。現在はPerry Rhodan-Chronik I-IVという編年体の資料が刊行されているが、当時公式でこれだけの裏話が出たのは初めてだった。

で、ハヤカワ版も674巻まで到達したし、本格的なネタバレもないし、紹介したいと思ったはいいが。これ、銀本と同フォーマットで20pあるのだ。さすがにいまだと訳すヒマがないので、最後のあたり、ヘクサメロンについてそれらしい言及のある個所をピックアップしてみた。全体の1割程度。
なお、以前Twitterでつぶやいたとおり、完全にこの通りには進まないので、念のため。


EV:
 カルタン人は天の川銀河をこう呼ぶ。「遠き星雲」、彼らの言語で〈サヤアロン〉と。奇妙なことに、彼らは宇宙にも固有名を持っている。〈メーコラー〉、「膨張する巨大なもの」という意味。だが、次の言葉は誰のものだろうか?
『メーコラーの中にしか生命はない。縮みゆくタルカンに潜むは死だけだから!』
 カルタン人でない者がそう言うから、奇妙なのだ。また、アッタル・パニシュ・パニシャことオーグ・アト・タルカンとは?
 カルタン人はまだまだ驚くべきことがある。しかし、ようやくその糸が解けるのは、巨大な門が開き、この宇宙のごく狭いエリアに未曾有の洪水が押し寄せたときとなる。

KM:
 なぜなら、孵卵器ドリフェル反応せざるを得なくなれば、起こるのはまちがいなく、あらゆる想定を超えた大災害である。
 そして、ドリフェルに幾百万と蓄積された蓋然性の未来のひとつが現実となる。
 ドリフェルには自らを護る力がない。かつてプシ定数が上昇した際には、我々が〈深淵〉として知る構造を強化した。これ以上の定数上昇は宇宙的規模のカタストロフィにつながる。あらゆる元素の大洪水がこの宙域に押し寄せ、モラル・コードによって支えられた秩序をかき乱すだろう。。
 ここで〈ヘクサメロン〉を名乗る勢力が登場する。この名は、彼らにとり世界の余命は6日しかないことによる。そして、ドリフェルが反応し始めた瞬間、ペリー・ローダンはヌクレオチドの中におり、なすすべもなく飛ばされてしまうのだ。生命が否定され、死こそがすべての努力の目標とされる領域、滅びこそが新たな生命を生み出すと渇望される場所へと。そして、死後の生ではなく、いまある生のため努力する無力なものたちは、混乱にまきこまれつつヘクサメロンの戒律に絶望的な抵抗をつづけている。

EV:
 すべてが中央集権的に志向され、自然の力そのものが崩壊を助長するこの領域に、ペリー・ローダンは囚われることになる――帰還の可能性などない。アトランは、友を救うためには自らも渾沌たる死のゾーンへと続くしかないと気づく。カルタン人の語る天使のような言葉は誰にも理解できない。〈丸太〉には双子の兄弟が存在することが判明し、オーグ・アト・タルカンは復活すると、戦士崇拝の信徒たちに、ばかげた行いには終止符を打たねばならないと語りかける。
 そして、あらわれた使者たちは告げる:

――ネットウォーカーの終焉を。

KM:
――永遠の戦士たちの滅びを。

EV:
――エスタルトゥの奇蹟の消滅を。

KM:
――ひとつの銀河の誕生を。

EV:
――ひとつの宇宙の死を。

 しかし、アトランは外部の助けがなければ友を救出しえないと悟る。テラナーはシンギュラリティへ突き進む渦に呑み込まれ、沸騰するプロト物質の中へと落ちていくのだ。そして、あらゆる刻印から解きはなたれた意識を持つものとして新生する。

KM:
 〈それ〉が命綱を投げる。ローダンにだけでなく、
――エスタルトゥ十二銀河で危機にあるものたちに、
――苦境に立つ局部銀河群の居住者たちに、
――無から生まれた銀河の、無力な居住者たちに。

EV:
 〈それ〉は力の集合体の支配者としての役割を正しく務めるが、とうとうその存在の謎を明かさねばならない。
 だがそれまでには、克服すべき幾多の脅威がある。死をもたらすものたちは、おのが勢力圏が壊れた砂時計のように漏れ落ちるのを看過しない。自分たちの信ずるところを守りたいのだ。

KM:
 彼らの望むは完全なる万物の死。
 厳しい戦いになるだろう。
 ペリー・ローダンよ、心のままに進むがいい。

ENDE


原文ではヴルチェクはErnst、マールはKlaus(本名)だが、筆名のイニシャルで統一した。
なお、最後の原文は DAS WALTE PERRY RHODAN. で、「神の御心のままに」の常套句のダジャレである(笑)

たぶん、どーにか収縮プロセスを加速させて、宇宙の新生、までやるつもりだったんじゃねーかと思ってるんだけども。それで1500話あたりが「〈それ〉」になったり。
サリクの献身とか、そのへんどー扱うつもりだったのかはともかく、この通りに進んだら、後々何度も出てくる〈騎士のオーラ〉もリセットされて、ローダン・シリーズ全然ちがう話になったんじゃあと思うのだけど。いろいろ残念。

あと、〈深淵〉を強化したとあるが、プシオン網の間違いじゃないかなあ……。

以下、余談。
時代を感じるのは、“これまでの話”をふりかえる中で、マールがメッセンジャーの作用等を詳細に説明していること。そうね、この2年前、大学1年の私は出版されたばかりのブルーバックス『バイオテクノロジー』をテキストに村上教授の講義を受けたもので、まだホントの意味で一般教養ではなかったかな。

オーグ・アト・タルカン

ハヤカワ版で現在進行中のエスタルトゥをめぐる物語も第2部終盤。ブルやローダンがそれぞれの手段でたどりついたラオ=シン四太陽帝国――タルカニウム――の中心フーベイ。オーグ系フーベイ。事ここに到れば、アッタル・パニシュ・パニシャ、オーグ・アト・タルカンとラオ=シン(カルタン人)の関係を疑うものはいまい。

ここいらで、前サイクルから敷かれていた伏線をふりかえってみよう。

それらは皆オファラーである――戦士教団の神話的黎明期の人物、あらゆる師の師の最初のひとり、アッタル・パニシュ・パニシャを除いて。その彫像はすべてのウパニシャドに置かれ、どれも同じ形状をしている。身の丈ほぼ2メートル――原寸大の写しであるかはさだかでないが――およそヒューマノイド型の存在を表している。頭蓋前部は円錐状。先端左右には毛のようなものが数十本、扇状に突き出ており、ヴォルカイルはさらなる知覚器官か触角と考えた。細長い結晶素材は内側から輝くかに見える。

1278話「エルファード人」(マール)

以前Twitterで「おヒゲですにゃん(笑)」と書いたが、あの訳では伏線にならないのである。
(えらそうなこと言ってるが、『エスタルトゥへの道』では遡って解説書いてるからできたことw)

 アッタル・パニシュ・パニシャなるものは一種のスーパー・ストーカーだと想像していた。だが目にしたのはストーカーとはまるでちがう存在だった。ソトやパニシュたちとの類似性などまるでない。人間とも異なるが、ほぼ2メートルのヒューマノイド型をした存在の彫像である。顔は完全に非人間的。口吻部が突き出るように前後に長い。口自体はエスタルトゥ第三の道のシンボルと似ていなくもない、三つ叉の切れ目からなる。その左右に結晶構造を思わせる細く長い針の束が刺さっている。何を意味するのかは謎だ。
 ストーカーが腕を下ろし、我々に像がよく見えるよう脇によけた。「その本来の名はオーグ・アト・タルカン」と、熱意をこめて、「彼こそは恒久紛争の創始者にして最初の永遠の戦士。エスタルトゥの力の集合体すべてのウパニシャドでその立像が尊崇されている。およそ法典の教えに触れたる者、敬愛をしめさず通りすぎることはない」

1291話「眩まされし者たち」(エーヴェルス)

上述のツイートで「ティフが見る時には、口元の描写もあったような……。」と書いたのがこれ。
(原文のhominidはこの時期多く誤用されている。「ヒト科」ではなく「ヒト型ヒューマノイド」)

前回より猫っぽい描写。ただ、この時点でティフラーは惑星カルタンを訪問済みなので、類似に気づかないのはちょっと変。アンティマコス投与前でストーカー愛が強すぎた(笑)のか、それとも彫像がよほどカリカチュア化されてるんだろか。
まあ、気づかれたら、シングヴァよりも全知女性チームの皆さんが大慌てだろうけど。

〈御者となるのは、ネットウォーカーの組織が創設されたと同じ頃、おのが精神材を広めたもの。ふたつのイデオロギーは源を同じくしつつ、これ以上ないほど根本的に異なってしまった〉

1329話「ハイブリッド植物奪還」(ヴルチェク)

これもツイートしたが、事態の御者となる存在は、「精神材≒思想」すなわち(エスタルトゥの)第三の道の哲学の学校を築いたアッタル・パニシュ・パニシャであり、すべてのウパニシャドに置かれた立像には彼の“一部”が込められているというダブルミーニングでもある。

「ウォ・ジング・バオ・アト・タルカン」

1330話「忘却からの脱出」(シェール)

そして、ドリフェルの門からあらわれた“丸太クロッツ”が発したこのメッセージ。その意味と、すでに登場済みであるよく似たお船、全知女性の《ナルガ・サント》との関係とかは、次巻以降で次々と明らかになっていく。ので、お楽しみに?

ローダンーアトランティス終幕近し

3月18日に開幕したミニシリーズ〈ローダン-アトランティス〉が、今週発売の12話「骸詞」で完結を迎える。
いかんせん本編はあまり読めていないのだが、ここらで拾い読みでつかんだ概略だけでもまとめておきたい。

  1. Ben Calvin Hary / Im Land der Sternengötter / 星神の国で
  2. Lucy Guth / Festung Arkonis / 要塞アルコニス
  3. Sascha Vennemann / Fluchtpunkt Venus / 逃走地・金星
  4. Olaf Brill / Der Raumschiffsfriedhof / 宇宙船の墓場
  5. Michelle Stern / Die Kralasenin / クララセンの女
  6. Dietmar Schmidt / In der Methanhölle / メタン地獄にて
  7. Kai Hirdt / Tolcais Totenspiele / トルカイの死人ゲーム
  8. Lucy Guth / Quartams Opfer / クァルタムの献身
  9. Roman Schleifer / Totenstille / 死のしじま
  10. Dietmar Schmidt / Das Talagon / タラゴン
  11. Olaf Brill / Atlantis muss sterben! / アトランティス滅ぶべし!
  12. Ben Calvin Hary / Nekrolog / 骸詞

新銀河暦2069年。大西洋アゾレス諸島の海底ドームをアルコン人ケレン・ダ・マスガダンが購入し、テラ・アルコン植民史博物館として改装する運びとなった。彼は往時アトランの麾下にあったキルス・ダ・マスガダンの子孫。記念式典に招かれ、ドームを訪れるローダンと妻シク・ドルクスタイゲル。新生水晶共和国の顧問として多忙な日々をすごすアトランも姿を見せ、しばし歓談に興ずる旧友たち。
だが、陳列品に混じるある物体を見てアトランの表情が変わった。鎖付きの細長い卵型、活性装置に似ていなくもない〈タラゴン〉は、あるはずのない、あってはいけないもの。そしてアルコン人は、海底ドーム土台内、これまで未発見の部屋に置かれた転送ゲートからあらわれた女性――彼は「ロウェナ」と呼んだ――の凶弾に倒れる。苦しい息の下でアトランの告げた、「タラゴンをゲートの向こうへ送り返せ」という言葉にしたがい、アーチ状転送機を抜けたローダン夫妻だったが……。
実は時間転送機だったゲートを越えたふたりが漂着したのは、紀元前8000年の地球。異時間平面との接触で滅亡する数年前のアルコン植民地、アトランティスであった。

……と、こんな形でスタートしたミニシリーズ。前半6話は、現地人女性カイセイを案内人に帰還の手段を探すローダンたちと、彼らを追うアルコン女性ロウェナを中心にストーリーが展開する。
カイセイはアトランティス住民の小さな村落出身で、遺伝的に難産で母子共に亡くなる血統。幼い頃に姉が村を追われて死ぬさまを目撃し、いままた妊娠した自分も“穢れ”を忌避する村人たちにより追放され、許しをもとめ“神々”の住まいを訪ねるべくさまよっていたところにローダンたちと出会う。シクさん(ハトル人の傍系アトル人)の緑の肌、金色の文様を病気と勘違いし、勝手に共感して仲良くなる(笑)
一方で、3人を追跡するロウェナさんだが、このヒト実はゴノツァル家一門に連なる人物で、オルバナショルIII世治下で両親が処刑され、まだ幼い彼女は助命の条件として家名を捨て皇帝親衛隊クララセンの兵士となった経歴を持つ。現在はオルバナショルを打倒した水晶王子アトランに絶対の忠誠を誓う身であり、ドームにいた“アトランの贋者”を撃ったことにすら罪悪感チクチクだったりして草はえる。アトラン出征中の代行キルスを言葉巧みにあやつったり悪役ムーブをこなしつつ、水晶王子の御ためにこっそり廃棄しようとしたタラゴンをわざわざアトランティスに持ち帰ったローダンたちを許すまじと何度か襲撃するのだけど、身重のカイセイを撃てなかったり、よくクララセンやってこれたなという善人ぶりも発揮する多才さ(笑)
その過程で明らかになるのは、タラゴンがマークスがどこからか入手した“大量破壊兵器”であるという事実。一時休戦の手打ちとしてアトランが譲渡されたものだという。破壊するにもブラックホールのような高圧・高重力下でないと不可能という代物。

そして、アトランティスに出現する“灰色の小人”の軍勢。この時代のアトランに――植民アルコン人であると素性をいつわって――同行して霧セクターのマークスのもとを訪れたローダンが見たものは、メタンズを蹂躙するコバルトブルーの転子状船《輝力》だった。
コバルトブルーの転子状船は、1900話台のロボット・カイロルの乗船にはじまり、後にアラスカのものとなるサンブリ・ユラの《光力》など、コスモクラートの協力者が駆るタイプ。“灰色の小人”……要するに“グレー”だよね……はその乗員のアンドロイドたちである。ローダンもミニシリーズ〈ミッション《ソル》〉でエロイン・ブリゼルと知遇を得ている。
そしてタラゴンとは120万年前、セト・アポフィスの命をうけ局部銀河群に侵攻したガルベッシュの指揮官アムトラニクが混沌の工作員から入手した兵器〈原搬死素ネクロフォル〉だった。超知性体〈それ〉の力の集合体中心部たるタラニス――すなわち、アトランティス――で点火されるはずのものが、移送の失敗で難破していたのをマークスが収容したらしいのだが……。

後半はタラゴン回収をもくろむ《輝力》司令、ライレと同型のロボット・トルカイとの丁々発止のかけひきが続く。そして――
これまでコスモクラートのロボットは、サムカーが贋騎士イグソリアンとの関係をにおわされたくらいで、ライレやカイロルの素性は闇に包まれていた。だが、トルカイはちがう。
地球ともタラゴンとも因縁を持つ彼は、20万年前にロトロン(地球)で遺伝子実験をおこなっていたラサロ直属の部下トシクの息子――タケル人ジョシロン。彼はアトランティスの最高峰アルコンピークス頂上で、タラゴンを解きはなった。あらゆる生命を破滅へと誘うヌクレオチド・ペストが猛威を奮い、世界を死で塗りつぶしていく。力尽きる寸前、ローダンは最後の望みを、運命を乗り越え、息子を産み落としたばかりのカイセイに賭けた……。

最終話「骸詞」は8月19日発売。さあどうなる。

……以下、余談。
序盤からローダンたちに協力する、偏屈者のアルコン人科学者クァルタム・ダ・クェルターマギン。これまでクェルターマギンというと、由緒正しい御貴族様で、陰で陰謀の糸をひいているパターンばかりだったので、ちょっと新鮮(笑)
あと、途中からローダンらに同行している従僕ロボット。一時タラゴンの隠し場所にされたり苦労が絶えない“彼”はRCO型、らしい。ひょっとして、リコ(Rico)なのかな?

失われたヘスペリデスの贈り物

〈失われたヘスペリデスの贈り物(Verlorene Geschenke der Hesperiden)〉はエスタルトゥ12銀河のひとつムウンの奇蹟。現地名は〈失われたエスタルトゥの贈り物〉。本来は惑星エピクゾルに貯蔵された超知性体のハイテク機器。奇蹟エンジニア種族ナックの操作か、あるいは独自のAIか、個々が意志をもって行動可能。超光速による銀河間航行すら可能である。

《ツナミ》乗員の知識をデータベースとして持つストーカーが、ムウンの奇蹟の広告素材として選択したモチーフがヘスペリデス。ギリシア神話で一説にアトラスの娘とされるニンフの姉妹たちのこと。世界の西の果てにある“ヘスペリデスの園”で、へーラーがゼウスに贈られた黄金の林檎(オレンジ)の木の世話をしている(番人役は別にいる)。マイナーだがヘラクレスの逸話にも登場。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%87%E3%82%B9

なぜハヤカワ版が“ヘスペリデス”という固有名詞を避けたかは不明だが、「ヘスペリデスの贈り物」とは即ち黄金の林檎のメタファーであり、トロイア戦争の発端ともなった果実のもたらすものを象徴しているーー“不和”だ。
この奇蹟のネーミングのキモはそこなのだが……。

1335話でGOIの迎撃を逃れてイーストサイドへ到達したヘスペリデスはブルー人の多くを感化し、銀河系内部に不和の種をまく。ギャラクティカム内部の分裂と、“恒久紛争”の導火線としてハルト討伐という内戦をひきおこそうというものだ。
また、少し先の話だが、再びエスタルトゥの銀河が舞台になる際に、エピクゾルの“贈り物”がとある人物に助力を与えたというエピソードが明らかになる。しかし、彼らの力をもってしても、〈ソト〉と〈デソト〉の間に穿たれた溝は埋めようがなかった。まあ、本来不和をもたらすものだからしょうがないね、というお話(おい

話はちがうが、ヘスペリデス云々はさておいても、ハヤカワ版が選んだ〈番人の失われた贈り物〉という訳語には、個人的に大きな不満がある。語順である。
『タルカンが呼ぶ!』をまとめた際に、奇蹟のネーミングについてはいろいろと悩んだ。ヘスペリデスについては、Hesperidengeschenke(ヘスペリデスプレゼント。いぶし銀だろ?)という語も用いられるので、「(本来あるべき場所から)失われた」「ヘスペリデス(エスタルトゥ)の贈り物」であるという結論に達した。
※惑星エピクゾルが出てくるのは1500話台。

しかしハヤカワ版だと「番人の失われた」「贈り物」と読めてしまう。訳語を決めたヒトは、おそらくPerrypediaも読んでないし、ストーカーのプロモーターとしての努力も顧みない。残念なことである。

https://www.perrypedia.de/wiki/Verlorene_Geschenke_der_Hesperiden

ペリー・ローダン5000冊

 電話が鳴った。受話器を取ると、いつものパリパリっというノイズに続いて、銀河を隔てたようなかすかな声。
「もしもし?」私は大声で、「もしもし? もしもーし?」
 ようやく何語か聞き取れた。「フリック! こちらはミスタ・フリックだ!」
「あのミスタ・フリック?」
「そうだ! あのミスタ・フリック! 編集長の!」
「おお、ミスタ・フリック。また急なことで」
「なこたぁないさ」ミスタ・フリックは唸った。「なあ、君が書いている小説、3134話なんだが、バッチリできてる(gut und fertig)よな?」
「もちろん」と、私。「できたも同然(So gut wie fertig)です」
 眉をひそめる音が聞こえた。「そいつが、きみも知ってのとおり、ローダン宇宙5000番目の小説になる」
「わたしが、知ってのとおり?」
「数えてないの?」
「いえいえ」私は請け合った。「4999冊目の次は5000ですよね」
「読者はきっと数えてる」と、ミスタ・フリック。「こいつは緊急案件だ」

……という導入で始まる公式News。上手に書けましたー、とやろうかと思ったが、それはさておき。
ローダン宇宙(Perryversum)における小説が5000! わたしがファンダムに足を突っ込んだ80年代後半には「ペリー・ローダン3000冊」なんてまことしやかに囁かれてたりもした。ローダン正篇(ヘフト)1300話、姉妹編ATLANが800話、惑星小説が300巻等々……だいぶ盛ってた気もするけど(笑)

ともあれ、読者としては数えねばならぬ(おい
……と意気込んだのはいいのだが。あっれぇー?

4997……微妙に足りない(汗)
9月3日に260巻を数えるローダンNEOは、NEOversumという別個の宇宙の存在なので勘定に入れないとして。短編とかの数え方が違っているのか、『プレアデス』みたいなオーディオドラマも計算すべきなのか。ぐぬぬ。

同日夜 追記:

マガンのご協力のもと、忘れていたアレコレを追加したところ。

……はみでた(爆)

ステラリス(不定期連載の外伝)は、ひょっとするともう1話くらい増えるやもしれんし。どーしよw

なお、参考までに、年鑑(1976/1999)とローダン・マガジンに掲載された短編のタイトルは以下の通り:

9/13 追記:

当該“5000冊目”の3134話「星屑計画」冒頭に、ファンデマーン自身による解説があった。
まっさきに除外したNEO260巻が含まれるんだそうな……おいこら(笑)

Heyne版のJupiter全1巻と、ヘフト版Jupiter全12話が混在するのはちょっと気持ち悪いけれど……とりあえず、短編(Kurzgeschichte)はすべて除外。惑星小説等短編集はそれぞれ1冊として計算すると……よっしゃ5000!

正直、11冊の惑星小説短編集を含むなら、記念号全7巻も入れなきゃいけない気がしないでもないのだが……もうゴールしていいよね?(笑)

■公式News:5000

ローダン・ヴェガ1「青き陽光の下で」

3月19日からミニシリーズ〈ローダン・ヴェガ〉がスタートしている。すでに第2話も刊行済みだが、今回はその第1話「青き陽光の下で」の紹介など。サンプル版とかぶる部分もあるがご容赦を。

全12話で、草案担当はミハエル・マルクス・ターナー。
現在判明しているタイトルは以下の通り(日本語は仮題):

  1. Michael Marcus Thurner / Im Licht der blauen Sonne / 青き陽光の下で
  2. Ben Calvin Hary / Die Rollende Stadt / 転がる都市
  3. Olaf Brill / Im Garten des Unsterblichen / 不死者の園
  4. Madeleine Puljic / Feind der Harthäuter / 硬肌族の敵
  5. Olaf Brill / Die Mission des Wurms / 芋虫の使命
Perry Rhodan Wega 1

ローダンの肩書きが“連盟コミッショナー(Liga-Kommissar)”なので3099話/3100話の空白期間の事件なのはわかっていたが、アバン中(および本文中)にて新銀河暦2059年の事件と確定した。3099話「銀河系の子供たち」から13年後となる。
あと、前提知識として、2774話でのテズによる“ディスクロン剪断”の後、この時間線で超知性体〈それ〉は消息を絶っている。2900話台でワンダラーやホムンクが出てくるが、主の行方は語られない。

-*-

トルトの政庁〈赤の宮殿〉の新築披露に招かれた、自由ギャラクティカー連盟コミッショナーのローダン、政庁首席ブル、護衛にあたるグッキーの3名は、直径800メートルの《マーカス・エヴァーソン》でヴェガ星系フェロルに到着。現トルト、ナクティエル・オォクに謁見する。
古い宮殿とその歴史への関心を熱く語るトルト。はて、ではなんでまた改築したんだろか。一応、もはや補修では追いつかないほど老朽化したから、とのことだが。

厳粛なセレモニーが終わり、さらに翌日、お祭り騒ぎに合わせて、新宮殿の思わぬ機能が開陳される。〈平和の遊具〉と銘打たれた宮殿セグメントが離床し、〈不死者の園〉と呼ばれるエリアを飛翔する。その動きに伴い、専用に設置されたハイパー・リレーを通じて既知銀河全域へと、えも言われぬ楽の音が鳴り響くのだ。アートなら、わしら、テラナーにも負けとらんでえ!というフェロン人の喜びようといったら(笑)

一方、《マーカス・エヴァーソン》に同行した科学者キリアン・ガヴリルは、35番惑星軌道に不穏なハイパーエネルギー活動のあることを指摘。時空連続体を揺るがす断裂の発生を予期し、駆けつけたローダンらの脳裏に、ホメロスの哄笑が響きわたる!

時空に穿たれた孔から出現した物体は、“氷結”した時空に包まれた、西暦1975年製の単座戦闘機2機。しかも、パイロットの一方はまだ生きていた!
彼女、ギリアン・ウェザビーは、パウンダー門下の、いわばローダンらの後輩。ブリーは面識もあったらしい。挙動が不審である(笑)

彼女に授けられた〈それ〉のメッセージは、
〈赤の宮殿へゆきたまえ、旧友。転送機のあった場所はおぼえているかな? かつてあった場所にそれはある。活路はそこにしかない〉
現在この時間線に存在しないはずの超知性体は、いったいいつ、何を予想してこの手を打ったのか。

だが、ローダンらが行動に移るよりはやく、ヴェガ系各所に新たに開いた時空の孔から強力なハイパー放射体が射出される。孔も、放射体も、みるみるその数を増していき、現在では機能しないはずのエスタルトゥの奇蹟にも似たバリアでヴェガ星系は封鎖されてしまう。
さらに時空穿孔から出現した“バスタードプリンス”クラカタウのマッカニ艦隊はトルトの旗艦を撃沈。逃げ惑うフェロン人の艦船を蹂躙しつつ、惑星フェロルを攻撃する。爆砕される新・赤の宮殿。さらにクラカタウは、ローダンとブル、不死者2名の身柄引き渡しを要求する。
《エヴァーソン》は戦闘艦ではないため、打開策がない。直前にテラへ艦隊出動要請を送ったものの、この隔離バリアが超空間からエネルギーを汲み上げるものなら、外部からの早期救援も望めない。

思わぬ提案は、ギリアン・ウェザビーからやってきた。〈それ〉――彼女には“超知性体”という概念は、まにあわせの催眠教育による理解を超えたものだったが――が、メッセージを伝えるためだけに、彼女や、死亡したパーマー、戦闘機を送り込んだはずがない。使うべきなのだ、パイロットも、戦闘機も。
ローダン、ブル、グッキー、そしてギリアンが、2機に分乗してフェロルをめざした。クラカタウはローダンらを生かして手中にしたいがために、大規模な艦砲射撃ができない。散発的な在来砲の被弾は、いまなお戦闘機に“溶け残って”いる時空氷がダメージを許さない。
首都トルタ近郊に強行着陸した一行はグッキーのテレポートで赤の宮殿、その残骸へと到達する。ギリアンは瓦礫のなかに感じた、その装置へと3人を導く――フィクティヴ転送機。再び、〈それ〉の声が、

〈これは君の第二のゲーム。第二の銀河の謎だ。君は友の助けを必要とするだろう。当時のように。おぼえているかな?〉

スターダスト星系で、第二の銀河の謎ってネタがあったのはさておいて(爆)
転送機が作動し、ローダンとギリアンの姿が消える。慌ててブルとグッキーも後を追った。

わずか後、クラカタウとその“マスター”はフィクティヴ転送機へと辿り着いた。“マスター”がもたらした太古の遺物の作用で、消えかけていた転送機の力場が安定する。“バスタードプリンス”クラカタウは力場へと踏み出した。ローダンとブルをその手に捕らえるため――謬りを修正せんがために。

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以下次号、なわけだが。
巻頭、バスタードプリンスと、おそらくその“マスター”の会話でも、「歴史の誤謬を訂正する!」という表現がある。シリーズの歴史の闇に沈んだ存在は、それこそ星の数だと思うが(笑)、最初にローダンが訪れた異星系であるヴェガ、この配役に該当するのは何者だろうか。後続タイトルに“硬肌族”とあるが、トプシダーにこんな怪しい行動しそうな一派いるかなあ。
また、巻末近くフィクティヴ転送機を見たクラカタウが、「記憶にあるのより小さいな……」と、その直前のローダンとまったく同じ感想を漏らすのも、伏線と思われるがよくわからない。
意味ありげな言動をしていたトルトがあっさり退場したのも、個人的にはあやしい。なんとなく連想したのが、『超人ロック ムーンハンター』である。やられたフリして、裏で糸をひいてるんじゃあないかとか……。

つかみとしてはおもしろかった。ここで紹介する余裕があるかわからないけど、ぼちぼち追いかけていきたい。

ジョニー・ブルック生誕100年

もう昨日になるが、3月22日はローダン・シリーズ開始から長らくメイン・イラストレーターであったジョニー・ブルック(Johnny Bruck)の誕生日。しかも今年は生誕100年にあたる。

これを記念して、公式サイトでは3点のアートパネル抽選や割引コード配布などの企画をおこなっている。モチーフは“Pax Terra”(ローダン287話「屈せざる者たちの広間」表紙)と、“Demeter”(同865話「宇宙の迷走」表紙)の2種類。
特に前者は、人類と異種族(マークス)の協力をあらわすシェイクハンドな絵柄で、後期のヴェルトコンのコン・ブック表紙に使用されたり、各種媒体でよく見かける。

ジョニー(1921.03.22 – 1995.10.06)の手がけた作品は、ローダンの表紙イラストだけで1800点近く、これに挿画や、ATLANや惑星小説、現在のVPMの源流であるMoewig社のTerra叢書、Pabel社のUtopia叢書等も含めると数知れない。ちょうどTwitterでリストのリンクを貼ってくれた方もいらしたが、とにかくすごい。1984年に出版された画集(紹介文はH・G・フランシス)にちなんで〈3000のSF世界の支配者〉の異名をとったのもうなずける。
日本の読者には、「ドイツの依光先生」と言ったらわかってもらえるだろうか。

交通事故で亡くなった後、追悼のため1800話「クイックモーション(Zeitraffer)」の表紙イラストにジョニーの肖像が描かれ、作中では時代の右傾化を憂うローダンが、ゴシュン湖畔のバンガロー近くに住む同名の画家(新銀河暦1200年代に、油絵を嗜むのだ)と短い友情を育む。同作は、前サイクル末からの60年を駆け足で描写するので、ローダンはともかく、老画家はやがて……というあたり、ちょっと泣けた。

■Perrypedia:Johnny Bruck
■公式News:GEWINNSPIEL ZUM 100. GEBURTSTAG VON JOHNNY BRUCK

60周年極秘プロジェクト進行中

ローダン編集部ブログによると、シリーズ60周年を記念した極秘プロジェクトが、晩夏……というか9月を期して進行中とのこと。

文面を見ると、9月には固まる、みたいな表現なので、まだ未確定なところもあるのだろう。
50周年の時には「極秘プロジェクトX」(中島みゆきの歌が流れそうw)とされていたものが、ローダンNEOのスタートとして発表された経緯もあるので、続報を楽しみにしている。

■編集部ブログ:Geheimprojekt für den September

ローダン・ヴェガ、第1話のサンプル公開

3月19日からスタートのミニシリーズ〈ローダン・ヴェガ〉。その第1話、草案担当でもあるミハエル・ターナーの「青き陽光の下で」の試供版(pdf)が公開された。

3099/3100話の空白期のエピソードとなる本作、連盟コミッショナーであるローダン、政庁首席のブル、護衛(?)のネズミ=ビーバー、グッキーの3名は《マーカス・エヴァーソン》でヴェガ星系へ到着。彼らを招待したトルトのいる、新築されたばかりの“赤の宮殿”を訪れる。どうやら、新築(改築?)のお披露目かなにかに呼ばれたみたい。
古い宮殿とその歴史への関心を熱く語るトルト、ナクティエル・オォク。はて、んじゃなんでまた改築したんだろか。とゆーか、ここまでの描写だと改築だか、移設新築だかさだかでないのだけど。ともあれ、ローダン一行はトルトの好意でセレモニー前の一夜を新宮殿ですごすことに。

……なのだが、その前に(上記のエピソードは第2章)、冒頭ちょこっと挿入された謎の“バスタードプリンス”と何者かの対話、「歴史を修正する!」とか、ローダン到着から2日後のトルトの旗艦が撃沈寸前で「なにもかも、あのテラナー、ペリー・ローダンどもが悪いんじゃあああっ!!」というトルトのつぶやき(第1章)とか、気になる描写がwww
先行して公開された情報で、“ヴェガ星系が外界と隔絶される”とか、“新たな銀河の謎”、“過去からの脅威”といった言葉が並んでいるのだけど。はてさて。

シリーズ60周年の今年、ローダンが初めて訪れた異星系を舞台に展開するミニシリーズ。今後の展開を楽しみにしている。

試供版:https://perry-rhodan.net/aktuelles/news/eine-leseprobe-zur-kommenden-miniserie