失われたヘスペリデスの贈り物

〈失われたヘスペリデスの贈り物(Verlorene Geschenke der Hesperiden)〉はエスタルトゥ12銀河のひとつムウンの奇蹟。現地名は〈失われたエスタルトゥの贈り物〉。本来は惑星エピクゾルに貯蔵された超知性体のハイテク機器。奇蹟エンジニア種族ナックの操作か、あるいは独自のAIか、個々が意志をもって行動可能。超光速による銀河間航行すら可能である。

《ツナミ》乗員の知識をデータベースとして持つストーカーが、ムウンの奇蹟の広告素材として選択したモチーフがヘスペリデス。ギリシア神話で一説にアトラスの娘とされるニンフの姉妹たちのこと。世界の西の果てにある“ヘスペリデスの園”で、へーラーがゼウスに贈られた黄金の林檎(オレンジ)の木の世話をしている(番人役は別にいる)。マイナーだがヘラクレスの逸話にも登場。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%83%87%E3%82%B9

なぜハヤカワ版が“ヘスペリデス”という固有名詞を避けたかは不明だが、「ヘスペリデスの贈り物」とは即ち黄金の林檎のメタファーであり、トロイア戦争の発端ともなった果実のもたらすものを象徴しているーー“不和”だ。
この奇蹟のネーミングのキモはそこなのだが……。

1335話でGOIの迎撃を逃れてイーストサイドへ到達したヘスペリデスはブルー人の多くを感化し、銀河系内部に不和の種をまく。ギャラクティカム内部の分裂と、“恒久紛争”の導火線としてハルト討伐という内戦をひきおこそうというものだ。
また、少し先の話だが、再びエスタルトゥの銀河が舞台になる際に、エピクゾルの“贈り物”がとある人物に助力を与えたというエピソードが明らかになる。しかし、彼らの力をもってしても、〈ソト〉と〈デソト〉の間に穿たれた溝は埋めようがなかった。まあ、本来不和をもたらすものだからしょうがないね、というお話(おい

話はちがうが、ヘスペリデス云々はさておいても、ハヤカワ版が選んだ〈番人の失われた贈り物〉という訳語には、個人的に大きな不満がある。語順である。
『タルカンが呼ぶ!』をまとめた際に、奇蹟のネーミングについてはいろいろと悩んだ。ヘスペリデスについては、Hesperidengeschenke(ヘスペリデスプレゼント。いぶし銀だろ?)という語も用いられるので、「(本来あるべき場所から)失われた」「ヘスペリデス(エスタルトゥ)の贈り物」であるという結論に達した。
※惑星エピクゾルが出てくるのは1500話台。

しかしハヤカワ版だと「番人の失われた」「贈り物」と読めてしまう。訳語を決めたヒトは、おそらくPerrypediaも読んでないし、ストーカーのプロモーターとしての努力も顧みない。残念なことである。

https://www.perrypedia.de/wiki/Verlorene_Geschenke_der_Hesperiden

ペリー・ローダン5000冊

 電話が鳴った。受話器を取ると、いつものパリパリっというノイズに続いて、銀河を隔てたようなかすかな声。
「もしもし?」私は大声で、「もしもし? もしもーし?」
 ようやく何語か聞き取れた。「フリック! こちらはミスタ・フリックだ!」
「あのミスタ・フリック?」
「そうだ! あのミスタ・フリック! 編集長の!」
「おお、ミスタ・フリック。また急なことで」
「なこたぁないさ」ミスタ・フリックは唸った。「なあ、君が書いている小説、3134話なんだが、バッチリできてる(gut und fertig)よな?」
「もちろん」と、私。「できたも同然(So gut wie fertig)です」
 眉をひそめる音が聞こえた。「そいつが、きみも知ってのとおり、ローダン宇宙5000番目の小説になる」
「わたしが、知ってのとおり?」
「数えてないの?」
「いえいえ」私は請け合った。「4999冊目の次は5000ですよね」
「読者はきっと数えてる」と、ミスタ・フリック。「こいつは緊急案件だ」

……という導入で始まる公式News。上手に書けましたー、とやろうかと思ったが、それはさておき。
ローダン宇宙(Perryversum)における小説が5000! わたしがファンダムに足を突っ込んだ80年代後半には「ペリー・ローダン3000冊」なんてまことしやかに囁かれてたりもした。ローダン正篇(ヘフト)1300話、姉妹編ATLANが800話、惑星小説が300巻等々……だいぶ盛ってた気もするけど(笑)

ともあれ、読者としては数えねばならぬ(おい
……と意気込んだのはいいのだが。あっれぇー?

4997……微妙に足りない(汗)
9月3日に260巻を数えるローダンNEOは、NEOversumという別個の宇宙の存在なので勘定に入れないとして。短編とかの数え方が違っているのか、『プレアデス』みたいなオーディオドラマも計算すべきなのか。ぐぬぬ。

同日夜 追記:

マガンのご協力のもと、忘れていたアレコレを追加したところ。

……はみでた(爆)

ステラリス(不定期連載の外伝)は、ひょっとするともう1話くらい増えるやもしれんし。どーしよw

なお、参考までに、年鑑(1976/1999)とローダン・マガジンに掲載された短編のタイトルは以下の通り:

9/13 追記:

当該“5000冊目”の3134話「星屑計画」冒頭に、ファンデマーン自身による解説があった。
まっさきに除外したNEO260巻が含まれるんだそうな……おいこら(笑)

Heyne版のJupiter全1巻と、ヘフト版Jupiter全12話が混在するのはちょっと気持ち悪いけれど……とりあえず、短編(Kurzgeschichte)はすべて除外。惑星小説等短編集はそれぞれ1冊として計算すると……よっしゃ5000!

正直、11冊の惑星小説短編集を含むなら、記念号全7巻も入れなきゃいけない気がしないでもないのだが……もうゴールしていいよね?(笑)

■公式News:5000

NEO250巻『時代の転機』

ペリー・ローダンNEO、第5期初号にして第25シュタッフェル(シーズン)〈深淵〉編の第1話となる250巻『時代の転機(Zeitenwende)』が4月16日(電書は15日)に発売となった。著者は草案コンビであるリュディガー・シェーファーとライナー・ショルム。

タイトルのWendeは「切替、節目、転換期、逆転」等の意味があり、ベルリンの壁崩壊にはじまる東西ドイツ統一の流れについても用いられた。わかりやすいところでは「コペルニクス的転回」もこれ。時代が大きく変わろうとしている、ポイント・オブ・ノーリターンということ。ヘフト版250話「第六紀元」(シェール)みたいなもんである。

-*-

あと、本編と直接関係ないので先にいっておくと、ノナゴンの作用ですべての細胞活性装置が機能停止。ただし、〈時の泉〉でカリブソと邂逅したローダンがそうであったように、携行者は装置無しでも相対的不死性を維持しているらしい。アヴァンドリナさんが遺した(トーラ用以外の)10基の装置はすべて“冬眠”活性装置と呼ばれたように、不定期で活動不能期間が訪れる仕様だったそうなので、むしろラッキー?

249話時点で活性装置携行者だったのは以下の6名(太字はNEOオリジナルキャラ):
トーラ・ローダン・ダ・ツォルトラル
レジナルド・ブル
ジョン・マーシャル
ラス・ツバイ
ヨシュア・モンカダス
――18巻で「世界の終わりは近ーいっ」という宗教者として登場……らしい。アンティ・ミュータントであることが発覚するも、ジェネシス危機の後、能力がインターラプター(電子信号遮蔽能力者)に変化。一時シド・ゴンザレスの意識の宿り先であった。
ベル・マックグロウ
――101巻で大赤斑から出現したマークス船を発見する《アリストテレス》航法士。後《マゼラン》乗員としてアンドロメダ遠征にも参加。199/200巻のどこかでジョン・マーシャルと結婚。一子ノアをもうける。

装置自体はもう動かないので、今後この方法で不死者が増えることはない模様。
なお、ノナゴンの発動は局所泡(ソル星系周辺宙域。くわしくはWiki参照)のみに限定されるので、アンドロメダにいるアトランとミロナさんの装置がどうなったかは不明とのこと。閑話休題
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%80%E6%89%80%E6%B3%A1

第1部:ごく近くにて

時は西暦2102年4月16日。ダークライフとノナゴンをめぐる事件から12年が経過した現在、太陽系ユニオンと人類は内部に抱える一大危機に直面していた。
オクストーンを除く太陽系ユニオン所属の植民星系代表と火星評議会が構成する〈コロニー自主管理委員会〉は、テラ連合憲法に含まれるコロニー住民を束縛する“協力・管理条項”を現代の奴隷制度と糾弾。874隻の民間船団が冥王星軌道に出現し、テラをめざす示威行動を開始した。
このありさまをライヴ中継するためメイセンハート・ギャラクティック・ニュースのクルー、タルドゥス・ザンクが同乗していた、監視部隊の巡洋艦《レベル・ラウザー》は、防御バリアを切っていたことが災いし、過剰反応した貨物船の発した対隕石レーザーに被弾。反応炉が暴走して脱出のまにあわなかった乗員数十名が死亡するにいたり、状況はさらに緊迫化する。
テラ艦隊旗艦《テラニア》座乗のプロテクター、レジナルド・ブルの断固たる指示と、船団を代表する火星議員タッチャー・ア・ハイヌがすばやく表明した“きわめて不幸な事故”に対する公式の謝罪で最悪の事態は避けられたものの、《クレストII》で駆けつけたローダン、テラ連合執政官ステラ・ミケルセン、太陽系ユニオン大統領シャルモン・キルテ・ダブリファらの説得は空振りに終わり、船団はテラをめざす遷移の準備に入った。

太陽系ユニオンの構成惑星は、以下の記事に挙げた7つに加え、スピカ星系の惑星サイボラ、りょうけん座アルファ星の惑星オクストーンがある。中華ブロックの植民星とかどうなったのかにゃ。
https://www.goyaku.com/neo/rundreise-der-magellan/

ここにいたり、テラ連合首脳部は〈非常事態計画ローリン〉の発動を決断。
人類の科学者がネーサンとポスビ、《PE-超便利》のパドラー、ペロクらの協力を得て開発したアンティテンポラル潮汐フィールド。全長45m程度の潮汐衛星およそ2300基がテラとルナの周回軌道をめぐっており、ソル彩層からヘリウム3を抽出、ラグランジュ点(L1)で200メガトンの水素と核融合、人工太陽として点火したものがエネルギー源となる。
未来への移行――量子力学的には1プランク時間単位の重ね合わせスーパーポジションによる「時間ベクトルの極大化」であって、通常空間の“隣”に存在を続ける形となる――それ自体は96基のATG転送ステーションがL4点に作り出す直径100万キロの転送リングによっておこなわれる。テラ=火星軌道の中間点〈X-ドア〉に設置された〈時間水門〉経由で、移行後も往来は可能とされている。
すでにカウントダウンは始まっていた。ミケルセンとダブリファは《テラニア》へと移乗……彼らは“現在時”に残るのだ。その他関係者も次々とテラ艦隊旗艦へと終結しつつあった。
デモ船団のテラへの遷移が30分後に迫る中、ATGが起動する。ブルは瞑目した。874隻の船と、およそ3万にのぼる乗組員。絶対に、彼ら“人類”に向けて発砲したくなかった。それでも、ブルはこの計画にはいやな予感を感じるのだ。まぶたを開く。テラとルナの姿は消え失せており――《テラニア》司令室に警報が鳴り響いた。

正篇におけるX-ドア
ヘフト版においてもX-ドアという名称が存在する。ただし等しいのは名称だけで、アトラン率いる“タルカン艦隊”出発にあたり、ハンガイ銀河のストレンジネス障壁から80光年のポジションにヴィールス船団との合流点として指定された。ドリフェル・ショックの時点で、この宙域には《バジス》が待機していた。
あと余談だが、ヘフト版では対応するように〈Y-ゲート〉、〈ズールー(Z)〉と呼ばれる合流ポイントも存在する。

第2部:遥か遠くにて

ラス=トオルのアウリスは、惑星ドロラーの最高峰ファロロンの頂上で“夜警”の任に就いていた。深く青い夜が世界を覆っている。首都コナルからほど近い岩山に人工的な螺旋構造体を付け加えたファロロンでの任務は、現在では自動機構の補助もあり、高等評議員に課されるほぼ儀式的な仕事といえたが、広所恐怖症に冒された大半のアコン人とは異なり、アウリスはこの夜空が嫌いではなかった。
時代遅れの旧弊と謗る者もいるが、〈大障壁〉による外界との隔絶エンティラコシオンはアコンの伝統。この平和な夜を見守る仕事も悪くない……そんなことを考えていた矢先だった。青い夜空に、赤いしみをみつけたのは。
彼女を補佐する監視ポジトロニクスも類例を知らない現象。上空数百キロに生じた赤光からは、波の伝播するようなゆらめく環が断続的に発されていた。〈大障壁〉のプロジェクター・プラットフォームの一群を指揮するトランスディム・エンジニア、エッペンのジョックスと連絡をとったアウリスは、赤光の原因は不明ながら、何かが超遠隔地から青いバリアに影響を及ぼしていると知らされる。
緊急プロトコルを発動し、評議会に指示をあおぐべく半空間ブリッジで転移したアウリスの上空では、その様相が一変していた。赤光は消え、しかし同時に、青い輝きもまた消失していた。星々のまたたく夜空――ありえない。〈大障壁〉の直径はおよそ1光年。“外”の光がドロラーへ届くまで半年はかかるはずではないか。
なんらかの時間ファクターを持つ構造震動が、星系全体を揺るがしたのだ。足下に感じる揺れは地殻変動が誘発された証。コナルの中心街は壊滅的打撃を受けていた。
そして、隣接惑星ナ=ティールは消失していた。破壊されたのではない。そこには、別の惑星が存在していたのだ。

-*-

何かが、手ひどく失敗した――ローダンは思った。周囲のすべてが揺れていた。《クレストII》の船殻すら震動していた。ようやく〈セネカ〉が介入して事態は小康状態となるが、状況はきわめて悪かった。
テラ=ルナ間に集結していたテラ艦隊1万隻のうち、最低でも2500隻が消息不明。地上でも、地殻変動やバリアから漏れたプラズマの雨で多大な被害が生じている。なにより――スクリーンに輝く青い巨星は、明らかにソルではなかった。ここは何処なのだ?

TOKIOの惨状
状況確認のため発進したスペースディスク(ヘフト版のガゼルやスペースジェットに相当する円盤艇)がまっさきに東京へ向かい、老朽化していたスカイツリーの倒壊を視認したり、落下してくるプラズマ塊から葛飾を救ったりするのは、日本の読者向けサービス? それとも両さん読んでたりするのか草案コンビ(笑)

青色巨星は比較的稀。ソル系直近のものは250光年離れたベラトリックス(オリオン=ガンマ)だが、この恒星の特徴にはあてはまらない。18ある惑星のうち、ハビタブル・ゾーンに位置するのがテラともうひとつ。重力異常の状況から、本来惑星のあった位置にテラが出現したことが判明する。
そして星系には居住者が存在した。接近した艦艇からプラズマ砲で散発的な砲撃がおこなわれ事態は緊迫するが、トーラがネーサン経由で全艦艇に応射を厳に禁じる命令を伝達する。闖入者は彼らの方なのだから。

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ラス=トオルのアウリスは高等議会の命をうけ、ヘスポロンのラールクの指揮する警備艦《カルミンスール》に同乗、出現した惑星へむかう。巨大な衛星は一級の要塞。そして惑星=衛星間に遊弋する大艦隊。鎖国して久しいアコンには存在しない強大な武力である。
緊張のあまり指示を待たずに発砲した2隻を最後尾へ下げるアウリスの指示で、最悪の事態は回避され、翻訳機のデータ交換を経てコンタクトが成立する。当初、有人惑星の交換と数千隻の大艦隊の存在から未知の“攻撃”を疑っていたアコン側だが、テラの状況や、《クレストII》を訪れた際に見たテラナーたちの困惑、そしてアコン星系のポジションが3万4000光年離れたアッカティール(Accatiir)星団――テラで言うM-3球状星団――の外縁であることを知った驚愕は虚偽ではないと、ラス=トオルのアウリスは信じた。

ヘフト版におけるM-3
アコン星系のポジションが正篇の銀河中枢部ではなく、ハローの球状星団というのは驚いたが、〈深淵〉編としてはある意味当然のなりゆきだったかも。ヘフト版におけるM-3球状星団といえば、ポルレイターの隠遁地である。球状星団の中心近く、新モラガン=ポルト五惑星要塞を築いた彼らは、深淵の騎士団の前任にあたる種族だった。
アコン語の名称が、ヘフト版のナックの惑星アッカーティル(Akkartil)と似ているのは、たぶん気のせい。たぶん……。

《クレストII》のハイパー物理学者ナ・アユタヤ双生児は、〈大障壁〉が状況転送機の受入極の役割をはたしたこと、その遠因はバリアのフィールド・ジェネレーターが利用している球状星団中心部からの多次元性フラクチュエーションにありそうだという推論を提出、アウリスを驚嘆させる。とはいえ、送出極は、あのアクシデントで破壊されていないにしてもソル星系にあり、ATGを創出した潮汐衛星のエネルギー源たる人工太陽も破壊されてしまった現状では、テラとルナを元の位置へ戻す方策はさしあたりなさそうであった。
また、アコン人の言語がアルコン語のより古い系統に由来すること、胸骨板の構造などから、彼らの方がよりリドゥーリ源流に近い、アルコン人の祖先であることが推察される。
ナ=ティール消失の際、M-3の中心部、バコル=カヴィ(Bacor-Kavi)からの強いインパルスが観測されたというアコン側の情報提供に、惑星転送になんらかの関係があるとおぼしき暗黒星雲への遠征を企図するローダンだが、ラス=トオルのアウリス曰く、その宙域はいまだかつて調査船団の帰還したことがない禁断ゾーンであるらしい……。

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自室で思索にふけるローダンのもとに、ナタリーがあらわれる。バコル=カヴィはとても異質で変動の激しいところ、既存の船で行ける場所ではない、と《クレストII》での遠征を止めるナタリー。

ナタリー・ローダン・ダ・ツォルトラル
2049年生まれのNEO版ローダン氏の長女。レイクサイド研究所での測定の結果、超能力をもつのは確実だが、ミュータントではない、というのがラス・ツバイの結論。成人後、オリンプへの研究飛行から帰還せず、以後消息不明……だったのだが、エラート同様、〈それ〉のエージェント的な活動をしていたらしい。その一環が、全身マスクつけて、オリンプの“皇帝”アンソン・アーガイリスを演じることだったとかいう……(爆)
時々、こーやってどこからともなくあらわれる。パパ大好きw

疑心暗鬼のローダンのもとへ、司令室のトーラから連絡が入る。星系外縁部に、遠距離遷移と思われる強い構造振動とともに、未知の巨船が出現したという。全長4キロの鉄亜鈴型。
それを聞いたナタリーは喜色をあらわにした。それこそ、ネーサンとポスビがとある暗黒惑星において極秘で建造していた船。テラの転送インパルスを再構築し、この星系を発見し、たどりついたのだ。その船ならば、バコル=カヴィへの飛行をなしとげられる。立体映像を指さし、
「あれが――《ソル》よ!!」

亜鈴船三種
NEOにおける《ソル》は全長4キロ。直径1500メートルのセル2基を全長1000メートルのシリンダーが結ぶ。《マゼラン》建造時に開発された遠距離遷移グライダー機関(LTG)を搭載。分離機能はなし。
正篇の《ソル》は直径2500メートルのウニヴェルズム級ソル=セル2基を全長1500メートルのシリンダーが結ぶ(後《マテリア》での改装で3000メートルに)。最新巻のあたりでは、遷移をなめらかに連続してこなすハイパータクト駆動を搭載。おそらくこれが、LTGの原型である。ミッション=ソル2以後の消息は不明。
同じくヘフト版の《ジュール・ヴェルヌ》が直径800メートルのアポロ級セル2基を全長800メートル(ドッキング部を含めると870メートル)のシリンダーが結ぶ。超空間インピーダンス増大前後両対応で、ホークIIリニア・コンヴァーターとメタグラヴを同時搭載。後に秩序の工廠惑星エヴォラクスで、トラフィトロン駆動搭載やら色々あやしい改造を施されている。アートプ法廷の罠にはまりブラックホールへ墜落。……ヴルチェク時代なら、別のブラックホールから吐き出されてるのになあ。

第3部:時代の転機

構造走査器は焼きつき、ハイパー・ベースの機器すべてが停止した。ローリン計画の何かが決定的な失敗に終わったことをレジナルド・ブルは悟った。テラとルナは、一見予定通りに姿を消している……。だが、その見かけを信じることは今のブルにはできなかった。
ソル系内では多くの艦船がその機能を失っており、ア・ハイヌも人命優先の救助活動にあたることを約束。大車輪で動力復旧した《テラニア》はX-ドアへと急行する。しかし、時間水門を擁する転子状船複合体は大破していた。先行して到着した《ナタリー》のトム・ローダンは人命の損害はなかったことを確認し、無事だったユニットへの救出活動を指揮していた。

《テラニア》
ソル直近の準惑星、第一期人類リドゥーリの秘密工廠ヴァルカン(183巻で破壊された)で建造された。直径750メートルのリドゥーリ戦艦。99巻で登場して後、テラ艦隊の旗艦。
2102年の時点で、艦長メルバル・カソム、首席科学者はアルノ・カルプ。コロニーとの関係がこじれてるところで艦長がエルトルス人なのか。正篇の伝統的にはエプサル人じゃないの。あと、レミーはどした?(笑)
カルプ教授が身長1.9メートル、体重200キロと、かなりのカリカチュア(さすがに胆汁質はなかった)。

テラとルナはどこへ行った? そこに住む160億の人々は、《クレストII》をはじめとする1万隻の艦隊は? 事態の再構築を試みたカルプ教授は、何らかの要因で、重ね合わせへの移行が“時間的”ではなく、“空間的”なものとなったと結論づけた。では、どこに? 現時点では、ソル系内及び周辺宙域を探査する〈冥王星ウルトラソニック・マルチロケーション・アレイ(PUMA)〉も限定的にしか機能しておらず、回答は見出せない。
時を同じくして、艦隊参謀本部から全星系に警報が発令された。ソル系外縁部に8000隻の転子状船が物質化、PUMAへ砲撃を加えたのだ。
ハイパー無線に姿を見せたのは、超重族。
「われはレティクロン、銀河系の第一ヘトランである! この星系はただいまより超重族の規範審議会ゴン=メカラの意志の下に置かれる。おって指示を下す。抵抗には、無警告の砲撃をもって応じるぞ?」

正篇のレティクロン
惑星パリクチャ出身の超重族。七銀河公会議の侵攻に面従腹背をもってこたえたローダンに代わって、銀河系の第一ヘトランに任命される。第一ヘトラン自体、公会議(ヘトス)に与えられた役職だったはずだが……第二ヴェシルとかと同等の扱いなのかな今回。
第一ヘトランの座を争いマイルパンサーに破れ、死後その意識は鋼鉄要塞タイタンのPEWメタルに封じられたはずだが、その後の運命については諸説ある(ヘフトと、記念巻収録の短編で異なる)。
ファン・シリーズ〈ドルゴン〉では新たな肉体を得て〈混沌の息子たち〉のひとりとして活躍中……なのかな?

-*-

……という感じで、以下次号。
次巻『暗黒星雲のかなた』では、《ソル》運用をめぐるローダン夫妻の意見の相違やら、M-3中心部の暗黒星雲へのテスト飛行で思わぬ知人に再会したりする。生還不能な宙域にひょいひょい挑む輩ときたら、もう衝動クリーニングなあの御仁(+α)で(笑) ソル側は254巻『規範審議会』まで放置かな……NEOだから、ちゃんと読むとエピソードはさまってるかな(おい
なんとゆーか、正篇がらみのあれこれをとにかくブチ込んできたなあ、と。上記以外にも、現在の軍人最高位である“星系提督”の名前はカラモンだったりする。対コロニー強硬派で、ブルとの関係はあんまり良くないみたい。でもこれ、オリジナルを知ってるから面白いんであって、NEOだけの読者にはピンとこないかもしれない。
むろん、NEOオリジナルの要素もある。アルコン遠征時に入手したアーティファクトと同じものが、アコン(ナ・ティール)に存在し、盗難を疑われたり(笑) ロボット十二英雄とか出てきてわりと謎なアルコンの過去にも光が差すかもしれない。

なにはともあれ、個人的にはじゅうぶん楽しめた。
でも、脱出艇が足りなくて死者が出るとか、テラ艦隊の安全基準はだいじょーぶなんだろうかと、そのへんは減点しておきたい。《クレストIV》だってすし詰め疎開したんだぞー(爆)

付記:〈深淵〉編タイトル
250. Rüdiger Schäfer & Rainer Schorm / Zeitenwende / 時代の転機
251. Lucy Guth / Hinter der Dunkelwolke / 暗黒星雲のかなた
252. Susan Schwartz / Kampf um SENECA / 〈セネカ〉をめぐる戦い
253. Rainer Schorm / Die Amber-Protokolle / アンバー=プロトコル
254. Rüdiger Schäfer / Die Exemplarische Instanz / 規範審議会
255. Lucy Guth / Die perfekte Welt / 完璧な世界
(以下未詳)

ローダン・ヴェガ1「青き陽光の下で」

3月19日からミニシリーズ〈ローダン・ヴェガ〉がスタートしている。すでに第2話も刊行済みだが、今回はその第1話「青き陽光の下で」の紹介など。サンプル版とかぶる部分もあるがご容赦を。

全12話で、草案担当はミハエル・マルクス・ターナー。
現在判明しているタイトルは以下の通り(日本語は仮題):

  1. Michael Marcus Thurner / Im Licht der blauen Sonne / 青き陽光の下で
  2. Ben Calvin Hary / Die Rollende Stadt / 転がる都市
  3. Olaf Brill / Im Garten des Unsterblichen / 不死者の園
  4. Madeleine Puljic / Feind der Harthäuter / 硬肌族の敵
  5. Olaf Brill / Die Mission des Wurms / 芋虫の使命
Perry Rhodan Wega 1

ローダンの肩書きが“連盟コミッショナー(Liga-Kommissar)”なので3099話/3100話の空白期間の事件なのはわかっていたが、アバン中(および本文中)にて新銀河暦2059年の事件と確定した。3099話「銀河系の子供たち」から13年後となる。
あと、前提知識として、2774話でのテズによる“ディスクロン剪断”の後、この時間線で超知性体〈それ〉は消息を絶っている。2900話台でワンダラーやホムンクが出てくるが、主の行方は語られない。

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トルトの政庁〈赤の宮殿〉の新築披露に招かれた、自由ギャラクティカー連盟コミッショナーのローダン、政庁首席ブル、護衛にあたるグッキーの3名は、直径800メートルの《マーカス・エヴァーソン》でヴェガ星系フェロルに到着。現トルト、ナクティエル・オォクに謁見する。
古い宮殿とその歴史への関心を熱く語るトルト。はて、ではなんでまた改築したんだろか。一応、もはや補修では追いつかないほど老朽化したから、とのことだが。

厳粛なセレモニーが終わり、さらに翌日、お祭り騒ぎに合わせて、新宮殿の思わぬ機能が開陳される。〈平和の遊具〉と銘打たれた宮殿セグメントが離床し、〈不死者の園〉と呼ばれるエリアを飛翔する。その動きに伴い、専用に設置されたハイパー・リレーを通じて既知銀河全域へと、えも言われぬ楽の音が鳴り響くのだ。アートなら、わしら、テラナーにも負けとらんでえ!というフェロン人の喜びようといったら(笑)

一方、《マーカス・エヴァーソン》に同行した科学者キリアン・ガヴリルは、35番惑星軌道に不穏なハイパーエネルギー活動のあることを指摘。時空連続体を揺るがす断裂の発生を予期し、駆けつけたローダンらの脳裏に、ホメロスの哄笑が響きわたる!

時空に穿たれた孔から出現した物体は、“氷結”した時空に包まれた、西暦1975年製の単座戦闘機2機。しかも、パイロットの一方はまだ生きていた!
彼女、ギリアン・ウェザビーは、パウンダー門下の、いわばローダンらの後輩。ブリーは面識もあったらしい。挙動が不審である(笑)

彼女に授けられた〈それ〉のメッセージは、
〈赤の宮殿へゆきたまえ、旧友。転送機のあった場所はおぼえているかな? かつてあった場所にそれはある。活路はそこにしかない〉
現在この時間線に存在しないはずの超知性体は、いったいいつ、何を予想してこの手を打ったのか。

だが、ローダンらが行動に移るよりはやく、ヴェガ系各所に新たに開いた時空の孔から強力なハイパー放射体が射出される。孔も、放射体も、みるみるその数を増していき、現在では機能しないはずのエスタルトゥの奇蹟にも似たバリアでヴェガ星系は封鎖されてしまう。
さらに時空穿孔から出現した“バスタードプリンス”クラカタウのマッカニ艦隊はトルトの旗艦を撃沈。逃げ惑うフェロン人の艦船を蹂躙しつつ、惑星フェロルを攻撃する。爆砕される新・赤の宮殿。さらにクラカタウは、ローダンとブル、不死者2名の身柄引き渡しを要求する。
《エヴァーソン》は戦闘艦ではないため、打開策がない。直前にテラへ艦隊出動要請を送ったものの、この隔離バリアが超空間からエネルギーを汲み上げるものなら、外部からの早期救援も望めない。

思わぬ提案は、ギリアン・ウェザビーからやってきた。〈それ〉――彼女には“超知性体”という概念は、まにあわせの催眠教育による理解を超えたものだったが――が、メッセージを伝えるためだけに、彼女や、死亡したパーマー、戦闘機を送り込んだはずがない。使うべきなのだ、パイロットも、戦闘機も。
ローダン、ブル、グッキー、そしてギリアンが、2機に分乗してフェロルをめざした。クラカタウはローダンらを生かして手中にしたいがために、大規模な艦砲射撃ができない。散発的な在来砲の被弾は、いまなお戦闘機に“溶け残って”いる時空氷がダメージを許さない。
首都トルタ近郊に強行着陸した一行はグッキーのテレポートで赤の宮殿、その残骸へと到達する。ギリアンは瓦礫のなかに感じた、その装置へと3人を導く――フィクティヴ転送機。再び、〈それ〉の声が、

〈これは君の第二のゲーム。第二の銀河の謎だ。君は友の助けを必要とするだろう。当時のように。おぼえているかな?〉

スターダスト星系で、第二の銀河の謎ってネタがあったのはさておいて(爆)
転送機が作動し、ローダンとギリアンの姿が消える。慌ててブルとグッキーも後を追った。

わずか後、クラカタウとその“マスター”はフィクティヴ転送機へと辿り着いた。“マスター”がもたらした太古の遺物の作用で、消えかけていた転送機の力場が安定する。“バスタードプリンス”クラカタウは力場へと踏み出した。ローダンとブルをその手に捕らえるため――謬りを修正せんがために。

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以下次号、なわけだが。
巻頭、バスタードプリンスと、おそらくその“マスター”の会話でも、「歴史の誤謬を訂正する!」という表現がある。シリーズの歴史の闇に沈んだ存在は、それこそ星の数だと思うが(笑)、最初にローダンが訪れた異星系であるヴェガ、この配役に該当するのは何者だろうか。後続タイトルに“硬肌族”とあるが、トプシダーにこんな怪しい行動しそうな一派いるかなあ。
また、巻末近くフィクティヴ転送機を見たクラカタウが、「記憶にあるのより小さいな……」と、その直前のローダンとまったく同じ感想を漏らすのも、伏線と思われるがよくわからない。
意味ありげな言動をしていたトルトがあっさり退場したのも、個人的にはあやしい。なんとなく連想したのが、『超人ロック ムーンハンター』である。やられたフリして、裏で糸をひいてるんじゃあないかとか……。

つかみとしてはおもしろかった。ここで紹介する余裕があるかわからないけど、ぼちぼち追いかけていきたい。

クルト・ラスヴィッツ賞2021年ノミネート作

3月30日付けのラスヴィッツ賞公式サイトで、2021年の同賞ノミネート作が発表された。ドイツ語圏で2020年中に初版刊行された作品が対象となる。

今年に入って一時サイトの更新が滞っていたのでヤキモキしていたのだが、実際はスケジュール通りに諸事進展していて、3月末の公表という事前告知に沿った公開となった。
230名の有権者への通知も完了し、今後の予定としては、5月31日までの選考期間を経て6月に受賞作を発表。授賞式は11月6日、ドレスデンで開催(予定)のSFコンベンション〈ペンタ=コン〉枠内で執りおこなわれる……んだけど、昨今のドイツの状況だと、この手のイベントの実施はまだまだ現実味が見えてこない気もする。

昨年(2020)の受賞作一覧もまだちゃんと掲載していないのだが、いま、正直時間的にあまり余裕がないので、さくっとリストだけアップしてしまおう。

長編部門 Bester deutschsprachiger SF-Roman:

Zoë Beck / Paradise City / 楽園都市
Gabriele Behrend / Salzgras & Lavendel / 厚岸草とラヴェンデール
Christoph Dittert / Fallender Stern / 落星
Andreas Eschbach / Eines Menschen Flügel / ヒトの翼
Tom Hillenbrand / Qube / キューブ
Sameena Jehanzeb / Was Preema nicht weiß / プレーマが知らないこと
Marc-Uwe Kling / Qualityland 2.0 / クオリティランド2.0
Heribert Kurth / Unter den Sternen von Tha / ターの星の下で
Michael Marrak / Anima ex Machina / アニマ・エクス・マキナ
Uwe Post / E-Tot / e-デッド

『落星』の作者ディッテルトは、現在ローダンの草案チームの一方、クリスティアン・モンティロンの本名。
『ヒトの翼』の作者エシュバッハは、言わずと知れた同賞の常連。昨年のローダン本に続いて連覇なるか。
『キューブ』の作者ヒレンブラントは、ローダン2000話の翻訳も手がけた赤坂桃子氏によって邦訳された『ドローンランド』が2015年のラスヴィッツ賞、本作の前編『ホログラマティカ』が2019年のドイツSF大賞を受賞している。
クリングの『クオリティランド2.0』は、そのまま、2018年のドイツSF大賞受賞作『クオリティランド』の続編。
『アニマ・エクス・マキナ』の作者マラクは、2000年刊行の『ロード・ガンマ』がラスヴィッツ賞・ファンタスティーク大賞のダブルクラウン受賞に加え、SF-Fan.deの読者投票オールタイムベスト1位に輝いている。
『e-デッド』の作者ポストも、2018年の『ヴァルパー・トンラッフィルと神の人差し指』をはじめ、複数の受賞歴の持ち主。
それ以外にも、ガブリエレ・ベーレントは長編・短編双方にノミネートされるなど、錚々たる面々である。

……実は『落星』と『ヒトの翼』はどちらも発売日にKindle版を購入していたのだけど、見事に積ん読状態である。ソシャゲ断ちするか……(オイ

短編部門 Beste deutschsprachige SF-Erzählung:

Galax Acheronian /Verloren auf Firr’Dars / フィル・ダースで失踪 (『ハイパー・オービス』Hyper Orbis 収録)
Gabriele Behrend / Meerwasser / 海水 (『エリダヌス座εの友人だち』Unsere Freunde von ε Eridani 収録)
Christian Endres / Der Klang sich lichtenden Nebels / 発光する雲の音色 (『緑の惑星――気象変動した未来』Der grüne Planet – Zukunft im Klimawandel 収録)
Kai Focke / Gastropoda galactica / ガストロポダ・ガラクティカ (『エイリアン・ワルツ』Das Alien tanzt Walzer 収録)
Heidrun Jänchen / Mietnomaden / 借家放浪者 (『緑の惑星』収録)
Axel Kruse / Grassoden / 芝 (『2101――僕らの将来』2101 – Was aus uns wurde 収録)
Hans Jürgen Kugler / Die Insulaner / 島の人々 (『緑の惑星』収録)
Christian Künne / Friedensfahrt / ピース・レース (『シリウス・シティの叛乱』収録)
Thorsten Küper / Unsere Freunde von ε Eridani / エリダヌス座εの友人だち (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Frank Lauenroth / Delter / デルター (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Michael Marrak / Insomnia / 不眠症 (『ラザルス家』Das Haus Lazarus 収録)
Uwe Post / Terra Halbpension / 賄い付下宿テラ (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Carsten Schmitt / Wagners Stimme / ワグナーの声 / (『知性はいかほど人工的か?』Wie künstlich ist Intelligenz? 収録)
Angela und Karlheinz Steinmüller / Marslandschaften / 火星の情景 (『エクソダス41号』Exodus 41 収録)

作品内容とは関係ないが、ガストロポダ(腹足綱)とは、要するにカタツムリやナメクジを連想していただけばよろしいかと。ローダン・シリーズでも、すでに登場しているダルゲートとか、近々登場する奇蹟のエンジニア種族ナックなどは“ガストロポイド”とも表記される。
シュミットの作品が収録された『知性はいかほど人工的か?』は、Twitterでローダン公式などをフォローしている方は目にしたこともあるだろう。編者はクラウス・N・フリック。現在のローダン・シリーズ統括責任者である。
シュタインミューラー夫妻がまだ現役でご活躍なのは、一ファンとして嬉しい。

……通例ならこの後、国外作品部門(独訳初版が2020年刊行)の紹介をするのだが、遺憾ながら今回は割愛する。ご多分に漏れず、中国SF(劉慈欣の三体がらみの短編集収録作)やらアラビア語からの独訳まであって、ちょっと原題の確認とかめんどくs……時間がかかりそうなので、機会を改めて、ということで(汗)

■ラスヴィッツ賞公式サイト:www.kurd-lasswitz-preis.de

ジョニー・ブルック生誕100年

もう昨日になるが、3月22日はローダン・シリーズ開始から長らくメイン・イラストレーターであったジョニー・ブルック(Johnny Bruck)の誕生日。しかも今年は生誕100年にあたる。

これを記念して、公式サイトでは3点のアートパネル抽選や割引コード配布などの企画をおこなっている。モチーフは“Pax Terra”(ローダン287話「屈せざる者たちの広間」表紙)と、“Demeter”(同865話「宇宙の迷走」表紙)の2種類。
特に前者は、人類と異種族(マークス)の協力をあらわすシェイクハンドな絵柄で、後期のヴェルトコンのコン・ブック表紙に使用されたり、各種媒体でよく見かける。

ジョニー(1921.03.22 – 1995.10.06)の手がけた作品は、ローダンの表紙イラストだけで1800点近く、これに挿画や、ATLANや惑星小説、現在のVPMの源流であるMoewig社のTerra叢書、Pabel社のUtopia叢書等も含めると数知れない。ちょうどTwitterでリストのリンクを貼ってくれた方もいらしたが、とにかくすごい。1984年に出版された画集(紹介文はH・G・フランシス)にちなんで〈3000のSF世界の支配者〉の異名をとったのもうなずける。
日本の読者には、「ドイツの依光先生」と言ったらわかってもらえるだろうか。

交通事故で亡くなった後、追悼のため1800話「クイックモーション(Zeitraffer)」の表紙イラストにジョニーの肖像が描かれ、作中では時代の右傾化を憂うローダンが、ゴシュン湖畔のバンガロー近くに住む同名の画家(新銀河暦1200年代に、油絵を嗜むのだ)と短い友情を育む。同作は、前サイクル末からの60年を駆け足で描写するので、ローダンはともかく、老画家はやがて……というあたり、ちょっと泣けた。

■Perrypedia:Johnny Bruck
■公式News:GEWINNSPIEL ZUM 100. GEBURTSTAG VON JOHNNY BRUCK

60周年極秘プロジェクト進行中

ローダン編集部ブログによると、シリーズ60周年を記念した極秘プロジェクトが、晩夏……というか9月を期して進行中とのこと。

文面を見ると、9月には固まる、みたいな表現なので、まだ未確定なところもあるのだろう。
50周年の時には「極秘プロジェクトX」(中島みゆきの歌が流れそうw)とされていたものが、ローダンNEOのスタートとして発表された経緯もあるので、続報を楽しみにしている。

■編集部ブログ:Geheimprojekt für den September

ローダン・ヴェガ、第1話のサンプル公開

3月19日からスタートのミニシリーズ〈ローダン・ヴェガ〉。その第1話、草案担当でもあるミハエル・ターナーの「青き陽光の下で」の試供版(pdf)が公開された。

3099/3100話の空白期のエピソードとなる本作、連盟コミッショナーであるローダン、政庁首席のブル、護衛(?)のネズミ=ビーバー、グッキーの3名は《マーカス・エヴァーソン》でヴェガ星系へ到着。彼らを招待したトルトのいる、新築されたばかりの“赤の宮殿”を訪れる。どうやら、新築(改築?)のお披露目かなにかに呼ばれたみたい。
古い宮殿とその歴史への関心を熱く語るトルト、ナクティエル・オォク。はて、んじゃなんでまた改築したんだろか。とゆーか、ここまでの描写だと改築だか、移設新築だかさだかでないのだけど。ともあれ、ローダン一行はトルトの好意でセレモニー前の一夜を新宮殿ですごすことに。

……なのだが、その前に(上記のエピソードは第2章)、冒頭ちょこっと挿入された謎の“バスタードプリンス”と何者かの対話、「歴史を修正する!」とか、ローダン到着から2日後のトルトの旗艦が撃沈寸前で「なにもかも、あのテラナー、ペリー・ローダンどもが悪いんじゃあああっ!!」というトルトのつぶやき(第1章)とか、気になる描写がwww
先行して公開された情報で、“ヴェガ星系が外界と隔絶される”とか、“新たな銀河の謎”、“過去からの脅威”といった言葉が並んでいるのだけど。はてさて。

シリーズ60周年の今年、ローダンが初めて訪れた異星系を舞台に展開するミニシリーズ。今後の展開を楽しみにしている。

試供版:https://perry-rhodan.net/aktuelles/news/eine-leseprobe-zur-kommenden-miniserie

3100話「星の呼び声」

前話「銀河系の子供たち」から25年が経過、時は新銀河暦2071年。

“すべてうまくいっている。カイラ人が去ってから、どの世界にも希望が戻ってきた。”(間章より)

って……なんか、何事もなかったかのように、いい時代だ、平和な時代だ、って皆して言ってるのってどーよwww

自由ギャラクティカー連盟の首都は太陽系政庁とともにテラへと帰還。レジデントはブリー。ローダンは連盟コミッショナーの地位にある。テフローダー、アコン人に加え、水晶共和国へと改変されたアルコン人勢力も提携関係に迎えたレムール同盟は健在。ギャラクティカム? 知らない子ですね……w

ストーリーはソル星系と、3000光年離れたタンホイザー星系とが並行して進む。数日前から正体不明の“声”――歌――が聞こえるというブリー。精神的に不安定になった彼が、活性装置持ちのくせに不眠症やらで倒れたのと時を同じくして、火星で高次元擾乱を招く〈インパクト〉が発生する。
シレーネ海(旧エリュシオン平原)に探知された涙滴状物体とのコンタクトは失敗するが、グッキーは消える前に感知した相手の“二重思考”がトリュツォム・ダンサーのものと同質であると報告する。
その内容は……“いま、ここに”あるものすべてへの憐憫。

一方のタンホイザー側進行役は、ダイオヴァース第二肢で見出された超能力者アンズちゃん。
発生した空間の亀裂〈ギャップ〉へと急行したアンズちゃんも搭乗するエクスプローラー船《ピノ・グンニヴェダ》は、高次元テクノロジーが機能しない亀裂内部を飛来する宇宙船に遭遇する。アンドロメダ出身の鳥頭ケンタウロス種族コメウクの船《ヴレクネメル》は、鎌状の頭部をもつヒューマノイド種族ライヒカンゲの攻撃をうけ、突入してきた敵のため壊滅寸前だった。原因は難破船から救助した3人の“客”である。
ライヒカンゲの〈カオゲイター〉ホーカダルと、彼に護られた2人の女性ヒューマノイドは、カオタークの御座船、カオポーター《フェネリク》の乗組員だった。カシオペア矮小銀河に座礁したカオポーターから脱走した3人は、携行した装置〈ドライバー〉を用いて〈ギャップ〉を開き、追撃をふりきった。彼らの言う「共鳴星系」――ソル系へと亡命するために。

レムール同盟の首脳会議で“同盟コミッショナー”に選任されたローダンは、《ラス・ツバイ》の発進準備を開始する。アンドロメダVIIことカシオペア矮小銀河へ赴き、事態を究明するために。


以下余談:

  • 太陽系政庁の生体ポジトロニクス〈ラオツェ(老子)〉は12年かけて建造されたセミトロニクス〈ラオ=2〉に換装済み。しばしば『老子』を引用して会話を進めるらしい。老子のことを「先祖」というのを読んで、連想したのは……「ご先祖っ」「子孫っ」がしっ(パタリロ)
  • ソル系とタンホイザーを結んだ直線の先にカシオペア矮小銀河があるって……そのネタはトオゴンドゥの黄金の国関係で使ってるぞな。
  • 「わたしは平穏無事な生活がしたいからグッキーのミュータント部隊に入るのも断ったのにー!!」というアンズちゃんには草はえたwww
  • 2700話台で、ブルの活性装置に“混沌寄り”のメモリングでパッチを当てたの、時折思い出したように話題に出てきてたのだが、今度こそなんかあるかなあ。

2023/08/18 Twitterのスレッドに加筆訂正したものをブログに転載

3099話「銀河系の子供たち」

真偽アトラン対決。左が差別化のため剃髪したオプト=アトラン

制御を失ったカイラ人の巨大要塞〈星環〉が旧アルコン星系を包む〈鉛球〉へと引き寄せられ、破局の迫るM-13球状星団。カイラ人に叛逆したオプト(最適化コピー)=アトラン率いる贋《トーラ》へ突入したローダン、グッキー、ゼミナさんは囚われた本物のアトランを救出し、事態を打開できるのか!?
……という神話サイクル最終回、3099話「銀河系の子供たち」(ターナー)。

なんでテラ艦は球形なんだろう(ブリー)とか、トラムプを旅立ったのは正解だったかなあ(グッキー)とか、クーベルタンの唱えた「より早く、より高く、より強く」は現状に即してるだろうか(ローダン)とか、まるで関係ない(まあメタ的にどっかの国ではオリンピック開催するわけだが)ことを考えつつストーリーは進行する……いや、読む分には面白いんだけど(笑)
一方、“最適化され”たはずのオプト=アトランはやけに優柔不断で、アトランの孫娘にあたる小ヤスミンさんに怒られる始末。オリジナルには逃げられ、タイムパラドックスで《ラス・ツバイ》を破壊する時間魚雷作戦も失敗といいとこなし。

そして、ヤスミンさんがゼミナさんにつかまったあたりから話が急展開する。
記憶のすべてを取り戻したゼミナさんが贋《トーラ》ことゴーレムの指揮権を奪取。謎多きトランク〈パアウ〉を介して、テズ製活性装置を一時的にオプト=アトランへ移植することで騎士のオーラをコピー。それをゴーレムにまとわせて、“落下”する〈星環〉をアトプ導体の名残ともいえる〈鉛球〉を利用してダイオヴァースの片割れへと先導する機能を付与。
水先案内人として超知性体ハト=ハタンの残滓を宿したカイラ人のアイプ少年をリクルート。ゴーレム=スープラメンタムの演算能力の足りない部分を、電脳空間・真鍮スペースに意識体を転送した虚帝トルマナク率いる永遠の帝国のリソースが補って、みんなで安全なダイオヴァース第二肢へ発進ごー!

後には、あっけにとられたローダンら“銀河系の子供たち”と、元の姿を取り戻したアルコン星系が残されて、めでたしめでたし。
――なのかなあ。なんだか、故郷も仕えてきた超知性体も見捨てて逃げたカイラ人一派だけが目的をはたしたみたいで、すごく納得いかないんだけど(笑) でも情報収集能力が足りてないので、少なくとも、コスモクラートも超知性体もおらずとも、むやみと生命体を殺戮する超存在のいるダイオヴァースのあちら側に、明るい未来は待ってないと思うんだよね……。
銀河系も、500年の傷痕は深いと思うのだが。これで3100話で、ローダンはしれっとレムール同盟のコミッショナーとかやってるのかなぁ。

2023/08/18 Twitterのスレッドに加筆訂正したものをブログに転載