3000話の登場人物

6日付けの公式Logbuch「ペリーとゼミナとその他の人々」で、クラウス・フリックが3000話について触れている。ストーリーの内容は依然として伏せたまま、主な&新しい登場人物が話のネタである。
1212 ちょっと追記(笑)

まずは《ラス・ツバイ》とともに遙かな(?)未来へと漂着することがすでに(Amazonで)明らかになっている主人公、ペリー・ローダン。

そして最近話では《ラス・ツバイ》を借り受けてエイリス狩りを実行していたアトラン。なにやら、現状への対応策についてローダンと意見を異にするとか。
最近行方不明or別行動が多かったので、ふたりの口論はファンとして懐かく楽しみでもある(笑)

他にグッキー、シク・ドルクスタイゲルの名前が挙がっている。
逆に言及のないブリーはどうなるのか、愛娘シナエちゃんの運命ともども気になるところ。

新登場のキャラとしては、まずゼミナ・パース(Zemina Paath)さん。しばらくの間ローダンたちと同行することになる、謎の女性とのこと。
Amazonの広告文で、漂着した先の銀河系が“カイラの時代(die Cairanische Epoche)”であることがわかっていたが、今回、カイラ人(die Cairaner)という言葉が出てきたので、あるいは“カイラ人の時代”が正しいかも。
#“はじまっている”だから、“カイラ紀元”かな?
#CairanerがあえてTerranerに寄せている感じなので本拠地はCairaかな。テラを別名で呼んでいるとか、Cairolがからんでるとかは、オデッセイで使ったネタなので勘弁な(爆)

で、こーゆー場合、ゼミナさんは反乱軍の工作員とか、実はカイラ人のお偉いさんとか、そーゆー立ち位置になるんじゃないかな?(笑)
アウリスの時みたいには、奥さん同伴のため、いかないだろうけど。どうなることやら。

そして、もうひとりの新登場がジュナ・リン(Giuna Linh)さん。自称“まだ地球の土を踏んだことないけどテラナー”だそうな。
名前については、色々とググってみた結果、ジュナさんと呼ぶことにした。決して、第5部の主人公がGIOGIOだからではない(笑) パプアニューギニアの人たちがコーラスで歌ってる曲とかヒットしてそれはそれで面白かった。
じゃあイタリア系かというと(をい)、名字のLinhは“霊”のドイツ語読みに相当するらしい。そういえば、カルタン人のProjekt Lao-Sinhも、LKSで少林寺をShao-Linと綴ったダジャレを見かけてラオ=シンにしたっけなあ。
ともあれ、地球が神話の存在という時代にテラナーを名乗る以上、重要人物とならざるを得まい。

世界を滅ぼす業火(Weltenbrand)が、防護服を着ないと日向に出られない状態とかゆー現状から、いったいどーなると未来に漂着するのかさっぱりわからないが、現サイクルのクライマックスともども、楽しみにしたいものである >3000話

12/12追記:
12日付け公式ニュースで、「神話としての地球」という、クラウス・フリックの(超短い)インタヴュー記事が掲載されたが、新情報は一切ない(笑)
そもそも、インタヴュアーであるリューマン女史(マーケティング担当)、12月から産休中のはずである。それ以前のやつだと推察するが……Logbuchと公表の順番まちがえてるだろコレw
#たぶん、この会話からAmazonの広告が作られてる。

公式Logbuch:PERRY, ZEMINA UND DIE ANDEREN
公式News:DIE ERDE ALS MYTHOS
公式News:PERSONELLE ÄNDERUNGEN IM PERRY RHODAN-MARKETING

作家別執筆数の統計

保険代理店の内勤という前職を辞めてちょうど10年が過ぎた。
実際は春に退職してから、半年以上も定職につかずニートな生活を送っていた(笑)ので、いまの職について満10年なわけだが。なんで突然そんなどうでもいい話をしだしたかというと、「あ、このファイル10年近く更新してねえ(^^;」という代物をたまたま発掘したのだ。

作家別執筆数(2995話時点)

上記pdfファイルを参照してもらえばすぐわかるが、50話ごと(ほぼ1年分)の作家別執筆話数をExcelで一覧にしただけのものである。
これを放置していたのに気づいたのは、先のメーナートの訃報の際、公式サイトを調べていて、最近NEOで邦訳も出たマーク・A・ヘーレンが「元チーム作家」のくくりに入っているのを発見したためである。え、いつ脱退したの? と確認したら、最終担当話が3年も前のことだったのだ。
#ペリペでも言及がないので、公式発表はされていない……と思われる。

これがあると、他にもこんなことができる:

執筆数ランキング
1位 クルト・マール(253話)
2位 H・G・エーヴェルス(251話)
3位 アルント・エルマー(211話)
4位 H・G・フランシス(207話)
5位 ウィリアム・フォルツ(203話)

以下、ダールトン(192話)、ヴルチェク(177話)、ホフマン(133話)と続き、現役最多のアントンが現在128話担当となる。
現在のハヤカワ版で登場済みの作家は、すでに全員、鬼籍入りないし引退している(一応、エルマーは例外だが)ため、今後しばらくこの順位には変動がないはずである。

わたしが原書を読み始めたクロノフォシル・サイクル後半あたりでは、1984年に亡くなった、当時執筆数最多のフォルツを抜いたマールとエーヴェルスがデッドヒートを繰り広げていた。最終的に、1300話から草案作家の片棒を担いだマールがブッコ抜いたわけだが……あのへんのサイクルだけ、なぜか草案作家の執筆数が激増していたのだ。
#ふつー、草案担当になると執筆作は減る……。
#一応弁護しておくと、フォルツが亡くなり、後継草案作家ツィークラーも脱退。ヴルチェクが新たに世界観を構築するのに、マールの助力が必須だったのと、設定をつくった自分たちでの執筆が最善策だったのだろう。ドリフェルがらみとか。

上記マールの例のように、特定の作家が時々突出して執筆数の増えることがある(例:宇宙城サイクルのヴルチェク)。
これはその時のレギュラー作家の総数とか、他に抱えている仕事や健康状態等、作品内容以外のファクターもからんでくるので一概に言えないが、いろいろ妄想するネタにもなる。
昔、ホフマンがLKSに投稿したと思われる漫画があって、担当の割振りに頭を悩ませるフォルツのもとへ作家たちから次々に「不慮の事故」の連絡が入り、全部ひとりで書くハメになる……というオチだった(笑)

それにしても、気がつけば、『エスタルトゥへの道』をまとめた時の主力作家どころか、『無限架橋』の頃の作家もほとんどが姿を消している。現在の草案チームは時間ネタがお好きなようだが、ホント、時の流ればかりは誰にも止められないのだなあ(慨嘆)

3000話続報:また時間移動?

前回の記事を書いた後マガンと電話した際、「マルチン博士が編集長の頃って、次サイクルが近くなると、序盤のさわりとか、こーんな謎が出てくるよんって告知がされてたんだけど、フリック時代、それも現在の草案チームになってからはほとんどないのよね……」みたいなことを言って笑われたのだが。えらくタイムリーに、こんな記事が公式にアップされた。

サスペンスの要素』 ヴィム・ファンデマーン

なんでも、公式のフォーラムで、近づく3000話についての“情報統制”がされてるんじゃないの? という質問が出たとか。
#原語は情報政策(Informationspolitik)。

かいつまんで云うと:

作家チームは情報統制なんかしないよ。それは編集部とマーケティング部門の役割だからね。
個人的には、情報があればいいってもんじゃないと思ってる。我々が書いているのは、007シリーズの映画やアガサ・クリスティーの作品みたいなサスペンス小説で、サスペンスのコツは、なるべく事前にバラさないことだしね。

以下、息子とサッカー観戦に行く途中で小耳にはさんだ「試合の結果がわかってたら、スタジアムに行かないよな」とゆーサポーターたちの発言に、息子ともども頷いたとか、『伝えたいことは小説の中で語る』とか、そーゆーことを書いているわけ。
スポーツと一緒にすんなや、と、それこそ個人的には思うのだが。

なんというか、映画だってロードショー前にはせっせと予告編を流したりするわけだ。期待を抱かせるのもサービスの一環だし、売り上げにも貢献するようプロデュースするのは……まあ、確かにマーケティング部門のお仕事だけどね(笑)
ともあれ、そのへんの“情報統制”の中、ようやく漏れてきたのが、Amazonでの告知文である。以下、タイトル下のアバンから:

遙かな未来――そこで地球は、もはや神話にすぎない……
時空を抜ける危険な旅路から、ペリー・ローダンは銀河系へと帰り着いた。どれほどの時が過ぎ去ったのかわからない。何が変わったのか、予想だにできない。
だが、すぐに彼は知る:銀河では〈カイラの時代〉がはじまっており――彼はこの時代、最悪の“敵”とみなされていた。ペリー・ローダンと仲間たちに対する、凄惨な狩りが開始される……。

うん。前回書いた、500話のノリ+ハイネ版オデッセイだね!w
また時間線がどうこうという話になるのか、いかに“元の時代”へ戻るかを探すストーリーになるのかわからないけど……懲りずに時間ネタぶちこんでくるファンデマーン先生、すごいなあ(爆)


■公式News:EIN ELEMENT DER SPANNUNG

亜鈴船の行方

来年2月9日にミュンヘンで開催されるローダン3000話記念イベントのプログラムが既に公開されている(下記リンクページ、左下のpdfファイル)のだが、そこにこれまで未公開の情報が記載されていることを、本国ドイツのファン・ブログで知った。

来年刊行が予定されているミニ・シリーズ、『ミッション《ソル》(仮称)』の予告である。
ローダン・ヘフトに登場する亜鈴船(ハヤカワ版だとダンベル船)は2隻。一方の《ジュール・ヴェルヌ》は(最近の、ハイテク関連が都合悪いときの定石通り)アトピック法廷サイクル序盤に撃沈され、表舞台から姿を消した。
そして、もはや伝説の宇宙船と化した《ソル》であるが、ネガスフィア・サイクルの閉幕から少し後(2600話の記述だと、1369年前後)に、ロワ・ダントン指揮のもと、未知のミッションへと出発して、そのまま消息を絶ったという。100年音信不通なので、公式にロスト扱いとされた。
その後、アトラン捜索にワンダラーを訪れたブルが、スーザンの投影体から、《ソル》のミッションは失敗し、ロワは父の助けを必要としている、という超漠然とした情報だけを得たのが2779話。
もっともその時点で父ローダンは、“未来のエクピュロシス実行犯”としてアトプに追われる身であり、死んだり復活したり多忙を極めたあげく、エイリス枯渇の影響で〈それ〉も消息不明となり、追加情報ナッシングで、手の打ちようがないのが現状だ。

ここで、ミニ・シリーズ『ミッション《ソル》(Mission SOL)』の登場なわけだ。
問題は内容で、《ソル》を探すミッションとなるのか、それ以前の、ロワが率いたミッションが描かれるのか、現時点では一切明らかでない。
まあ、たぶん後者だと思うけど……。

刊行時期・話数等も不明で、プログラム上の新企画予告コーナーは、
・新プロジェクトI:ミッション《ソル》の開始
・新プロジェクトII:伝説のバイオグラフィー
・新プロジェクトIII:暗黒惑星への旅
・最後にもうひとつ…サプライズ (←これこそ情報皆無w)
という順番なわけだが、IIがエシュバッハの長編(2月末)、IIIが暗黒惑星三部作(4月末~)となると、Iだけど一番最後で秋口から全12話コースかなぁ。
なにより不安なのは、現草案チームは主要キャラを次々と退場させているので、ロワ君もこれが最後のご奉公になったりしないかということなのだが……。

■公式Events:»PERRY RHODAN 3000«

エシュバッハ描くローダン前史

個人的には、3000話よりこっちの方に期待しているのだが(笑)

アンドレアス・エシュバッハによるローダン・シリーズ前史『ペリー・ローダン ~グレイテスト・アドヴェンチャー〜』が、来年2/27にFischer TOR社からハードカヴァーで出版される。総878pというからボリューム感抜群である。

出版社による内容告知を以下に訳す:

『ペリー・ローダンとは何者か? ベストセラー作家アンドレアス・エシュバッハが、伝説的宇宙英雄の前史を物語る。
1971年、ケープ・ケネディ:アポロ計画の破滅的な失敗の後、月面へといたる競争に勝利をおさめるべく、アメリカ人は最後の絶望的試みを発動する。宇宙船の名は《スターダスト》。船長の名は、ペリー・ローダン。
この画期的な事件とともに、SFシリーズ『ペリー・ローダン』はスタートし、世界で最も成功した連載小説となった。
しかし、我々は今ようやく、実際どのように全てがはじまったのかを知ることになる:ペリー・ローダンの青年期、その政治的な脱線行為、テストパイロットとしての冒険、有人宇宙飛行の秘められた歴史を。
ペリー・ローダンがいかにして人類を星々へと導く伝説的人物となったかを、アンドレアス・エシュバッハが綴る。』

ローダンの過去については、ヘフト・シリーズ中に情報が散見される。ハヤカワ版においても、若い頃フランスでヤンチャをしたエピソードとかあるけれど。無限アルマダで再体験したローダンの少年期とか、全部ひっくるめてどんな話になるのか。楽しみである。

■公式News:»PERRY RHODAN – DAS GRÖSSTE ABENTEUER« ERSCHEINT ENDE FEBRUAR 2019

今夏、Heyne社よりポスビの暗黒惑星を題材にした三部作

2011年の『ジュピター』以降途絶えていた、VPMの親会社Heyne枠で刊行のペーパーバック版の新作が発表された。
#と、思ったら、Basteiだった……。

アトピック法廷サイクルでクローズアップされた、ポスビの暗黒惑星をテーマに、それぞれ独立していながら連動した三部作ということで、各400ページ前後のペーパーバックで、

1. Michael Marcus Thurner / Schwaruze Saat / 黒い種子
2. Robert Corvus / Schwarze Frucht / 黒い果実
3. Madeleine Puljic / Schwarze Ernte / 黒い収穫

が順次刊行される。
公式では今夏発売、となっているが、アマゾンの発売予定を見ると、1巻が4/29予定となっている。

特に3巻目の著者Madeleine Puljicは、ローダンNEOの方で好評を博している作家さんである。旧ヘフトの世界観で、どんな作品を仕上げてくるかが期待される。

■公式News:DIE »DUNKELWELTEN«-TRILOGIE KOMMT ALS TASCHENBUCH

創世が終わり、神話がはじまる……?

公式サイトにおいて、来年2月からスタートする新サイクルのタイトルが公表された。
3000話から100話かけて物語られる第42サイクルは『神話(Mythos)』。
11/14 3000話のタイトルが判明。

現状、2999話から一定の時間ジャンプが設定されているということ以外、内容については依然としてシャットアウトされている。
でもなあ……創世とか神話とか、スペオペらしさの欠片もないよーな。
ホント、今の草案チームの方向性ってわかんないわー。

11/14続報:
3000. Christian Montillon & Wim Vandemaan / Mythos Erde / 地球神話

《ラス・ツバイ》のペリー・ローダンは、もはや彼の知るものではない世界を垣間見る……って、500話のノリじゃないだろうな……。

■公式News:DER NÄCHSTE PERRY RHODAN-ZYKLUSTITEL STEHT FEST
■公式News:DER PERRY RHODAN-BAND 3000 BLICKT IN DIE FERNE ZUKUNFT

ターミナス1話「時間跳躍者たち」

4月21日に第1話「時間跳躍者たち」が発売された、全12話のミニシリーズ〈ペリー・ローダン=ターミナス〉。
新銀河暦1523年、太陽系外縁カイパーベルトでの発見から、ローダンが過去の事件を回想する――とともに、現在時でもその〈ターミナス〉に関わる事件が発生しちゃうんじゃないかな? みたいな予告については、すでに紹介した。
(→ ミニシリーズ:ローダン・ターミナス

現在判明しているタイトル:
 1. Uwe Anton / Zeitspringer / 時間跳躍者たち
 2. Dennis Mathiak / Flucht durch Terrania / テラニアの逃走劇
 3. Roman Schleifer / Konfrontation auf Mimas / ミマスでの対決
 4. Susan Schwartz / Kampf um Merkur / 水星の攻防戦
 5. Dietmar Schmidt / Im Sonnenpalast / 太陽宮にて
※太陽宮はノスモにあるダブリファの宮殿

すでに5月5日に第2話も刊行済みであるが、今回は第1話の要約をお届けする。

プロローグは新銀河暦1523年9月5日。
エッジーワス・カイパーベルトからの急報を受け、ペリー・ローダンはマーズ級巡洋戦艦《アラン・D・マーカント》で冥王星族の太陽系外縁天体オルクス(Orcus)へと駆けつける。

より規模の小さい小惑星との衝突の際、接近した艦艇が報告したエネルギー探知に伴い、ジョナサン・フォス(Jonathan Voss)教授率いる発掘チームがオルクスに赴き、明らかに人為的につくられた地下空洞を発見していた。そして――。
いまローダンが目の前にしているのは、輪になって浮遊する9つのオベリスクだった。強い投光器の照明を浴びながら、それは影を落とさない。各々2メートルほどの結晶体は、明らかに死んだサイノスが変ずるオベリスクであった。
秘密のしっぽをつかんだ時の、肌がぴりぴりするような、この感じ。過去、幾度も感じてきたそれが、背後にある何かに警報を発していた。太陽系に、サイノスの墓所? いや、これには何かそれ以上の意味があるはずだ。

そして、ローダンがオベリスクのひとつに触れたとき、それは起こった。活性装置のインパルスか、騎士のオーラの名残か。何か、ローダンだけの持つものにオベリスクは反応したのだ。
ローダンは、眼下にひろがる平原に連なる無数のオベリスクを見た。そして、オルクスを見たときから感じていた、かつてここに来たころがあるという感覚とともに、記憶が押し寄せてきた。たそがれの人類が、奈落の縁をのぞき込んでいたあの時代の――。

そうして、物語は過去へと転じる。西暦3430年10月30日。

ジュキ・レアン(Juki Leann)は、対探知偽装に特化した宇宙艇《ウーガン=237》乗員で、ひそかに誘導された太陽系外縁天体の一群にまぎれ、ソル星系への潜入をもくろむダブリファ帝国の秘密諜報機関〈黒のガード〉の一員である。乗員はわずか3名。反テラ連合の攻撃にそなえ、ソル系全域にはりめぐらされる可能性が高いパラトロン・バリアの操作ステーションの所在をつきとめ、破壊すること。それが《ウーガン=237》の任務だった。
潜入は順調に進行していた。入国審査機関のある冥王星軌道をやりすごし、オルクスに最接近するまでは。艇を猛烈な衝撃が襲い――何が起こったのか。船が透きとおるような錯覚を目にして、レアンは意識をうしなった。

警報サイレンが鳴り響く中、目をさましたレアン。からだが動かない――艇内の気温は211度――防護服のバリアが自動的に起動されていなければ、とっくにおだぶつだった。同僚のダレン・ジタラ(Darren Zitrra)はそこにのびている――艇長は?――いた。やはり倒れている……!?
ヴロト・グリブセン(Wloto Gribsen)の肉体は、揺らいでいた。透きとおるように――溶けるように――そしてまた元に戻る。年賀式典のエフェクトみたいに、金と銀とに輝いて。
何が起きているのか。テラナーの新兵器にやられたのか? ようやく起き上がっても、グリブセンが発する放射性衝撃前線――と、防護服のポジトロニクスは言う――のため、近づくことすらできず、2人は上官のからだが完全に透きとおり、分解するまで見守るしかなかった。
シュヴァルツシルト反応炉も暴走しており、あと1時間も経ずして、2人の防護服のバリアも息をひきとるだろう。テラナーに救助を求めることも矜持が許さず、もはや死を待つだけと思われたとき、パッシヴ探知が1隻の宇宙船の接近を告げた。黒い球形船……憎きテラナーの同盟者、ハルト人だ!
ジタラはむしろ死出の道連れにしてやると意気込むが、戦闘服を身につけたハルトの巨人に対抗できるはずもなく、パラライザーの掃射を浴びせられた工作員2人はまたしても意識をうしなうのだった。

意識を取り戻したレアンたちは、見知らぬ部屋にいた。まちがいなく、テラナーたちにつかまったのだ。装備も取り上げられ、どれだけ時間が経ったのかもわからない。
兵士に連行された2人は、奇妙な仮面をつけた男の尋問を受ける。情報漏洩を阻止するため、工作員といえど侵攻のタイムテーブル等は知らされていない。無論、知っていることとて話すつもりなどこれっぽっちもなかったが。
仮面の男――アラスカ・シェーデレーアと名乗った――は、自白剤もヒュプノ銃もあるので、できれば自発的にしゃべってほしいとうながすが、激高したジタラはにべもない。肩をすくめたシェーデレーアは、拘束フィールドで動けないジタラに自白剤を投入。フェロル経由の偽装貨物船で太陽系に接近し、1週間ほど前に射出されてから、母船が牽引ビームで誘導した小惑星群にまぎれてオルクス近傍までたどりついたこと、3人目である艇長が不可解な状況下で分解したことなどを吐かされた。

尋問がひとまず終了し、独房へ戻されたジタラは奇妙な悪寒を感じた。自白剤の副作用か? 地面に沈み込むような感覚に抗いながら、工作員は気をうしなう。

インペリウム・アルファの一室で、シェーデレーアは尋問の結果を、直属の上司である太陽系帝国秘密情報局長官代行、テゼン・サディノハ(Tezen Sadinoha)へ報告をおこなっていた。工作員たちは知らないが、すでに反テラ連合の8万隻の艦隊はソル系攻撃を敢行し、謎の爆発とともに目標が消滅していたという事態にとまどっている。実際には、アンティテンポラル干満フィールドを張りめぐらしたソル系は、5分の未来へと逃れていたのだが。
そして、そう――《ウーガン=237》は、まさにATGバリアが起動されたその時刻に太陽系へと潜り込んできた。原因不明の現象は、これとなんらかの関わりがあるのだろうか?
そこへ駆け込んできた警備兵が、敬礼して報告した。捕虜が2名とも、独房から消えました――。

秘密情報局長官ガルブレイス・デイトン、そして太陽系帝国大執政官ペリー・ローダンが――護衛と噂される、ダークブルーに染めた髪を最新モードで整えた美女、国立贋造対策工房チーフのタカヨ・スクライ(Takayo Sukurai)を伴って――到着して、サディノハから状況報告を受けた。記録映像では、具合の悪そうな捕虜2名が、まったく同時刻に、空間へ溶けるように姿を消す様子が確認された。
このタイミングでダブリファ帝国の工作員に逃げられることはまずい。非常にまずい。ソル星系はローダンとともに滅んだと、まだ反テラ連合の連中が半信半疑である今は。
工作員2名を“救助”したハルト人イホ・トロトはすでにインペリウム・アルファに到着している。ATGフィールドにかかわる謎の解明には、第一科学評議員であるジェフリー・ワリンジャーの意見を求めたいところだが、彼はまだ水星で起動に成功したばかりのATGの微調整から手が離せない。代わりに6次元現象の第一人者レニア・ビーバー(Renier Bievre)を派遣すると伝えてきたところだった。

寒い――凍えそうだ。目をさましたジュキ・レアンは弱々しく周囲を見渡した。独房、なのはちがいない。だが、何かが決定的におかしい。……扉が開いているのだ。
罠か? 太陽系秘密情報局の偽装工作で、どこかへ誘導されているのか?
そもそも、ここはどこだろうか。おそらくは、インペリウム・アルファ。ソル星系でも最高の警備度を誇る、権力の中枢。……なのに、どうしてまるで人の気配がないのだろう。
ゆっくりと独房を出る。誰も阻止するものは現われない。監獄の出口にも、保安シャッターも閉まっていなければ、反撥フィールドもエネルギー・バリアもなかった。非常灯の明かりをたよりに進むと、やがて壁に案内板がみつかった。やはりインペリウム・アルファだ。なのに、本来何かあれば400万の市民を収容できるようになっていたはずのこの施設で、ここまで誰にも遭遇していない。警備ロボットもいなければ、ID確認すらない。
反重力シャフトは生きていた。地上部分まで出たところで、コミュニケーション端末を起動してみる。動いたが、データ回線が死んでいるのか何も表示されない。
駐機場にとまっていたグライダーを調べてみる。どうやら、動かせそうだ。何の保安措置も講じられていないのが、かえって薄気味悪かったが、思いきってスタートした。

テラニアは記憶の中のものとはまるで変わりはてていた。インペリウム・アルファ同様、人気がない。高層ビルの多くには、破壊の跡があった。道路には瓦礫が積もっている。
グライダーの探知機が、生命反応を告げた。数十人が一ヵ所に集まっているらしい。そっと接近したレアンは、なにやらひとりの男が演説をぶっているらしい現場に遭遇する。聴衆たちの服は破れ、どこかぼんやりとして、男の話の内容もよくわかっていなさそうだ。多くの者は武装していた……鋤や熊手を武器といっていいものならば。
「わたしは50人委員会のハーパー・プローム。1年前、真なる天命が銀河系に下り、われらを脅かす太陽系帝国も、ダブリファ帝国も中央銀河ユニオンもカルスアル同盟も、すべては昔話となった!」
男の声に、レアンは耳を疑った。これは現実、それともパラレル・ワールドに迷い込んだのか?
「われわれはホモ・スペリオル、真なる浄化の徒。攻撃的な科学から、おまえたちホモ・サピエンスを解放し、健全なる農耕へと戻して……」
男の語る内容を否定するのに気をとられ、いつのまにひとりの少年がすぐそばまで来ているのに気づかなかった。驚いて飛びすさった時、隠れ場所から出て群衆の前に身をさらしてしまったのを悟ったが、もう遅かった。誰かのパンチがこめかみにぶつかって、世界は暗転した。

つかまって、鞭打たれた。意識を取り戻した彼女を、男たちは車につなごうとする。まだバランス感覚が戻っていない。戦闘訓練を受けた自分が、こんなところで……そう思ったとき、あの寒気がまたやってきた。自分のからだが、グリブセンのように透きとおっていくのを見ながら、レアンの意識はとだえた。

ジタラは目を見開いた。意識は瞬時に覚醒し、周囲を確認する。呑気に頭を振っているヒマなど、ストリートファイトに身を委ねていたあの頃にはなかった。3秒後には死んでいたはずだ。彼は生き延びた。今回も、生き延びるのだ。
あえて横たわったまま、様子を見る。警報がない気配はなかった。そして……扉が半メートルほど開いている。反撥フィールドも消えていた。ストリートで生きていた頃なら、跳びおきて走り出していただろうが、黒のガードとしての訓練がそれを押しとどめた。
ソル系内で彼らを捕らえたハルト人、イホ・トロトなら、自分をインペリウム・アルファへ連行したのではないか。権力の中枢にして、誰ひとり脱走したことのない大監獄だ。だが、ここは何かおかしい。
立ちあがり、扉に近づく。警報は鳴らない。タラも来ない。
尋問薬が残っているのか、からだの芯がしびれているような感覚があったが無視した。房を歩み出るが、まだアラームは鳴らない。牢の大半は埋まっていて、中にいる男女がこちらを見て何か言っているようだが、反発フィールドのせいでこちらには聞こえない。
罠なら罠でいい。逃げるチャンスがあるなら、失うものなどなかった。

あるいは、反テラ連合艦隊の攻撃がはじまって、インペリウム・アルファは混乱状態にあるのか。それぐらいしか思いあたるところがない。
一度だけ、ライトグリーンの制服を着た兵士と遭遇した。猜疑心もあらわに囚人服を身につけたこちらを見てきたが、「テストだよ、テスト」と、ぬけぬけと言ってやりすごした。なんとかなるものだ。
寒気が抜けきらない。まずは服を調達しないことには、表に出られない。
と、物音が聞こえて立ち止まる。男ふたりの声、荒い息、叫び。聞きなれた、戦闘時の声だ。
インペリウム・アルファのど真ん中で、戦闘?
首をつっこまずトンズラしろという心の声に、にやりと笑ってこたえると、ジタラは音の源へと接近した。
やはり、2人の男が取っ組み合っていた。ただ、その顔が……なんというか、人間のマスクをかぶっているような感じがして、どこか不自然だ。
一方が相手の首を絞め、壁に圧しつけたとき、ジタラは目を疑った。劣勢にある男の肉体が膨れあがったのだ。エルトルス人かオクストーン人のような、環境適応人間のそれへと。目の錯覚だろうか、互いにからだを突き放して、2人が離れたときには、もう元の姿にしか見えなかった。

不意に非常サイレンが響きわたった。監視カメラで、自分が独房にいないことがバレたにちがいない。気がつくと、あわや相手を絞め殺すところだった方の男がこちらを見ていた。その顔は、なんだか未完成というか、狂人のつくった人間のキメラみたいに思えた。
重たい装備をしょった足音が近づいてきた。戦闘中だった2人はパッと飛びすさると、足音と反対方向へ駆け去っていった。
ジタラも寒気を抑え込み、同じ方向へと逃げようとしたが、遅かった。
「いたぞ!」ほんの数メートルの距離からの声。「止まれ! さもないと撃つぞ!」それから、安全装置をはずす音。
典型的なテラナーだな……そう思いながら、からだ中にひろがった寒気に目の前が暗くなるのを感じ、工作員は意識を失った。

初めて大執政官を前にしたシェーデレーアが居心地悪そうにしているところへ、デイトンが2人のダブリファ工作員が“再出現”したことを告げに訪れた。まるで、姿を消したことなどなかったかのように……。しかし、女性の方は拷問でも受けたように背中に痛々しい傷を負っていた。
独房から医務室へと場を移し、再度の尋問の準備が進められているなか到着したのがワリンジャー推薦のハイパー物理学者、レニア・ビーバー教授であった。ほぼ40歳前後の、ダークブロンドの髪を辮髪に結った太鼓腹の男。顔の下半分を覆う髭はろくに手入れされた様子がなく、小さな縁なし眼鏡がひどくアナクロな印象を与える。
しかし、大執政官にすらつけつけと物を言うこの男は、その見てくれにも関わらず3年の軍隊経験を持ち、太陽系艦隊の特殊プロジェクトに協力するにあたっては大尉待遇の資格を有している。すでに水星からの道中で手に入るかぎりのデータの検討をすませており、必要な機材についても一足先に要請が届いていた。デイトンとシェーデレーアが工作員たちを尋問するあいだ、2人の病室の中間に位置する部屋でビーバー教授を囚人の“分析”をおこなう手筈となっている。
デイトンは、まず女性工作員からはじめた。ジュキ・レアン――ローダンは彼女を知っていた。彼女の母親はダブリファ皇帝と遠戚関係にあり、一時駐テラ大使を務めていたのだ。父親のことはわからない。そして、当面それは問題でもなかった。
レアンは比較的協力的で、デイトンに尋ねられるままに自らの体験を語った。あるいは、「太陽系帝国が滅び、三大星間帝国も昔話である」と聞かされたことにショックを受けているのかもしれない。ローダン自身も当惑していた。からっぽのインペリウム・アルファ、人の姿もまばらなテラ、退行した農耕文明……。すべては錯覚と片づけてしまいたいところだが、それではレアンの背中の傷の説明がつかない。

ビーバーは、囚人たちのからだが未知の6次元インパルスを放射していることを確認。イホ・トロトからのデータを基礎にした計算結果――《ウーガン=237》が、起動した瞬間のATGフィールドに突っ込んだ――との関連性を指摘した。時間の力が集中するポイントで何らかの多次元性相互作用が生じ、彼ら自身が二次的“芽”となり6次元インパルスの放射源となったものと思われる。またそのために、彼らのテンポラル・ポジションに散発的移動が発生している。
姿を消した――分解した――第3の工作員は、おそらく相互作用の影響がもっとも強くあらわれたもので……残る2人についても、遠からず同様の結末をたどるであろう可能性が高いものと推測された。

未知の6次元インパルスとは時間粒子とほぼ同義。そして、テンポラル・ポジションの移動とは、時間ジャンプ。ここまでの理論立てには、同席したイホ・トロトもうなずいた。彼も《ウーガン=237》と接触した際のデータから、ほぼ同様の結論を導き出していた。
ビーバーはさらに、時間粒子の収束にあたり、2人の工作員が双極をなしていると判断していた。2人の時間ジャンプは、まるで自然法則がバランスを取るように、互いに正反対の方向――過去と未来――に向かって生じるはずなのだ。
であるならば、レアンの見た、太陽系帝国が滅び去った世界は、錯覚でも並行世界でもなく、彼ら自身の未来かもしれない……。

ビーバー教授に求められた、計測機器の追加操作に手をあげたサディノハ提督は、指示されたボタンを押した後で、周囲に誰もいないことを確認すると、多目的アームバンドの通信機を起動した。
予想通り――時間ジャンプ――われわれの派閥にとり好都合――ローリン計画は予想外――ローダンはバカではない――目的のため、2人の身柄を確保――場合によっては、正体が暴露することになっても――。

翌10月31日。ローダンは自ら囚人たちと面会した。ローリン計画とATGフィールドのことは秘したまま、2人のからだに時間粒子が収束していること、細胞構造に影響を及ぼし、未制御の時間ジャンプがなされていることを告げる。医師団からの診断書を示し、治療のために協力を依頼する。協力――暗に、転向を指していることは、工作員たちには明らかだろう。
その頃、過去データを検索したネーサンが、3418年9月末に、ジタラが目撃したものとおぼしき事件があったことを発見していた。相争う男たちの映像は不鮮明で、一方は背後から撮影されて顔すら確認できない。だが、データには、何者かがそのエリアの監視システムを一時遮断したこと、それが復旧された際の映像がさきほどのものであること、そして、それを報告したものが、テゼン・サディノハであることが記されていた。とはいえ、所属不明の男に襲撃されたこと以外、サディノハにも付け加えることは何もない。事件は迷宮入りしていた。

しかし……ジタラの目撃情報が事実と確認されたことは、ビーバーの曰くシンメトリー効果理論にしたがうと、12年以内にレアンの見た未来がテラに、銀河系に降りかかるのを意味していた。ローダンは最高度の機密保持を命じた。今回の案件に関するデータの閲覧には、最高度のプライオリティを有する彼、太陽系帝国大執政官自身の許可が必要となる。
3418年の事件は、当時すでにインペリウム・アルファにいずこかの第5列が侵入していたことを示唆している。ローダンにはなぜか、その一件が、今回のできごとと何らかの関係があると思えてしかたなかった。

ローダンの再度の説得に応じ、2人のダブリファ工作員はそれぞれの体験についての詳細を語った。ダブリファ帝国をも崩壊に導く未来の謎とあっては――自白剤が存在することも考慮して――、沈黙を守っても意味がないと判断したという。
無論、ローダンたちとてその言葉を鵜呑みにはしていない。メンタル安定化処置を受けているのか、時間粒子の影響か、グッキーも2人の思考を正確に読み取ることはできないが、ダレン・ジタラが逃亡することしか考えていないのは丸わかりだった。
ジュキ・レアンについては、多少事情が異なる。ローダンの説得というより、彼女は自分の目で滅びの訪れたテラを見たのだ。ネーサンを含む情報ネットが瓦解しており、街頭には実際の日付等を表示しているスクリーン等も皆無だったので、実際にそれが12年後のことなのかはわからない。自らが鞭打たれたあの世界の到来を防ぐことは、あるいは何よりも優先すべきことなのかも……そんな動揺がレアンにはあった。

ともあれ、協力の対価として、2人は翌11月1日にミマスのメド・ステーションへ送られることとなった。ジタラなどは、いまなお、海王星の捕虜収容所――そんなものは実在しないのだが――へと送致されると信じていたが。

11月1日。囚人移送車に乗り込んだジタラは、直近の宇宙港であるアルデバラン・スペースポートが利用されると考え、脱走の機会はないかプランを練っている。隣に腰掛けたレアンは、護送にあたる秘密情報局員たちの武器の安全装置がはずされていることを見てとっており、試みるだけ無駄だと理解していた。
不意に響く爆発音。室内の明かりが消え、空調機のうなりもとだえた。何が起こった? 捕虜奪回を敢行するほど、テラに潜り込んだ工作員の規模は大きくあるまい。
暗闇で聞こえるのは、緊迫した互いの呼吸音だけだ……。

ENDE

2900話:こぼれ話

わりと長くなった……というか、1回目を通した後、アタマから読み直しつつ書いているので、こうなるのは必然というか……。

『エスタルトゥへの道』にまとめ直す前、1200話台後半各話のあらすじをマガンに(一方的に)送りつけていたのが、ちょうどこんな感じだったろうか。今更ながら、すみませんw
そんな手順のわりに、いまいち話のおさまりが悪くて取りこぼしたエピソードなどもある。蛇足ではあるが、少しだけ解説につきあっていただきたい。

2900話の詳細な目次は、以下のとおり:

プロローグ 新たな絆
 1 水星へのピクニック
  考古学者寝坊する
  深淵へ
  長閑なスプリント
  覚醒
幕間 前夜
 2 邪魔の入るレセプション
  タワーにて
  そわそわ、もぞもぞ
  大きな兄弟分
  光、灯る
幕間 最後の夜
 3 指をさす
  死にゆく恒星
  生と死の狭間で
  新しいホーム
  〈ネット〉
幕間 宇宙を観る目
 4 世界滅亡の日記
  誘導灯
  メッセージ
  此処にいる友
  最後の瞬間
エピローグ 星々へ!

1章の「考古学者寝坊する」と「長閑なスプリント」は、共に寝坊したデジオ・ガッタイが大焦りしながら発掘現場へたどり着くまでのエピソードなのだが、全カットした(笑)
現場では、「普段は信用のおける人物なんですが……」とかロッツィ女史がフォローしたりしているのだ。
序盤でさほど役割をなしていないわりにこの取り上げようなので、準レギュラーなのではという予想は当たったっちゃ当たったんだけど。今後出番あるのかにゃあ。

ローダンたちがハレム・アーミーを初めてみるシーンでは、ひとつ重大な問題がある。
58m×135mの洞窟にずらりと並んだハレム兵。最終回でちょっと書いたとおり、縦横まんなかに通路みたいな隙間が空いていて、四等分されているのだが……。
ファリエさんがローダンの後につづいて、通路を歩きつつ勘定している。
左に15体の兵士、右に15体。(中略)23、24、25。列の背後に、彼女の歩むものと直行する隙間が(中略)ファリエは第2のブロックの後列を見やった。ざっと数えて、また25列。
(中略)
15×25、ということは象限ごとに3000体の人形。すなわち全部で……
「12000体」と、口をついて出た。

……えーと。15x25x4はいくつだろうか(爆)
何回読んでも、x8を意味するフロアとか見つからないのだ。
これ、公式フォーラムでもひとりだけツッコミっぽいの入れてるんだけど。レスがつかないなあ(–;
……やっぱナニか読み落としてるのかなあ。

3/29追記:
レスがついたー……けど、なんだコレ(笑)
『15×25、象限ごとに3000体――ほぼ、ってしとけばいいのでわ。』
……超意訳だけど。いや、マジでなんだコレorz

幕間「前夜」は、タルターン系第1惑星エペチュアンにおかれたジャーバッジ基地駐在の2人の科学者、170歳の宇宙心理学者ミュルディン・ホークと、50歳の宇宙言語学者ユーマ・リーさんのエピソード。
お互いになんとなく気になっているのに、年齢が壁になったご様子。(……わしがもう100歳若かったらなあ)とか大爆笑していたw

実はこの段階で、マンダーム人の主導的な国家がクルマー帝国だとか、帝国が惑星の反対側に築いた開拓コミューンが重税にあえいでいるとか、あとでテーラー君の境遇にからんでくる説明が書かれている。
最終的に、可動式災害時避難セルで生き延びたふたりはイロイロ吹っ切れた感じ。“職場”が消滅した両名は、ローダンの誘いに乗って《ラス・ツバイ》のメンバーとなる。考古学者より出番ありそーな気もするが、さて。

オピテル・キントの綴りはQuint。ナイク・キント(Quinto)とは微妙に異なる。エルトルス人の血をひくという話は、実はひと悶着終わってローダンと自販式レストランに入ってからの会話。
出会い(笑)のわりにファリエさんと脳筋思考が合いそうとか、多少気になるところはあるが……職業柄、《ツバイ》に搭乗することはなさそうだし、アダウレスト関連で今後の活躍があることを期待したい。

「そわそわ、もぞもぞ」あたりで到着する、ファリエさん指揮下の陸戦隊兵士は全員名前もあるのだが、こちらも全カットした。再登場したら考えよう(笑)

幕間「最後の夜」は、テーラー君が被災する話。惑星反対側のコミューンから、伝統的なお仕事について教育する余裕がないのでいとこの家に預けられたとか、いとこ一家とうまくいってないとか、いろいろ書かれている。

カントヴァイネンが留守番パイロット……というのは、《ツバイ》では一番新米だから、ということみたい。他のパイロットとしては、ブリオニー・レフ(たぶん初登場)、《アトランク》の生還組、ルアさんとフォーゲル君の名前も挙がっている。本来、能力的にはファリエさんもこっちだと思うのだが。はてさて。

幕間「宇宙を観る目」で登場するブルー人ユスリュユンだが、問題は彼のプロジェクトの名称〈無限の昏き獣の目〉。
シリーズのどのあたりからこうなっているのか、わたしはよく知らないのだが。ブルー人の驚くセリフなどで「ほにゃららの○○色の獣(クリーチャー、被造物)に賭けて!」みたいな表現が慣例である。第××先見とかと同じく、ブルー人特有の文化といえよう。
なので、これは〈無限(に広がる大宇宙)の昏き(背景色の)獣の目〉あたりが、正しい意訳(笑)なんじゃないかな?
シャロウンとか、LFGの関係部署のヒトが略したくなるのもむべなるかな。

英語が「死語」「学術用語」扱いされているのは、今回はじめて明記されたみたい。
確かに太陽系帝国の時代から、「公用語はインターコスモ」だった気がするし。
でも、改めて母国語を「死語」扱いされたローダン氏は寂しそうであった(笑)

グッキー・テレポート・アンリミテッドは、有限会社の逆、無限責任会社の意味だろうが、なんとなく「無責任会社」と訳してしまいたくなるのはなぜだろうか。

最後に、タイトルの「宇宙遺産」だが。
タイトルは中性名詞なので、遺産でまちがいないだろう。
そして「メッセージ」において、ハレム・アーミーがローダンのことを「放浪者の継承者(男性名詞)」と呼びかけていることから、ローダンが・〈それ〉の力の集合体を・継承する、と、そうみなされているようだ。

このサイクルは、銀河系を含む〈それ〉の力の集合体の帰属をめぐる物語、ということになるのかならんのか。
なんせもう次は3000話である。期待したい……というか、頼むぜヲヒ(笑)

2900話:おいでませ〈黄金の国〉!! 遺産って、死んでないよね?w

2900話あらすじ、最終回をお届けする。
すでに2901話が発売されており、ゴンドゥナトでは「〈それ〉を追い払うのに一役買った英雄ペリー・ローダン!!」としてめっちゃ歓迎されている一方で、殺人事件など発生して早速キナ臭くなっている模様。
3000話へむかって、どうなる宇宙英雄!?w

これまでのお話:
■ごやてん:>2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆
■ごやてん:>2900話:莫迦には見えない新星!? 灯火は点された!
■ごやてん:2900話:時間との競争・ノヴァの下の救出劇

(承前)

時間との競争は続いた。
大規模なガス噴出によってプロジェクターの半数を失いながらも、〈ネット〉はその所期の目的を達し、高熱ガスはマンダームから逸れた。上空にくりひろげられるオーロラの乱舞はなおも怖気だつものではあったが、パラトロン・バリアは人々を護り抜いた。そして――。

以降、大規模なガスの噴出はなかった。というより、バランスの崩れたタルターンは急激に恒星としての態をうしなっていった。惑星マンダームも従来の軌道をはずれ、高熱ガスよりも、急激に下がっていく気温への対処が急がれた。
《ラス・ツバイ》が現地に到着してから4日後には、恒星タルターンはもはやわずかに輝くガス雲でしかなくなっていた。

現地の指揮を後続の《ミル・ヴァタリ》にまかせ、ソル系への帰途についた《ラス・ツバイで、ローダンは第1惑星エペチュアンから奇跡的に救出された2名の研究員を艦内クリニックに見舞った後、科学チームとの会議に臨んだ。

突然のノヴァ化といい、その後の経過といい、通常の自然現象ではとうていありえない。現状、最終的回答は出し切れないとしながらも、シクさんはこれを“システマティックな恒星の非安定化”と評した。本来、恒星の燃焼圧とバランスの取れているはずの重力が、時を追うごとに低下していくのが観測されていた。まるで反重力場か、重力定数が恒星内部でだけ下がってしまったかのような急激なものだった。
この「重力分解」現象の原因は当然のごとく不明。では、何者かが、意図的にタルターンの重力を操作したのだろうか。シクさんは、「意図的」という部分に疑念を示した。

赤色巨星オテルマも、想定された時期より100万年も早く新星となったわけだが、こちらではそれ以外の異常は観測されていなかった。シミュレーションは、オテルマがつかのま閃光をはなち、核へとむかって内破していく様を映し出した。後には白色矮星が残される。
ただし、ノヴァ化が急速に進展した結果、その重力域に囚われずにいる質量もかなり残存しており、こうした場合には、ごくわずかな年月のうちに赤色巨星へと“反転”するケースも過去に見られるという。

これに比して、タルターンで起こったのは星の進化の“加速”ではなく、完全な破壊である。“点火ミス”であるか、〈灯火〉からのライン上にたまたま位置していたため、オテルマのノヴァ化の副次現象としてこうなった可能性が高いのではないか。
ローダンはなるほどとうなずきつつ、内心うすら寒いものを感じていた。もし、ノヴァ化を使嗾した何者かが悪意をもっていたならば、クリスタル・バリアの有無にかかわらず、今頃ソルも新星となっていたのではなかったか……。

太陽系政庁でヘケナー・シャロウンに報告をおこなったローダンは、内惑星のお祭騒ぎは依然継続してはいるが、水星へむかったグッキーのおかげでパラ暗示関連の調査が進展していると聞かされる。

「彼の派遣は、いいアイデアでした」
「時折、いいアイデアが浮かぶものでね。その最たるものは――この“下”にあるよ」
「ちがいない」

つかのまの談笑。続いて話題は〈無限の昏き獣の深き目〉に移った。
シャロウンの曰く〈ディープ・ダーク・アイ〉――現代のラテン語ともいえる英語で、〈無限の昏き獣の深き目〉につけられた“略称”――の探査結果が届いていた。ソルとオテルマを結んだ直線の延長線上、銀河間の虚空に、さらに2つのノヴァを示す微弱なハイパー・シグナルが確認されたという。
最初のものはソルから5000万光年。つづいて、さらにまた5500万光年の距離に。
こうして揃った“3つのノヴァ”の、その直線を伸ばし続けると、2億光年かなたのひとつの銀河へといたる。
NGC4622……銀河の回転が渦状腕を追いかける形の、異形の銀河である。

転送機で水星アサルク・シティへと到着したローダンを、すでにグッキーが待ち受けていた。テレポートで連れてこられたのは、〈セト〉の演算ホールである。

「グッキー・テレポート(無限)のご利用、誠にありがとうございまぁす」

グッキーは一本牙をきらめかせ、ちょうど判明したばかり、という分析結果を告げる。
まず、各惑星で生じている多幸症的感情の発露。これは予想通り、ハレム・アーミーからのパラ暗示的感化力が確認された。すでに現在、遮蔽のための作業に取りかかっている。数日中に事態は好転するだろう。
そして、メンタル安定化処置を受けたものの多くも見た、夜空の光の染みについては――

「手品のタネ明かしみたいで笑っちゃうけどね?」

各惑星の磁気圏に、何者かが散布した大量のナノ粒子が発見されたというのだ。
何十億というそれらが、金星や火星のようなごく弱い磁場の惑星においても、長い時間をかけて所定の場所に集まり、特定のキーワードのようなもので光る染みを発生させる。ハレム・アーミーの暗示波とあいまって、3つの新星のつらなり――〈灯火〉の誕生である。おいおい(笑)

と、そこで見慣れない科学者がひとり、近寄ってきて、

「ペリー・ローダン、その、ご伝言をお預かりしているのですが。いえ、その、別にわたしは暗示で強制されているとかではなく、お願いされただけで。伝言というのも、あなたへのお願いといいますか」

聞いてないことまでペラペラしゃべり出す男。
やむなし、と先をうながすローダンであったが。

「ハレム・アーミーのところへ、もう一度訪れてほしい、と」
「……誰からだね?」

科学者は、そわそわした笑みを浮かべて、

「その……ハレム・アーミーから、です」

ローダンが、グッキーとオピテル・キントを伴い訪れた発掘現場は、依然として兵とタラ型ロボットによって封鎖されていた。
ハレム・アーミーが立ち並ぶ洞窟も、無数の拘束フィールド搭載ゾンデが飛び交い、ことあらば取り押さえる準備が整えられている。もっとも、あれ以降、敵性ロボットの出現は確認されていなかったが。
また、洞窟内には可搬式パラトロン・バリア発生装置も据え付けられ、暗示波の遮蔽も実行されているようであった。

洞窟上部のプラットフォームから見下ろすと、ハレム・アーミーは皆一様にかなたの一点……NGC4622の方角を見据えていた。
グッキーを見やると、どうやらメッセンジャー・ボーイの仲介は無用みたいだね、とつれない返事。
致し方ない。目を閉じて、覚悟を決めたローダンが再び目を開けると――すべてのハレム・アーミーの視線が、彼へと集まっていた。これはビビるwww

そして、ハレム・アーミーの声が――音声が――空洞に響き渡った。

「ペリー・ローダンよ。放浪者はその力の集合体を放棄した。その種族たちは再び自由だ。だが、放浪者の退去は、他の悪しき勢力の欲望を喚起することになるだろう」

一瞬の間をおいて、十字通路によって4組に分けられたハレム兵の、左手前の集団が、

「われら〈追われし種族〉が庇護を提供しよう」

右手前から、

「われらは放浪者の継承者に、われらとの盟約を申し出る」

左後ろの集団は、

「灯火をたどりて黄金の国へ来たれ」

右後方からは、

「銀河系が生き延びることを欲するなら、キミと、人類と、ゴンドゥナトとの間の盟約が必要だ」

わずかの間――そして、再びすべてのハレム・アーミーの声が、

「ペリー・ローダン。キミには、期待している」

-*-

完璧に刈り込まれた芝生は、やんだばかりの霧雨の滴できらめいている。ツツジ、ゼニアオイ、ラベンダー。可憐に咲き誇る薔薇。湿り気を含んだ芳香を吸い込みつつ、ペリー・ローダンはこの英国庭園の主と言葉をかわしていた。

「……で、そのお誘いを断ろうとか、考えてもいないんでしょう?」
「クサい臭いは元から断たなきゃダメだからねっ」

元々、イロイロな事件が同一の方角を指ししめしていたのだ。ハレム・アーミーの勧誘は、いわば最後の一押しにすぎない。

「でもなあ……そのイロイロがなあ。マンダーム人やら、アダウレストやら、ラール人やら。これほっぽり出して、出かけちゃっていいもんかなあ、と」
「いや、それをあたしに言ってちゃいかんでしょう。シャロウンとかに相談なさいな」
「いやいや、あいつらがなんて言うか、わかってるもの」

自由テラナー連盟から自由ギャラクティカー連盟へと発展的改組を指導したヘケナー・シャロウンは『連盟は成長したんです。大丈夫ですよ』と根拠のない自信をしめすだろう。
イロイロと他者を信用しないヴィンガーデンなら『あなた抜きでも、アダウレストをつかまえるくらい朝飯前です』と胸をはるだろう。逃げられたクセに。
英国庭園の主はため息をついて、グラスに注いだウイスキーを勧めた。

「アイラのシングル・モルト、18年ものです。これ以上古いやつは、アメリカ人にはもったいなさすぎて」

ローダンはジト目を返して、

「ミスタ・アダムス、キミは時々ひどいこと言うね……。それはそれとして、頂こう。相変わらずオンザロックにはしてくれんのだな」
「良いウイスキーに対する冒涜ですぞ――で、あたしに、背後にかくれた灰色の枢機卿になれ、と」

ローダンはうなずいた。シャロウンやヴィンガーデンには、彼やアダムスの持つ幾千年の経験がない。それを必要とする事態がやってくることを、なぜか彼は確信していた。

「いつご出発です?」
「6月10日に」
「では、それまでにあたしも準備しておきましょう。いってらっしゃいな、その“黄金の国”とやらを探しに」
「ありがとう、ホーマー」

かくして(ローダン的には)準備は整った。

出発の日――ローダンは最終乗組員を出迎えるコルヴェットの搭乗ランプの下で、テラ・パラノーマル人材研究所(TIPI……なんか動画になりそうな略称w)のアタピリー教授と談笑していた。このミュータント学校の長からは、今回の遠征にあたり、ドン・ヤラドゥアを紹介してもらっていた。おそらく、彼の不在中にも、連盟が頼りにするだろう人物である。
そこへ、最後のひとり――考古学者のデジオ・ガッタイがグライダーで乗りつけてきた。発掘作業の引継ぎに今朝までかかったとボヤきつつ、ランプを悠々と上がっていく。《ラス・ツバイ》では、パラトロン・バリアで遮蔽されたハレム・アーミー2体が彼を待っているのだ。

「新たな旅、新たな航海、というところですか」
「新たなる、未知への突撃です。教授」
「幸運を」

ローダンの乗り込んだハッチがプシュっと閉ざされ、テラニア・スペースポートの喧騒を断ち切った。

「呼ばわる声があり、乞われた願いがあり、届いた招待がありました。それに応えるため、この幾週、巨人をめざめさせる準備が進められてきました」

〈刮目放送〉アウゲンクラーリポーター、ナーティヤ・コマルカンのアナウンスの流れる映像は、天の川の星々を背景に浮かぶ《ラス・ツバイ》を映し出していた。もっとも、クリスタル・バリアが展開されてひさしく、星々の光をさえぎっているため、CG加工したものである(笑)

「3万名を超える志願者――大半はテラナーですが、多くの友好種族からも乗組員は構成されております。これはもう、空飛ぶひとつの都市であり、自由ギャラクティカー連盟のみならず、これを超えた共同作業の理念を体現する世界といえましょう」

船殻から光の漏れていた格納庫に、1隻のコルヴェットが吸い込まれてゆき、ハッチが閉鎖された。やがて、インパルス・エンジンの輝きとともに、巨船が動き出す。

「大航海がはじまりました。いまグラヴィトロン・フィールド・エンジンが作動し、見えない力が船体を牽引していきます。ホークIVコンヴァーターが動き出すまであと数分。《ラス・ツバイ》はリニア駆動で銀河系のはずれまで飛び、そこから本来の意味での冒険、ハイパートランス・プログレッサーによる銀河間航行がはじまります」

船影が微細な点となり、まもなく消え失せた。
その針路へむかって、3つの光点が輝く。

「旅路の終点で、ペリー・ローダンと乗員たちを待つものはいったい何か? それを知るものは、彼ら自身だけでしょうが……冒険を終えた彼らが戻り次第、われわれ〈刮目放送〉はどこよりも早く、テラナーの心に寄り添いお届けることをお約束します!!」

(終)

■Wikipedia:NGC4622 (英語版)